今夏より販売が開始されたR9170系DURA-ACEから遅れること約4ヶ月、一連の新型コンポーネントの中でも最も遅いデリバリーとなったシマノのディスクブレーキコンポーネント、R8070系ULTEGRAが満を持して登場。一般発売に先駆けて行ったインプレッションをお届けしよう。



油圧ディスクブレーキ×Di2変速を取り入れたセカンドグレードコンポーネントR8070系ULTEGRA油圧ディスクブレーキ×Di2変速を取り入れたセカンドグレードコンポーネントR8070系ULTEGRA
軽いブレーキタッチや高い制動力などの優位性から、じわじわと普及の兆しが見られるディスクブレーキロード。国内レースにはまだ使用不可とあって競技志向のライダーは敬遠しがちかもしれないが、ホビーユーザーを中心に確実にその数を増やしている。

ディスクロードの勢いを更に加速させるであろうシマノの新型コンポーネントが、今回登場した「R8070系ULTEGRA Di2」だ。価格と性能のバランスに優れたセカンドグレードとして幅広いライダーに愛用されるULTEGRAグレードに、遂にディスクブレーキモデルが追加されたのだ。

リムブレーキモデルとほぼ変わらないサイズまで小型化を果たした、電動油圧ディアルコントロールレバーリムブレーキモデルとほぼ変わらないサイズまで小型化を果たした、電動油圧ディアルコントロールレバー ブラケットカバーにはグリップを高めるDURA-ACEグレードと同じパターンが入るブラケットカバーにはグリップを高めるDURA-ACEグレードと同じパターンが入る ブラケットヘッドには変速等の機能を割り振れるスイッチAを装備ブラケットヘッドには変速等の機能を割り振れるスイッチAを装備

油圧ディスクブレーキとDi2変速システムを盛り込んだ同製品は大きく分けてSTIレバーの「ST-R8070」、ディスクキャリパーの「BR-R8070」、ディスクローターの「SM-RT800」の3点から構成される。いずれも上位グレードのDURA-ACEのテクノロジーを引き継ぎつつ、コストダウンを図った製品だ。その他変速部やドライブトレイン部はリムブレーキモデルのR8050系と同一だ。

デュアルコントロールレバーは、DURA-ACEグレードと同じくリムブレーキモデルとほぼ同等の寸法までサイズダウンを果たしており、ブラケットが大きくなりがちな従来の油圧ディスクブレーキレバーと比べて、より握りやすい形状に。油圧のマスターシリンダーをブラケット内に搭載する関係で、ハンドルと接する付け根の部分がリムブレーキのレバーよりもやや幅広になっているのが特徴だ。

前後ともフラットマウントとなるブレーキキャリパー前後ともフラットマウントとなるブレーキキャリパー コンパクトなキャリパーのデザインでロードにマッチするスマートなルックスを実現コンパクトなキャリパーのデザインでロードにマッチするスマートなルックスを実現 ディスクローターも新たにULTEGRAグレードの製品が登場ディスクローターも新たにULTEGRAグレードの製品が登場

その他細部のデザインはR8050系同様で、エルゴノミックなレバー形状やより押しやすく大型化したシフトスイッチ、グリップを高めるブラケットフードのパターン等細かな部分まで使いやすさを追求したものとなっている。もちろんブラケットのヘッド部分には、R8050系からULTEGRAにも採用されたスイッチAも装備される。

ブレーキキャリパーもDURA-ACE同様、空気抵抗を踏まえた形状が採用された。フラットマウントに最適化され、コンパクトで軽量なブレーキキャリパーは、自然でコントローラブルなブレーキフィーリングを実現した。艶やかなグロスブラックのDURA-ACEに対し、ULTEGRAはグループセットで統一されたアイスグレーのカラーを用いる。

電動変速を担うのはR8050系パーツ電動変速を担うのはR8050系パーツ ブレーキキャリパーとともにクランクやディレイラーも統一されたアイスグレーのカラーとなるブレーキキャリパーとともにクランクやディレイラーも統一されたアイスグレーのカラーとなる

ディスクローターもR8020系にて新登場したもので、上位モデルのSM-RT900と同じく内周部に冷却用のフィンを設けたデザインにより、シマノ独自のアイステクノロジーFREEZAをより強化したものとなる。ベンチレーションホールもサイズが若干大きくなっており、より高い放熱効果を追求したものとなっている。SM-RT900とは異なり全面がシルバーに変更されているのが特徴だ。

