リドレーからバリューモデルとして展開されるミドルグレード完成車「FENIX C」をインプレッション。上位グレードと同様のフレーム形状やテクノロジーを受け継ぎつつ、カーボン素材等を変更することで、よりコストパフォーマンスを高めた1台となっている。



リドレー FENIX Cリドレー FENIX C (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
塗装業を起源とし1997年に創業したベルギーのバイクブランド、リドレー。設立から20年と比較的若いメーカーながら、2005年から10年以上にも渡り現ロット・ソウダルにバイクサポートを行っており、ワールドツアーのプロトンには欠かせないバイクブランドの1つにまで成長を遂げている。2017年からはブランド全体で「#Be TOUGH(タフになれ)」のスローガンを掲げ、世界中のリドレーライダーの繋がりを深めるムーブメントも見せている。

「BUILT FOR GLORY」をモットーに製造開発を行うリドレーは、デザイン・設計をベルギー本国にて行い、かつ各種の耐久性テストを重ね最終的にプロライダーによるライディングテストを経て製品化に至る。加えてプロ選手からのフィードバックやベルギーの特徴的なパヴェ(石畳)での走行テスト、本社敷地内に設置されたウインドトンネルによる風洞テストなどを繰り返すことで、走りの性能や安全性を徹底的に追求している。

「HELIUM」のテクノロジーを応用した極細のシートステーが振動吸収性を高める「HELIUM」のテクノロジーを応用した極細のシートステーが振動吸収性を高める シートチューブはオーソドックスな丸型シートチューブはオーソドックスな丸型 緩くベンドしたフォークが直進安定性や路面追従性を高める緩くベンドしたフォークが直進安定性や路面追従性を高める

そんな同社がラインアップするロードバイク3本柱の内の一つ「FENIX(フェニックス)」は、パリ~ルーベ等のハードな路面状況を有したクラシックレースでの勝利を目指して開発されたエンデュランスモデル。悪路による衝撃からライダーを守る高い振動吸収性と、レースで勝つための高い走行性能を両立させたフレームで、ロット・ソウダルのプロ選手たちも使用するモデルである。

弾性率の異なる5種類のカーボンを使い分けるリドレーだが、その中でも60/50/40tonのハイモジュラスカーボンを採用したトップモデル「FENIX SLX」、30/24tonのカーボンを採用したセカンドモデル「FENIX SL」と展開され、最もミドルグレードとなる24tonカーボンをメインで使用した末弟モデルが今回インプレッションを行った「FENIX C」となる。

美しい曲線を描くFENIXに特有のトップチューブ美しい曲線を描くFENIXに特有のトップチューブ トップチューブには#Be TOUGHのスローガンが入るトップチューブには#Be TOUGHのスローガンが入る
左右非対称のチェーンステーがパワー伝達性を高める左右非対称のチェーンステーがパワー伝達性を高める パヴェでテストした証であるフランドル印のステッカーが貼られるパヴェでテストした証であるフランドル印のステッカーが貼られる

カーボングレードを落としつつも、上位モデルと同じフレーム形状やテクノロジーを盛り込むことでその性能を引き継ぎ、優れたコストパフォーマンスを実現したのが同バイクの特徴。加えてフレームセット販売が基本のリドレーラインアップの中で、唯一完成車にて販売されるモデルとなる。

エンデュランスバイクとしての快適性を確保するため、弓なりに湾曲させたトップチューブや軽量モデル「HELIUM」シリーズのテクノロジーを応用した極細のシートステー、適度なしなりを生み出す27.2mm径のシートポストなどを採用し振動吸収性を向上させている。加えて最大28mm幅まで対応したタイヤクリアランスを備え、ワイドタイヤによる乗り心地の良さもプラスする設計となっているのも特長だ。

ダウンチューブにはリドレー独自のダイヤモンドシェープを採用しねじれ剛性を高めるダウンチューブにはリドレー独自のダイヤモンドシェープを採用しねじれ剛性を高める グレーのグラデーションとレッドが特徴的なロット・ソウダルカラーグレーのグラデーションとレッドが特徴的なロット・ソウダルカラー

ダウンチューブにはリドレー特有のエッジチュービングを用いた複雑な角断面を持つダイヤモンドシェープを採用し、優れたねじれ剛性や耐久性を獲得。加えてシェル幅が広いプレスフィットBB86や、リドレー伝統の上側1-1/8、下側1-1/2のテーパードヘッドチューブ、左右非対称のボリュームあるチェーンステーが各所に最適な剛性を生み出すことで、高い推進力や安定性、ハンドリング性能を実現している。

また緩くベンドさせたフロントフォークや、他モデルと比較しホイールベースを5mmほど伸ばしたジオメトリーを採用することで直進安定性や快適性のアップを狙っている。フォーククラウン部はヘッドチューブと統合したインテグレートな造形とすることで、エアロ性能にも配慮した結果が窺えるというものだ。

ヘッドチューブ長は他モデルと変わらない設計。サイドからワイヤーが内装されるヘッドチューブ長は他モデルと変わらない設計。サイドからワイヤーが内装される シェル幅の広いプレスフィットBB86を採用するシェル幅の広いプレスフィットBB86を採用する 左右のシートステーは上部で一体化する形状左右のシートステーは上部で一体化する形状

上位モデルと同じくワイヤー類はインターナル仕様で、フロントディレイラーは直付けとなる。ロット・ソウダルとアクアブルースポーツの2チームのレプリカカラーがラインアップし、ミドルグレードながら高級感溢れるルックスに仕上がるのは大きなポイントだろう。

