イタリアンブランドらしい上質なルックスと高い走行性能で人気を博すコルナゴより、今年フルモデルチェンジを果たした軽量レーシングバイク「V2-R」をインプレッション。前作V1-rをベースによりエアロに、より高剛性にアップデートを加えた1台を紹介しよう。



コルナゴ V2-Rコルナゴ V2-R (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
創業者エルネスト・コルナゴ氏の生まれ故郷であるイタリアはミラノ郊外のカンビアーゴに工房を構える、老舗イタリアンバイクブランドのコルナゴ。ロードレースにも出場しながら溶接工として働いていたコルナゴ氏が1954年に独立、自身の小さなチクリ(工房)を創設したことを発端とし、以来60年以上の歴史と7000勝以上の実績を重ねてきた、紛うことなきレーシングブランドである。

エディ・メルクスやトミー・ロミンガーによるアワーレコードの樹立、ジュゼッペ・サロン二やオスカル・フレイレの世界選手権優勝など輝かしい成績を支えてきたコルナゴは、1980年代後半よりフェラーリ社と共同開発を進めいくつものカーボンバイクを生み出してきた。C35に始まり現在C60までその数字を重ねてきたラグドフレームのフラッグシップ、Cシリーズに代表される同社のカーボンバイクだが、フェラーリ社とのコラボによって2015年に登場したV1-rもまた、新城幸也始めユーロップカーの選手らを支えた1台として忘れてはならない。

シートポストからシートチューブにかけて後端を切り落としたようなカムテール形状となるシートポストからシートチューブにかけて後端を切り落としたようなカムテール形状となる 真ん中でくびれた上下異径のテーパードヘッド真ん中でくびれた上下異径のテーパードヘッド コルナゴ伝統のストレートフォークをアッセンブルコルナゴ伝統のストレートフォークをアッセンブル

ピエール・ロラン(フランス、当時ユーロップカー)も愛用していたM10の後継機として開発された、モノコックカーボンフレームのV1-r。フェラーリ社が得意とするエアロダイナミクスのテクノロジーを盛り込みつつ、同社のバイクラインアップ中最軽量のフレーム重量を実現したモデルである。2015年の萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)によるジロローザ第6ステージ優勝も、このV1-rによって成し遂げている。

エアロと軽量の両立を開発コンセプトととしたV1-rだが、基本的な性能の方向性はそのままにエアロダイナミクスと剛性を強化した正統進化モデルとも言えるのが、今回インプレッションを行った「V2-R」である。V1-rの登場から2年の歳月を経て、モデル名の数字を1つ更新するに至ったこのバイク。フレームの形状は前作を踏襲しつつも随所にアップデートを加え登場している。

空力性能を高めるためシートクランプは新たに内蔵式とされた空力性能を高めるためシートクランプは新たに内蔵式とされた シフトケーブルはダウンチューブ上部から内装されるシフトケーブルはダウンチューブ上部から内装される
ダウンチューブもD型の断面となるカムテール形状ダウンチューブもD型の断面となるカムテール形状 コルナゴの独自規格「スレッドフィット82.5」を採用するコルナゴの独自規格「スレッドフィット82.5」を採用する

見た目にも大きな変更点となっているのが、トップチューブとシートチューブの接合部分だろう。今作ではより空力性能を追求し新たにシートクランプを内蔵式とするために、チューブの集合部がややボリュームのあるデザインとなった。シートポストは後端を切り落としたエアロ形状の専用品を引き続き採用。また、ダウンチューブやシートチューブ、フロントフォークに至るまで随所にカムテール形状を盛り込み、エアロ性能を向上させている。

ブレーキは制動力とエアロダイナミクスを両立するダイレクトマウントを採用。V1-rではBB下に配置されたリアブレーキも、今作ではメンテナンス性を考慮しシートステー側に取り付け位置を変更している。ダイレクトマウントながら、シートステーにはブリッジが配されており剛性を高める設計も見て取れる。もちろん28cまで対応可能なタイヤクリアランスも備えている。

クランプ用パーツを埋め込むためボリュームを増したチューブ集合部クランプ用パーツを埋め込むためボリュームを増したチューブ集合部 トップチューブからシートステーにかけての流れるように繋がったデザイントップチューブからシートステーにかけての流れるように繋がったデザイン

