エイ出版社からツール・ド・フランスに関係の文庫本3冊が3月10日に同時発売される。表紙に巻かれるオビが、それぞれ黄色、水玉、緑色というのもツールのリーダージャージにちなんでのものだ。それぞれを山口和幸(ジャーナリスト)が紹介する。

「ツール・ド・フランス 黄金時代」
北中康文


「ツール・ド・フランス 黄金時代」 著:北中康文「ツール・ド・フランス 黄金時代」 著:北中康文

現在はネイチャーカメラマンとして、「日本の滝」を撮らせたらナンバーワンの北中康文カメラマンが、86年から91年までの6年間にツール・ド・フランスを追いかけた時代を一冊にまとめたもの。

ツール・ド・フランスを取材してもう20年になるボクにとって、この世界に没頭するきっかけとなる「衝動」を与えてくれた先輩だ。

 北中さんがまだかけ出しだった89年、ツール・ド・フランスで一緒になった。ボクにとっては初のツール取材で、しかもレース大詰めのアルプスからの途中入り。これに対する北中さんはその年も開幕からのフル参戦だった。

 最終日のパリ・シャンゼリゼでグレッグ・レモンが8秒差の逆転劇を演じた年で、興奮冷めやらぬパリのその夜は夕食をご一緒させてもらった。ビールかワインを飲みながら楽しい会話をしているうちに、仕事をやり遂げて気が緩んだのか北中さんが気絶してしまった。

 そのときボクは、「ツール・ド・フランスの全日程を追うのって、こんなに激しいことなんだ!」と、とてつもない衝撃を受けた。真夏のフランスでホコリまみれになりながらも、選手とともにパリを目指す。そうじゃなければ感じられないなにかがある。20年を経過した今でもそれはボクのポリシーだ。

 完成した文庫をパラパラとめくると、思い出深いシーンがいっぱいある。90年にオービスク峠の絶壁を選手たちが集団となって走るあのワンカットも収録されている。


「ツール・ド・フランスを見に行きたい!」
たなかそのこ


「ツール・ド・フランスを見に行きたい!」 著:たなかそのこ「ツール・ド・フランスを見に行きたい!」 著:たなかそのこ

雑誌編集部員をやめてツール・ド・フランスの追っかけに。こうやって道を誤っていくという典型の女子です。独特の感性で写真もきちんと撮っています。現地で何回か泣いているのを目撃しましたが、みて見ぬふりしておきました。それでもしっかりまとめて立派な本に。今後の活躍に期待。


「7月のフランス 自転車とともに」
岡田由佳子


「7月のフランス 自転車とともに」 著:岡田由佳子「7月のフランス 自転車とともに」 著:岡田由佳子

不肖私の弟子の処女作です。ツール・ド・フランスとともに旅した7月。訪れた地方都市の文化や風土、おいしい料理や魅力的な人々を、架空の登場人物をからませながら紹介。ツール・ド・フランスをはぐくんだフランスの大自然と社会をイラストや写真をおりまぜながら、エッセイ形式でつづっています。随所に実妹・由珠子のかわいいイラスト掲載。


3冊とも本体880円+税。



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