シマノ105をフルアッセンブルしたパッケージにて販売され、各種パーツは4ZA製品、ホイールはシマノのWH-RS010が合わせられる。今回は販売パッケージと同じ完成車仕様にてテストした。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「優れた振動吸収性とトラクション性能による安定感のある走り」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

個人的にリドレーのバイクの中ではNOAHやHELIUMよりもFENIXシリーズが一番好きで、程よい踏み味や加速感、何より安定感のある走りが特長的ですね。このFENIX Cは上位モデルからカーボングレードが変更されているものの、フレーム形状は同じということもあり同シリーズの走りが色濃く継承されていると感じました。

ミドルグレードのバイクではありますが、ライダーの踏力に対してたわみも反発もなく、パワーをスッと流して推進力にそのまま伝えてくれるような踏み味を有しています。言うなればソフトダイレクトと言ったところでしょうか。レーシングバイクほどハードな踏み味ではないけれども、進んでいくダイレクト感を十分に残しています。ですので脚には優しい印象を受けますね。

「優れた振動吸収性とトラクション性能による安定感のある走り」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)「優れた振動吸収性とトラクション性能による安定感のある走り」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
その上でこのバイクは振動の抑え方が上手いと感じました。フレームのどこか一箇所が振動吸収の役割を担っているのではなく、クロモリバイクのようにフレーム全体がしなりながら振動を減らしてくれる感覚に似ていますね。だからといってクロモリのバネ感のある進み方ではなく、カーボンバイクらしい反応の良さを持ち合わせています。

高い振動吸収性能が悪路での路面追従にも繋がっており、トラクションの掛かりやすさは印象的でした。バイクコントロールに慣れていない初心者の方にとっても大きくメリットになることでしょう。例えば河川敷を走っていて不意にグラベルが現れても、焦ること無く対処出来ると思います。

パーツを交換するとしたら、タイヤのグレードを上げればより滑らかな走り心地を体感できるでしょう。ホイールに関してはリムハイトの高いものより、ミドルからローハイトのホイールがマッチすると思います。またレーシーに走りたい人はクランクをアルテグラグレード以上にすることで剛性を強化するのがオススメです。

上位グレードのFENIX SLと比べると反応が少し遅い感じはありますが、比較しなければ気にならないほどで、特に不満になることはありません。イーブンペースでの巡航に長けているバイクだと思いますので、ロングライドやグランフォンドなどのイベントで長時間のサイクリングを楽しめる良い相棒となりそうです。自転車大国ベルギーに育ったリドレーのバイク造りの上手さを感じる1台です。

「見た目に反した高い剛性、ダイレクト感のある踏み味が特長」辻本尚希(L-Breath Bike)

一見して湾曲したトップチューブと非常に細いシートステーでエンデュランスロードだなと分かるルックスですが、実際に乗ってみると意外にも剛性が高いのが特長です。特にダンシング時のカッチリとした剛性感は印象的で、車体を倒した時にたわむ感じがなくしっかりとパワーを受け止めてくれます。それでいて振動吸収性も両立されているため全体的な性能の高さを感じますね。

「見た目に反した高い剛性、ダイレクト感のある踏み味が特長」辻本尚希(L-Breath Bike)「見た目に反した高い剛性、ダイレクト感のある踏み味が特長」辻本尚希(L-Breath Bike) 特徴的な細身のシートステーにより後輪の路面追従性も高く振動吸収性も申し分ないです。それでいてパワーをかけた踏み込みをしても、しっかりと受け止めてくれる剛性の高さを持ち合わせています。エンデュランスモデルにしてはBB下がりも大きくありませんし、トルクをかけた時のウィップ感もそこまで感じませんでした。エンデューロレースのような長い時間走るのが得意でありながら、しっかり反応してくれるレーシーな性格だと感じましたね。

ヘッド周りの剛性が高いため横に力が逃げる感覚が無く、ダンシング時のバイクの振りやすさに繋がっています。ダウンチューブの独特な形状も影響しているかもしれませんね。高い剛性から来るダイレクトな操作感がよりレーシーさを際立たせているのでしょう。だからといってフロント部分の突き上げも少なく、上半身への疲労も抑えられる印象を受けました。

ペダリングに関しては、骨盤を立てて腰から踏んでいくようなスタイルの方に最適なフレームだと思います。ギアを軽くしてケイデンスを高めに回していくバイクではないと感じました。

また意外だったのは高速域で風切音がしないことですね。エアロバイクと言う触れ込みではないですが、風への対応力が高いように感じました。一般的なカーボンロードに比べフレームの各所が立体的で綺麗に処理されているのが理由かもしれません。無駄な突起が少ないため余計な空気抵抗が発生しないのでしょう。見た目の美しさにも繋がっていますね。

エンデュランス性能に振り切ったバイクではないので、ロードバイクらしい走り心地を体感することができます。それこそ初めての1台としてスポークバイクらしい軽快感を楽しみつつ、ロングライド等のイベントにも出てみたいという人には最適な選択肢になるのではないでしょうか。ミドルグレードながら、価格以上の性能を有したモデルに仕上がっていますね。

リドレー FENIX Cリドレー FENIX C (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
リドレー FENIX C
フレーム素材:24tonHMカーボン
コンポーネント:シマノ105
ホイール:シマノWH-RS010
タイヤ:ヴィットリアZaffiro 700x25C
カラー:JP18-03As(ロット・ソウダル)、JP18-04As(アクアブルースポーツ)
サイズ:XXS、XS、S、M
価 格:260,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

杉山友則(Bicicletta IL CUORE)杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。

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Bicicletta IL CUORE ショップHP

辻本尚希(L-Breath Bike)辻本尚希(L-Breath Bike) 辻本尚希(L-Breath Bike)

管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。

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L-Breath BIKE 御茶ノ水店 ショップHP

ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:ベルスミス

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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