5月28日(日)の閉幕まで、厳しい山岳ステージが連続して登場するジロ・デ・イタリア。アルプスやドロミテの山岳地帯を走る後半ステージの見どころをプレビューします。



5月16日(火)第10ステージ フォリーニョ〜モンテファルコ 39.8km(個人TT) ★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第10ステージジロ・デ・イタリア2017第10ステージ image:RCSsportジロ・デ・イタリア後半戦は最終的なマリアローザ争いを大きく左右する39.8kmの個人タイムトライアルで始まる。フォリーニョ旧市街のレプッブリカ広場をスタートしてしばらくは平坦基調。1つ目の中間計測が置かれたベヴァーニャの街(9.8km地点)を過ぎるとコースは丘陵地帯に入る。

まずマドンナ・デッレ・グラツィエまで勾配4〜5%の登りを突き進み、そこから下りと平坦区間を経て2つ目の中間計測バスタルド(28.2km地点)を通過。残り6km地点から先はモンテファルコのフィニッシュ地点まで勾配2〜3%の緩斜面が続く。いずれの登りも勾配が緩く、距離が長いため、どの選手もフルスペックのTTバイクで挑むことになるだろう。レース主催者による優勝予想タイムは50分前後。平均スピードは47km/h前後に達すると見られている。TTを得意とする選手たちはピュアクライマーたちから数分のリードを得ることが可能。休息日明けだけにガクンとコンディションを落とす選手も出てくるかもしれない。



5月17日(水)第11ステージ フィレンツェ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 161km ★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第11ステージジロ・デ・イタリア2017第11ステージ image:RCSsportトスカーナ州の観光都市フィレンツェを見下ろすミケランジェロ広場をスタートする第11ステージ。オレンジがかったレンガ色の美しい街並みを後にすると、選手たちの前にはアペニン山脈の4つの峠が立ちはだかる。

2級山岳コンスーマ峠(全長15.9km/平均6.1%)、3級山岳カッラ峠(全長16km/平均5.3%)、3級山岳カルナイオ峠(全長11.4km/平均4.5%)、2級山岳モンテ・フマイオーロ(全長23.1km/平均3.7%)が立て続けに登場し、平坦と呼べる区間はほぼない。最後の2級山岳モンテ・フマイオーロの頂上手前には最大12%の急勾配区間もあり、フィニッシュの3.5km手前まで続く下りは路面が良好とは言えない状態。登場する山岳はカテゴリー2〜3級でしかも山頂フィニッシュではないが、主催者は難易度4つ星を与えている。仮にメイン集団が一塊でフィニッシュにたどり着いたとしても、その人数は大きく絞られているはずだ。



5月18日(木)第12ステージ フォルリ〜レッジョエミリア 229km ★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第12ステージジロ・デ・イタリア2017第12ステージ image:RCSsport今大会最長となる229kmステージの難易度は1つ星。前半にかけてアペニン山脈の2級山岳コッラ・ディ・カザーリア(全長7.7km/平均4.9%)と3級山岳ヴァリコ・アッペニーニコ(全長10.1km/平均3.3%)を通過するが、この日の主役は間違いなくスプリンターたちだ。なお、レース中盤には交通規制されたアウトストラーダA1(イタリアの南北を結ぶ主要高速道路)も通過する。

アペニン山脈からエミリアロマーニャ州に広がる平原に戻るとレッジョエミリアのフィニッシュ地点まで真っ平ら&真っしぐら。「スーパーカーの首都」モデナの街をかすめ、残り2km地点から緩いコーナーを3つこなして長さ350mの最終ストレートへ。道幅7mのイソンツォ通りで長い第12ステージはフィナーレを迎える。レース時間は6時間近くになるはずだ。



5月19日(金)第13ステージ レッジョエミリア〜トルトナ 167km ★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第13ステージジロ・デ・イタリア2017第13ステージ image:RCSsportこれほどまでに起伏に乏しいステージは他にない。ポー平原の南端を西に進む第13ステージに登りという登りは登場しない。2日連続でピュアスプリンターに出番が回ってくる。そして、同時に、この第13ステージがピュアスプリンターにとってステージ優勝のラストチャンスとなる。

レッジョエミリアからパルマ、ピアチェンツァ、ブローニの街を経て、ミラノ〜サンレモでも通過するトルトナでスプリントフィニッシュ。残り500m地点のラウンドアバウトを除いてリードアウトトレインの隊列を乱すような障害物はない。赤いマリアロッサからシクラメン色のマリアチクラミーノに戻されたポイント賞ジャージをかけて、スプリンターたちが最後のバトルを繰り広げる。最終日ミラノでマリアチクラミーノを受け取りたいスプリンターにとっては落とせないステージだ。



