5日間の日程で開催されたツアー・オブ・アルプスが、4月21日、最終日を迎え、小集団スプリントでティボー・ピノ(フランス、エフデジ)が勝利。総合リードを守り抜いたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝に輝いた。



ツアー・オブ・アルプス2017第5ステージツアー・オブ・アルプス2017第5ステージ photo:Tour of the Alpsツアー・オブ・アルプス最終ステージはスマラーノからトレントまでの192.5kmで開催。残り34km地点に位置する標高1,650mの1級山岳ヴァソン・モンテボンドーネ(全長22km/平均5.2%)と、残り10kmを切ってから登場する高低差220mのノヴァリーネの丘が勝負の行方を左右した。

激しいアタック合戦の末に生まれたベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼール)やスティーヴ・モラビト(スイス、エフデジ)を含む9名の逃げは、山岳賞狙いのガスプロム・ルスヴェロの集団牽引によって大きなリードは奪えず。この日最大の難所である1級山岳ヴァソン・モンテボンドーネの長い登坂が始まると逃げは吸収され、そこから総合上位陣の戦いが始まった。

総合2位のティボー・ピノ(フランス、エフデジ)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)、ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)の攻撃によってチームスカイのアシスト体制は崩れ、トーマスが一時的に孤立するシーンも。後方から復帰したミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)がライバルたちのアタックを封じ込めた。

1級山岳ヴァソン・モンテボンドーネで唯一抜け出すことに成功したのは20歳のエガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)だった。「未来のキンタナ」と呼ばれ、UCIワールドチームが注目するコロンビアンクライマーが単独で頂上をクリアしたが、スイッチバックが延々と続く長い下り区間で後続集団に吸収。終始アグレッシブな動きを見せたベルナルはヤングライダー賞ジャージをヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)から奪うことに成功している。



トーマスに対して攻撃を仕掛けるティボー・ピノ(フランス、エフデジ)トーマスに対して攻撃を仕掛けるティボー・ピノ(フランス、エフデジ) photo:Tour of the Alps積極的にアタックを仕掛けるエガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)積極的にアタックを仕掛けるエガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ) photo:Tour of the Alps


平坦区間でランダが集団を先頭固定で引き続け、最後のノヴァリーネの丘に突入する。上りが始まるとロドルフォ・トレス(コロンビア、アンドローニジョカトリ)が真っ先にアタックしたが、精鋭たちを振り切ることはできない。ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)のアタックによって集団は崩壊し、ここにトーマスとピノ、スカルポーニが合流。今大会の山岳で主導権を握った4名が先頭グループを形成し、ノヴァリーネの丘を越えた。

トーマス、ピノ、ポッツォヴィーヴォ、スカルポーニの4名には残り4km地点で後続9名が追いつき、13名が小集団を形成してフィニッシュ地点トレントの街へ。街中の連続コーナーをこなし、残り200mの最終コーナーを先頭で抜けたピノがそのままスプリントを開始した。

下ハンドルを握ってフィニッシュラインに突き進んだピノがブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)やトーマスを振り切ってフィニッシュ。初日からステージ3位、2位、5位、2位と、上位入賞を続けていたピノがステージ優勝をようやく手にした。今シーズン2勝目を飾ったピノは「願い続けたステージ優勝にようやく手が届いた。数秒差(7秒差)で総合優勝を逃したことは悔しいけど、第3ステージのトーマスの強力なアタックに反応しなかった自分に非がある。今日も彼を引き離すことは不可能だった」と語る。

2013年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合7位、2014年ツール・ド・フランスで総合3位という成績を残しているピノは2017年にジロ・デ・イタリアに初出場予定。好調さを見せたピノは「まだジロのコース詳細をチェックしていないけど、山頂フィニッシュは自分に味方する。3週間にわたって山岳が詰め込まれているジロは自分向きだと思う」とコメントしている。

ジロ前哨戦として名高いツアー・オブ・アルプス(前ジロ・デル・トレンティーノ)で総合優勝に輝いたのは、第3ステージで勝利して総合首位に立ち、総合リードを守り抜いたトーマス。「多くの選手がアタックを仕掛けてきたけど、今日は総合で最も危険な存在であるピノのマークに徹した。最後の山岳を越えてからはミケル・ランダがフィニッシュまで連れて行ってくれた」と、元トラック団体追い抜き金メダリストのトーマスはチームメイトの献身に感謝する。

ランダとダブルエース体制でジロに挑むトーマスは「ジロ前にこの上ない結果を残すことができた。チームスカイは多大なプレッシャーを受けたけど、チームメイトたちはうまく対処してくれたし、ここ数日間はミケル・ランダがアシストとして素晴らしい仕事をこなしてくれた。3週間のステージレースは別世界とはいえ、ジロでも彼とチームリーダーの役割をシェアすることで良い結果を残せると思う」と、2週間後に迫ったジロ開幕に向けて自信を得た様子だ。



ブックウォルターを振り切って勝利したティボー・ピノ(フランス、エフデジ)ブックウォルターを振り切って勝利したティボー・ピノ(フランス、エフデジ) photo:Tour of the Alps総合優勝に輝いたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)総合優勝に輝いたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tour of the Alps


ツアー・オブ・アルプス2017第5ステージ結果
1位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)               5h13'01"
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
5位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)       +02"
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
7位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)
8位 ダニーロ・チェラーノ(イタリア、イタリアナショナル)
9位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)
10位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
DNF 伊藤雅和(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)          20h49'37"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)                 +07"
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)   +20"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)             +27"
5位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)               +42"
6位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)       +52"
7位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)       +54"
8位 ダニーロ・チェラーノ(イタリア、イタリアナショナル)
9位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)       +1'02"
10位 ロドルフォ・トレス(コロンビア、アンドローニジョカトリ)      +1'16"

山岳賞
1位 アレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)  33pts
2位 ダヴィデ・オリコ(イタリア、サンジェミニMG)            20pts
3位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)       18pts

ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)     20h50'39"
2位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)      +1'36"
3位 クリスティアン・ロドリゲス(スペイン、ウィリエールトリエスティーナ)+3'30"

チーム総合成績
1位 BMCレーシング        62h35'31"
2位 アンドローニジョカトリ      +1'58"
3位 アージェードゥーゼール      +2'29"

text:Kei Tsuji