フロントフォークはコルナゴ伝統のストレート形状とされ、レースバイクらしいクイックなハンドリングを継承。コラム径は上部1-1/8インチ、下部1-1/4インチのテーパードとされる。フォーククラウンとヘッドが一体化するようなインテグレートな設計は今作でも用いられないが、ヘッドチューブからダウンチューブにかけてエアロと剛性を高める有機的な独特のデザインは、イタリアンバイクらしさを感じられる造形となっている。

BBはコルナゴオリジナル規格の「スレッドフィット82.5」を採用。ねじ切りされた金属アダプターをフレームに挿入、ベアリング受けを装着しそこにプレスフィットBBを圧入することによりフレームへのダメージを軽減するというシステムである。また、ダウンチューブもBBに向かってフレアする形状となっており、剛性を高めている。

エンド付近で幅を広げるようにベンドするシートステーエンド付近で幅を広げるようにベンドするシートステー 後輪に沿って僅かながらカットオフされたシートチューブ後輪に沿って僅かながらカットオフされたシートチューブ ヘッドチューブ下部からダウンチューブにかけては独特の有機的なラインを描く造形にヘッドチューブ下部からダウンチューブにかけては独特の有機的なラインを描く造形に

これらのアップデートを加えつつも、フレーム重量は前作から据え置きの835g(塗装前、サイズ480s)とコルナゴ史上最軽量を維持している。その上でボトムブラケット付近の横剛性を13%、ヘッドチューブ下部の剛性を4%向上させており、レーシングバイクとしての価値をより高めたマシンへと進化している。ケーブルルーティングも空力性能を考慮した結果、同社のエアロロードCONCEPTを踏襲しダウンチューブ上部から内装される方式へ変更されている。

マットレッドのカラーのみ完成車販売されるが、その他カラーはフレームセット販売となる。今回はR9100系デュラエースをフルセットでアッセンブルしたテストバイクを使用。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「ひと踏み目で分かる”軽さ”が魅力のオールラウンドバイク」御園井智三郎(ミソノイサイクル)

このバイクの第一印象はやはり軽いということですね。軽いという印象には色んな意味があるけれど、このバイクは重量の軽さもさることながら、漕ぎ出しの軽さが非常に際立つと感じました。バイクに跨って足をペダルに置いただけで分かる転がりの軽さは、このV2-Rならではの乗り心地だと思います。

「ひと踏み目で分かる”軽さ”が魅力のオールラウンドバイク」御園井智三郎(ミソノイサイクル)「ひと踏み目で分かる”軽さ”が魅力のオールラウンドバイク」御園井智三郎(ミソノイサイクル)
極端にエアロ然としている形状ではないにも関わらず、平地では風の抵抗を感じさせない緩やかな加速感が味わえます。チューブなどの翼断面の後ろをカットしたカムテール形状が効いているのでしょう。向かい風、追い風、横風、はたまた人の後ろで走っている時と、どんなシチュエーションでも大きな空気抵抗を受けずに自然に走ることが出来ます。オールラウンドフレームでありながら高いエアロ効果を感じられますね。

その上で、もちろん登りも速いですね。ある程度の勾配であったらアウターで登っていけるだろうし、足の回転数が落ちてきて普通であれば辛いところでも、重量の軽さも手伝って前に前に進んでくれるので上り坂がラクに感じるほどです。登りで重いギアを掛けても、しっかりバイクが進む挙動を見せるためストレス無く登っていけます。

また、これはコルナゴバイク全体の特色かも知れないですが、ストレートフォークがもたらすハンドリングが癖がなく安定していて非常に良いですね。素直なハンドリングだけに、コーナーをレーシーに鋭角で入っていくことができます。ある程度上級者の方であれば、自分の体重をぐっと傾けるだけで狙ったラインに上手く入っていってくれるでしょう。

フレームはレースバイクらしくしっかりとした剛性を持ち、踏んだ分だけ推進力に変えてくれますが、極端に硬いという訳ではなくバランス良くしなってくれる部分もあります。踏み方に癖のある人でも受け入れてくれる懐の広さを感じますね。フレームのしなりもあってか振動吸収性もしっかり持ち合わせ、路面からの衝撃を吸収してくますし、脚への反発も少なく長距離のライドでも脚を残してくれます。良く進むのに快適性も高いバランスの良さがありますね。

他社のハイエンドバイクを使用している人など、特に経験者にこのバイクに乗ってもらうと、ものの良さはさらに感じてもらえるのではないかと思います。フレームの乗り味には好みもあるので、全てのライダーにマッチするとは一概に言えませんが、ある程度自転車に乗っている人に更に良いものを求められた時はオススメしたい1台ですね。

