クイックステップフロアーズの強さと、トラックレースで磨いた22歳フェルナンド・ガビリアのスピードが光ったジロ第3ステージ。レース後すぐに選手たちはサルデーニャ島からシチリア島に向かうチャーター機に飛び乗った。



マリアローザを着て出走サインに向かうアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)マリアローザを着て出走サインに向かうアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
いくつものトンネルを越えていくいくつものトンネルを越えていく photo:Kei Tsuji / TDWsport
フィニッシュ時間が予定より大幅に遅れた前日の反省を生かし、風によるレーススピード低下を懸念した主催者はスタート時間を15分早めることを決めた。なお、スタート時間の変更はコミュニケに小さく記載されただけ。広く周知されていなかったため、スタート地点では少しの混乱が起こった。

何より、この日はスケジュール通りにレースが終わらないとシチリア島への移動に支障をきたす。レース終了後すぐ、チームバスやチームカー、オフィシャルカー、表彰台トラックなどの関係車両はフィニッシュ地点すぐ近くの船着場に向かい、21時発の大型フェリーで12時間かけてシチリア島のパレルモ港へ。そして選手やチームスタッフ、主催者、プレスの一部(自分を含む)は19時半と20時15分のチャーター機でカリアーリ空港からパレルモ空港に飛ぶ。カリアーリ〜パレルモ間は直行便が飛んでいないため、その他の関係者はローマ経由の乗り継ぎフライトでシチリア入りする。

なお、レンタカーで移動するプレスの動きのパターンは大きく分けて以下の5通り。誰得情報なのか、誰の参考になるのかは全く不明だが備忘録として。

1. 飛行機でサルデーニャ島入りしてレンタカーを借り、サルデーニャ島でレンタカーを返却し、飛行機でシチリア島に渡って新たにレンタカーを借り、フェリーでイタリア本土に渡り、終着地ミラノでレンタカーを返却。
2. 飛行機でサルデーニャ島入りしてレンタカーを借り、車ごとフェリーでシチリア島に渡り、フェリーでイタリア本土に渡り、終着地ミラノでレンタカーを返却。
3. イタリア本土でレンタカーを借り、車ごとフェリーでサルデーニャ島入りし、フェリーでシチリア島に渡り、フェリーでイタリア本土に渡り、終着地ミラノで全期間乗ったレンタカーを返却。
4. 飛行機でサルデーニャ島入りしてレンタカーを借り、サルデーニャ島で返却し、一旦帰宅し、大会3週目に再び合流。
5. サルデーニャ島の3日間をパスし、飛行機でシチリア島に入りしてレンタカーを借り、フェリーでイタリア本土に渡り、終着地ミラノでレンタカーを返却。

サルデーニャで借りたレンタカーをミラノで返すとかなり割高な片道料金がかかるため、自分を含めてシチリアで借りたレンタカーをミラノで返すパターン1が最も多い。人数としては一旦帰ってレースの山場だけ帯同するパターン4も多く、全期間同じレンタカーに乗るパターン3は稀だ。

すべてイタリア国内で収まっている今年のジロだが、2つの島を含むため移動の手間は例年と同じかそれ以上。これらの移動をトラブルなくスムーズにこなすことが3週目の戦いに影響するかもしれない。

選手たちが乗るパレルモへの直行便選手たちが乗るパレルモへの直行便 photo:Kei Tsuji / TDWsportチャーター機に乗り込むボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)チャーター機に乗り込むボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
搭乗ゲートに向かうナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)搭乗ゲートに向かうナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsport


サルデーニャ自治州の州都カリアーリのフィニッシュ地点は、それまでの田舎町とは異なり、物々しい雰囲気に包まれた。カラビニエーリ(国家憲兵)とポリツィア(警察)が例年よりも人数を増員して警備にあたっている。大都市だけに最終ストレートの沿道はかなりの人出で、大会関係者は観客のコントロールに苦労していた。

