FP3 Carbonはピナレロが誇るフルカーボンのミドルグレードモデルだ。使用するカーボン素材は30HM12K。適度な剛性感と振動吸収性の高さとのバランスが素晴らしく、中級者だけでなく、上級者をも満足させる仕上がりとなっている。

ピナレロ FP3 Carbonピナレロ FP3 Carbon (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
上位機種のプリンスカーボンで培われたスタイリングやテクノロジーを受け継ぎ、新開発されたモールド(金型)で生産されるフルカーボンがFP3だ。ピナレロの厚いラインナップの中ではミドルクラスに属するものの、その内容はもはやミドルグレードを大きく越えていると言っても過言ではないだろう。

使用素材は30HM12Kカーボン。ピナレロファンならご承知の通り、30tグレードのHM(ハイモジュラス)カーボンを使用し、最外層に織り目の大きい12Kカーボンを使用しているという意味だ。使用素材を明確にしないメーカーが多い中、ハッキリと使用素材を公表しているピナレロの姿勢は、大いに評価すべき部分である。

特徴的な形状を見せるヘッドチューブ特徴的な形状を見せるヘッドチューブ ブレーキワイヤーは内蔵されるブレーキワイヤーは内蔵される

トップチューブ前方に、FP3のロゴや使用するカーボンのグレード名などが入るトップチューブ前方に、FP3のロゴや使用するカーボンのグレード名などが入る チェーンステーは左右非対称だチェーンステーは左右非対称だ


設計はまさにプリンス譲りだ。ヘッドチューブの上側は1-1/8”、下側は1-1/4”という上下異径ヘッドチューブを採用しており、ヘッド周りの剛性感の高さは折り紙付き。リアブレーキケーブルの内蔵処理や左右非対称チェーンステーなど、プリンスに搭載されているテクノロジーが惜しげもなく投入されている。

フォークやバックには、ピナレロご自慢のオンダが奢られる。もはやピナレロの標準装備となったオンダフォーク&バックだが、そのオンザレールの操作感は、発表から数年を経た現在でも第一級の性能だ。

ダウンチューブに入るFP3のロゴダウンチューブに入るFP3のロゴ ボリューム感のあるBBまわりボリューム感のあるBBまわり


ヘッドやBB周辺はしっかりと剛性を確保しながらも、30HM12Kカーボンが不快な振動を抑え、身体に負担を掛けない快適さをもたらす設計となっている。やたら剛性感だけを全面に押し出すのではなく、乗った時の快適性をも重視するピナレロの設計思想は、特にグランフォンドなどのロングライド派に絶大な支持を集めている。

FP3は完成車という形態でのみ販売される。好みや予算に応じて選べるよう「シマノ・6700アルテグラ仕様」と「カンパニョーロ・アテナ11S仕様」が用意される。今回インプレしたのは、アテナ仕様の方だ。

ピナレロご自慢のオンダフォークピナレロご自慢のオンダフォーク 流麗なラインをみせるシートステー上部流麗なラインをみせるシートステー上部 ピナレロご自慢のオンダシートステーピナレロご自慢のオンダシートステー



さて、さっそく西谷雅史と三上和志のインプレッションをお届けしよう!






― インプレッション


「ロングライドにオススメの乗り味」 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)


「ロングライドにオススメの乗り味」西谷雅史「ロングライドにオススメの乗り味」西谷雅史 トータル性能に優れたバイクだ。ハンドリング特性やブレーキング性能、コーナリング性能、加速感など、どれも突出して凄いということはないのだが、全体に高次元でバランスされており、とても良くまとまっているのだ。これは色々なシチュエーションで走るロードバイクにとって、とても重要なことであると思う。

踏み出しの軽快感は、下位グレードのFP2と比べるとずっと良い。低速から中速への伸び、中速から高速への伸びもそつなくこなしてくれる。よっぽどパワーのあるライダーでない限り、剛性不足を感じることはないだろう。

ハンドリングは直進安定性重視の味付け。初心者が手放しをして乗っても、何ら不安感を感じないくらいの直進安定性の高さだ。エントリーライダーや中級ライダーがグランフォンドなどのロングライドで使うことを想定したバイクであるから、これは大正解の味付けだと思う。