5月20日(土)第14ステージ カステッラーニア〜オローパ 131km ★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第14ステージジロ・デ・イタリア2017第14ステージ image:RCSsport故ファウスト・コッピの生誕地カステッラーニアをスタートする第14ステージ。長いニュートラルゾーンを終えると、この日もポー平原を貫く平坦路が延々と100kmにわたって続く。しかし残り30kmを切ったあたりからコースは山岳地帯に向かって高度を上げていく。

フィニッシュ地点は世界遺産に指定されたキリスト教の聖地オローパ。標高1,142mの1級山岳オローパ(全長11.8km/平均6.2%)と言えば、1999年に故マルコ・パンターニがチェーンを落としながらも驚異の49人抜き&ステージ優勝を果たした場所だ。残り6km地点から勾配は8〜10%まで上昇し、大聖堂の前に引かれたフィニッシュラインに向かう。カテゴリーのついた登りとしてはエトナとブロックハウスに続く今大会3つ目の山頂フィニッシュ。「モンターニャ・パンターニ(パンターニの山)」に指定された聖地オローパがジロに登場するのは3年ぶり6度目。過去5回はすべてイタリア人選手がステージ優勝を飾っている。



5月21日(日)第15ステージ ヴァルデンゴ〜ベルガモ 199km ★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第15ステージジロ・デ・イタリア2017第15ステージ image:RCSsportオローパ麓のヴァルデンゴから東に向かい、大都市ミラノの北側をかすめるようにしてロンバルディア州のベルガモへ。休息日前の日曜日に特大の山岳ステージを設定するのが通例だが、主催者はフィニッシュ直前にベルガモ旧市街を通過するお馴染みのレイアウトをもってきた。

残り50kmを切ってから登場する2級山岳ミラコロ・サンサルヴァトーレ(全長8.7km/平均7%)と3級山岳セルヴィーノ(全長6.9km/平均5.4km)でセレクションがかかった状態で、残り5.2km地点から始まるベルガモ旧市街の登りにアタック。平均7.9%/最大12%というパンチの効いた登りは長さこそ1km強だが、細く曲がりくねり、しかも丸石が敷き詰められた箇所もある。残り3.5km地点でピークを迎えるとそこからベルガモ新市街に向かってダウンヒル。この「イル・ロンバルディア」を彷彿とさせる中級山岳ステージは前日のオローパ山頂フィニッシュよりも高い難易度4つ星だ。



5月22日(月)休息日



5月23日(火)第16ステージ ロヴェッタ〜ボルミオ 222km ★★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第16ステージジロ・デ・イタリア2017第16ステージ image:RCSsportイタリア語で「タッポーネ」と呼ばれるクイーンステージが最終休息日明けに登場する。渓谷沿いに山岳地帯を進み、まずは1級山岳モルティローロ峠(全長12.6km/平均7.6%/最大16%)をクリア。モルティローロは急斜面の北側ではなく南側からのアプローチだ。つまり頂上通過後は急勾配&テクニカルな下りが待っている。

その後、フィニッシュ地点ボルミオを一旦通過し、チーマコッピ(大会最高地点)の標高2,758mステルヴィオ峠(全長21.7km/平均7.1%/最大12%)に挑む。延々と続く下りスイッチバックを経て一旦スイスに入国後、ステルヴィオ峠を北側から登り返してジロ初登場の1級山岳ウンブライルパス(全長13.4km/平均8.4%/最大12%)をクリアし、下り返してボルミオにフィニッシュする。実質的にステルヴィオ峠を2回登る難コースの獲得標高差は何と5,400m。近年ステルヴィオ峠は雪と切っても切れない関係で、気象条件によっては数字以上に過酷なステージになり得る。


5月24日(水)第17ステージ ティラーノ〜カナツェイ 219km ★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第17ステージジロ・デ・イタリア2017第17ステージ image:RCSsportアルプスでのクイーンステージを終え、ジロは次なる山岳決戦の舞台ドロミテに向けて東に進む。スイス国境に近い山間の街ティラーノをスタートする第17ステージは、序盤に2級山岳アプリカ(全長12.3km/平均6.3%)と2級山岳トナーレ峠(全長11km/平均5.7%)を越え、中盤にかけて3級山岳ジョーヴォ(全長5.9km/平均6.8%)をクリア。そこからドロミテらしい切り立った岩山に見下ろされたファッサ渓谷を登っていく。

標高1,442mのフィニッシュ地点カナツェイに至る勾配2〜3%ほどの緩斜面でアタックを決めるのは難しい。難易度の高い山岳ステージに前後を挟まれたこの日は総合上位陣はリカバリーに励むはず。かと言ってピュアスプリンター向きとも言えず、まだステージ優勝をつかんでいないチームが逃げ切りを狙って積極的に動いてくるだろう。



