南フランスのニームで開幕する第72回ブエルタ・ア・エスパーニャ。ピレネー山脈を経てバレンシア州の山岳地帯に向かう前半ステージを詳しく紹介します。


8月19日(土)第1ステージ ニーム~ニーム 13.7km(チームTT)コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第1ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第1ステージ image:Unipublic8年連続ブエルタはチームタイムトライアルで開幕を迎える。開幕地に選ばれたのはフランス南部のニーム。近年フランス企業(主催者ASOやカルフール、コフィディス、ビックなど)との結びつきが強いブエルタがフランスで開幕するのは史上初めて。

デニムの語源にもなったニームの中心地を合計22チームが4分間隔でスタート。まずは旧市街の周りを小さくぐるっと一周し、ローマのコロッセオと同時代に作られた円形闘技場の中を通過する。その後、幹線道路を通って大きな周回を描いて円形闘技場の前でフィニッシュ。鋭いコーナーやラウンドアバウトが散りばめられたテクニカルコースの優勝予想タイムは14分前後。ここでトップタイム(5番手の選手のタイムが反映)を記録したチームの先頭フィニッシャーがマイヨロホ着用の権利を得る。そして、レース中盤の3級山岳(長さ2.4km/高低差38m)で一番時計で記録したチームの先頭通過選手が山岳賞ジャージを着用する。



8月20日(日)第2ステージ ニーム~グリュイッサン 203.4km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第2ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第2ステージ image:Unipublic山がちなブエルタにあってここまで真っ平らなステージは珍しい。とにかく第2ステージは真っ平らだ。開幕地ニームからフランス南部の平野を地中海に沿ってプロトンは一路南下する。最も高い地点でも標高40mしかない。203.4kmという長いステージは、大きなヨットハーバーを有する地中海の街グリュイッサンで締めくくられる。

ピュアスプリンター向きのステージであることに疑いの余地はなく、マッチョなスピード自慢たちがこのチャンスを逃すはずはない。しかし内陸から地中海に吹くトラモンターヌが波乱を呼ぶ可能性も。同地域を走るツール・ド・フランスでは毎年のように風による集団分裂が発生している。約50km地点で通過するモンペリエと言えば、2016年のツールでサガンとフルームが平坦コースで抜け出して逃げ切った場所だ。強い風が吹けば、クライマー揃いのチームは壊滅的なダメージを被るかもしれない。



8月21日(月)第3ステージ プラデス・コンフレント・カニーゴ~アンドラ・ラ・ベリャ 158.5km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第3ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第3ステージ image:Unipublicフランスからスペインを経てピレネー山脈のアンドラ公国へ。大会3日目にして早速マイヨロホ候補たちが登坂力勝負を繰り広げる。まだ総合タイム差がついていないだけに、序盤の1級山岳ペルシュ峠(長さ19.5km/平均4.8%)で繰り広げられるアタック合戦は長時間に及ぶ熾烈なものになるだろう。

残り48kmを切ったところでアンドラ公国に入るとともにこの日最大の難所である1級山岳ラバッサ峠(長さ13.3km/平均6.8%)の登坂がスタート。最大勾配が15%に達する標高1,820mの峠で集団は人数を減らし、アンドラの街をかすめるように通過してから最後の2級山岳コメリャ峠(長さ4.3km/平均8.6%)に挑む。ブエルタに度々登場するこのコメリャ峠は急勾配&狭小&コーナー連続。獲得標高差3,000mのステージを締めくくるのはコメリャ峠からフィニッシュまでのテクニカルな7.1kmダウンヒルだ。3週間の戦いの序盤の序盤だけに積極的にリードを奪いにくるマイヨロホ候補はいないかもしれないが、ここでタイムを失う選手は出てくるだろう。



8月22日(火)第4ステージ エスカルデス=エンゴルダニー~タラゴナ 198.2km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第4ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第4ステージ image:Unipublicピレネー山脈に別れを告げてスペインのカタルーニャ州を南下する第4ステージ。アンドラ公国をスタート後、地中海沿いのタラゴナに向かって徐々に高度を落としていく。132km地点で3級山岳ベルタル峠(長さ13km/平均2.8%)を通過するが、もし仮にピュアスプリンターが脱落してもフィニッシュまでの66kmで挽回は可能だ。

スプリンターチームはタイム差を調整しながら余裕をもって逃げグループを吸収するだろう。タラゴナでは今大会2回目の集団スプリントに注目。残り10kmを切ってから合計14ヶ所のラウンドアバウトを抜け、残り400mから勾配2.5%の最終ストレートを駆け上がる。ステージ優勝を狙うならば、残り1kmから始まる連続コーナー区間までに集団前方に上がっていることが必須条件だ。



8月23日(水)第5ステージ ベニカシム~アルコセブレ 175.7km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第5ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第5ステージ image:Unipublic2017年大会には合計9つの山頂フィニッシュが設定されている。第5ステージの3級山岳エルミタ・デ・サンタルチア(長さ3.4km/平均4.2%)が今大会最初の山頂フィニッシュ。バレンシア州の山岳地帯を進む175.7kmコースは序盤から2級、3級、2級、2級とカテゴリー山岳が連続し、最後はアルコセブレの街と地中海を見下ろすサンタルチア修道院に続く山道を進む。

