Phil(フィル)ことフィリップ・ジルベールの55kmに渡る独走劇で幕を閉じたクラシックの王様「ロンド・ファン・フラーンデレン」。波乱に満ち、かつ歴史に残るレースとなった模様をベルギーでの現地取材で振り返ります。



アントウェルペンの象徴的な建造物を背に登場するトレック・セガフレードの選手たちアントウェルペンの象徴的な建造物を背に登場するトレック・セガフレードの選手たち photo:Makoto.AYANO
フランドリアンがプレゼンテーションを見守るフランドリアンがプレゼンテーションを見守る photo:Makoto.AYANO今もっとも優勝が期待されるグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング)今もっとも優勝が期待されるグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング) photo:Makoto.AYANO


■新スタート地アントウェルペンとカペルミュールの復活

決戦の日までの数日は穏やかな日和が続いていたフランドル地方。前日は小雨模様の時間帯があり「一日に四季がある」と言われるベルギー特有の天気の一日だったが、この日は朝からまばゆいばかりの青空が広がった。アントウェルペンの市街中央の広場、グローエンプラーツにはさんさんと日光が降り注いでいた。

75万人におよぶ観客が沿道でレースを観るという「クラシックの王様」ロンド・ファン・フラーンデレンの今年の大きな変化はふたつ。スタート地点の変更と、ミュール・カペルミュールのコースへの復活だ。新コースは果たしてレースに変化を生むのか?

観客たちの海に引かれた花道を渡って登場する選手たち観客たちの海に引かれた花道を渡って登場する選手たち photo:Makoto.AYANOアルカンシェルを着てサガンの登場を待つスロバキアのファンの子供アルカンシェルを着てサガンの登場を待つスロバキアのファンの子供 photo:Makoto.AYANO


アントウェルペンの中心、広大な広場に溢れるほどびっしりと観客が詰めかけたグローエンプラーツ広場には、手の込んだスロープと豪華なステージが設けられ、出場チームが順番に紹介されていく。この日、ステージでの主役は3人のスター。ディフェンディングチャンピオンのペーター・サガン、最大の優勝歩候補グレッグ・ヴァンアーベルマート、そしてこのロンドと翌週のパリ~ルーベで引退するトム・ボーネンだ。

最後のロンドを走るトム・ボーネンをメディアが離さない最後のロンドを走るトム・ボーネンをメディアが離さない photo:Makoto.AYANOかつての同僚パオロ・ベッティーニがトム・ボーネンの激励に駆けつけたかつての同僚パオロ・ベッティーニがトム・ボーネンの激励に駆けつけた photo:Makoto.AYANO


観客に向けてウェーブを呼びかけ、トム・ボーネンの登場を迎える観客に向けてウェーブを呼びかけ、トム・ボーネンの登場を迎える photo:Makoto.AYANOステージで花束を受け取ったトム・ボーネンステージで花束を受け取ったトム・ボーネン photo:Makoto.AYANO


アントウェルペンにほど近い郊外の街モル出身のボーネンは、広場の観客たち全員による手拍子のウェーブで迎えられ、華々しくステージに登場した。ベルギー国内のレースとしてはまだ水曜のシュヘルデプレイス出場が残っているものの、大会側はこれがボーネンの最後のレースと言わんばかりの盛り上げ方だ。先にステージに上って登場を待ったチームメイト、今大会3人の優勝候補のひとりであるフィリップ・ジルベールも、ベルギーチャンピオンジャージを着ていながらもボーネンを讃えるセレモニーを盛りたてる脇役にすぎないほどだった。

ウィリー走行でステージに登場した前年覇者ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)ウィリー走行でステージに登場した前年覇者ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ) (c)CorVos
サガンはステージへと続く細いスロープでウィリーしたまま走り続けて登場し、拍手喝采を浴びた。司会者の「今年は勝てるかどうか、YesかNoか?」との問いに、「YesかNoだ」とごまかした。それでも執拗に2者択一を迫られると、「それはDestiny(=運命)だ」とはぐらかす。そのやりとりはレースを後にして思えばなんとも暗示的だ。

ステージで引き締まった脚を披露したグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング)ステージで引き締まった脚を披露したグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング) photo:Makoto.AYANO観客たちの海に引かれた花道を渡って登場する選手たち観客たちの海に引かれた花道を渡って登場する選手たち photo:Makoto.AYANO


近年の約20年間においてスタート地点を担ってきたブルージュから、東部のベルギー最大の都市アントウェルペンへ。その変更の理由はアントウェルペン市がロンドのスタート地点になるために、今までブルージュが支払ってきた倍額もの誘致金を支払ったからだという。歴史的にはスタート都市は他に101年前のロンド創始から出発点だったヘントがもっとも長く、そしてブルージュ以前の20年間はシント・ニクラースが担ってきた。