「平地も登りもオールマイティに走ってくれるレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

このV2-Rは前作のV1-rに比べて乗りやすくなっていますね。V1-rはダンシングでリズムが取りづらい感覚がありましたが、このV2-Rは小気味良いリズムで前に進んでくれる感覚があります。もちろんフレームの剛性感も踏み込んだパワーに対してしっかり答えてくれる踏み味で、イタリアのレーシングバイクという風格を持ち合わせていますね。

「平地も登りもオールマイティに走ってくれるレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)「平地も登りもオールマイティに走ってくれるレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI) BBの位置が少し高めに設計されているためか、私が普段乗っているバイクと比べるとダンシング時に切り返すテンポが少し早いと感じました。そのため登りで腰を上げてアタックするときや、ゴールスプリントでバイクを振るシーンでの反応感というのが抜群に良いです。普段から低重心のバイクに乗る方には、もしかしたら違和感に感じられるかもしれませんが、これこそがイタリアのレーシングバイクらしい乗り味と感じられます。

そのためダンシング時のリズムは早めですが、そのリズムに囚われずとも前に進んでいってくれますので漕ぎ方は限定されません。その代わりに、ある程度のパワーで踏んでいかないと気持ちよく進まないフレーム剛性となっていますね。ですので、レース等全力で踏み込んでいくシーンで、このフレームの真価が分かるような気がします。やはりハイパワーで踏んでいくことを前提としたレーシングバイクだと感じますね。

登りだけではなく平地でも非常に良く進む感覚があります。これは各チューブがエアロ効果のあるカムテール形状となっているためでしょう。バイク重量も超軽量とまではいきませんが十分軽量に仕上がっているため、平地での巡航性能とクライミング性能を両立したオールラウンダーとして高水準にまとまっているフレームだと思いますね。

軽量なフレームですのでヒルクライムレースにはもちろんオススメですが、そのオールラウンドな性能を活かしてアップダウンのある長距離レースにもいいと思います。バイクを振ったときの反応性は素晴らしいので、レース最後の集団スプリントで頭一つ抜ける事ができると思います。フレームセット43万円ということですが、個人的にはもう少し高くても良いのではないかと思う程に十分な性能でした。ある程度の上級者の方にバイクの性能を引き出して乗って欲しいですね。コルナゴの名に恥じない良いレースバイクです。

コルナゴ V2-Rコルナゴ V2-R (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
コルナゴ V2-R
サイズ:420s、450s、480s、500s、520s、540s、560s、580s、600s
カラー:TNMR(マットレッド)、TNDK(ブラック/ゴールド)、TNRD(ブラック /レッド)、TNBK(マットブラック)、TNWH(ホワイト)
完成車価格:1,200,000円(税抜、TNMR(マットレッド))
フレームセット価格:
500,000円(税抜、TNDK(ブラック/ゴールド))
430,000円(税抜、TNRD(ブラック /レッド)、TNBK(マットブラック)、TNWH(ホワイト))
※ディスクブレーキ仕様は+50,000円、受注生産につき納期は約4か月



インプレッションライダーのプロフィール

御園井智三郎(ミソノイサイクル)御園井智三郎(ミソノイサイクル) 御園井智三郎(ミソノイサイクル)

今年で創業120周年を迎えた、国内はもとより世界的にも最古参クラスの歴史を誇り、静岡県浜松市内に3店舗を構えるミソノイサイクルの5代目代表を務める。海外メーカー及び国内代理店と強い繋がりを持ち、ロードレーサーから実用車まで、あらゆるジャンルの機材で、新旧を問わない豊富な知識を持つ。また、かつてはトップアマとして国内レースで活躍した経験も。現在は地元浜松市と共に、走行環境の整備やイベントの企画・運営を行い、スポーツサイクルの更なる普及に注力している。

CWレコメンドショップページ
ミソノイサイクル HP

村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI) 村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

福岡市は天神地区に店舗を構えるZING² FUKUOKA-IWAIにて、セールス&メカニックやトライアスロンアドバイザーを担当する。モータースポーツを趣味にするほどの機械いじり好きが高じて自転車業界へ。自身は各地で行われるトライアスロンのレース会場へも、メカニックとして出向くほどTTバイクの扱いを得意とする。お客さんに向けたトライアスロン教室も行い、普段からトライアスロンのレース参加に向けたトレーニングとして自転車を嗜む。トライアスリートらしく愛車はサーヴェロのP3。

CWレコメンドショップページ
ZING² FUKUOKA-IWAI HP

ウェア協力:カステリ
ヘルメット協力:カブト

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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