ドイツで大きな存在感を誇る総合バイクブランド・キューブから、ワンティ・グループグベルトが一線のレースで使用するフラッグシップマシン、「LITENING C:68 SL Team Wanty」をインプレッション。日本では馴染みが薄いジャーマンブランドの実力は如何ほどか。



キューブ LITENING C:68 SL Team Wantyキューブ LITENING C:68 SL Team Wanty (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ドイツ東部、チェコとの国境にほど近いヴァルダースホーフに拠点を置く総合バイクブランド、キューブ。これまで、日本への安定供給は無く、なじみの薄いブランドかもしれないが、工業大国として、多くの製造業を擁するドイツにあって、大きな存在感を見せる自転車ブランドであるという。

今回紹介するようなロードバイクのみならず、MTBや急速に普及の兆しを見せるEバイク、人々の生活に密着したコミューターまで、幅広いラインアップを揃え、ドイツ国内には数多くのブランドショップを展開しているほどの規模と知名度を持つブランドである。

ワンティカラーに塗り分けられているワンティカラーに塗り分けられている ボリューム感のあるヘッド周辺部ボリューム感のあるヘッド周辺部 細身のブレードを持つ「CSL EVO」ストレートフォーク細身のブレードを持つ「CSL EVO」ストレートフォーク


規模の大きさからは想像できないほど、その歴史は若く、創業は1993年。創業者たるMarcus Pürnerがアジアから独自に輸入した自転車を、自身の通っていた大学で売り始めたことが今のキューブの成功に繋がったのだという。ビジネスを立ち上げてから、わずか25年ほどで、世界的なブランドへと成長したキューブだが、レースの現場でもプレゼンスを高めているのは、熱心なサイクルロードレースファンならば知っているかもしれない。

ワールドチームにこそ供給は行っていないが、ベルギーのプロコンチネンタルチームであるワンティ・グループグベルトに供給することで、世界のトップレースシーンにおいてもその姿を見かけることが多くなってきた。同バイクを駆るエンリーコ・ガスパロット(イタリア)による2016年のアムステルゴールドレース勝利は記憶に新しいだろう。

シンプルなキューブのロゴシンプルなキューブのロゴ オレンジのスペシャルペイントが施されたコックピットオレンジのスペシャルペイントが施されたコックピット

直線的なデザインが魅力的な一台だ直線的なデザインが魅力的な一台だ 横方向にボリュームを持たされたボトムブラケット周辺横方向にボリュームを持たされたボトムブラケット周辺


彼の走りを支えたのが、今回紹介するキューブのフラッグシップモデル「LITENING C:68 SL Team Wanty」。その名が示すように、稲妻のような切れ味のある走りを身上とするオールラウンドレーシングマシンである。質実剛健なドイツブランドらしい直線的なデザインのフレームは、キューブの誇るウルトラハイモジュラスファイバーC:68カーボンによって製造されている。

ナノテクノロジーを駆使して軽量かつ高剛性に仕上げられた高品質なカーボンマテリアルを精密に組み込むことで、余計な重量の増加を最低限に抑えつつ、狙い通りの性能を実現するAdvanced Twin Moldテクノロジーによって、LITENING C:68 SLが得たのは軽さや反応性といったレーサーに求めてやまない走行性能。

チェーンステイもボリュームあるデザインだチェーンステイもボリュームあるデザインだ コンパクトな設計のリアエンドコンパクトな設計のリアエンド


ボリュームのあるスクエア形状のダウンチューブ、そこから続くボックス形状のチェーンステーはプロ選手のパワーに応える剛性を担保する一方で、極限まで細く仕上げられたシートステイによって垂直方向への柔軟性を確保し、トラクション性能と快適性を向上させている。

オーソドックスなシルエットのフレームの中で一際目を引くのはフロントフォークだろう。クラウン部で一気に絞り込まれ、フォークエンドまでピンヒールのような細身のブレードを持つ「CSL EVO」ストレートフォークが、このバイクのルックスにアイデンティティを与えている。とはいえ、決してインパクト重視の設計ではなく、しっかりとした剛性と安心できるハンドリングを持つ一方で、突き上げをいなすだけの柔軟性と軽量性を兼ね備えるためにキューブが出した答えがこの形状に詰まっているということだ。

スリムなリア三角スリムなリア三角 プレスフィットBBによって、ぎりぎりまで拡幅されたハンガー部プレスフィットBBによって、ぎりぎりまで拡幅されたハンガー部 スクエア形状のダウンチューブスクエア形状のダウンチューブ


シンプルなフレームワークを際立たせるように、ケーブル類はヘッドチューブから全て内装処理される。ケーブルが露出するのはフロントブレーキとフレーム左側のみとなっており、ルックスの向上はもちろんのこと、メンテナンス頻度も少なく出来るはずだ。

プロ仕様の「LITENING C:68 SL Team Wanty」は、シマノの最新式電動デュラエース、R9150系で組み上げられる。ハンドル周りはワンティ・グループグベルトと同じオレンジにスペシャルペイントされたリッチーWCSシリーズが奢られる。足回りはフルクラムのアルミセミディープ、タイヤは同郷のシュワルベ ONEが組み合わされるレーシングスペックだ。目新しいながらも、確かな実績を持つキューブのハイエンドバイクを2人のライダーはどう見るのか。インプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「角型チューブが活きた切れ味の良い硬さが特長のバイク」渡辺勇大(GROVE港北)

今までに感じたことのない乗り心地で、切れ味の良い硬さが特徴のバイクです。特にリアセクション周りのパワー伝達性が優れているため、加速に溜めがありません。そのため踏み込み方のテクニックを必要とせず、多くの方が持ち味を体感できると思います。