カペルミュールにはかつてのように大勢のファンが詰めかけたカペルミュールにはかつてのように大勢のファンが詰めかけた photo:Makoto.AYANO
そしてロンドにもうひとつ加わった変化が、ミュール・カペルミュール(正式名称ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン)の復活だ。頂上に教会が待つこの石畳の急坂は、かつてニノーブの街がフィニッシュ地点だった頃には最後から2つめの石畳の登りとして勝負を決めてきた存在。カペルミュールでひとりで逃げて、続くボスベルグをこなしてフィニッシュまで逃げ切るシーンはかつて多く見られた。しかし今回はフィニッシュまで95kmを残す地点に設定されたカペルミュール。そのため、レース前の論評では残り距離が長過ぎるためレースを左右する決定的なポイントにはならないだろうとされていた。

しかし意外にも、予想外のアタックでレースを決める大きなターニングポイントとなったのはこのミュール・カペルミュールだった。

教会の小山にはファンたちが鈴なりになってロンドの通過を見守る教会の小山にはファンたちが鈴なりになってロンドの通過を見守る photo:Makoto.AYANOボーネンを讃えるコスチュームの老人ファンボーネンを讃えるコスチュームの老人ファン photo:Makoto.AYANO


麓のヘラールツベルヘンの街から頂上の教会へと駆け上がる激坂の石畳。もっともその勾配の厳しさにより集団の最初のセレクションの場となるだろうとは予想されていたが、ここが勝負どころといわんばかりのペースアップを見せたのがボーネンだった。

2010年にはファビアン・カンチェラーラに引き離された急勾配のこの登りで、しかし集団を分断すべく力強くペダリングを続けたボーネン。この動きに続いたジルベールやマッテオ・トレンティンらクイックステップ勢による組織的な「早すぎるアタック」だった。この動きの危険さを即座に認識したアレクサンドル・クリストフ(カチューシャ・アルペシン)やセップ・ヴァンマルク(キャノンデール・ドラパック)らが喰らいついた一方で、3人の優勝候補の他の2人、サガンとヴァンアーベルマートは取り残されてしまう。

カペルミュールへの急坂をハイペースで駆け上がったトム・ボーネン(クイックステップフロアーズ)カペルミュールへの急坂をハイペースで駆け上がったトム・ボーネン(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANOカペルミュールでボーネンとジルベールらの動きを逸したグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング)カペルミュールでボーネンとジルベールらの動きを逸したグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング) photo:Makoto.AYANO


細いパヴェで上り詰める先には5年前のように人垣ができた。選手たちの通過に合わせて鳴らされる荘厳な鐘の音が響く教会の頂上付近を越える頃には、無視できない差が生まれようとしていた。後方に居たヴァンアーベルマートは頂上を越えるまでこの動きを把握できていなかったという。まさに誰も予測しないアタックだった。

逃げグループを自ら牽引するフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)逃げグループを自ら牽引するフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
強力なメンバーが入った14人の集団は、カペルミュールを越えると協調してペースを上げ続ける。一般道に出て平坦区間になってもボーネンらはその脚を止めること無く、一層激しく回し続けた。その結果、1分を越えるタイム差がみるまについた。ジルベール自らも前を牽くクイックステップフロアーズは、ゴールまで80kmを残してレースを有利に運べる逃げを作り出すことに成功した。

「大切なのはチームの誰かが勝つこと。クイックステップから優勝者を出すこと」「最後のレースであるパリ~ルーベに賭けるが、最後のロンドをただ大人しく終えるつもりはない」と大会前の記者会見で語ったボーネンの、言葉通りの動きだった。

■最後のロンドのボーネンの不運と、ジルベールの「エディ・メルクススタイル」の独走 

トレンティンの献身的な牽引、そして続く40kmでも先頭に多く立って踏み続けたボーネンは、ジルベールを送り出す準備を整えつつ、自らにも表彰台に上るチャンスを生み出した。しかし最後のチームワークはジルベールへの献身の走りで示した。

オウデクワレモントを独走でクリアするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)オウデクワレモントを独走でクリアするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
オウデクワレモント&パーテルベルグのダブル登坂が2度続くフィナーレの、2回めのオウデクワレモントの登り。パヴェ区間に入る前の舗装区間でのボーネンの強烈なペースアップ。後輪に着けたジルベールはアウターギアに掛けてパヴェの登りに飛び込んだ。そのまま勢いを保ってジルベールは抜け出した。フィニッシュまで55kmの、これも早すぎるタイミングのアタックだった。

