2018モデルでフルモデルチェンジを果たしたサーヴェロのRシリーズより、セカンドグレードの「R3 Disc」をインプレッション。オールラウンドな軽量クラシックバイクとして、より軽くより安定性を高めた新設計フレームのディスクブレーキモデルを紹介しよう。



サーヴェロ R3 Discサーヴェロ R3 Disc (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
創業者となる2人のエンジニア、フィル・ホワイト氏とジェラルド・ヴルーメン氏によるタイムトライアルバイクの開発を起源とし1995年に設立されたカナダのバイクブランド、サーヴェロ。業界随一のカーボンテクノロジーによるハイパフォーマンスなレースバイクを各種ラインアップし、ロードレース、トライアスロンのいずれのシーンにおいても高い評価を受けるブランドだ。

エアロダイナミクスを追求した独創的なデザインと高い性能を持ったブランド初のTTバイク「Baracchi(バラッキ)」に始まり、それを元に製品版として開発されたPシリーズはタイムトライアルバイクのベンチマークとして今日まで多くのトライアスリートに愛用されてきた。

その後エアロロードSシリーズの原点となったレーシングバイク「Soloist(ソロイスト)」が2002年にデビュー。それまでTTバイクのみに採用されてきた翼断面形状のチュービングをロードバイクにも落とし込んだ革新的なモデルとして、その後のロードレーサーに多大な影響を与える1台となる。

Rシリーズに特徴的な極細シートステーにより優れた振動吸収性を発揮Rシリーズに特徴的な極細シートステーにより優れた振動吸収性を発揮 進化したスクオーバルマックス形状のチュービングが随所に用いられる進化したスクオーバルマックス形状のチュービングが随所に用いられる フレームサイズごとにフォークオフセットを変更しトレイル量を均一化しているフレームサイズごとにフォークオフセットを変更しトレイル量を均一化している

対してオールラウンドモデルのRシリーズがリリースされたのは2005年のこと。グランツールを戦うフラッグシップとして最初のモデル「R3」が生み出され、カルロス・サストレ(スペイン、当時チームCSC)の2008年ツール・ド・フランス初制覇にも貢献した。2011年には現在のラインアップに通ずる「R5ca」「R5」「R3」から成る3モデル展開へ刷新。その後も軽量クラシックバイクのコンセプトを崩すことなくマイナーチェンジを重ね、その性能を進化させ続けている。

当時のトップモデルとしてS3と並び世界のトップレースを駆けたR3だが、セカンドグレードとなった現在も、タイラー・ファラー(アメリカ、ディメンションデータ)始め一部の選手は好んで使用しているモデルとなる。その中でも今回インプレッションを行った「R3 Disc」は、同社で初となるディスクブレーキロードとして2016年モデルから登場したバイクであり、今年のモデルチェンジを受け今作で2代目となる。

トップチューブ上部に小さくモデル名が入るデザイントップチューブ上部に小さくモデル名が入るデザイン ステムにはサーヴェロロゴ入りのオリジナルパーツをアセンブルステムにはサーヴェロロゴ入りのオリジナルパーツをアセンブル
チェーンステーにはモデルロゴが配されるとともにプロテクターも装備チェーンステーにはモデルロゴが配されるとともにプロテクターも装備 サーヴェロ独自のBBrightにより優れたパワー伝達性やねじれ剛性を確保サーヴェロ独自のBBrightにより優れたパワー伝達性やねじれ剛性を確保

グラベルロード寄りの性能に仕上げたディスクロードCシリーズとは異なり、純然たるレースバイクにディスクブレーキを搭載したR3 Disc。Rシリーズが持つ軽量性や機敏な反応性、同社特有の高いエアロダイナミクスを維持しつつも、ディスクブレーキの確実な制動性をプラスしたことでよりハイパフォーマンスな1台に仕上がっている。

Rシリーズに代々受け継がれるシンプルなフレームワークを引き続き採用すると同時に、チュービングには円形と角形を組み合わせたサーヴェロ独自のスクオーバル形状を進化させた「スクオーバルマックス」を投入する。特にSシリーズにも似た極太のダウンチューブは新型Rシリーズの大きな特徴で、その他全体的にボリュームが増したフレーム形状は、剛性と重量のバランスを最適化させるとともに空力性能をも改善させている。

フレーム形状はリムブレーキモデルと同様としながらも、カーボンレイアップを工夫することでディスクブレーキに対応した剛性を確保。それでいて、Rシリーズに特有の軽い重量と高いクライミング性能をディスクブレーキモデルでも実現するため、刷新されたデザインとカーボンレイアップにより前作比で18%の軽量化を果たしたのだという。

