1周目から逃げたのはダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)。じつに95kmを逃げ切って最終ステージを制した。総合上位に変動はなく首位のホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が守り切り、チーム2度目の熊野総合優勝を達成した。



逆転なるか?名コースの最終太地ステージ

これから最終ステージに臨む4賞ジャージ着用者これから最終ステージに臨む4賞ジャージ着用者 photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・熊野最終日第3ステージが6月4日(日)、和歌山県太地町で行われた。1周10kmの中にあらゆる状況が組み込まれた名コースでは過去数々の名勝負が繰り広げられてきた。過去には逆転劇が多く生まれたが、UCIレースになってからはそのまま守りきることが多くなっている。昨年は途中で豪雨となり起死回生のアタックを仕掛けた総合2位の選手が落車し、大きく順位を落としている。

前ステージまでで首位のホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)は2位オスカル・プジョル(チーム右京)に43秒差ある。さらにプジョルから総合6位までは13秒、ポイント賞は首位ホセ・ビセンテとプジョル、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)とは6点の僅差。チーム総合も首位キナンサイクリングチームと2位タブリーズシャハルダリとは42秒差と接近している。いずれも展開次第では逆転可能な範囲だ。

ダミアン・モニエが1周目から単独逃げる

1周目山岳賞へ向けて活性化する集団1周目山岳賞へ向けて活性化する集団 photo:Hideaki TAKAGI早くも1周目から逃げるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)早くも1周目から逃げるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGI

4日連続晴天のツール・ド・熊野も最終ステージ4日連続晴天のツール・ド・熊野も最終ステージ photo:Hideaki TAKAGI
太地くじら浜公園をスタートした集団は2.5km先のKOM目指して活性化する。サラウット・シリロナチャイ(タイコンチネンタルサイクリングチーム)が獲得しなおも集団前方は激しいアタックが続く。ここからダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)が抜け出し、メイン集団がこれを追いながらも活性化した状態が続く。モニエはリーダーのホセ・ビセンテとは7分17秒差でありこの逃げは容認される。

3周目にはモニエを追って数人が抜け出し4周目にはそれらがまとまり7人の追走ができる。メンバーは早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)、入部正太朗(シマノレーシング)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)、リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、土井雪広(マトリックスパワータグ)、石橋学(ブリヂストンアンカー)で、のちにジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)が単独でブリッジし逃げは8人に。

個人総合逆転からステージ狙いへ

5周目、第1ステージ優勝の入部正太朗(シマノレーシング)ら追走の8人5周目、第1ステージ優勝の入部正太朗(シマノレーシング)ら追走の8人 photo:Hideaki TAKAGI6周目へ、スプリントポイントで先着する阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)6周目へ、スプリントポイントで先着する阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI

8周目、スタート5km地点から逃げ続けるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)8周目、スタート5km地点から逃げ続けるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGI
捕鯨船のある太地くじら浜公園がメイン会場捕鯨船のある太地くじら浜公園がメイン会場 photo:Hideaki TAKAGI8周目へ、追走する8人8周目へ、追走する8人 photo:Hideaki TAKAGI


総合2分10秒差9位の早川は順位アップを、阿部はポイント賞を、入部とアベラストゥリはステージ優勝を狙う一方、ガルシア、土井、石橋は押さえで逃げに入る。追走は8人いるが引くのは実質半分だ。レースはしばらく先頭モニエ、追走8人、メイン集団の構図で進む。タイム差はそれぞれの間で30秒から1分ほど。

途中のスプリントポイントは2回とも追走8人の中では阿部が先着してポイント賞1位を見据える。総合狙いでは、マトリックスは追走の早川とのタイム差だけを見ればいい。その観点ではチーム右京やキナン、タブリーズシャハルダリらに40〜50秒のアドバンテージがありマトリックスだけが引く必要性もない。そのためレースはステージ優勝に関心が移っていく。マトリックスはこのままフィニッシュすればいい。

95%を逃げたダミアン・モニエがステージを制する

最終周回へ逃げ続けるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)。水谷壮宏監督は「お前ならできる」と励ます最終周回へ逃げ続けるダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)。水谷壮宏監督は「お前ならできる」と励ます photo:Hideaki TAKAGI最終周回、メイン集団は前に追いつかない最終周回、メイン集団は前に追いつかない photo:Hideaki TAKAGI

