カーボンホイールとシマノアルテグラをアッセンブルしつつ、アンダー40万円というプライスを誇るジャイアントのエンデュランスカーボンディスクロード「DEFY ADVANCED PRO1」をインプレッション。スルーアクスルとフラットマウント化でアップデートされた実力機に迫る。



ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ロングライド、ブルベ、バイクパッキングなど、ただ競技として速く走る以外の楽しみ方にも注目が集まり、ロードバイクを取り巻く環境は多様化してきている。各社が競技向けの軽量高剛性モデルや空力性能に優れたエアロモデルのみならず、荒れた道での振動吸収性や長距離走行での快適性へとフォーカスしたエンデュランスモデルをラインアップしている現状はその流れを反映している。

もちろん、エンデュランスロードのルーツとなるのはパリ~ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンに代表されるクラシックレースであり、石畳をより速く走るために開発されたモデルが多いだろう。だが、その結果として生み出されたエンデュランスロード達は、昨今のロングライドブームの成長を後押ししている。

シートステーは非常に細く作られており、快適性の向上に貢献するシートステーは非常に細く作られており、快適性の向上に貢献する シンプルな造形のトップチューブシンプルな造形のトップチューブ フロントフォークはすらっと伸びたストレート形状フロントフォークはすらっと伸びたストレート形状


今回紹介するジャイアントのDEFYもそういった流れの中、頭角を現してきたエンデュランス系ロードバイクの一つだ。その登場は2008年に遡る。ジャイアントのエンデュランスロードとして高い評価を得てきたOCRの後継機として発表されたこのバイクは、レースを想定したものではなくロングライドをより快適に走るためのバイクであった。

乗り心地の向上と走破性を高めるワイドタイヤに対応したクリアランスと、走行性能と振動吸収性を両立するフレームデザインがDEFYシリーズのアイデンティティだ。この2つの要素によってライダーへの疲労を軽減し、長時間のライドでも快適に走り続けることが出来るバイクとして人気を集めたDEFYは、現在のロングライドブームの立役者とも言える存在だろう。

ディスクブレーキ化によりブレーキブリッジが廃されたためより柔軟性を確保したリア三角ディスクブレーキ化によりブレーキブリッジが廃されたためより柔軟性を確保したリア三角 長めのヘッドチューブによりアップライトなポジションを可能にした長めのヘッドチューブによりアップライトなポジションを可能にした

エンド部分にかけて細くなるチェーンステーエンド部分にかけて細くなるチェーンステー スルーアクスル化を果たしハブ軸の剛性アップを実現スルーアクスル化を果たしハブ軸の剛性アップを実現


2014年にはディスクロードとしてフルモデルチェンジを果たす。マスプロメーカーとして、ディスクブレーキ化というフロンティアへ先陣を切った意欲作として耳目を集めながらも、ジャイアントらしい堅実な設計と技術力によって、高い完成度を持つバイクとして人気を集めてきた。

モデルチェンジ当時は、ロード用ディスクブレーキの規格も定まっていない状態であり、DEFYも前後クイックレリーズでリアエンド幅は135mm、ブレーキ台座はポストマウントという規格を採用していた。その後、各社がディスクロードを発表する中で定まってきたスタンダードとも言える規格が前後スルーアクスル、リアエンド幅142mm、フラットマウントというもの。この流れを受け、2017年モデルのDEFYでは、これらの規格を採用するアップデートを施し、互換性を高めている。

フラットマウント化したディスクブレーキ部分フラットマウント化したディスクブレーキ部分 ジャイアントのカーボンホイールSLR1 DISCを標準装備ジャイアントのカーボンホイールSLR1 DISCを標準装備


エンデュランスロードと銘打つDEFYの振動吸収性能において重要な役割を果たすのが、細く伸びたシートステーだ。扁平形状とすることでカーボンのしなりを活かし、リアからの突き上げを緩和している。また、D型断面を採用することで通常の丸形シートポストに比べ軽量かつ快適性に優れる”D-Fuse”シートポストもまた、乗り心地の向上に一役買っている。

