インカレ最終日のロードレースは武山晃輔(日本大)が冨尾大地(鹿屋体育大)を下して優勝、女子は梶原悠未(筑波大)が3人の勝負を制した。大学対抗総合は日本大学が4年ぶりの復活完全優勝を達成した。



インカレ4日目最終日のロードレースが9月3日(日)、長野県大町市美麻の公道コース12.6kmを女子は5周63.0km、男子は14周176.4kmで行われた。コースは2か所の上りがある起伏に富むものだが、上りは長くないためクライマーよりはパンチャー向けのコースだ。過去にはトラック中距離選手が制したり上位入賞している。現地は朝から4日連続の好天に恵まれたが気温は13度から男子の序盤は15度ほどと肌寒く、昼頃の男子中盤にようやく暖かさが戻った天候だ。

梶原悠未(筑波大)が3人の上りスプリントを制する

女子 梶原悠未(筑波大)が優勝女子 梶原悠未(筑波大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
女子は肌寒い朝7時45分のスタート。1周目の上り区間から上りに強い昨年のチャンピオン福田咲絵(慶應義塾大)がペースを上げて集団は小さくなる。1周目を終える頃にはすでに先頭は4人のみに。メンバーは福田、梶原悠未(筑波大)、中井彩子(鹿屋体育大)、谷伊央里(日本体育大)だ。その後も平坦区間はローテーションするが上り区間はすべて福田が先頭でペースを作る。

3周目には谷が離れて先頭は3人に。4周目に入っても平坦はローテーションするが上りは福田が先頭固定。福田をぴったりマークするのは梶原。その脚質から上り1本だけの勝負に絞る。中井は上りで横に並ぶ動きを見せ、3人それぞれの思惑でフィニッシュ地点まで500mの上り勝負へ。ラスト200mで抜け出したのは梶原で、それに中井が続く。梶原は上りスプリントを制し、トラック2種目と合わせて大会3冠を達成した。

女子 30人が出走女子 30人が出走 photo:Hideaki TAKAGI女子 1周目上りから福田咲絵(慶應義塾大)がペースを上げる女子 1周目上りから福田咲絵(慶應義塾大)がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI
女子 3周目上りで福田咲絵(慶應義塾大)がペースを上げて3人に女子 3周目上りで福田咲絵(慶應義塾大)がペースを上げて3人に photo:Hideaki TAKAGI女子 ラスト1km、3人で上り勝負へ向かう女子 ラスト1km、3人で上り勝負へ向かう photo:Hideaki TAKAGI

「スプリント勝負に持ち込むことを考えていた」優勝の梶原悠未(筑波大)

ロードは地脚のある選手が多く自分では集中して挑んだ種目でした。このコースは坂があるのですが途中休める区間もあって自分でも行けるのではと試走の段階でつかんでいました。福田さんと1対1ならば抜け出すことも考えましたが、トラックで調子を上げている中井さんもいたので最後まで足をためて、自信のあるスプリント勝負に持ち込むことができました。

武山晃輔(日本大)が冨尾大地(鹿屋体育大)に競り勝って総合優勝に華を添える

男子は14周176.4kmのレース。各大学のエース格選手が横並びの中、11周目に抜け出したメンバーによる勝負となり武山晃輔(日本大)が優勝。エース格を複数人数揃えていた日本大は1位3位6位でロード部門でも総合優勝し、トラックと合わせた大学対抗総合で4年ぶり、しかも完全と言っていいほどの内容で優勝した。

男子 武山晃輔(日本大)が学生個人ロードに続きインカレロードも制する男子 武山晃輔(日本大)が学生個人ロードに続きインカレロードも制する photo:Hideaki TAKAGI
1周目から石井駿平(鹿屋体育大)らが逃げる

男子は午前10時スタート。最初の上り区間から正式スタートが切られ、まずはアジアチャンピオンの岡本隼(日本大)が速いペースを作る。1周目2つめの上り5人が、2周目には2人が合流し結果として5人の逃げができる。メンバーは石井駿平(鹿屋体育大)、直井駿太(中央大)、吉岡衛(京都産業大)、高橋優斗(中央大)、小嶋健太(日本大)だ。有力校がおおむね乗せたためメイン集団はペースダウン。最大6分にまでその差は広がる。