今回はこれらR8070系ULTEGRAを組み込んだサーヴェロのR3 Discにてコンポーネントの性能をテストした。それではインプレッションに移ろう。



― インプレッション

杉山:R9170系もそうでしたが、従来に比べ格段に小さくなったブラケットの形状が非常に良いですよね。一見油圧ブレーキのレバーとは思えないほどスマートなルックスに仕上がっています。手に収まりやすくなったサイズ感のおかげで、変速操作等手元のストレスも少なくなったと感じます。

「小型化したブラケットのおかげでストレスフリーな操作性を獲得した」辻本尚希(L-Breath Bike)「小型化したブラケットのおかげでストレスフリーな操作性を獲得した」辻本尚希(L-Breath Bike)
辻本:そうですね。従来モデルですとブラケットヘッドも大きく、握りたい場所を自分で探るようなイメージでした。今回ブラケットがサイズダウンしたことで握り込みやすくなったと同時に、手を添えた時に自然とフィットするような形状へアップデートされていると思います。ブラケットの大きい従来製品を使用している人は、よりその改良具合を体感できることでしょう。

杉山:リムブレーキモデルのDi2レバーが細すぎると感じる人もいる中で、それよりはやや大きめなサイズ感が逆にマッチする人もいると思います。レバー自体の形状もエルゴノミックで、どこから指を伸ばしても上手く操作しやすいように出来ていますね。ブラケットカバーに配されたパターンもグリップを高めてくれる印象で手への馴染みやすさがありますね。

「万人に扱いやすい自然なブレーキフィーリングを実現している」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)「万人に扱いやすい自然なブレーキフィーリングを実現している」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
辻本:ブラケットを細かく見ると、ハンドルと接している根本の部分がやや幅広になった油圧ブレーキ特有の形状のおかげで、手の小指球を乗せやすくなっているんです。そこを支点としてブラケットを握るようになるため手先が安定する印象ですね。選手目線で言えばフォームによって指先の握りを変えるので、そこの自由度があるのはレース機材としても十分なレベルに達していると思います。

杉山:ブレーキフィーリングもより自然なものになっていて、万人に扱いやすい操作感になっていますね。効き始めもリムブレーキと近い感覚があるため使っていけばすぐに慣れることと思います。もちろんディスクブレーキならではのレバーの軽い引き具合や高い制動力などのメリットは大きいですね。

「指先の収まりが良く、油圧ならではのレバーの軽い引きなどを十分に感じられる」「指先の収まりが良く、油圧ならではのレバーの軽い引きなどを十分に感じられる」 ディスクローターは綺麗に面取りされ危険性のない形状となるディスクローターは綺麗に面取りされ危険性のない形状となる

辻本:その点は私も同様に感じました。リムブレーキモデルのレバーに近いサイズ感を達成したことで、それと同じようなタッチが再現できるようになったのだと思います。ストレスフリーなブラケットへ進化したことでよりライドに集中できるようになりますね。

杉山:ディスクブレーキのレース解禁はまだ先になりそうですが、個人的にはもはや時間の問題かなと思います。それ以上にレバーが握りやすいサイズへ改良されたことで、油圧ディスクブレーキが手の小さな女性や小柄な人でも安心して使える機材となったのは大きいですね。メリットの大きいディスクブレーキを、今後はより幅広いライダーに使ってもらえるような時代が来たのだと感じました。

「握りやすいレバーサイズとなったことで、女性など手の小さな人にも使いやすいコンポーネントとなった」「握りやすいレバーサイズとなったことで、女性など手の小さな人にも使いやすいコンポーネントとなった」
シマノ ST-R8070
機 能:2×11s、ハイドローリックディスクブレーキ
ポート:2(リモートスイッチ・E-TUBEポート)
平均重量:ペア360g
価 格:左右セット(ホース・オイル付属) 52,318円(税抜)、各レバー 23,130円(税抜)

シマノ BR-R8070
機 能:ハイドローリック、対向2ピストン、フラットマウント
平均重量:前後セット280g
価 格:フロント 6,549円(税抜)、リア 6,323円(税抜)

シマノ SM-RT800
仕様:センターロック、アイステクノロジーFREEZA
平均重量:127g(160mm)、106g(140mm)
価 格:4,754円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

杉山友則(Bicicletta IL CUORE)杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。

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辻本尚希(L-Breath Bike)辻本尚希(L-Breath Bike) 辻本尚希(L-Breath Bike)

管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。

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バイク協力:サーヴェロ

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO