連日繰り広げられたヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)による激しい総合争い。最終日の中間スプリントで先着、そしてゴール勝負で前に食らいついたニーバリが2秒差を逆転し総合優勝に輝いた。



風光明媚な山中を走るプロトン風光明媚な山中を走るプロトン photo:www.tourofcroatia.com
4月18日から23日までの6日間で開催されたステージレースが、ツアー・オブ・クロアチア。その名の通り東ヨーロッパはバルカン半島にあるクロアチアを舞台にした3回目開催のUCI1クラスレースで、昨年まで同時期開催だったツアー・オブ・ターキーがシーズン後半に移動したため、ツアー・オブ・アルプスには劣るものの、ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)らビッグネームの参加を見た。

参加チームは、ジロ・デ・イタリアを見据えニーバリ他一軍メンバーを揃えたバーレーン・メリダや、スプリンター中心のトレック・セガフレード、そしてUAEチームエミレーツ、アスタナという4つのUCIワールドチームと、NIPPOヴィーニファンティーニ(日本人選手は小石と窪木)やカハルーラル・セグロスRGAなど7つのプロコンチームら。

スプリント勝負が繰り広げられたのは第1、第3、第4ステージで、冷雨に濡れた初日のゴールを制しリーダージャージを射止めたのはサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)だった。NIPPOからはエドゥアルド・グロス(ルーマニア)とニコラス・マリーニ(イタリア)がそれぞれ2位と3位に入っている。

第1ステージ NIPPOヴィーニファンティーニ勢を下したサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)第1ステージ NIPPOヴィーニファンティーニ勢を下したサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:www.tourofcroatia.com第3ステージ ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)がジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)を抑えて勝利第3ステージ ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)がジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)を抑えて勝利 photo:www.tourofcroatia.com

第4ステージ 単独で逃げたアラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は残り20mで飲み込まれる第4ステージ 単独で逃げたアラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は残り20mで飲み込まれる photo:www.tourofcroatia.com第4ステージ ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)がスプリント2勝目第4ステージ ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)がスプリント2勝目 photo:www.tourofcroatia.com


大会最長の237kmを駆け抜けた第3ステージではニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)がジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)を下して勝利。好調のルッフォーニは続く第4ステージも制し、最終的に総合ポイント成績を首位で終えた。

総合成績が動いたのは早くも2日目。当初は標高約1800mの超級山岳にフィニッシュする予定だったものの、降雪のためゴール地点の標高が820m地点へと下げられた(登坂距離は約15km短縮)ため、難易度を下げての開催に。最後は精鋭4名による勝負で早掛けしたクリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ)が先着し、地元最大のレースで嬉しい勝利を挙げると共に総合成績でも首位に浮上してみせる。

第2ステージ 母国で嬉しい勝利を挙げたクリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ)第2ステージ 母国で嬉しい勝利を挙げたクリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ) photo:www.tourofcroatia.com第2ステージ クリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ)が総合首位に浮上第2ステージ クリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ)が総合首位に浮上 photo:www.tourofcroatia.com

第3ステージ 総合首位に立ったハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)第3ステージ 総合首位に立ったハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) photo:www.tourofcroatia.com第4ステージ 総合首位となったヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がインタビューに答える第4ステージ 総合首位となったヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がインタビューに答える photo:www.tourofcroatia.com


しかしデュラセクはルッフォーニが勝利した翌日に大きく遅れ、リーダージャージは前日2位のハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)の手に。この時点でニーバリは5秒差の2位に付けた。

すると翌日、序盤から逃げたアラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が逃げ切りの可能性を濃厚に残したまま逃げ(マランゴーニは残り20mで捕まり勝利ならず)、慌てたメイン集団が熾烈なペースアップを行ったためゴール直前で隊列が分断してしまう。ニーバリは先頭集団に残ったが、ローソンが7秒遅れたことで2秒差の総合逆転が発生した。

ミケーレ・スカルポーニへの黙祷から始まった第5ステージは、超級山岳を2度登ってゴールするクイーンステージで、最後はニーバリ、ローソン、ヤン・ハート(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)の熾烈な戦いが繰り広げられた。スプリント力に勝るローソンが勝利し、食らいついたニーバリはタイム差ゼロにまとめたものの、ボーナスタイムによって再びローソンが2秒差で総合首位に浮上し最終日を迎えることに。

第5ステージ チームメイトに守られて走るヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)第5ステージ チームメイトに守られて走るヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:www.tourofcroatia.com第5ステージ 争うように集団先頭を牽くカハルーラル・セグロスRGAとバーレーン・メリダ第5ステージ 争うように集団先頭を牽くカハルーラル・セグロスRGAとバーレーン・メリダ photo:www.tourofcroatia.com

第5ステージ スプリントで勝利し再び総合首位に立ったハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)第5ステージ スプリントで勝利し再び総合首位に立ったハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) photo:www.tourofcroatia.com第5ステージ 総合首位浮上を祝うハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)第5ステージ 総合首位浮上を祝うハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) photo:www.tourofcroatia.com