95kmを逃げ続けたダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)が優勝95kmを逃げ続けたダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
独走優勝のダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)を祝福するチームメイト独走優勝のダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)を祝福するチームメイト photo:Hideaki TAKAGIなんと95kmを逃げ続けて優勝したダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)なんと95kmを逃げ続けて優勝したダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGI


周回を重ねてもモニエの勢いは衰えず追走8人とのタイム差は1分を超え、メイン集団が追走8人を吸収しそうな勢いに。最終周回はさすがに追走8人そしてメイン集団ともにペースを上げるがそれぞれに届かず、結局モニエが38秒差で逃げ切って優勝、2位にはアベラストゥリ、そして3位に土井が入った。メイン集団は追走集団に6秒遅れでパク・サンホン(LXサイクリングチーム)先頭にフィニッシュした。

優勝したモニエは2003年から10年間コフィディスに所属しジロ・デ・イタリアステージ優勝やフランス選手権個人追い抜き優勝など実績があり、2013年からブリヂストンアンカーに所属する34歳。独走力に定評があり、この日は全行程の95%の距離を逃げ切り8人の追走とのタイム差をむしろ離すほどの離れ業を見せた。

熊野で2度目の総合優勝のマトリックスパワータグ

個人総合優勝を決めたホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)個人総合優勝を決めたホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) photo:Hideaki TAKAGI
熊野で2度目の総合優勝を決めたマトリックスパワータグ熊野で2度目の総合優勝を決めたマトリックスパワータグ photo:Hideaki TAKAGI個人総合時間賞表彰個人総合時間賞表彰 photo:Hideaki TAKAGI

個人総合U23賞個人総合U23賞 photo:Hideaki TAKAGI個人総合ポイント賞表彰個人総合ポイント賞表彰 photo:Hideaki TAKAGI

個人総合山岳賞表彰個人総合山岳賞表彰 photo:Hideaki TAKAGIチーム総合表彰チーム総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI


マトリックスパワータグは前日までに2人を失い4人での出走だったが、土井と吉田隼人がリードしてホセ・ビセンテの総合を守り切った。特に土井の存在は大きく、2年前の総合優勝時は後半になるまで他チームの激しい攻撃に晒されたが、今回そのようなことはなくチームとして総合力が上がったことを示している。



黒潮ロードレース太地ステージ黒潮ロードレース太地ステージ photo:Hideaki TAKAGIJBCF エリートJBCF エリート photo:Hideaki TAKAGI

JBCF Fクラスタ 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が3ステージ完全優勝JBCF Fクラスタ 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が3ステージ完全優勝 photo:Hideaki TAKAGI


結果
第3ステージ 100.0km
1位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)2時間27分15秒
2位 ジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)+38秒
3位 土井雪広(マトリックスパワータグ)
4位 入部正太朗(シマノレーシング)
5位 石橋学(ブリヂストンアンカー)
6位 リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)
7位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)
8位 エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)+40秒
9位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
10位 パク・サンホン(LXサイクリングチーム)+44秒

個人総合時間賞 最終成績
1位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)7時間41分59秒
2位 オスカル・プジョル(チーム右京)+43秒
3位 マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)+46秒
4位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+48秒
5位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ)+53秒
6位 イリヤ・ダビデノク(タブリーズシャハルダリ)+56秒
7位 山本元喜(キナンサイクリングチーム)+1分02秒
8位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)+1分22秒
9位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)+2分04秒
10位 ペーラポル・チャウチャンクワン(タイコンチネンタルサイクリングチーム)+2分15秒

個人総合ポイント賞 最終成績
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)44点
2位 入部正太朗(シマノレーシング)40点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)37点

個人総合山岳賞 最終成績
1位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ・チーム)22点
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)15点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)10点

個人総合U23賞 最終成績
1位 田窪賢次(マトリックスパワータグ)7時間46分07秒

チーム総合 最終成績
1位 キナンサイクリングチーム 23時間09分10秒
2位 タブリーズ・シャハルダリ・チーム +3分29秒
3位 マトリックスパワータグ +8分18秒

photo&text:Hideaki TAKAGI