ASOが手がける第3回ツール・ド・ヨークシャー(UCI2.1)がイギリスで開幕した。第1ステージは大集団によるスプリントに持ち込まれ、大落車を回避したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が2年連続開幕スプリントを制した。



逃げを見送ったメイン集団がスローペースで街を進む逃げを見送ったメイン集団がスローペースで街を進む photo:Kei Tsuji / TDWsport
この日だけでスペアバイクを含めて200台以上チェックしたUCIスタッフこの日だけでスペアバイクを含めて200台以上チェックしたUCIスタッフ photo:Kei Tsuji / TDWsport出走サインを待つジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)ら出走サインを待つジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport

イギリスのグレートブリテン島中部(イングランド北部)に位置するヨークシャー地方。2014年のグランデパール(ツール開幕)の成功を受け、2015年にツール・ド・フランス主催者ASOがツール・ド・ヨークシャーを初開催した。ヨークシャーでは2019年にロード世界選手権が開催されることが決まっており、イギリスの自転車人気を牽引する地域となっている。

UCIのレースカテゴリーはクラス1で開催期間は3日間。しかしASO主催ということもあり、出場する18チームのうち7チームがUCIワールドチームという豪華さだ。

第3回大会の初日はブリッドリントンから、サイモン&ガーファンクルが歌ったことでも有名な民謡「スカボローフェア」の舞台スカボロー(現地の発音に可能な限り近づけるのであればスカーブラ)までの174km。カテゴリーの付いていない急坂が断続的にやってくる獲得標高差2,000mのアップダウンコースだ。ヨークシャーといえば1日のうちに晴れと曇りと雨が一通りやってくる気まぐれな天気が特徴だが、この日は春の陽気に包まれた。

コノール・デューン(アイルランド、アクアブルースポート)ら7名が逃げ続けるコノール・デューン(アイルランド、アクアブルースポート)ら7名が逃げ続ける photo:Kei Tsuji / TDWsportロットNLユンボやコフィディスを先頭に進むメイン集団ロットNLユンボやコフィディスを先頭に進むメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport

気温10度前後のブリッドリントンを発ってしばらくすると、8名の逃げグループが先行を開始する。UCIプロコンチネンタルチームとUCIコンチネンタルチームのメンバーで構成された逃げは、UCIワールドチーム率いるメイン集団から3分のリードを得た。

オリカ・スコット、コフィディス、ロットNLユンボの集団コントロールによって逃げは思うようにタイム差を広げることができず、最後のKOMロビンフッズベイ(全長1.5km/平均11%)で先頭はペリグ・ケムヌール(フランス、ディレクトエネルジー)単独に。フィニッシュまで28kmを残したこのKOMでディメンションデータがペースアップするとメイン集団は粉砕。急勾配の登りでほとんどのスプリンターは振るい落とされ、メイン集団は30名ほどにまで縮小した。

KOMゴースランドに差し掛かる逃げグループKOMゴースランドに差し掛かる逃げグループ photo:Kei Tsuji / TDWsport
KOMゴースランドを登るメイン集団KOMゴースランドを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsportオリカ・スコット、コフィディス、ロットNLユンボがメイン集団を牽引するオリカ・スコット、コフィディス、ロットNLユンボがメイン集団を牽引する photo:Kei Tsuji / TDWsport

エーススプリンターを復帰させたいチームの牽引によって集団は一塊に戻り、逃げを残り8km地点で吸収する。残り4kmを切ってから登場したスカボロー市内の登りを利用してディフェンディングチャンピオンのトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が飛び出すシーンも見られたが、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)がこれを封じる。

オリカ・スコットとカチューシャ・アルペシンが主導権を握ろうと先頭に立ち、そのまま残り1kmアーチを駆け抜ける。ライバルチームを差し置いてタイミングよく前に出たのはコフィディス。ジェフリー・スープの後ろから、フィニッシュまで250mを残してナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が発進した。

勝ちパターンに持ち込んだブアニだったが、その加速はシャープさに欠け、すぐにフルーネウェーヘンに追い抜かれてしまう。オランダチャンピオンのフルーネウェーヘンが時折顔を上げてフィニッシュラインまでの距離を目視し、再び下を向いてもがく。「ポケットロケット」ことカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が横に並んだが、最終的に10cm程度の差でフルーネウェーヘンが先着した。

後方で大落車が発生する中、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が先頭に立つ後方で大落車が発生する中、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が先頭に立つ photo:Kei Tsuji / TDWsportディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)に並ぶカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)に並ぶカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ハンドルを投げ込むディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ハンドルを投げ込むディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport

22歳のユアンを下した23歳のフルーネウェーヘンは「最後の山岳が厳しいことは分かっていた。第2集団に取り残されてしまったけど、スプリント勝負に絡むことができたのは全てチームのおかげ。この勝利は彼らのものだ。最後はユアンに並ばれながらも、今日は何としても勝たなければならなかった」とコメント。開幕スプリントの勝利は2年連続で、慣れた手つきで青い総合リーダージャージに袖を通した。

「どのチームもリードアウトマンを欠いていたので、スロースピードの状態からスプリントが始まった」と振り返るのは2位のユアン。「低速から鋭い加速で抜け出したのがディラン(フルーネウェーヘン)。自分も反応して並んだけど、完全に追い抜くには至らなかった」。

フルーネウェーヘンとユアンが先頭にしのぎを削る中、そのすぐ後ろではコースを完全に塞ぐ大落車が発生した。ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝経験のあるマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)が前走車のホイールに接触して落車。連鎖的に落車は広がり、実に10名以上が地面に投げ出された。マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)とラッセル・ダウニング(イギリス、JLTコンドール)は鎖骨骨折を負っている。その他にも多くの選手が打撲や擦過傷を負い、バイクが壊れた数名の選手は歩いてフィニッシュラインを切った。



接戦を制したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)接戦を制したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport集団復帰に力を尽くしたチームメイトに感謝するディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)集団復帰に力を尽くしたチームメイトに感謝するディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ブルージャージに袖を通したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)ブルージャージに袖を通したディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport落車でバイクが壊れた選手は歩いてフィニッシュする落車でバイクが壊れた選手は歩いてフィニッシュする photo:Kei Tsuji / TDWsport
鎖骨骨折でリタイアしたマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)のバイクを押してフィニッシュするベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)鎖骨骨折でリタイアしたマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)のバイクを押してフィニッシュするベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsportチョコレートでできたYトロフィーを受け取るディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)チョコレートでできたYトロフィーを受け取るディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport



ツール・ド・ヨークシャー2017第1ステージ
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)    4h09'38"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
3位 クリス・オピー(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
5位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 アンドレ・ローイ(オランダ、ルームポット)
8位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
9位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
10位 エンリケ・サンス(スペイン、ラレーGAC)

個人総合成績
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)    4h09'28"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)         +04"
3位 クリス・オピー(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)       +06"
4位 アンヘル・マドラソ(スペイン、デルコ・マルセイユ)          +08"
5位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
6位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
8位 アンドレ・ローイ(オランダ、ルームポット)
9位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
10位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)

ポイント賞
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)      15pts
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)        12pts
3位 カミル・グラデク(ポーランド、ワンプロサイクリング)        10pts

山岳賞
1位 エティエンヌ・ファンエンペル(オランダ、ルームポット)       9pts
2位 ペリグ・ケムヌール(フランス、ディレクトエネルジー)        4pts
3位 コノール・デューン(アイルランド、アクアブルースポート)      4pts

text&photo:Kei Tsuji in Scarborough, United Kingdom

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