ブエルタ・アル・パイスバスコの最難関山岳コースが設定された第5ステージでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が勝利。最終個人TTを前にバルベルデが総合首位に立った。



ビルバオの街をスタートしていくビルバオの街をスタートしていく photo: TDWsport / KT


ブエルタ・アル・パイスバスコ2017第5ステージブエルタ・アル・パイスバスコ2017第5ステージ image: Vuelta al Pais Vascoバスクの山岳地帯を進むバスクの山岳地帯を進む photo: TDWsport / KTブエルタ・アル・パイスバスコのクイーンステージ(最難関山岳ステージ)となった第5ステージ。大都市ビルバオから山岳地帯を進み、6つのカテゴリー山岳を越えてエイバルにフィニッシュする139.8km(獲得標高差2,700m)で行われた。フィニッシュラインの2km手前でピークを迎える1級山岳ウサルツァは登坂距離5km/平均勾配8.7%というスペックで、後半の2.7kmは平均勾配が13%に達する激坂だ。

オリカ・スコットが長時間にわたってメイン集団をコントロールオリカ・スコットが長時間にわたってメイン集団をコントロール photo: TDWsport / KTレース開始早々、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)やマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)、オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)を含む18名の逃げグループが先行開始。山岳賞で1位と2位につけるアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)とヨアン・バゴ(フランス、コフィディス)も逃げに入った。

オリカ・スコットとメイン集団をコントロールする新城幸也(バーレーン・メリダ)オリカ・スコットとメイン集団をコントロールする新城幸也(バーレーン・メリダ) photo: Miwa Iijima脚の揃った逃げグループは快調にカテゴリー山岳を2つ連続してクリアしたが、メイン集団とのタイム差は2分以上に広がらず。レース中盤にタイム差は急速に縮まり、フィニッシュまで50km以上を残して逃げは吸収される。

1級山岳ウサルツァで動くアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)1級山岳ウサルツァで動くアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) photo: TDWsport / KT第3ステージのパンクで総合成績を下げてしまったサイモン・イェーツ(イギリス)擁するオリカ・スコットがメイン集団を積極的に牽引。ここにモビスターも加勢し、紺色&緑色系の2チームが先頭でペースを作りながら最後の1級山岳ウサルツァに突入した。

バルデとウランをスプリントで下したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)バルデとウランをスプリントで下したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo: TDWsport / KT上りで集団の人数が絞られる中、フィニッシュまで5km(頂上まで3km)を残してマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)がアタックの口火を切る。この動きにはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)、そしてイェーツがすかさず反応。リーダージャージを着るダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)は脱落し、自分のペースを刻んで追走を続けた。

総合首位に立ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)総合首位に立ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo: TDWsport / KT出遅れたロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)らが合流して先頭グループのペースが下がるとウッズが再びアタック。ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)を引き連れて先行したウッズは後続を10秒近く引き離すことに成功する。

急勾配区間でバルベルデやバルデがハイペースを刻むメイン集団は10名以下に。そして頂上を目に先頭のウッズとマインティーズを飲み込んだ。ウッズのSTRAVAログによると、急勾配区間2.7km/平均13%の平均スピード13.5km/h。登坂タイム11分32秒、平均出力426W、VAM(平均登坂速度)は1,910mだった。

1級山岳ウサルツァの頂上からフィニッシュまでは2kmのワインディングロードが続く。7名にまで絞られた精鋭グループの中からコンタドールが抜け出しを図ったが決まらない。すると残り1kmのタイミングでサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)がロングスパート開始。勢い良く飛び出したサンチェスだったが、数秒後にハンドリングを誤って落車してしまう。全身に擦過傷を負ったが骨折は無し。左手薬指の腱を切る裂傷を負ったサンチェスはレース後に病院で手術を受けている。

サンチェスの落車後は6名によるスプリント勝負に持ち込まれ、下り基調の連続コーナーを先頭でクリアしたバルベルデが先行逃げ切り。トップスピード70km/hオーバーのスプリントでバルデらを下したバルベルデがステージ優勝を飾った。

「(1級山岳ウサルツァの)上りでアタックを繰り返したものの、ライバルたちとの差は広がらなかった。だから飛び出すのを諦めて、ハイペースを刻む作戦にスイッチしたんだ。スプリントでは負ける気がしなかった。このフィニッシュは何度も経験しているので、ブレーキングせずスムーズに先頭で最終コーナーを抜けるのが有利だと分かっていた。だから残り300mでロングスプリントを開始した」。バルベルデは今シーズン7勝目(キッテルと並んで最多勝)をそのように振り返る。

今シーズンすでにブエルタ・ア・アンダルシアとボルタ・ア・カタルーニャで総合優勝を飾っているバルベルデは、未だ総合優勝の経験がないブエルタ・アル・パイスバスコで総合首位に浮上した。しかし総合上位陣のタイム差は極めて小さく、翌日の最終ステージ27km個人タイムトライアルで総合成績のさらなる総合変動が予想される。

「今週ここまでの走りには十分満足しているし、気負うことなく明日のタイムトライアルに挑みたい。もちろん総合優勝を戦歴に追加することができれば最高だけど、総合で近いところにTTが得意な選手が揃っている。コンタドールやイサギレがタイムを挽回してくるから、リーダージャージのキープは簡単なことじゃない」と、黄色いリーダージャージに袖を通したバルベルデは語っている。

第4ステージで2度落車しながらもこの日の登坂バトルに加わった前年度覇者のコンタドールは「昨日の落車の影響で今朝は身体が痛んだし、コンサバティブな走りになったけど、終盤の勝負に絡むことができてよかった。目の前で転んだサムエル・サンチェスの落車に巻き込まれずに済んでよかったよ。そこで生まれた数メートルの差を埋めきれずに3秒失ってしまったけど、何より身体のレスポンスが良かったことが明日のタイムトライアルに向けての好材料。距離の長いタイムトライアルなのでまだまだ総合争いはオープンな状態だ」とコメントしている(各チーム公式サイトより)。



ブエルタ・アル・パイスバスコ2017第5ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            3h26'32"
2位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)
4位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
5位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)        +03"
7位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)               +15"
8位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
9位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
10位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)         +22"
88位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)                   +9'27"

個人総合成績
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            20h05'18"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)
3位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
4位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)        +03"
7位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)               +15"
8位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
9位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)          +19"
10位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)       +22"

ポイント賞
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チームサンウェブ)          59pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              54pts
3位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)          40pts

山岳賞
1位 アレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)         27pts
2位 ヨアン・バゴ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)         23pts
3位 マッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)       15pts

チーム総合成績
1位 バーレーン・メリダ           60h19'52"
2位 アージェードゥーゼール            +54"
3位 チームスカイ                +1'42"

text:Kei Tsuji