5月25日(木)第18ステージ モエーナ〜オルティセイ 137km ★★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第18ステージジロ・デ・イタリア2017第18ステージ image:RCSsportドロミテの魅力をぎゅっと凝縮したような難関山岳コースが登場。コース全長は137kmと短いが、標高2,000m級の峠をいくつも越えていくため、獲得標高差は4,000mを超える。

スタート後しばらくして1級山岳ポルドイ峠(全長11.9km/平均6.7%)が始まり、2級山岳ヴァルパローラ峠(全長12.3km/平均6.4%)、2級山岳ガルデーナ峠(全長9.3km/平均6.4%)、3級山岳ピネイ峠(全長4.2km/平均6.3%)、1級山岳ポンティヴェス(全長9.3km/平均6.8%)を立て続けに越え、そこからさらにオルティセイまで登ってようやくフィニッシュ。残り1kmを切ってから最大13%の急勾配区間や石畳も登場する。文句なしの難易度5つ星コースでマリアローザ候補はさらに絞り込まれるだろう。



5月26日(金)第19ステージ サンカンディド〜ピアンカヴァッロ 191km ★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第19ステージジロ・デ・イタリア2017第19ステージ image:RCSsport難易度4つ星の第19ステージはオーストリア国境に近いサンカンディドをスタート。3級山岳モンテクローチェ・コメリコ(全長7.9km/平均4.3%)と2級山岳キアンズタン(長さ11.8km/平均6.1%)を越えて、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の平野を目指す。道中、74km地点であの悪名高きモンテゾンコランの麓に位置するオヴァーロを通過するが、今回は激坂に目もくれず南下する。

つかの間の平坦区間を経て選手たちが目指すのは1級山岳ピアンカヴァッロ(全長15.4km/平均7.3%/最大14%)。マルコ・パンターニがステージ優勝した1998年以来19年ぶり2度目の登場となるピアンカヴァッロは前半に勾配10%前後の急坂区間があり、後半は比較的緩やかなのが特徴。フィニッシュまで2kmを残してコースは平坦基調となり、勾配1〜2%の緩斜面が標高1,290mの高原(冬場はスキーリゾート地として栄えている)に引かれたフィニッシュラインまで続いている。



5月27日(土)第20ステージ ポルデノーネ〜アシアーゴ 190km ★★★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第20ステージジロ・デ・イタリア2017第20ステージ image:RCSsportイタリアの中で最も自転車競技熱が高いと言われるヴェネト州。レース序盤に登場する4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオは最大勾配が18%に達する激坂であり、地元産のワイン片手に盛り上がる観客がコースの沿道を埋め尽くすだろう。ヴァルドッビアーデネに代表されるワインの一大産地を抜け、本格的な勝負が始まるのは1級山岳モンテ・グラッパ(全長24.2km/平均5.3%)からだ。

勾配はさほど大きくないが、一発逆転を狙うチームはこの1級山岳モンテ・グラッパから動いてくるはず。そこから一旦平野までテクニカルなダウンヒルを下りきり、続く1級山岳フォーザ(全長14km/平均6.7%)が今大会最後の山岳バトルの舞台となる。ヘアピンが連続して登場する登りでマリアローザをかけた戦いが繰り広げられるのは間違いないが、フィニッシュが1級山岳フォーザの14.8km先に置かれているのがポイントだ。たとえ登りで遅れても人数を揃えて追走すれば挽回可能。ここでは単純な登坂力に加えてレースを読む判断力が要求される。



5月28日(日)第21ステージ モンツァ〜ミラノ 29.3km(個人TT) ★★ → コースマップ

ジロ・デ・イタリア2017第21ステージジロ・デ・イタリア2017第21ステージ image:RCSsport前日のフィニッシュ後に約250kmバス移動した選手たちが、最終日の朝、F1イタリアGPの開催地モンツァ・サーキットに集結する。サルデーニャ島で始まった3週間(厳密に言うと24日間)の長い戦いは、残すところモンツァからミラノまでの29.3km平坦路のみ。予想タイム32〜35分間の「時間との戦い」でジロは締めくくられる。

モンツァ・サーキットを1周(全長5.7km)ぐるっと周回後、ピット横から一般道に出てミラノ中心部へ。緩やかではあるが下り基調のためハイスピードな戦いが予想される。石畳や連続コーナーも登場するミラノの大通りを抜け、中心部のドゥオーモ広場にフィニッシュ。普段観光客でごった返す広場に設置された表彰台で、第100代チャンピオンは優勝トロフィー「トロフェオ・センツァ・フィーネ」を受け取る。第100回大会を締めくくるにふさわしい舞台が整った。




text:Kei Tsuji in Alghero, Italy