1級山岳エトナ山の山頂フィニッシュで序盤からの逃げメンバーと集団を振り切ったヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が独走勝利。マリアローザはボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)の手に渡った。



故ワウテル・ウェイラントらに捧げる1分間の黙祷故ワウテル・ウェイラントらに捧げる1分間の黙祷
ジロ・デ・イタリア2017第4ステージジロ・デ・イタリア2017第4ステージ image:RCSsport大会最初の休息日(大会関係者にとってはサルデーニャ島からの移動日)を経て、第4ステージはシチリア島北部のチェファルーをスタートした。海岸線に沿って進む序盤の57kmを終えるとコースは一路内陸へ。2級山岳ポルテッラ・フェンミーナモルタ(全長32.8km/平均4.5%)の長い長い登りをこなし、ヨーロッパ最大の活火山として知られる標高3,329mのエトナ山に向かう。

エトナ山の「五合目」に位置する標高1,892mの1級山岳モンテ・エトナ(全長17.9km/平均6.6%)が今大会最初の山頂フィニッシュ。実質的に8%前後の勾配が続く登りの両側は固まった溶岩に覆われており、遮るものがないため風が直接選手たちに吹き付ける。獲得標高差3,500mの4つ星ステージでマリアローザ争いが始まった。

6年前に亡くなったワウテル・ウェイラント(ベルギー)と、スペインで事故死した2人のアマチュアサイクリストに捧げる1分間の黙祷を経てレースはスタート。左手に真っ青な海が広がるオーシャンロードに出てすぐ、ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)、パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、エウジェニオ・アラファーチ(イタリア、トレック・セガフレード)、ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)の4名が逃げを開始。これまでのステージではUCIプロコンチネンタルチーム所属選手が逃げグループの大半を占めていたが、今大会最初の山場だけにUCIワールドチーム所属選手が逃げに乗った(ブラットもトップチーム経験者)。

クイックステップフロアーズがメイン集団を牽引するクイックステップフロアーズがメイン集団を牽引する 前々日に落車したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が途中リタイア前々日に落車したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が途中リタイア
逃げるパヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら4名逃げるパヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら4名 クイックステップフロアーズを先頭に海沿いのワインディングを進むクイックステップフロアーズを先頭に海沿いのワインディングを進む photo:Kei Tsuji / TDWsport

海岸線を進むうちにタイム差は広がり続け、2級山岳ポルテッラ・フェンミーナモルタの長い登りが始まっても拡大傾向は変わらず。タイム差が最大8分半まで広がったところでメイン集団はようやくペースを上げ始めた。第3ステージで落車したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がリタイアを余儀なくされている。

逃げグループはリードを守った状態で2級山岳ポルテッラ・フェンミーナモルタの登坂を完了する(メイン集団は6分25秒遅れ)。ヤンセファンレンズバーグを先頭に2級山岳の頂上を越え、長いダウンヒルを経て最後の1級山岳モンテ・エトナに向かううちに逃げグループからアラファーチが脱落。バーレーン・メリダの集団牽引によってタイム差は縮小傾向に転じ、ブラットの脱落によって2人(ポランツェとヤンセファンレンズバーグ)に絞られた逃げは4分のリードでエトナ火山を登り始めた。

本格的な登りが始まると、総合82位で1分51秒遅れのポランツェがヤンセファンレンズバーグをふるい落として独走を開始する。一方のメイン集団からはシチリア出身のパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が抜け出したものの先行は長続きしない。続いてカウンターアタックを仕掛けたピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)も数キロにわたる追走の末に吸収。集団内ではミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)がパンクによって脱落したが、チームメイトのホイールを受け取って集団に復帰している。

独走に持ち込んだヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ独走に持ち込んだヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ シチリア出身のパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアタックシチリア出身のパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアタック
1級山岳エトナ山を駆け上がるメイン集団1級山岳エトナ山を駆け上がるメイン集団
メイン集団のペースを作るベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)メイン集団のペースを作るベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsport1級山岳エトナ山でアタックしたジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)1級山岳エトナ山でアタックしたジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

