フィニッシュまで36kmを残した2級山岳(最大勾配22%)でのアルベルト・コンタドールのアタックによって総合争いに火がついたブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージ。逃げトリオのスプリントでトーマス・マルチンスキーが自身初のステージ優勝を掴んだ。


バレンシア州の内陸部を走るプロトンバレンシア州の内陸部を走るプロトン photo:Tim de Waele / TDWsport
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージ image:Unipublic

地中海に沿ってブエルタは南下を継続。中級山岳ステージにカテゴライズされた第6ステージには合計5つのカテゴリー山岳が設定されており、4つの3級山岳を越えた先に2級山岳ガルビ峠(長さ9.3%/平均5.1%)をクリアする。最大勾配が22%にも達するこの最後のハードルを越えると、後は地中海沿いのサグントまで36kmの下り&平坦路。1日の獲得標高差2,600mの逃げ切り向きのステージだが、トレック・セガフレードの攻撃によって単純な逃げ切りデーにはならなかった。

204.4kmのステージは1時間にわたるアタック合戦の末に37名が逃げ集団を形成する展開に。この中には前日のステージ優勝者アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)やマイヨモンターニャを着るダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)、マイヨプントスを着るマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)の姿も。総合で3分24秒しか遅れていないルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)も逃げに乗ったため、チームスカイ率いるメイン集団はタイム差を3分前後に押さえ込んだ。

人数を減らしながら進む逃げ集団の中では、前半の3級山岳でヴィレッラが8ポイントを量産する。この日3つめの3級山岳を越えたところで逃げ集団の中からボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)とマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)の2名がアタックして1分先行。しかしユンゲルスとモンフォールは残り65km地点で逃げ集団に引き戻された。

山火事によって黒く焦げた山岳地帯を走る山火事によって黒く焦げた山岳地帯を走る photo:Tim de Waele / TDWsport
サンチェスが逃げに乗ったためチームスカイがペースを緩めず追走サンチェスが逃げに乗ったためチームスカイがペースを緩めず追走 photo:Tim de Waele / TDWsport
逃げグループを牽引するトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)逃げグループを牽引するトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) photo:Tim de Waele / TDWsport
2級山岳ガルビ峠を先頭で登るエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)2級山岳ガルビ峠を先頭で登るエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) photo:Tim de Waele / TDWsport
そして迎えた最後の2級山岳ガルビ峠でレースは動く。ロット・ソウダルとクイックステップフロアーズはステージ優勝に向けて引き続き積極的に動き、今度はエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)とトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)が逃げ集団から飛び出す。ここにパウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が追いつき、下り区間でサンチェスとアントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)も追いついた。

2分後方のメイン集団ではトレック・セガフレードの攻撃が始まる。急勾配区間を前にピーター・ステティーナ(アメリカ、トレック・セガフレード)がペースを上げ、そこからアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が一気にアタック。総合挽回のために動いたコンタドールに反応できたのはマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)とティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)、カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)、ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)だけだった。

序盤から逃げに乗っていたヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)のアシストを得てコンタドールはハイスピード登坂を継続。急勾配区間を力強いダンシングでクリアしたコンタドールはエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を含む追走集団を引き離すとともに逃げ集団の1分後方に迫った。

精鋭グループ内で2級山岳ガルビ峠をクリアしたヴァンガーデレンは下り区間で落車して脱落。コンタドールが積極的に牽引する精鋭グループはチャベスやニーバリを含む追走集団から20秒のリードを奪ったものの、完全には引き離せずに下り区間で集団は一つに戻る。こうして、総合2位ヴァンガーデレンや総合5位ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)を欠いた約20名のメイン集団が再編成された。

先頭グループを形成するトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)、パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)先頭グループを形成するトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)、パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) photo:Tim de Waele / TDWsport
最大勾配22%の2級山岳ガルビ峠でアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)最大勾配22%の2級山岳ガルビ峠でアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele / TDWsport
パンタノにアシストされてライバルを引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)パンタノにアシストされてライバルを引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele / TDWsport
後方を確認するマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)後方を確認するマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele / TDWsport
逃げグループとメイン集団のタイム差は残り20km地点で10秒以下に縮まったものの、諦めないマス、マルチンスキー、ポリャンスキーの3名が逃げを継続。メイン集団のペースが落ち着いたため逃げ3名のリードは逆に広がりを見せ、そのままサグントの街まで逃げ切った。

牽制を経て始まったスペイン人1名vsポーランド人2名によるスプリント。残り100mで最初に仕掛けたマスはライバルたちを引き離せず、スリップストリームから脱したマルチンスキーがポリャンスキーを押さえて勝利した。メイン集団は26秒差でフィニッシュラインを切り、デラクルスを含む追走集団は43秒遅れ。残り3km地点のラウンドアバウトで再び落車したヴァンガーデレンは46秒遅れでフィニッシュに辿り着いている。

「とてもクレイジーなステージだった」と振り返るのはステージ優勝を飾ったマルチンスキー。過去に3回ポーランドのナショナルチャンピオンに輝いている33歳は「目標とするステージ優勝にこんな早く手が届くとは。序盤から大きな逃げ集団が形成され、登りで人数を減らしていく展開で、最後は3名に絞られた。仮にフィニッシュで力が残ってなくてもいいから、絶対にライバルのアタックを封じ込めようと思っていた。逃げのチャンスを最大限生かせたと思う。完璧だった」と、自身初のグランツール勝利を喜んだ。

コンタドールが総合26位から23位に順位を上げた一方で、ヴァンガーデレンは総合2位から4位に、デラクルスは総合5位から6位に順位を下げている。マイヨロホを守ったフルームは「サンチェスが逃げに乗っていたのでチームスカイはスピードを緩めるわけにはいかず、終盤はアタックが頻発。ここまでで最も厳しいステージだった。エネルギーを使う本当にタフなステージだったけど、チームスカイにとっては良い1日だったと思う。今日はコンタドールがインプレッシブだった。この先も彼はアタックを止めないと確信している」とコメント。コンタドールのアタックの際にはチームメイトから孤立したが、危なげなくライバルたちの攻撃を防ぎきった。

3名によるスプリントで勝利したトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)3名によるスプリントで勝利したトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele / TDWsport
ライバルたちから17秒失ったダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)ライバルたちから17秒失ったダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) photo:Tim de Waele / TDWsport
ステージ優勝を飾ったトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)ステージ優勝を飾ったトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele / TDWsportマイヨロホを守ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨロホを守ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele / TDWsport
ステージ成績
1位 トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) 4:47:02
2位 パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 0:00:08
5位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
6位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) 0:00:26
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
8位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、オリカ・スコット)
12位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)
13位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
15位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)
17位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
18位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
21位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
22位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
25位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 0:00:43
28位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
44位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) 0:00:46
59位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:06:52
DNF ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)
DNF ニコラス・ドゥーガル(南アフリカ、ディメンションデータ)
敢闘賞 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 22:54:38
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) 0:00:11
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング) 0:00:13
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) 0:00:30
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:36
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 0:00:40
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 0:00:49
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 0:00:50
9位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) 0:01:13
10位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 0:01:26
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 49pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 31pts
3位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 29pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 38pts
2位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 12pts
3位  ルイス・マス(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) 11pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 12pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 28pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング) 38pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 68:11:35
2位 オリカ・スコット 0:01:59
3位 UAEチームエミレーツ 0:02:56