クロアチアの首都ザグレブへと至る最終第6ステージは基本的には平坦コースながら、ザグレブの周回コースにはゴールまで続く石畳の直登が用意されており、総合首位変動の可能性を大きく匂わせるものだった。しかしこの日、ゴールを待たずしてバーレーン・メリダが動く。

コース中盤に用意されていた中間スプリントでのボーナスタイムを狙うべく、スタート直後からバーレーン・メリダが徹底的に逃げを潰していく展開に。防戦するカハルーラル・セグロスRGAもアタックを繰り出したが成功せず、集団は一つのまま中間スプリントポイント/3級中間山岳ポイントへと到達した。

これまでステージ2勝を挙げているルッフォーニが自身の総合ポイント首位を守るためスプリントしたが、コーナーのイン側を突いたニーバリが先着。ローソンはニーバリのインから差しこもうとしたが失敗に終わり、この時点でニーバリは1秒差の総合逆転に成功する。

中間スプリントまで逃げを許さなかったバーレーン・メリダ中間スプリントまで逃げを許さなかったバーレーン・メリダ photo:www.tourofcroatia.com第6ステージ ステージ2勝目を挙げたサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)第6ステージ ステージ2勝目を挙げたサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:www.tourofcroatia.com

豪快にシャンパンファイトで勝利を祝うヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)豪快にシャンパンファイトで勝利を祝うヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:www.tourofcroatia.com
予想通り終盤にはNIPPOグロスらが逃げ切りを狙う激しいアタック合戦が仕掛けたものの、バーレーン・メリダ、そしてUAEチームエミレーツらのペースメイクによって残り1kmで全て吸収。ステージ優勝と総合優勝を賭けた石畳上での登坂勝負が幕開ける。

真っ先に抜け出したのは、ここまで徹底的にペースメイクを担ってきたUAE。まずポランツェが、次いでモードロが仕掛け、モードロとポランツェでワンツーフィニッシュに成功。スプリンターの加速にしがみついたニーバリは登坂に苦しんだローソンを7秒引き離しステージ4位でフィニッシュすると共に、めまぐるしく総合が動いたツアー・オブ・クロアチアを総合優勝で締めくくった。

ツアー・オブ・クロアチア総合表彰台ツアー・オブ・クロアチア総合表彰台 photo:www.tourofcroatia.com
これまでスカルポーニと深いアシスト関係で結ばれていたニーバリは「ニュースを知り終盤2日間は悲しさを秘めながら走っていた。この勝利は残された彼の家族に捧げたい」と心境を打ち明ける。「最後の登坂スプリントは非常に厳しいものだったが、今回の結果でジロに向けてのチームの好調さをアピールできたと思う。日に日にコンディションは上がっているし、開幕が楽しみだ」と目前に迫ったジロ・デ・イタリアに向けて士気を高めた。



ツアー・オブ・クロアチア2017結果
4月18日 第1ステージ オシエク〜コプリヴニツァ(227km)
1位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)5h24’19”
2位 エドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
3位 ニコラス・マリーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
4位 ディラン・ペイジ(スイス、カハルーラル・セグロスRGA)
5位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)

4月19日 第2ステージ トロギル〜ビオコヴォ(107km)
1位 クリスティアン・ドゥラセク(クロアチア、UAEチームエミレーツ) 2’43”38”
2位 ハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
3位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +03”
4位 ヤン・ハート(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
5位 フェリックス・グロスシャルトナー(オーストリア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)+09”

4月20日 第3ステージ イモツキ〜ザダル(237km)
1位 ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 5h55’27”
2位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)
3位 リッカルド・ミナーリ(イタリア、アスタナ)
4位 アハメット・オルケン(トルコ、トルクケセルスポール)
5位 エドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)

4月21日 第4ステージ ツリクヴェニツァ〜ウマグ(171km)
1位 ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 4h10’15”
2位 リッカルド・ミナーリ(イタリア、アスタナ)
3位 イヴァン・サヴィツキー(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)
4位 マルコ・カノーラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
5位 ドゥサン・ラホヴィッチ(セルビア、アドリアモービル)

4月22日 第5ステージ ポレッチ〜ウチカ(141km)
1位 ハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) 3h41’47”
2位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
3位 ヤン・ハート(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
4位 フェリックス・グロスシャルトナー(オーストリア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)+05”
5位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +08”

4月23日 第6ステージ サモボル〜ザグレブ(147km)
1位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 3h16’52”
2位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +02”
3位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
4位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位 マルコ・カノーラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) +06”

個人総合成績
1位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 25h12’10”
2位 ハイメ・ローソン(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) +08”
3位 ヤン・ハート(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) +23”
4位 フェリックス・グロスシャルトナー(オーストリア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)+35”
5位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)+40”
6位 カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ、バーレーン・メリダ)+59”
7位 ミカエル・シュレゲル(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)+1’23”
8位 ジェームス・ノックス(イギリス、チームウィギンス) +1’27”
9位 ジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)+1’38”
10位 エデュアルド・サンチェス(コロンビア、ビチクレッタ・ストロングマン)+1’45”

text:So.Isobe
photo:www.tourofcroatia.com

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