ツール・ド・フランス第4ステージでカヴェンディッシュの落車を引き起こしたとして失格処分を受けたペテル・サガン。世界チャンピオンとボーラ・ハンスグローエは、失格処分に対する法的な争いに終止符を打つことでUCIと同意した。


ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の肘と接触しながらマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が転倒ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の肘と接触しながらマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が転倒 photo:Kei Tsuji / TDWsport

問題の失格処分が起こったのはツール・ド・フランス第4ステージでのこと。フィニッシュラインに向けてスプリントで競り合っていたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が絡んで落車し、カヴェンディッシュが肩甲骨を骨折するとともにリタイア。落車の原因を作ったとして、UCI(国際自転車競技連盟)のコミッセールはサガンに失格処分を与えた。詳しくは当時のレポート→「サガンが肘打ちした?カヴが自分で転んだ?議論を巻き起こす厳しい失格処分」にて。

サガンの失格をメディアに伝えるUCIチーフコミッセールのフィリップ・マーリアン氏サガンの失格をメディアに伝えるUCIチーフコミッセールのフィリップ・マーリアン氏 photo:Kei Tsuji / TDWsport故意に引き起こした落車ではないとして、失格処分を不服とするサガンとボーラ・ハンスグローエは即日CAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴。失格処分の即時撤回を求めたが、その訴えは認められずにサガンはツールを去った。その後も引き続きサガン側はCASに訴えて法的な争いに発展。12月5日にスイスのローザンヌでCASの最終ヒアリングが行われる予定だった。

ヒアリングを前に、CASに提出された証拠素材(当時UCIコミッセールが失格処分を与える際に公開されていなかったビデオ映像も含まれる)を精査したサガンとボーラ・ハンスグローエ、UCIの三者は、不運な落車であること、故意に起こった事故ではないこと、そして当時UCIコミッセールが最善の判断を下したことで一致。三者が法的な争いを継続しないことで同意した。

当事者のサガンは今回の同意について「もう過去のことは忘れ去った。これは我々のスポーツの未来に向けての取り組みだ」と前向きに捉える。「今回の一件が、UCIコミッセールの判断の難しさを浮き彫りにするとともに、UCIがより効果的な手段を取り入れる必要性を明確にしたことを歓迎する。自分のケースがポジティブな発展につながることを嬉しく思う。感情が荒ぶることも多いスポーツの中で、公平で理解可能な決断が何より重要だから」。

UCIのダヴィ・ラパルティアン会長は「今回の例はUCIコミッセールの判断の重要性を再認識させるものだ。来シーズンに向けて、UCIは『サポートコミッセール』の仕組みを強化。UCIワールドツアーにおいて、録画映像による助言をコミッセールパネルの判断に取り入れることを目指す」と、公平な判断への取り組みを明らかにしている。

今回の発表を受けて、ディメンションデータのダグラス・ライダー代表は「最大の被害者である選手(カヴェンディッシュ)を擁する我々のチームが、今回の判断に至る過程に含まれなかったことに驚いている」として、UCIに詳細な説明を求めている。

text:Kei Tsuji