フレーム全体のデザインは歴代のDEFYシリーズに倣った、無理なく快適な体勢で乗ることが出来るアップライトなジオメトリーを採用。ヘッドチューブを長めに、トップチューブを強くスローピングさせることでシートチューブを短くし、腰や首などに負担が少ないライドフォームを可能にしている。また長めに設定されたホイールベースによって、直進安定性を高めている。

ヘッドチューブにはジャイアントのトップモデルを中心に採用される独自規格のOVERDRIVE2を採用。下側1-1/2インチ上側1-1/4インチのテーパードヘッドセットにより、フロント周辺の剛性を飛躍的に向上させている。ステムは1-1/4インチ対応のモデルが必要となるが、スプリント時にはパワーを逃さず、安定したハンドリングにも貢献している。

通常の丸形シートポストに比べ軽量かつ快適性に優れるD-Fuseシートポスト通常の丸形シートポストに比べ軽量かつ快適性に優れるD-Fuseシートポスト ボトムブラケットはパワーコアと呼ばれるBB86を採用ボトムブラケットはパワーコアと呼ばれるBB86を採用 下側1-1/2インチ上側1-1/4インチのOVERDRIVE2を採用下側1-1/2インチ上側1-1/4インチのOVERDRIVE2を採用


そんなDEFYシリーズから今回インプレッションを行ったのは、セカンドグレードに当たる「DEFY ADVANCED PRO1」。ジャイアントのADVANCEDグレードカーボンフレームに、同社オリジナルのカーボンホイールとシマノ アルテグラをアッセンブルし、37万円(税抜)を実現したコストパフォーマンスに優れるモデルである。

アッセンブルされるホイールは同社ラインアップの中でミドルグレードに位置するSLR1 DISC。チューブレス対応ホイールで上位モデルとなるSLR0と同様のリムを採用しながら、ハブのグレードとスポークをラウンドのバテッドスポークへ変更することでコストパフォーマンスを向上させたモデルだ。ホイールは前後合わせて1615gと、カーボンクリンチャーホイールとして十分な軽量性を持ち合わせている。

その他のパーツもジャイアントオリジナル製品で固め、トータルパッケージのバランスの良さが光るDEFY ADVANCED PRO1。ジャイアントに長きに渡りラインアップされるエンデュランスロードを2人のインプレッションライダーはどう見るのか。それではインプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「バランスが良く走行シーンを選ばない汎用性の高さが光る」渡辺勇大(GROVE港北)

このバイクは加速もブレーキングもコーナリングもバランス良くこなす良く走るバイクだと感じました。ジャイアントのオリジナルパーツをふんだんに使用していますが、そのどれもが上手く作用していて、トータルパッケージとして出来が良いバイクですね。

「バランスが良く走行シーンを選ばない汎用性の高さが光る」渡辺勇大(GROVE港北)「バランスが良く走行シーンを選ばない汎用性の高さが光る」渡辺勇大(GROVE港北)
エンデュランスカテゴリーのバイクということで、特に振動吸収性能が優れていて、荒れた路面でも滑らかにしっとりと走ることが出来ます。ジャイアントオリジナルのシートポストやサドルも快適性を向上させる要因の一つとなっており、不要な振動が少ないので、頭が振られず目線が安定しますね。

それでいて、ただ柔らかく快適性の高いフレームという訳ではなく、踏み込んだパワーを吸収するような減衰作用も少ないので、しっかり進む推進力があります。スプリント時の力のかかり具合も非常に良いです。チェーンステーの長さが420mmと長めに作られているにも関わらず、このような加速感を味わえるの素晴らしいですね。しなやかさの中に強さを秘めているような芯の太さを感じました。

コーナリングに関してはコーナー進入時に外に膨らむようなアンダーステアな感覚があります。ロングホイールベースということと、ホイールの直進性が強いということが要因かもしれません。しかしその分コーナー出口部分では気持ち良い立ち上がりを見せてくれます。

こういったエンデュランス系ロードバイクはロングツーリングに最適なバイクだと思います。センチュリーライドのようなサイクリングイベントでも良いですね。走行場所を選ばない汎用性の高さがありますので、平地が多いアルプス安曇野センチュリーライドや、登りのあるグランフォンド八ヶ岳等でも問題なくこなしてくれる懐の深さがあります。