スルーアクスルには素早い着脱を可能とするR.A.Tシステムを採用するスルーアクスルには素早い着脱を可能とするR.A.Tシステムを採用する 最大28mm幅まで対応する広いタイヤクリアランスを備える最大28mm幅まで対応する広いタイヤクリアランスを備える

快適性の面ではRシリーズのアイコンともいえる極細のシートステーはそのままに、タイヤクリアランスを4.5mm拡張。最大28mm幅のタイヤまで対応しており、エアボリュームによる振動吸収性を活かすことで悪路での快適性を高めている。またBBにはシェル幅の広いサーヴェロ独自のBBrightを用いることで、優れたパワー伝達性やねじれ剛性を確保している。

加えてジオメトリーも昨今のトレンドに沿った、従来よりも低めのスタック、長めのリーチへ変更することでライダーとの親和性を向上させるとともにハンドリング性能の改善も狙った設計に。さらにBBドロップを5mm前後増やし、ホイールベースも延長することで安定性を強化。フレームサイズごとにフォークオフセットを変更することでトレイル量を均一とし、走行性能のばらつきを無くしている。

オーソドックスな丸型シートポストを採用しメンテナンス性も容易にオーソドックスな丸型シートポストを採用しメンテナンス性も容易に フロントギアにはチェーンキャッチャーを標準装備フロントギアにはチェーンキャッチャーを標準装備 上下異径のテーパードヘッドによりフロント周りの剛性を確保上下異径のテーパードヘッドによりフロント周りの剛性を確保

ディスクブレーキはもちろんフラットマウント対応で前後ともスルーアクスルを採用。完成車は160mmローターにて組まれる。またスルーアクスルに関しては、リリース後に90度ひねるだけで着脱可能なR.A.T(Rapid Axle Technology)のシステムを導入することで利便性を追求している。

上位グレードのR5とは異なりノーマルな丸型シートポストを採用し、クランプ部分もオーソドックスな仕様に。同社オリジナルのシートポスト、ステムがアセンブルされる他、チェーンステーにはプロテクターも装備される。

完成車とともにフレームセットでも販売され、ネイビー/レッドとフルオロイエロー/ブラックの2色展開となる。今回はシマノR8070系ULTEGRAを搭載した完成車仕様にてテストした。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「Rシリーズらしい軽快な登坂性能とオールラウンドな走りが特徴」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)


このバイクは登りも下りも不満なくこなせますし、平坦路の巡航性能も高いため、オールラウンドに使えるレーシングバイクといった印象です。その上で快適性も高いため、長距離ライドやはたまた多少の悪路でも難なく走破してくれるマルチパーパス性も持ち合わせていますね。1台でどんな使い方もできるロードバイクだと思います。

「Rシリーズらしい軽快な登坂性能とオールラウンドな走りが特徴」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)「Rシリーズらしい軽快な登坂性能とオールラウンドな走りが特徴」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
最初はハンドルやサドルが高いところにあるシクロクロスバイクに乗っているような腰高感を感じたのですが、実際にはBBハイトも高くないですし、ヘッドチューブも短めですので非常に不思議な感覚でした。ただ実際に走り出してみると、下ハンドルを握ってもフォームに違和感はないですし、むしろ無理しているような感覚がないため、長距離を走っても身体に負担がない楽なポジションを実現できるジオメトリーが確保されていますね。

コーナリングについては少し癖があるのではないかと勘ぐりながら曲がってみたのですが、いざコーナーに入ると先程までの腰高感というのが瞬時に消え、ナチュラルにラインをトレース出来ます。逆にコーナリング中の安定感すら感じるような印象で、違和感なく曲がってくれますね。これは不思議でした。

登りはケイデンスを高めにペダルを回していくと気持ちよく走れると思います。踏み出しが非常に軽かったので、コンパクトクランクかなと一旦止まって確認してしまったほどです。それこそギアを1枚軽く感じるほど軽快に登れる高い登坂性能を持っています。またバイクに少しウィップ感があるので、ダンシングで加速する際はバイクのリズムに合うように踏み込んでいくと気持ちよく加速してくれます。

エアロロードではないですが、平坦の巡航性能も非常に高いです。スクオーバル形状のチュービングとともに、リムブレーキキャリパーが無いのも結構効いていると思いますね。フロントフォーク周りの空気の抜けの良さを感じます。見た目はエアロロードではなく、普通のオールラウンドロードといった風貌ですが、ディスクブレーキ化のメリットはそういったエアロダイナミクスの追求にもあると思います。

