オランダとベルギーを舞台に長年エネコ・ツアーとして開催されてきたビンクバンク・ツアーが開幕。オランダを走る初日の平坦ステージは集団スプリントで締めくくられ、写真判定に持ち込まれる接戦をペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が制した。


オランダ南部の平野を走る第1ステージオランダ南部の平野を走る第1ステージ photo:LC / TDWsport
シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスウィレムス・クレラン)も出場シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスウィレムス・クレラン)も出場 photo:LC / TDWsport
ビンクバンク・ツアー初日を迎えた新城幸也(バーレーン・メリダ)ビンクバンク・ツアー初日を迎えた新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Miwa Iijima
1948年から開催されていた「ツール・デ・ペイ・バ(ツアー・オブ・オランダ)」の伝統を引き継ぎ、2005年のUCIプロツアー発足に伴ってエネコ・ツアーに名称が改められた同大会。2017年からはオランダ・アムステルダムに拠点を置くオンライン手数料割引証券業者のビンクバンクがタイトルスポンサーにつき、時期も9月から8月に移して開催された。

9kmの個人タイムトライアルが行われる第2ステージを除いて、前半はスプリンター向きのステージが続く。総合争いが熱を帯びるのはオランダ南部のリンブルフ州を走る第5ステージから。短い坂が18カ所登場するコースはまるでアムステル・ゴールド・レースだ。より南に進み、ベルギーのワロン地方を走る第6ステージはさながらリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。そして最終日の第7ステージはボズベルグやミュール・ファン・ヘラールツベルヘンなどの急坂が登場し、ロンド・ファン・フラーンデレンを彷彿とさせる。

オランダのブレダからフェンラユまでの平坦な169.8kmコースで行われた第1ステージは、序盤からローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)、エルマー・レインダース(オランダ、ルームポット)、マーク・マクナリー(イギリス、ワンティ・グループゴベール)、ピート・アレガールト(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)の4名が逃げ、スプリンターチームが追いかける典型的な展開に。

ビンクバンク・ツアー特有の「ビンクゴールデンキロメーター」と呼ばれる3連続スプリントポイントでデヴリーズは合計9秒のボーナスタイム獲得に成功する。逃げグループとメイン集団のタイム差は残り20kmで1分半。クイックステップフロアーズやボーラ・ハンスグローエ、トレック・セガフレード、ロット・ソウダル、ディメンションデータ、オリカ・スコット、ロットNLユンボが集団先頭に陣取り、束になって襲いかかった。

クイックステップフロアーズ、ロットNLユンボ、ボーラ・ハンスグローエがメイン集団の先頭に立つクイックステップフロアーズ、ロットNLユンボ、ボーラ・ハンスグローエがメイン集団の先頭に立つ photo:LC / TDWsport
ジロ・デ・イタリア覇者のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)も出場ジロ・デ・イタリア覇者のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)も出場 photo:LC / TDWsport
残り3kmまで逃げ続けたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)残り3kmまで逃げ続けたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) photo:LC / TDWsport
タイム差24秒で残り10kmサインを切ると、直線的で真っ平らなコースで逃げグループのリードはみるみるうちに縮小。残り3kmで逃げグループを容赦なく飲み込んだメイン集団はロット・ソウダルとボーラ・ハンスグローエ、サンウェブ、オリカ・スコットの支配下に置かれた。リードアウトトレインを失ったマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)やアルノー・デマール(フランス、エフデジ)は後方に埋もれてしまう。残り1.5km地点のロータリーで集団が縦に伸びたためキッテルらはさらに後方に追いやられた。

どのチームも完璧なリードアウトを組めないまま、残り500mでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のリードアウト役を担うジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・ソウダル)がロングスプリントを開始。デブイストを自ら追いかけたのはサガンだった。

先頭に立ったサガンのスリップストリームからフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)が加速し、横並びでハンドルを投げ込んでフィニッシュに飛び込む。写真判定の結果、数センチ差でサガンの先着が決まった。アスタナへの移籍を決めているマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)がステージ3位に入っている。

ハンドルを投げ込んでフィニッシュするフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ハンドルを投げ込んでフィニッシュするフィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:LC / TDWsport
フィニッシュの様子を確認するペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)フィニッシュの様子を確認するペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:LC / TDWsport
緑のリーダージャージに袖を通したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)緑のリーダージャージに袖を通したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:LC / TDWsport
サガンはツール・ド・ポローニュに続くUCIワールドツアーレース開幕スプリント勝利。「最後は追い抜かれたかと思ったけど、ハンドルを投げるタイミングのおかげで先頭を守り抜いた。あとはスプリント開始のタイミングを待ったことも勝因。ライバルの動きを監視してから動くことで、良いラインでスプリントできたんだ」と、キャリア98勝目を飾るとともにリーダージャージに袖を通したサガンは語る。

「今日はイヴァン・コルティナ(スペイン)がスプリントで勝負する予定だったんだが、はぐれてしまい、自分とグレガ・ボレ(スロベニア)でスプリントに加わることになった。良いポジションで1km手前のロータリーを通過出来たのだが、そこから各チームの位置取りに埋もれ、前に出ることが出来ないままゴールとなってしまった」と語る新城幸也(バーレーン・メリダ)はステージ17位で初日を終えている。「脚の調子も悪くないので、週末のラスト3ステージにしっかりと調子を合わせたい」(チームユキヤ通信より)。
ステージ成績
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 3:50:09
2位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ)
3位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
4位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
6位 リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
7位 ワウテル・ウィッペルト(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
8位 ヨーナス・リカールト(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
9位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
10位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
17位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)
個人総合成績
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 3:49:59
2位 ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) 0:00:01
3位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) 0:00:04
4位 エルマー・レインダース(オランダ、ルームポット) 0:00:05
5位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット) 0:00:06
6位 マーク・マクナリー(イギリス、ワンティ・グループゴベール)
7位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 0:00:10
8位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
10位 ワウテル・ウィッペルト(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 30pts
2位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) 25pts
3位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット) 22pts
コンバティビティ賞
1位 ピート・アレガールト(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) 68pts
2位 エルマー・レインダース(オランダ、ルームポット) 16pts
3位  マーク・マクナリー(イギリス、ワンティ・グループゴベール) 16pts
チーム総合成績
1位 スポートフラーンデレン・バロワーズ 11:30:27
2位 キャノンデール・ドラパック
3位 UAEチームエミレーツ