5周目に先頭は石井、直井、吉岡の3人になるがメイン集団はまだ5分ほどの差が付く。このペースの遅さにメイン集団からは数人が抜け出すが吸収される。動きが出たのは11周目。先頭3人を追ってメイン集団から5人が抜け出す。武山、樋口峻明(京都産業大)、須貝翔吾(法政大)、當原隼人(日本体育大)、北野龍人(立命館大)がメンバー。この時点で先頭3人から追走5人まで2分20秒、さらにメイン集団まで3分10秒だ。

男子 2周目には7人の逃げができる男子 2周目には7人の逃げができる photo:Hideaki TAKAGI男子 3周目、メイン集団はタイム差をコントロール男子 3周目、メイン集団はタイム差をコントロール photo:Hideaki TAKAGI
男子 11周目、2周目から逃げている3人が逃げ続ける男子 11周目、2周目から逃げている3人が逃げ続ける photo:Hideaki TAKAGI男子 11周目、樋口峻明(京都産業大)、武山晃輔(日本大)を含む5人がメイン集団から抜け出す男子 11周目、樋口峻明(京都産業大)、武山晃輔(日本大)を含む5人がメイン集団から抜け出す photo:Hideaki TAKAGI

13周目に先頭は武山晃輔と冨尾大地の2人に

続く12周目でも動きが出る。先頭3人のうちの吉岡が落車してリタイアし2人に。吉岡はその後に鎖骨骨折が判明する。追走5人も武山と樋口の2人になり、いっぽうでメイン集団から冨尾大地(鹿屋体育大)が単独アタックしてこの2人に追いつく。武山、冨尾、樋口の追走3人が勝負を決める集団になる。いっぽうでいまだ3分近いタイム差のメイン集団では山本大喜(鹿屋体育大)、岡本、野本空(明治大)ら各校のエース格の選手たちが攻撃とけん制を繰り返し横並びになる。

1周目から160kmを逃げ続けていた石井が13周目に追走3人に抜かれる。先頭は冨尾がペースを上げ樋口が離れ、冨尾と武山の一騎打ちに。一度だけ上りで冨尾が仕掛けるが武山は反応し、それ以降はラスト1kmまで2人は協調体制を取る。最終周回の14周目に入って先頭2人は協調してフィニッシュ地点手前の500mの上り勝負へ。ここで抜け出したのは武山。コース沿いの部員やOBの声援を受けて先頭フィニッシュ。3秒差で冨尾が続き、そして20秒差で粘っていた樋口を直前で抜いた草場啓吾(日本大)がメイン集団トップの22秒差3位でフィニッシュした。

男子 11周目、2周目から先頭を走り続ける石井駿平(鹿屋体育大)男子 11周目、2周目から先頭を走り続ける石井駿平(鹿屋体育大) photo:Hideaki TAKAGI男子 13周目、2分以上差のあるメイン集団ではエース格の選手たちが見合ってしまう男子 13周目、2分以上差のあるメイン集団ではエース格の選手たちが見合ってしまう photo:Hideaki TAKAGI
男子 13周目、冨尾大地(鹿屋体育大)と武山晃輔(日本大)の2人が先頭に立つ男子 13周目、冨尾大地(鹿屋体育大)と武山晃輔(日本大)の2人が先頭に立つ photo:Hideaki TAKAGI男子 ラスト600m、武山晃輔(日本大)と冨尾大地(鹿屋体育大)が横並びで上りスプリント勝負へ男子 ラスト600m、武山晃輔(日本大)と冨尾大地(鹿屋体育大)が横並びで上りスプリント勝負へ photo:Hideaki TAKAGI

