2日連続雪によってコース変更が行われたツアー・オブ・アルプスの最難関第3ステージ。ミケル・ランダ(スペイン)を従えて山頂フィニッシュを制したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が紫色のリーダージャージに袖を通した。



ツアー・オブ・アルプス2017第3ステージツアー・オブ・アルプス2017第3ステージ photo:Tour of the Alps前日に続いてこの日も雪によってコース変更。レース主催者はステージ前半に登場予定だった標高2,003mのGPMエルベ峠を省略し、代わりに標高1,219mのGPMテレントを置いた。難易度が下がりながらもコース全体の特性は変わらない。残り38km地点で標高1,748mのGPMアルペ・ロデンゴ(全長12.8km/平均7%)を越え、最後は標高1,140mのフィニッシュ地点フネス(全長8.7km/平均6.5%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。

レース序盤に形成された3名の逃げメンバーはGPMアルペ・ロデンゴの長い登坂で分裂。山岳ポイントを量産したダヴィデ・オリコ(イタリア、サンジェミニMG)が単独で逃げ続けたものの、チームスカイの徹底的な集団コントロールから逃れることはできない。メンバーを揃えてメイン集団を率いたチームスカイは、最後のフネス登坂が始まってすぐに先頭オリコを吸収した。

チームスカイを先頭にアルプスの山々を走るメイン集団チームスカイを先頭にアルプスの山々を走るメイン集団 photo:Tour of the Alpsイタリア北部チロル州の山岳地帯を行くイタリア北部チロル州の山岳地帯を行く photo:Tour of the Alps

全長8.7kmの上りの前半はチームスカイのイアン・ボズウェル(アメリカ)とフィリップ・ダイグナン(アイルランド)がアタックを許さないハイペースを刻み、残り6km地点からはケニー・エリッソンド(フランス)が先頭に立ってトーマスとランダのためにペースを作る。

フィニッシュまで5kmを残してヤングライダー賞ジャージのヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)がアタックすると集団は一気に活性化。カーシーの動きに乗じてランダとダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)が先行を開始した。

カタルドの脱落によって先頭はポッツォヴィーヴォとランダの2人に。快調に上りを進んだ2人は、アスタナとキャノンデール・ドラパックが率いるメイン集団を20秒引き離すことに成功する。すると、残り1kmアーチが見えたタイミングで、ライバルたちのマークに徹していたトーマスが踏み始めた。

ライバルを振り切り、緩斜面をハイスピードで巡航したトーマスは程なくして先頭のポッツォヴィーヴォとランダに合流する。続いて残り300mでトーマスがアタックを仕掛けるとポッツォヴィーヴォが脱落。トーマスのペースに対応できたのはチームメイトのランダだけだった。

シッティングで踏み抜いたトーマスにランダが追いつき、チームスカイの2人が並んでフィニッシュラインを切る。ポッツォヴィーヴォを4秒、リーダージャージのティボー・ピノ(フランス、エフデジ)らを13秒引き離し、チームスカイがワンツー勝利を飾った。ステージ優勝したトーマスが総合首位に立っている。

ジロでもタッグを組むゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)ジロでもタッグを組むゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Tour of the Alps並んでフィニッシュするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)並んでフィニッシュするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Tour of the Alps

クイーンステージを制したトーマスは「チームスカイは完璧な仕事をこなしてくれた。メンバーは6人しかいないけど、6人全員が強力で連携も抜群だった。最後の登りが始まった時点で2人(トーマスとランダ)とも調子が良かったので、まずはランダがアタックして自分は体力を温存する作戦を実行。残り1kmを前にフォルモロがアタックした時、他のライバルたちが限界を迎えているように見えたのでカウンターアタックして、全開で踏んだ。ランダとポッツォヴィーヴォまで追いつけるとは思ってなかったよ。追いついてから少しだけ息を整えてアタックした」と、チームの作戦と勝利への流れを説明する。

トーマスはジュニア時代からトラックレーサーとして頭角を現し、イギリス代表として2008年北京五輪と2012年ロンドン五輪の団体追い抜きで金メダル獲得。トラック世界選手権の団体追い抜きでも3回優勝している。近年はクラシックレースを中心に強さを見せるとともに、ステージレースも戦えるオールラウンダーとして進化した。2016年のパリ〜ニースで総合優勝を飾り、2015年と2016年のツール・ド・フランスではクリストファー・フルーム(イギリス)をアシストしながら総合15位に入っている。

エースとしてジロ・デ・イタリアに出場予定のトーマスは「この勝利はジロの野望に向けての自信になる。もちろん自分にとって(エースとして挑むグランツールは)未知の領域であり、ニーバリやキンタナといった優勝候補と戦わないといけない。自分は現状をしっかり理解して計画通りに調整を続けることしかできない。長い登りが5日間立て続けに登場するツアー・オブ・アルプスはジロの準備レースに最適なんだ」と語っている(レース公式リリース)。TTを得意とするウェールズ出身の30歳がマリアローザ候補に名乗りをあげた。

リーダージャージを獲得したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)リーダージャージを獲得したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tour of the Alps


ツアー・オブ・アルプス2017第3ステージ結果
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)         3h47'50"
2位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +04"
4位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)     +13"
5位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
6位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)     +15"
7位 ダニーロ・チェラーノ(イタリア、イタリアナショナル)
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
9位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
10位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)         10h40'02"
2位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +16"
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)               +19"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)           +21"
5位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)   +31"
6位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)             +36"
7位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)     +39"
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)         +42"
9位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)     +46"
10位 ダニーロ・チェラーノ(イタリア、イタリアナショナル)      +48"

山岳賞
1位 アレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 27pts
2位 ダヴィデ・オリコ(イタリア、サンジェミニMG)           20pts
3位 リー・ハワード(オーストラリア、アクアブルースポート)      8pts

ヤングライダー賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)   10h40'41"
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ)      +17"
3位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ)    +1'24"

チーム総合成績
1位 キャノンデール・ドラパック  32h02'02"
2位 アージェードゥーゼール      +1'21"
3位 アスタナ             +1'44"

text:Kei Tsuji