「角型チューブが活きた切れ味の良い硬さが特長のバイク」渡辺勇大(GROVE港北)「角型チューブが活きた切れ味の良い硬さが特長のバイク」渡辺勇大(GROVE港北)
フレームに採用される角型のチューブが上下左右のしなりを抑制して剛性を高めているためか、パワーを逃がさない剛性感がバイク全体に感じますね。カーボン素材に関してもハイエンドを使用しているとのことで、それも素直な踏み味に良い影響を及ぼしているのではないかと感じます。

ハンドリングもニュートラルで、自分が狙ったラインを完璧にトレースできますし、瞬発的にハンドルを切っても車体がふらつくことがなく、安定した走行性能です。コーナリングに不安がない点も万人向けした扱いやすさに関係する部分でしょう。

空力を意識したエアロロードバイクではないですが、風の切れが良く、平地での高速巡航も安定していました。付属するホイールもリムハイトが35mm程度あるセミディープリムホイールですが、横風に煽られるといった事もありません。装着されるタイヤもシュワルベのトップグレードでですから相性が非常に良いと感じました。

強いて言えばもう少し快適性があっても良いのかなとは思いますので、完成車仕様のクロモリレールのサドルを、カーボンレールのものに交換して、振動吸収性を高める工夫を行えば良いでしょう。オールラウンドな性格ですから、加速やコーナーが続くクリテリウムでも、ゴールスプリントでも、ヒルクライムでもこなせるバランスの良い1台だと思います。どんなシチュエーションにも対応できる優れた万能感が売りのバイクですね。

「気持ちよく脚が回るバイク。完成車の仕様も文句なし」恒次智(サイクルショップフリーダム)

非常に脚が良く回るバイクだと感じました。そうしたバイクはしばしば”踏まされる”という表現をすることがありますが、このバイクに至っては"回される"という感覚で、とにかくハイケイデンスで走りたくなるくらいのフィーリングの良さがありますね。

「気持ちよく脚が回る回転系バイク、完成車の仕様も文句なし」恒次智(サイクルショップフリーダム)「気持ちよく脚が回る回転系バイク、完成車の仕様も文句なし」恒次智(サイクルショップフリーダム) フレームの剛性感に関しては硬めの印象ですが、BB周りや、フロントフォークを中心としたヘッド周りといったフレーム下側のパワーラインから小気味よいリズムが生まれており、それがこの軽快な踏み味に繋がっているように思います。平地も登りもケイデンスは高め、ダンシングでも小刻みに踏んでいくようなペダリングが好みの方には抜群に相性が良いでしょう。長めの登坂や下りが設定されたアップダウンのあるコースにこそマッチすると思いますし、惰性で登りをこなしていけるような平均速度の高いエンデュランスレースに合っていると思います。

オーソドックスなフレーム形状で、シートステーもガッチリと硬いため、路面からの細かい衝撃はあるものの、気になるレベルではありません。荒れた路面でバイクが跳ねてコントロールを失うこともなく、ヨーロッパでは石畳のレースでも使用されるというのも納得ができます。

完成車に付属するホイールは国内ラインナップには存在しないものですし、ハイトも高く重そうだなと思っていました。でも意外や踏み出しも転がりも悪くありませんし、基本性能が高く少々驚いた部分です。フレームとの相性も良かったので、このパッケージングのままでもおよそ不満は出ないはず。

今までにない乗り味のバイクですので、試乗会などで乗ることができる機会があれば是非乗ってみることをオススメします。バイクの性格とバシッとハマる人にとっては、完成車で83万円というプライスも高いとは感じないのではないかと思います。それほどの性能の高さを感じる1台でした。

キューブ LITENING C:68 SL Team Wantyキューブ LITENING C:68 SL Team Wanty (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
キューブ LITENING C:68 SL Team Wanty
フレーム:C:68 Advanced Twin Mold Technology
フォーク:CSL Evo C:68 Technology
メインコンポーネント:シマノ・9150系デュラエースDi2
ステム:リッチー WCS
ハンドルバー:リッチー WCS Logic Curve Carbon
シートポスト:リッチー WCS Carbon(27.2mm)
ホイール:フルクラム Racing 44 Aero
サイズ:50、52、54、56、58
カラー:Team Wanty
重量:7.1kg
価格:832,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

渡辺勇大(GROVE港北)渡辺勇大(GROVE港北) 渡辺勇大(GROVE港北)

横浜市港北区に店舗を構えるGROVE港北の店長。元MTBのダウンヒルプロライダーであり、20年以上に渡ってレース活動を行ってきたベテラン。その経験を活かしトータルとしての乗りやすさを求めるフィッティングやバイクセッティングに定評がある。ロードやMTBなど幅広くスポーツバイクをお客さんと一緒に遊びその楽しさを伝えていくことを大切にしている。愛車はスペシャライズドTarmac S-Works。

CWレコメンドショップページ
GROVE港北HP

恒次智(サイクルショップフリーダム)恒次智(サイクルショップフリーダム) 恒次智(サイクルショップフリーダム)

岡山県岡山市に店舗を構えるサイクルショップフリーダムの店長。速さやスタイルに囚われることなく自由に自転車を楽しむのがショップのコンセプト。MTBから自転車を始め、クロスカントリーレースやロードの実業団レース等にも参加、自転車歴は20年以上。最近はツーリングやトレイルライドにも力を入れる。愛車はキャノンデールのSUPERSIX EVO HI-MOD。そしてホンダS2000やロータスエリーゼ、エキシージなどなど。

CWレコメンドショップページ
サイクルショップフリーダムHP

ウェア協力:Pandani
ヘルメット&アイウェア協力:KASK

text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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