勝負のポイントは牽制するメイン集団からいかに抜け出すかだった。その中でエース格を複数そろえる日本大が、複数の追走に乗る2年の武山に勝負を託すことができた。いっぽうの冨尾は単独で追走したため脚を使っていた。樋口は武山とともに抜け出せたが、先頭を走っていた吉岡が落車したことも響いた。日本大、鹿屋体育大そして京都産業大の実質3校が終盤で優勝を争うレースとなった。

「正直2位を覚悟していた」優勝の武山晃輔(日本大)

運が良かったと思っています。タイム差が縮まらなかったので自分がまず飛び出してそれで数人の追走になりました。冨尾さんが単独で追いついてきて踏めるのは冨尾さんだけだったので自分と2人でペースを上げ、ラストの劇坂勝負でした。自分はきつくて冨尾さんの脚が残っていると思い正直2位を覚悟していました。トラック班の成績が良かったのでロード班も草場先輩と岡本先輩と3人のエースということで走りました。先輩に勝ってほしかったのですけれど日大が1位で嬉しいです。

日本大学が復活の総合優勝

注目の大学対抗総合成績は、ロードでも大量得点した日本大学が4年ぶりに優勝した。トラックでは出場選手全員が入賞、ロードも1、3、6位と圧倒しオールラウンドに戦えるチームとなった。今回の大会では得点を稼ぐ戦い方でなく、各種目で優勝を狙う走りが光った。8位以内の入賞を最低目標とするのと優勝を狙う走りは根本的に違う。各種目で強さを発揮したうえでの大量得点であり、しかも主力は2年生3年生だ。来年以降もこの勢いが続くだろう。

男子 ロード勢も完全優勝で総合優勝を決めた日本大男子 ロード勢も完全優勝で総合優勝を決めた日本大 photo:Hideaki TAKAGI日本大学が男子大学対抗総合で4年ぶりの復活完全優勝日本大学が男子大学対抗総合で4年ぶりの復活完全優勝 photo:Hideaki TAKAGI

結果 

女子 63.0km
1位 梶原悠未(筑波大)1時間40分35秒
2位 中井彩子(鹿屋体育大)+07秒
3位 福田咲絵(慶應義塾大)+16秒
4位 谷伊央里(日本体育大)+2分17秒
5位 橋本優弥(鹿屋体育大)+5分20秒
6位 菅原朱音(八戸学院大)+5分57秒
7位 伊藤真生(日本体育大)+6分04秒
8位 古山稀絵(日本体育大)+6分21秒
9位 小泉夢菜(早稲田大)+6分24秒
以上完走者9名

男子 176.4km
1位 武山晃輔(日本大)4時間34分33秒
2位 冨尾大地(鹿屋体育大)+03秒
3位 草場啓吾(日本大)+22秒
4位 樋口峻明(京都産業大)+28秒
5位 中川拳(早稲田大)+39秒
6位 岡本隼(日本大)+55秒
7位 岡部祐太(日本体育大)+59秒
8位 中井唯晶(京都産業大)+1分03秒
9位 黒枝咲哉(鹿屋体育大)+1分05秒
10位 今田崇史(東北学院大)

女子ロード総合成績
1位 鹿屋体育大 12点
2位 筑波大 10点
3位 日本体育大 7点

男子ロード総合成績
1位 日本大 31点
2位 鹿屋体育大 18点
3位 京都産業大14点

女子総合成績
1位 日本体育大 49点
2位 鹿屋体育大 38点
3位 筑波大 27点
4位 八戸学院大 23点
5位 順天堂大 8点
6位 早稲田大 6点

男子総合成績
1位 日本大 113点
2位 中央大 55点
3位 鹿屋体育大 53点
4位 朝日大 50点
5位 法政大 42点
6位 明治大 40点
7位 京都産業大30点
8位 日本体育大 25点

女子個人ロードレース表彰女子個人ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI男子個人ロードレース表彰男子個人ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI
大学対抗女子総合表彰大学対抗女子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI大学対抗男子総合表彰大学対抗男子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI
4年間ともに戦ってきた選手たち 各校の4年生が集合4年間ともに戦ってきた選手たち 各校の4年生が集合 photo:Hideaki TAKAGI

photo&text:高木秀彰

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