50名の集団スプリントに持ち込まれたツアー・オブ・アルプス第4ステージ。総合成績に影響するボーナスタイムを狙ったオールラウンダーたちのスプリントで、マッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)が勝利した。



北イタリアの丘を進む北イタリアの丘を進む photo:Tour of the Alps
ツアー・オブ・アルプス2017第4ステージツアー・オブ・アルプス2017第4ステージ photo:Tour of the Alpsイタリア・トレンティーノ=アルト・アディジェ州北部に位置するボルツァーノをスタートするツアー・オブ・アルプス第4ステージ。標高1,363mの1級山岳パッソ・メンドラと1級山岳フォルチェラ・ディ・ブレズを越え、リンゴの一大産地として知られるクレスに向かう165.3kmコースで行われた。

レース序盤に形成された5名の逃げグループは2つめの1級山岳フォルチェラ・ディ・ブレズで崩壊。単独で登りアタックを成功させたステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)が頂上を先頭通過し、下り区間でキリアン・フランキーニー(アメリカ、BMCレーシング)が追いついて先頭は2名に。

このGPMフォルチェラ・ディ・ブレズではメイン集団でも動きが見られ、ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)のアタックに続いてティボー・ピノ(フランス、エフデジ)を含む総合上位陣が集団から抜け出すことに成功。しかしチームスカイの集団牽引によってピノらの動きは封じ込められた。

タイム差をキープしながら逃げる先頭ピラッツィとフランキーニーを追って集団を飛び出したユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)は、30分間におよぶ長い単独追走の末に先頭にジョイン。3名に人数を増やした先頭グループは、チームスカイが牽引するメイン集団から1分リードで残り5kmを切った。

タイム差と残り距離を考えると逃げ切りも十分に考えられたが、フィニッシュ手前の約3kmは下り基調(勾配-1%)の幹線道路。アスタナやキャノンデール・ドラパックが集団のペースを上げるとタイム差は勢いよく縮まり、先頭3名は残り1kmアーチを前に吸収される。アージェードゥーゼールとエフデジというフレンチチームによるリードアウト争いを経て、残り150mで総合3位ピノがスプリントを開始した。

ステージ優勝者に与えられるボーナスタイム10秒を狙って好位置からスプリントしたピノだったが、「(総合2位)ポッツォヴィーヴォのライバルであるピノのボーナスタイム獲得を阻止することが自分の役目だった」というモンタグーティがピノに並び、ここにローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)も加わって横並びでフィニッシュ。わずかな差で先着したモンタグーティが片手を突き上げた。

リーダージャージを着て走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)リーダージャージを着て走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tour of the Alps接戦スプリントで勝利したマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)接戦スプリントで勝利したマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール) photo:Tour of the Alps

「チームはステージ優勝を飾るなんて予想していなかったと思う。ドアを閉めようと思えば閉めることができたはずなのに、進路を塞がずフェアにスプリントしたピノに感謝している」と、スプリント勝利を飾ったモンタグーティは語る。

モンタグーティは2011年に加入したアージェードゥーゼールのジャージでの初勝利。最後の勝利はデローザ・スタックプラスティック時代の2010年ジロ・ディ・カラブリアまで遡る。「7年間も勝利から遠ざかっていたので、出場を熱望していたこのレースでその悪い流れを断ち切ることができてよかった。このレースはジロ・デ・イタリアの最高の準備レース。今年は去年よりも良い状態でジロに挑めそうだ」。

ステージ2位のピノはボーナスタイム6秒を獲得し、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)を抜いて総合2位に浮上した。総合首位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とのタイム差は13秒に縮まっている。

総合タイムを失いながらもリーダージャージを着て最終ステージに挑むことになったトーマスは「今日はライバルチームがプレッシャーを与え続けるハードなレースだった。チームメイトの献身がなければリーダージャージを失っていたと思う。明日もライバル全員が全開で挑んでくるはず。好調なピノだけでなく、警戒すべき選手がトップ10に揃っている」と、気を緩めない。「ジロ・デ・イタリアにはランダとダブルエース体制で挑む予定で、3週目に良い状態のどちらかがエースを担う。2枚のカードで挑むことでプレッシャーを和らげることができるし、強力なチームも揃っている。ここ数年間チームスカイはジロでツキに見放されているけど、今年は良い流れに乗りたい」。

ツアー・オブ・アルプス最終ステージはスマラーノからトレントまでの192.5kmで開催。残り34km地点に登場する標高1,650mの1級山岳ヴァソン・モンテボンドーネ(全長22km/平均5.2%)で激しいアタック合戦が繰り広げられることになりそうだ。

表彰台で受け取ったリンゴをかじるマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)表彰台で受け取ったリンゴをかじるマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール) photo:Tour of the Alpsリーダージャージを守ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)リーダージャージを守ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tour of the Alps


ツアー・オブ・アルプス2017第4ステージ結果
1位 マッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール) 4h56'38"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
5位 ジョセ・メンデス(ポルトガル、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
7位 ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート)
8位 ユーリ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
9位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエールトリエスティーナ)
10位 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)         15h36'40"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)               +13"
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +16"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)           +21"
5位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)   +31"
6位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)             +36"
7位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)     +39"
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)         +42"
9位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)     +46"
10位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)    +48"

山岳賞
1位 アレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 33pts
2位 ダヴィデ・オリコ(イタリア、サンジェミニMG)           20pts
3位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)      18pts

ヤングライダー賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)   15h37'19"
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)      +17"
3位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ)     +1'24"

チーム総合成績
1位 キャノンデール・ドラパック  46h51'56"
2位 アージェードゥーゼール      +1'21"
3位 アスタナ             +1'44"

text:Kei Tsuji