ブエルタの公式レースブックによると3級山岳エルミタ・デ・サンタルチアの平均勾配は4.2%だが、残り3.4kmを切ってから高低差330mを駆け上がるため計算が合わない。STRAVAに登録されているセグメントを参考にすると実際の平均勾配は9%。残り1.4km地点には最大勾配20%の激坂区間も登場し、残り1kmからフィニッシュまでの平均勾配は8%だ。勾配が緩む箇所もあるためリズムを取りにくい。この曲がりくねった細い山道でマイヨロホは早くも本命の手に渡るかもしれない。



8月24日(木)第6ステージ ビラ・レアル~サグント 204.4km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第6ステージ image:Unipublic地中海に沿ってブエルタは南下を続ける。中級山岳ステージにカテゴライズされた第6ステージは逃げ向きのコースレイアウト。48km地点に位置する最初の3級山岳に向かって逃げ屋たちがアタックを繰り返すだろう。

4つの3級山岳を越えた先に待つのが2級山岳ガルビ峠(長さ9.3%/平均5.1%)。最大勾配が22%にも達するこの最後のハードルを越えると、あとは地中海沿いのサグントまで36kmの下り&平坦路をまっしぐらだ。1日の獲得標高差は2,600m。仮にスプリントで勝負できると判断したスプリンターチームが集団コントロールを行なった場合は、逃げ屋とメイン集団によるマッチレースが繰り広げられることになるだろう。スプリントポイントは終盤の残り7km地点に設定されており、登れるスプリンターがポイント量産を狙って動いてくるかもしれない。



8月25日(金)第7ステージ リリア~クエンカ 207km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第7ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第7ステージ image:Unipublicジロやツールと比べるとステージ平均距離が短いブエルタ。今大会最長207kmコースには3つの3級山岳が設定されている。レース中盤から標高1,000m前後の高地を進み、ユネスコ世界遺産に指定された城塞都市クエンカにたどり着く。連日200kmオーバーで獲得標高差は2,700m。暑さに苦しむ選手も出てくるかもしれない。

一旦クエンカ市内のスプリントポイント通過後に、選手たちは最後の3級山岳カスティーリョ峠(長さ2km/平均7.2%)にアタックする。残り11.7km地点でピークを迎えるこの登りは旧市街を貫くメインストリートで、その路面は全面石畳。道幅3mほどの石造りの城門も通過する。川沿いの緩い下りに繋がるこの3級山岳はアタッカーたちにとって抜群の発射台になるだろう。もちろん登れるスプリンターたちにもチャンスはある。



8月26日(土)第8ステージ エリン~ショレト・デ・カティ 199.5km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第8ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第8ステージ image:Unipublicカスティーリャ・ラ・マンチャ州のエリンからバレンシア州ショレト・デ・カティまでの199.5kmで行われる第8ステージ。前日に引き続き200km前後のステージで、フィニッシュ手前にカテゴリー山岳が登場するレイアウトも前日と同じ。しかしこの日の登りはカテゴリー1級で、勾配は険しく、しかも頂上はフィニッシュから2.9kmしか離れていない。

1級山岳ショレト・デ・カティ(長さ5km/平均9%)は中盤にかけて最大勾配が18%に達する登り。道幅のないブエルタらしい激坂でマイヨロホ争いにセレクションがかかる。山頂フィニッシュではないものの、登りと同様に急勾配の下りと短い平坦区間を経てフィニッシュを迎えるため、登りで得たリードをそのままフィニッシュまでキープすることができそうだ。ステージ全体の難易度が低いため、1級山岳ショレト・デ・カティではかなり高強度の登坂バトルが繰り広げられるはず。



8月27日(日)第9ステージ オリウエラ~クンブレ・デル・ソル 174km コースマップ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージ image:Unipublic長い一週目を締めくくるのはビーチリゾートが連なるバレンシア州のレバンテ海岸を北上する174km。大部分は海沿いの平坦路だが、残り50kmを切ってからコースは内陸に向かう。最大勾配21%の激坂区間を含む2級山岳プイグ・ジョレンサ峠(長さ3.2km/平均9.2%)を通過後、スプリントポイントを含む短い周回をこなしてから再びプイグ・リョレンサ峠を登る。

1時間前に通過した2級山岳を登りきると、コースは残り800mから脇道へ。非公式ながら25%の激坂区間を経て、最後は地中海を見下ろす標高415mの1級山岳クンブレ・デル・ソル(長さ4km/平均9.1%)でフィニッシュを迎える。この激坂プイグ・リョレンサを事実上2回登るレイアウトは、デュムランがフルームを下した2015年第9ステージとほぼ同じ。当時はマイヨロホ候補の間に数秒〜1分のタイム差が付いている。この今大会3つ目の山頂フィニッシュを終えると大会最初の休息日。なお、2週目以降の12ステージのうち半分の6ステージが山頂フィニッシュだ。



8月28日(月)休息日



text:Kei Tsuji