反面、タイトなコーナーはやや不得意か? しかし、バイク全体のバランスが良いので、カラダ全体でコントロールできるようになれば、不安感を感じることはないだろう。

ショック吸収性もまずまずだ。30tグレードのカーボンを使用しているから、結構たくましい剛性感を見せるのだが、オンダフォークとバックが効率的にショック吸収してくれるので、不快感はまったくない。

ピナレロの完成車全体に言えることなのだが、MOstのハンドルバーのリーチが大きすぎる傾向がある。大柄なライダーには良いと思うが、小柄なライダーの場合にはポジションが出しにくく、ハンドルバーの交換をしなければいけない場合がある。

使用用途としては、やはりピナレロが推奨する通り、グランフォンドのようなロングライドが良いだろう。適度な剛性感と振動吸収性の高さで、どこまでも快適に走っていけるはずだ。

フルカーボンのミドルレンジモデルとして、FP3はとても良くまとまっている。カラーリングの美しさなど、さすがピナレロといった感じだ。ピナレロ好きの中級ライダーにとって、このバイクはかなり魅力溢れるバイクであるだろう。



「トータル性能が抜群に良い」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)


「トータル性能が抜群に良い」三上和志「トータル性能が抜群に良い」三上和志 下位グレードのPF2もトータル性能に優れたバイクだったが、このFP3はFP2にも増して良くまとまったバイクだ。FP2をより軽く、より軽快に走るバイクに仕上げたという感じだろうか? 伊達にカーボンのグレードを上げているわけではないのだ。この辺の設計の上手さはさすがピナレロだと思う。

ハンドリングは直進安定性の高さが際だつ。しかし、オンダフォークのおかげでナチュラルなハンドリング特性を持っているので、慣れてしまえばクイックなコーナーでも緊張感を強いられるようなことはないだろう。

剛性感は適度な感じだ。少なくとも、自分のパワーレベルにはとても良く合っている。振動吸収性も良いが、「柔らかい」というほどの乗り味ではない。中級モデルとしては、剛性感は高めであると言えるだろう。実にピナレロらしい乗り味である。

このバイクをオススメするとしたら、やはりロングライド派の人に対してだろう。この適度な剛性感と振動吸収性の高さは、一定ペースで長い距離を走るようなシチュエーションに向いていると思う。

ブレーキング性能には、やや不満が残った。カンパニョーロ・アテナのブレーキの効きがイマイチなのだ。ストッピングパワーを重視するなら、アルテグラ仕様を選んだ方が良いかもしれない。カンパのほうがコントローラブルという意見もあるが、バイクの高速性能に対してやや役不足感があることは否めない。

多少気になる部分はあるものの、FP3 Carbonは中級モデルとしてとても良くまとまっていると思う。人気のピナレロがこの価格で買えるというのもウレシイ。





ピナレロ FP3 Carbonピナレロ FP3 Carbon (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp


ピナレロ FP3 Carbon
フレームマテリアル カーボン30HM12K
フォーク ONDA FP 30HM12K
メインコンポ シマノ・アルテグラ6700 or カンパニョーロ・アテナ
クランク MOst カーボンコンパクト(アテナ仕様はアテナクランク)
ホイール MOst ワイルドキャットF3
ハンドル MOst アルミ
ステム Most ALカーボン
ペダル 別売り
カラー ホワイト×シルバー、ネイキッド、レッド(アルテグラ6700完成車)、ホワイト(アルテグラ6700完成車、イージーフィット 425Sサイズのみ)、ホワイト×シルバー、ネイキッド(アテナ11S完成車)
サイズ 440s、465s、500、515、530、540、550、560、575、595(560以上は受注発注。サイズ425sはイージーフィットのみ選択可能)
重量 約1100g(54)
希望小売価格(税込み) 388,000円(アルテグラ6700完成車)、418,000円(アテナ11S完成車)




― インプレライダーのプロフィール

 西谷 雅史 西谷 雅史 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト


 三上 和志 三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI


ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン

edit:仲沢 隆
photo:綾野 真