残り12km地点のロータリーから始まる横風区間を、どのチームも把握していた。すべてのチームがレース通過よりも前にマッサージャーやスタッフ、もしくは広報が乗る第3もしくは第4チームカーを先に走らせ、コース情報の危険なポイントを第1チームカーに乗る監督に伝えているからだ。残り12km〜残り5km地点の直線路にはビュンビュンと風が吹いていて、集団分裂が発生するだろうことは誰の目にも明らかだった。

分かっていても集団の前に上がれないのが風との戦い。総合エースとスプリンターを引き連れた22チームすべてが一斉に集団先頭に向かってポジション取り。こういった時のために、どれだけ山岳ステージの比重が高いジロでも、大柄なルーラーを少なくとも1人はメンバー入りさせておかなければないならいことがよく分かる。やはりその中でも強さを見せたのは、風のレースに長けているベルギーのクイックステップフロアーズだった。山岳系の軽量選手ではなく平坦系の重量選手を多く揃えていたとも言える。

元世界王者のバッランと談笑するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)元世界王者のバッランと談笑するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsportバーレーン・メリダのチームバスに最も多くのファンが押し寄せるバーレーン・メリダのチームバスに最も多くのファンが押し寄せる photo:Kei Tsuji / TDWsport
カリアーリのフィニッシュ地点を守るカラビニエーリカリアーリのフィニッシュ地点を守るカラビニエーリ photo:Kei Tsuji / TDWsport
圧倒的な人数を揃えてレースを破壊し、コロンビア国旗が翻るカリアーリでフェルナンド・ガビリア(コロンビア)を初勝利に導いたクイックステップフロアーズ。ガビリアは初出場のグランツールで初勝利。もちろんマリアローザ着用も初めてだ。駆けつけた家族と熱狂した友人たちが表彰台の前になだれ込み、位置どりしていたフォトグラファーたちと言い争いが起こるシーンも。

コロンビア人選手によるステージ優勝は23回目。同国出身者によるジロ初勝利は1973年のマルティン・ロドリゲスまで遡る。当時のロドリゲス勝利は非ヨーロッパ出身者としての初勝利でもあった。「ジロではすでにリゴベルト(ウラン)とナイロ(キンタナ)、エステバン(チャベス)がマリアローザを着ているけど、彼らは全員クライマーかオールラウンダーであり、平坦ステージでマリアローザを獲得したコロンビアンスプリンターは自分が初めて」とガビリアは誇らしげに語る。

ガビリアのイタリアでの生活やトレーニングに手を差し伸べているのが元トップスプリンターのアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)。ガビリアは現在トスカーナ州のペタッキが所有するアパートにガールフレンドと一緒に暮らし、必要な時にはペタッキのモーターペーシングを受けているという。「ガビリアはニュー・サガンだ」と高く評価するペタッキは前日にカリアーリに降り立ち、弟子の初勝利を直接祝福することに成功している。

ヴェロンの公開データによると、ガビリアのスプリント中のトップスピードは61.9km/hで、残り300mから55km/h平均で走っている。強い向かい風が吹き、路面が凸凹の石畳、そして少人数のグループであったことも影響し、通常の平坦ステージよりはトップスピードが遅め。ガビリアは最大1,468Wを出力し、最後の300mを平均834Wで踏み抜いている。一方、ステージ3位のジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)は、膝の怪我から復帰したばかりということもあり、トップスピード58.3km/h、最大1,191Wだった。

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の後ろではリケーゼが勝利を確信フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の後ろではリケーゼが勝利を確信 photo:Kei Tsuji / TDWsport
グランツール初出場のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が勝利グランツール初出場のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が勝利 photo:Kei Tsuji / TDWsport
シャンパンを頭からかぶるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)シャンパンを頭からかぶるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ開幕3日間で3人のステージ優勝者と3人のマリアローザ着用者が生まれた。シチリア島で過ごす休息日が終わると、第4ステージはエトナ山の山頂フィニッシュが待っている。今大会最初の山頂フィニッシュであり、マリアローザを着て地元メッシーナに凱旋したいヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)の活躍に期待が集まる。しかし溶岩石むき出しの山には強風が吹き付ける予報のため、コースが変更される可能性も出ている。

text&photo:Kei Tsuji in Cagliari, Italy