パテルベルグでジルベールを追走するアルノー・デマール(FDJ)らの集団パテルベルグでジルベールを追走するアルノー・デマール(FDJ)らの集団 photo:Makoto.AYANOアタックしたサガンの動きに追従するグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング)アタックしたサガンの動きに追従するグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング) photo:Makoto.AYANO


ジルベールが頂上の集落を通過する時に後方を確認すると、差が開いていた。ジルベールはチームカーのピータース監督に伺いを立てたが、「そのまま行け」の声に逃げ続けることを選択したという。

そしてボーネンはターインべルグでチェーンを噛み込ませるトラブルでストップしてしまう。自身が爆発的にアタックすることで「ボーネンベルグ」の異名のあるパヴェに、まさにこれから進入しようという最悪のタイミングで。そしてスペアバイクに交換するも、再び同じトラブルに見舞われた。ボーネンの最後のロンドは不完全燃焼のまま終わることに。

■サガンら3人の痛恨の落車

ジルベールが抜け出そうとする時に、すでに35秒後方にまで迫っていた追走集団。しかし後方ではヴァンマルクが落車し、ルーク・ロウ(チームスカイ)とともに脱落してしまう。

チェーンサックによりストップし、バイクを交換したトム・ボーネン(クイックステップフロアーズ)チェーンサックによりストップし、バイクを交換したトム・ボーネン(クイックステップフロアーズ) (c)CorVos落車で身体を痛めリタイアしたセップ・ヴァンマルク(キャノンデール・ドラパック)落車で身体を痛めリタイアしたセップ・ヴァンマルク(キャノンデール・ドラパック) (c)CorVos


本来の勝負どころの3度目のオウデクワレモントで、サガンらは猛チャージを開始した。サガンをすかさず追走するアーヴェルマートとオリバー・ナーセン。その勢いある走りを止めたのは、サガンのバイクを引っ掛けた「あるもの」。鉄柵のバリアギリギリの、路面に凹凸の無いラインをとってスピードに乗せていたサガン率いる3人だったが、サガンが何かに弾かれるように飛ばされ、落車。巻き込まれたふたりも為す術無く落車した。

何かにヒットして落車したペーター・サガンとともに落車したヴァンアーベルマートら何かにヒットして落車したペーター・サガンとともに落車したヴァンアーベルマートら (c)CorVos
サガンを引っ掛けたのは、ナーセンのホイールに巻き付いた紺のジャケットのような布切れか、バリアの脚か、あるいは広告バナーか? TVカメラからは死角。翌日になって沿道の観客たちが撮ったいくつものスマホ映像を見比べても、その原因は特定できていない。

「自分の落ち度だ。どうやって落車したのか、何が起こったのかはわからない」とサガン。バリアに近すぎるラインを走ってしまったのは悔やまれるミスだ。

最後のパテルブルグを独走でクリアするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)最後のパテルブルグを独走でクリアするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
テルプストラを率いてパテルベルグを上るグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング)テルプストラを率いてパテルベルグを上るグレッグ・ヴァンアーベルマート(BMCレーシング) photo:Makoto.AYANOすぐに起き上がれなかったサガンとナーセンに比べ、ダメージが少なくすぐに起き上がって追走を再開したヴァンアーヴェルマート。落車で停まった約30秒、フィニッシュ地点でジルベールに最終的に付いた差も約30秒。あの不可解なクラッシュが無ければ、あるいは勝利の行方はわからなかった。

3人の不運がラッキーだった面はあるだろうが、しかしジルベールの勢いは最後まで衰えなかった。それでもジルベールは逃げの距離の長さに、全開で追い込みすぎないように余裕を持って逃げていたという。

「大きな努力を払いながら走っていたから、途中でエネルギーが切れることが心配だった。そうならないように注意してエナジーフードを取り続けていたが、それに以上にエネルギーを使い続けていることは分かっていた。エネルギー不足によってハンガーノックになることが心配だった」とジルベールは言う。

無謀とも思えた55kmに渡る逃げ。最後のパテルベルグをクリアしても1分差を保ったジルベール。ローリングコースならありうるが、この激坂を含むクワレモントーパテルベルグ周回になってからは今まで誰もできなかった走りだ。オウデナールデまでの13kmの平坦路では人数を揃える追走グループが有利になるが、それでも追走の3人に対しラスト5kmで34秒差を保った。

バイクを高々と掲げてフィニッシュするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)バイクを高々と掲げてフィニッシュするフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
フィニッシュラインでバイクを高く掲げる、マウンテンバイクレースの勝者にはよく見られるがロードレースでは見慣れないスタイルのウィニングポーズを決めたジルベール。歴史的な走りを象徴する、記憶に残るフィニッシュポーズとなった。