もう少しパリッとした加速を味わいたいのであればオールラウンド系で、格好良く速いフレームならエアロ系のロードバイクが良いかもしれません。ですが競技者ではない一般のサイクリスト方であるならば、実際はこのDEFYのようなエンデュランス系でディスクブレーキのバイクの方が、乗っていて疲労も少なく、様々な使い方ができるのでオススメですね。

「一日中乗り続けてもストレスが少ないトータルバランスの良さ」恒次智(サイクルショップフリーダム)

「一日中乗り続けてもストレスが少ないトータルバランスの良さ」恒次智(サイクルショップフリーダム)「一日中乗り続けてもストレスが少ないトータルバランスの良さ」恒次智(サイクルショップフリーダム) このバイクは乗るとホッとするような安心感がありますね。ディスクブレーキの制動力の高さもありますが、路面追従性の高さから、バイク自体も段差で跳ねて浮くような感覚というのがありません。平地でも下りでもレールの上を走っているかのように安定して進んでいきます。レーシングカーのような吸い付くようなトラクションというよりは、リニアモーターカーのような上質な浮遊感といった乗り心地です。

快適性に関しても、エンデュランスロードとしてロングライドをストレスなく楽しめるような振動吸収性が備わっています。体に優しいバイクですので、何も考えずにずっと乗っていられる安心感がありますね。

この安心感というのは完成車パッケージとしてのトータルバランスの高さに起因している所があると思います。ダンシングでもシッティングでも常に安定していて、何かに突出した性能という訳ではなく、バランス良く無難にこなしてくれるため、一日中乗り続けてもストレスが少ないですね。

踏み味に関してはもたつくようなダルさもなく、レーシングバイクのような瞬発的な加速こそないものの、踏んだ分だけ上品に加速していきます。一定速度で巡航して大人のサイクリングを楽しむというラグジュアリー感があるバイクです。

逆に言えば優等生すぎてクセがない部分がネックになるのかもしれないですが、日本のロードバイクユーザーの大半は、このようなバイクを好む方が多いのではないでしょうか。レースをしない中高年のサイクリストに向いているバイクだと思います。性能のバランスが良く、これで40万円を切る価格というのはコストパフォーマンスも高いと感じますね。

ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm,D-Fuse SL Composite Seat Pillar
フォーク:Pro-Spec,Advanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column 12mm Axle
メインコンポーネント:シマノ ULTEGRA
ブレーキ:シマノ R685/RS805
ローター径:140mm
ホイール:ジャイアント SLR1 DISC CARBON
タイヤ:ジャイアント GAVIA SL 700x25C
サイズ:410mm(XS)、445mm(S)、480mm(M)、515mm(ML)
重 量:7.9kg(Mサイズ)
価 格:370,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

渡辺勇大(GROVE港北)渡辺勇大(GROVE港北) 渡辺勇大(GROVE港北)

横浜市港北区に店舗を構えるGROVE港北の店長。元MTBのダウンヒルプロライダーであり、20年以上に渡ってレース活動を行ってきたベテラン。その経験を活かしトータルとしての乗りやすさを求めるフィッティングやバイクセッティングに定評がある。ロードやMTBなど幅広くスポーツバイクをお客さんと一緒に遊びその楽しさを伝えていくことを大切にしている。愛車はスペシャライズドTarmac S-Works。

CWレコメンドショップページ
GROVE港北HP

恒次智(サイクルショップフリーダム)恒次智(サイクルショップフリーダム) 恒次智(サイクルショップフリーダム)

岡山県岡山市に店舗を構えるサイクルショップフリーダムの店長。速さやスタイルに囚われることなく自由に自転車を楽しむのがショップのコンセプト。MTBから自転車を始め、クロスカントリーレースやロードの実業団レース等にも参加、自転車歴は20年以上。最近はツーリングやトレイルライドにも力を入れる。愛車はキャノンデールのSUPERSIX EVO HI-MOD。そしてホンダS2000やロータスエリーゼ、エキシージなどなど。

CWレコメンドショップページ
サイクルショップフリーダムHP

ウェア協力:Pandani
ヘルメット&アイウェア協力:KASK

text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
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