5月から8月まで、3ヶ月間に渡るフランス遠征をこなしている日仏混成チーム、インタープロサイクリングアカデミーによるレポートを紹介する。目指すはヨーロッパへの新たな架け橋を作ること。学んだこと、そして今後の目標とは?



アルプス北部のヴァル・トランスで行った山岳合宿アルプス北部のヴァル・トランスで行った山岳合宿 (c)Interpro Cycling Academy
チーム結成10年目を迎え、今年UCIコンチネンタルチームへとステップアップした日仏混成チームが、長野県飯田市に拠点を置くインタープロサイクリングアカデミーだ。今年3月にはアフリカはガボン共和国で開催されたラ・トロピカル・アミッサボンゴ(参戦レポートはこちら)で初のUCIレース参戦を果たし、ツアー・オブ・とちぎ、ツール・ド・ロンボク(インドネシア)などを転戦。そして現在は5月から8月まで3ヶ月間に渡るフランス遠征を行っている最中だ。

フランス人選手やスタッフを多く抱え、日本からフランスへ挑戦する道筋を作るという目標を掲げるインタープロに取って、今回が初のフランス遠征。トップ選手も出場したUCIレースをこなしつつアルプス合宿なども行い、内容を濃くしているという。以下はチームからのレポート。



チームを立ち上げたステファン・フォレストGMチームを立ち上げたステファン・フォレストGM 合宿を行う水野恭兵とフロリアン・ウドリ合宿を行う水野恭兵とフロリアン・ウドリ (c)Interpro Cycling Academy昨年国内ロードレース最高峰のジャパンプロツアーで2勝利を飾り、チーム総合総合ランキング5位に輝いた、インタープロサイクリングアカデミー(昨年はニールプライド南信スバル)。しかし現在のJプロツアーランキングは11位。これは実力ダウンではなく、チームの活動の幅が大きく変化したことを意味している。

「2006年に日仏サイクリングチームを発足した頃と比べると、チームの活躍が大きく変わってきた。しかし我々は今でも、フランスと日本、両方のアイデンティティを持ち続けていることが、他の国内チームと異なっている点。当初から変わらない目的は、日本とフランスを繋げ、サイクリング競技の本場であるフランスへの新たな道を作ることなのです」とは、チームマネージャーのステファン・フォレスト。

「我々は年々ステップアップしており、昨年は国内で成績を重ねて、プロフェショナルチームへ格上げすることを目指していました。今年はUCIコンチネンタルチームにステップアップし、海外での活躍を増やすことでヨーロッパへの道を作り始めている段階です」。

そのプロジェクト上で、今年はフランス遠征プロジェクトが決まった。5月から8月にかけての3ヶ月間、選手たちはフランスを拠点にしてヨーロッパのプロレースに挑んでいる。これまでに出場したレースは以下の通り。世界最大のステージレース、ツール・ド・フランスに出場中の選手たちと争うこともあった。

5月27日 Grand Prix de Plumelec(UCI1.1クラス)
優勝者:アレクシー・ヴィエルモーズ(フランス、アージェードゥーゼル)

5月28日 Boucles de l’Aulne(UCI1.1クラス)
優勝者:オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、エフデジ)

6月1日―4日 Boucles de la Mayenne(UCI2.1クラス)
優勝者:マテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)

6月8日―12日 Ronde de l’Oise(UCI2.2クラス)
優勝者:フラビアン・ダソンビール(フランス、HP BTP・オベール93)

6月25日 フランス選手権
優勝者:アルノー・デマール(フランス、エフデジ)

7月0日 Velothon Wales(UCI1.1クラス、イギリス)
優勝者:イアン・ビビー(イギリス、JLTコンドール)

4日間開催されたロンド・ド・ロワーズ(UCI2.2)4日間開催されたロンド・ド・ロワーズ(UCI2.2) (c)Nolwenn Geffroy
今年インタープロサイクリングアカデミーの監督を務め、今回のフランス遠征の指揮を執るのが、かつてTusnad Cycling Team(ルーマニア)や、Bike Aid(ドイツ)などのプロチームで監督を勤めてきたフロラン・オローだ。オローは「日本の自転車業界では現在、ワールドツアーで勝てる選手を育てることのできる組織はなかなか存在していない」と言い切る。

「日本拠点の育成型チームには、レーススケジュール、そして自転車競技に関する文化が足りず、海外に送り出される選手たちには、自転車競技を学ぶに適する環境がありません。そこで、我々のような存在が日本にとって重要です。そしてフランスにおける主催者、投資家にとって、日本のチームは魅力があるのです。

実際にレース参加を申し込んだフランスのレースはほとんど招待してくれました。我々よりも強いチームはたくさん存在するものの、我々には日本というアイデンティティがあって、オーガナイザーはそこに魅力を感じてくれています。参加枠を20つめのフランスかベルギーチームではなく、我々に取ってくれることはとても嬉しいことですし、そこにこそ日仏混成チームとしている意味があるのです」。

ブークル・ド・ラ・マイエンヌ(UCI2.1)でエフデジのエースナンバーを付けるアルノー・クールテイユ(フランス)と走るフロリアン・ウドリブークル・ド・ラ・マイエンヌ(UCI2.1)でエフデジのエースナンバーを付けるアルノー・クールテイユ(フランス)と走るフロリアン・ウドリ (c) Corentin Photographies Cyclisme「ヨーロッパのオーガナイザーは日本のアイデンティティを持つインタープロを招待してくれる」「ヨーロッパのオーガナイザーは日本のアイデンティティを持つインタープロを招待してくれる」 (c) Corentin Photographies Cyclisme


VC Fukuoka出身で、今年育成セクションの一員として加入した中田拓也は以下のように語っている。「自分にとっては2度目の海外遠征。1度目はベルギーで今回はフランス。ベルギーの頃は短期間だったがIRCユーラシアにお世話になった。ワールドツアー選手のそばで走りたくさんのことを学ぶことが出来た。例えば、日本ではあまりないが、海外では強烈な横風区画が多数設置されているレースがある。基本横風区画では前の人から受けるスリップストリームはないので、何度か限界を迎え叫びながら走った。そのことから、レース中の位置どりの大切さが分かった。他の選手と自分の違いはテクニック、パワー、そして場数だとも思った。フランス遠征がまだ終わっていないので、貪欲にチャレンジを繰り返しベストを尽くしたいと思う」。

インタープロサイクリングアカデミーの海外遠征は8月まで。次戦は昨年ブリヂストンアンカーが優勝したツール・ド・グアドループだ。「日本には存在しない10日間のステージレースということで、改めて自転車競技の様々な特徴を学ぶに最適な機会だと考えています。ダブルアフリカチャンピオンのテスフォム・オクバマリアム(エリトリア)がチームのエースとして総合優勝を狙っていきます。彼のために動くこと、そして展開によって逃げに乗り勝負に加わるのが他の選手の役割です」とはフロラン監督。

「2017年を踏まえ、来年はもう一つステップアップしたいを思っています。フランスに拠点を作って1年中フランスで活動できるようにし、更に現在本拠にしている日本の拠点のもとに独立の育成型チームを作るという形を目指しています」。

text:Inter Pro Cycling Academy
edit:So.Isobe