頂上まで10kmを残してメイン集団から3分25秒のリードを得た先頭ポランツェ。頂上が近づくとともにタイム差はなだらかに縮小したが、劇的に縮まることはない。残り8kmで2分33秒、残り6kmで2分10秒、残り4kmで1分33秒、そして残り2kmで1分を切る。しかしポランツェのペースは最後まで落ちなかった。強い向かい風が吹く終盤も独走を続け、単独でフィニッシュラインを切った。

BMCレーシングやバーレーン・メリダを先頭に登りを進んだメイン集団は30名ほどに絞られ、そこからジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、イゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)が抜け出しを図るも吸収。すると、頂上までおよそ1500mを残してイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)がアタックし、食らいつくティボー・ピノ(フランス、エフデジ)とトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)を振り切って単独追走を開始する。

単独2番手となったザカリンは先頭ポランツェから19秒遅れでフィニッシュ。ザカリン以外のマリアローザ候補たちは(ニーバリを除いて)大きな動きを見せず、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)を先頭に29秒遅れでフィニッシュした。

残り2kmを切ってアタックを仕掛けるイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)残り2kmを切ってアタックを仕掛けるイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji / TDWsport
独走でフィニッシュするヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)独走でフィニッシュするヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
約20名のメイン集団がフィニッシュに向かう約20名のメイン集団がフィニッシュに向かう 19秒差のザカリンに続いて29秒差の集団はゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)先頭19秒差のザカリンに続いて29秒差の集団はゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)先頭 photo:Kei Tsuji / TDWsport

2015年大会に続くステージ2勝目を飾ったポランツェ。マリアアッズーラを手にするとともに、UAEチームエミレーツにグランツール初勝利をもたらしたポランツェは「逃げ切りが決まるなんて誰も信じていなかったと思う。自分も信じていなかった」と、自身も驚く逃げ切りを喜ぶ。「4名という決して大人数ではない逃げだったし、最後の登りが始まった時点でタイム差は詰まっていた。間違いなく人生で一番苦しい1日。2015年と同様に、大会最初の山頂フィニッシュで勝つなんてただただ素晴らしい気分だ」。

グルペットでフィニッシュしたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)から、マリアローザはチームメイトのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)の手にわたった。ステージ3位でボーナスタイムを獲得したトーマスが6秒差の総合2位に浮上している。2年連続でマリアローザに袖を通したユンゲルスは「フェルナンドからマリアローザを受け継ぐには運が必要だった。チームは良い仕事をしてくれたし、クレーバーに走ったんだ。昨年よりも長くこのマリアローザを着たいけど、日曜日のブロックハウスで再び総合争いが動く。ブロックハウスはエトナよりもキンタナのようなピュアクライマー向きなので、彼らに食らいつくことに力を尽くしたい」とコメントしている。ユンゲルスはもちろんマリアビアンカも同時に獲得。翌日の第5ステージはヤングライダー賞2位に浮上したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)がマリアビアンカを着る。

2年連続マリアローザに袖を通したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)2年連続マリアローザに袖を通したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第4ステージ結果
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)          4h55'58"
2位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)          +19"
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                +29"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
6位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
7位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
11位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
12位 シモーネ・ペティッリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
13位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
14位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
15位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
16位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
17位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
18位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)
19位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
20位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 
21位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)
22位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     19h41'56"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +06"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)                +10"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
8位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)
10位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             81pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       74pts
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     72pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)           43pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       22pts
3位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)         18pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     19h41'56"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)               +10"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

チーム総合成績
1位 キャノンデール・ドラパック   59h06'18"
2位 UAEチームエミレーツ         +07"
3位 モビスター              +36"

text&photo:Kei Tsuji in Monte Etna, Italy