今回テストした完成車パッケージに関しては、まずアルテグラDi2の油圧ディスクコンポーネントは文句ないですね。ホイールもマヴィック Ksyrium Disc CLということですが、至ってナチュラルで重量が重いということもないので、過不足無く楽しめると思います。また90度回すだけで着脱出来るスルーアクスルも便利ですね。クイックレリースだと締め付けすぎか緩みすぎということも有るので、そういった危険性も排除することが出来ます。

「低重心で安定性の高さ、コントロールのしやすさが際立つ1台」辻本尚希(L-Breath Bike)

「低重心で安定性の高さ、コントロールのしやすさが際立つ1台」辻本尚希(L-Breath Bike)「低重心で安定性の高さ、コントロールのしやすさが際立つ1台」辻本尚希(L-Breath Bike) BBドロップが下がっているため非常に低重心なのが特長のバイクですね。特にコーナリングだとその特長が顕著に出ていて、ペダルの軸に体重を乗せた時にバイクの重心が掴みやすい。加えて左右非対称形状のBBとチェーンステーにより、左右の重心バランスが整うため、バイクのセンターをしっかり感じながら安心してコーナリングに入ることが出来ます。またディスクブレーキ化することで、ブレーキキャリパーがバイクの下側に付き、フロントフォークとBBとバイクエンド部分という3点で地面を掴むような感覚が生まれています。低重心化がさらに進み、バイクの安定感に繋がっている部分でしょう。

剛性面に関しては、ダウンチューブからヘッド周りにかけてボリュームを増したおかげで十分な硬さを持っています。ただヘッド部分の剛性に対してBBが下がっているジオメトリーですので、高速巡航で踏み込んでいくシーンではウィップ感を感じました。ですのでバイクのリズムを感じながらペダリングしていくトルク型の人にマッチしそうです。

登りでもケイデンス高めで回していくと言うよりは、トルクを掛けながらバイクのリズムで踏み込んでいくと気持ちよく進んでくれます。上半身をがっちり固定して回していくと言うよりは、肩を軸にリズムを取ってペダルに体重を落とし込んでいく踏み方ですね。骨盤を立てて踏む方に良いでしょう。逆に骨盤を寝かせて踏むタイプの方には違和感が出るかもしれません。

ジオメトリーに関してもヘッドチューブが短く設定されているため、レーシーな前傾のポジションを出すことも出来ますし、逆にステム等の調整によってコンフォートなポジションを取る事もできるので、様々な乗り方に対して幅広くカバーすることが出来ますね。なおかつバイクが低重心にできているので、前乗りになりすぎることもなく、バイクコントロールし易い安定感あるポジションを出すことが出来ます。

また、ホイールベースが長いジオメトリーでもありますので、直進安定性に優れているのもポイントでしょう。ハンドルを切ってもホイールがシューズに当たらないですし、フラフラしない真っすぐ進んでいく安定感から落車も防いでくれそうです。その上、スクオーバル形状のダウンチューブが風切音を発生させない見事な整流効果を持っており、直進性を際立たせていますね。そう考えるとビギナーのレースデビューにも最適です。

BBドロップの下がりは衝撃吸収性の向上にも貢献しているように思います。バイクから嫌な突き上げは感じませんでした。快適性も両立されているので、レースからロングライドまでオールラウンドに使用できるでしょうね。短いヘッドチューブを活用して、しっかりとハンドルとサドルとBBという3点に荷重が分散されるようなポジションを出していけば、身体に痛みの出ない長時間楽な理想的なポジションを実現できると思います。

サーヴェロ R3 Discサーヴェロ R3 Disc (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ R3 Disc Ultegra Di2 R8070 完成車
コンポーネント:シマノUltegra Di2 R8070
ホイール:マヴィック Ksyrium Disc CL
タイヤ:マヴィック Yksion Elite 700 x 25c
カラー:ネイビー/レッド、フルオロイエロー/ブラック
サイズ:48、51、54、56
価 格:790,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

杉山友則(Bicicletta IL CUORE)杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。

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Bicicletta IL CUORE ショップHP

辻本尚希(L-Breath Bike)辻本尚希(L-Breath Bike) 辻本尚希(L-Breath Bike)

管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。

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L-Breath BIKE 御茶ノ水店 ショップHP

ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:ベルスミス

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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