「最後の1kmまで逃げることに集中していて、本当に逃げ切ったと実感したときに思いついたんだ。ジャージも整え、勝利のキーの一つであるマテリアルを讃えようと考えたんだ」とジルベールは言う。

痛恨の落車に泣いたオリバー・ナーセン(アージェードゥーゼル)がフィニシュする痛恨の落車に泣いたオリバー・ナーセン(アージェードゥーゼル)がフィニシュする photo:Makoto.AYANO落車でジャージを汚したペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)がフィニッシュ落車でジャージを汚したペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)がフィニッシュ photo:Makoto.AYANO


■ひとりの勝利はチームの勝利

ポディウムガールのキッスの祝福を受けるフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)ポディウムガールのキッスの祝福を受けるフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANOベルギーチャンピオンジャージを着てロンドで勝利した史上7人目の選手となったジルベール。そしてキャリアの中で世界選手権とロンド、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、イル・ロンバルディアを制したのは史上4人目。フランドルではなくワロン地方出身者としては2人目のロンド制覇。前回のワロン人覇者、昨年故人となったクロード・クリケリオンの勝利からはすでに30年が経っている。

「このカラーのジャージ(ベルギーナショナルジャージ)を着ているから、観客たちもすぐに僕だと認識してくれたんだろう。ずっと名前を呼ばれていたし、ワロンから来た観客たちの応援が多かったのにも気がついていた。それが逃げる力になった。このジャージを着ての勝利は特別だ」。

表彰台でスポンサー名をアピールするフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)ら表彰台でスポンサー名をアピールするフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)ら photo: Makoto Ayano歴史に残る独走勝利であるものの、ジルベールはチームワークによる勝利であることを協調する。「これはチーム全体の勝利でもある。無線で聞いていたけど、独りになってからも後方で皆が僕のために働いてくれていたんだ。クイックステップはチームの誰もが強かった。

クワレモントではチームの誰にでも勝てるチャンスがあったと思っている。サイクリングは世界で唯一、チームスポーツでありながら個人が優勝するスポーツだ。これはチーム全体の勝利で、本当なら出場したチーム全員がポディウムに上がるのに値する。この勝利はチームのもので、だからスペシャルなんだ」。

ジルベールのシューズにはベルギーカラーがあしらわれていたジルベールのシューズにはベルギーカラーがあしらわれていた photo:Makoto.AYANO■「アルデンヌのスペシャリスト」を卒業して

「モニュメントの達成していない勝利としてはパリ〜ルーベとミラノ〜サンレモのふたつが残っているけど、来週のルーベに出場することはある?」という問いに、ジルベールはこう応えた。

「ルーベについては今の時点で考えていなかったけど、その可能性についてはチームと話し合うことにする。ただし今はハッピーすぎるから、今夜を過ぎてからだね。前回ルーベに出たのは10年以上前のことだから、十分な経験があるとは言えないけれど」。

昨年まで籍をおいたBMCレーシングでは、ロンドを含むフランドルクラシックはアーヴェルマートをエースとし、ジルベールはかつて2011年に「アルデンヌ・トリプル」(アムステルゴールド、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの同一年制覇)を達成したアルデンヌクラシックの専門担当だった。しかし昨年はシーズン通して思うように結果が残せなかったこともあり、ロンド出場への想いとともに、自らクイックステップに移籍したいとチームに申し出たという。交渉に競争が無いため年俸は大幅ダウンした。しかしジルベールは移籍を契機にこのベルギーチームに自らが望む環境を手に入れた。

記者会見で喜びを語るフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)記者会見で喜びを語るフィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANOジルベールはクイックステップフロアーズを移籍先に選んだ理由を次のようにも話す。「スプリント、タイムトライアル、ステージレース、そしてクラシック。クイックステップにはすべてのレースで勝てる強さとチームワークがある。キッテルのスプリントのために働いたりするのは自分にとってハードワークだけど、チームのために働くことは素晴らしいことなんだ」。

次の日曜のパリ〜ルーベ出場の可否は結論がすぐに出るだろう。そして4月後半に続く得意のアルデンヌクラシックについても「まだ十分に準備する日がある」。しかし今、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに惹かれるものは大きくない。「リエージュは今、クライマーのレースになってきている。皆が待って、サンニコラの登りの麓で80人が残って最後の5kmで決まるレースになっているんだ」。

幾年かごとに好調・不調の波はあるが、強いときは手のつけられないほどの驚くべき強さを発揮するジルベール。どうやら今年はその当たり年のようだ。

photo&text:Makoto.AYANO