チームスカイと共に、ツール・ド・フランスを筆頭に数々のビッグレースを総なめにしてきたピナレロ。多くの実績を残してきた名車、DOGMA F8を選手向けにブラッシュアップし、より軽く仕上げたスペシャルモデル「DOGMA F8 X-light」をインプレッション。



ピナレロ DOGMA F8 Xlightピナレロ DOGMA F8 Xlight photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
今、一番勢いのあるヨーロッパブランドは? と聞かれれば、多くの人がピナレロと答えるだろう。それほどまでにピナレロの存在感は大きい。特にプロレースの現場においては、チームスカイと共に歩み始めてからは破竹の勢いで勝利を重ね、常勝ブランドとしての立ち位置を固めてきた。

後継モデルとなるDOGMA F10が発表されていることは既報の通りだが(F10についてはこちらのスペシャルコンテンツを見てほしい)、ピナレロを現在のポジションへと押し上げたのは、2014年にデビューしたDOGMA F8であることに異論を挟むものはいないだろう。

ボリュームたっぷりのONDA F8フォークボリュームたっぷりのONDA F8フォーク 左右非対称のトップチューブ左右非対称のトップチューブ 横方向へと広げられた樽型の形状となっており、空力に貢献する横方向へと広げられた樽型の形状となっており、空力に貢献する


マグネシウムという難加工素材を使用し、世界中から驚きをもって迎えられた初代DOGMAが登場したのは2002年のこと。フロントフォークとバックフォークが波打つような「ONDA」システムは、強烈なイメージでもってピナレロのアイデンティティとなった。

DOGMAというモデルにとって、大きなターニングポイントは2つある。一つは、マグネシウムからカーボンへと素材を変更し、世界で初めて左右非対称設計を導入した「DOGMA 60.1」。そして、もう一つがONDAシステムの形状を大きく変更し、フルモデルチェンジを果たした「DOGMA F8」だ。

緩やかに湾曲するトップチューブ シートクランプは2本のイモねじで止める緩やかに湾曲するトップチューブ シートクランプは2本のイモねじで止める フォーククラウンからダウンチューブにかけては流れるようなインテグレートデザインフォーククラウンからダウンチューブにかけては流れるようなインテグレートデザイン

東レのT11001kを使用することを示すレター東レのT11001kを使用することを示すレター Xの文字が誇らしげに入るXの文字が誇らしげに入る


全く新たな設計思想のもと開発されたDOGMA F8だが、その優れた走行性能はすぐに証明されることとなった。クリス・フルーム(イギリス)による2015年と2016年のツール・ド・フランス連覇をはじめ、山岳ステージからスプリントステージ、クラシックレースに至るまで、ありとあらゆるレースで勝利を量産。その優秀性を示してきた。

エアロバイクとヒルクライムバイク、そしてエンデュランスバイクという3つのカテゴリーでロードバイクをラインアップするブランドが多い中、ピナレロはDOGMAをあらゆる局面に対応するオールラウンドレーサーと位置付けている。パリ~ルーベに代表される北のクラシック向けのエンデュランスバイクはDOGMA K8として別に用意されるものの、そういったある種特別なレース以外では、どんなステージ、どんな脚質の選手にもDOGMA F8は応えてきた。

BBはスレッド式 トラディショナルな規格で信頼性が高いBBはスレッド式 トラディショナルな規格で信頼性が高い 中央部が細くなったチェーンステー 快適性が狙いだろう中央部が細くなったチェーンステー 快適性が狙いだろう


つまり、剛性と軽量性、そしてエアロダイナミクスというレースバイクに欠かせない要素において、トップレベルを実現してきたのがDOGMA F8ということである。そして、今回紹介するDOGMA F8 Xlightは、更に軽量性を突き詰めることで、フルームらトップライダーの要望に応えたモデルだ。

昨年のツールやジロで設けられた、山岳TTを制するためにチームスカイからピナレロに寄せられたリクエストが、エアロホイールなどによる重量増加を相殺するような特別な軽量フレームだった。その要望に応えるべく、ピナレロが出した応えがこのXlightである。

フレーム780g、フォーク340gと、通常モデルのF8よりフレームセットで100gのダイエットに成功したXlightの秘密は、素材とカーボンレイアップにある。東レの最高峰カーボン「T1100G UD」を採用するとともに、新たにXlight専用の金型を製造した。プリプレグのレイアップの見直しを図り、通常のF8よりも熱処理に多くの時間を割くことで、レジンの使用量を極限まで抑えることに成功。

コンパクトなリア三角 駆動効率の高そうな形状だコンパクトなリア三角 駆動効率の高そうな形状だ シートステーもアシンメトリーであるシートステーもアシンメトリーである 専用シートピラーが付属する クランプ回りもすっきりとしたエアロデザイン専用シートピラーが付属する クランプ回りもすっきりとしたエアロデザイン


長時間にわたる熱処理の工程や、一本製造するごとに金型を徹底的に清掃する必要があるなど、職人技にも等しい手間と時間が掛けられた。スペシャルモデルというにふさわしいこのバイクは量産が難しく、供給される選手も限られており、クリス・フルーム、ミケル・ランダ(スペイン)、ゲラント・トーマス(イギリス)の3名のみが供給を受けられた。

そんな、トッププロにのみ跨ることが許されたプレミアムレーシングバイクは二人のインプレッションライダーの目にどう映るのか。今回のインプレッションバイクは電動デュラエースにフルクラムのSPEED 40Tを組み合わせている。タイヤはパナレーサーのRACE A EVO3だ。それではインプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「F1のような印象のレーシングバイク」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)

剛性感はカリカリで、デイリーユースで使って良いのかな? と思わせるほどのレーシングフレームです。クルマに例えれば、もはやスーパーカーを飛び越えたF1のような印象で、乗りこなすには相応の実力が必要になってくるバイクではないでしょうか。プロスペックに重きを置いているので、衝撃吸収性などの快適性は二の次。軽く、速く、サーキットエンデューロのようなコースこそベストマッチしそうです。

「F1のような印象のレーシングバイク」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)「F1のような印象のレーシングバイク」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
もちろんバイクの重量が軽いので登りは非常に軽快です。フルームがシッティングで走る選手なのも関係するのか分かりませんが、ペダリングに対してのフレームの反発が非常に速いため、入力に対して小気味よく加速します。反応性に優れるがゆえに、ダンシングへのリズム合わせがしにくい面もありますね。乗りこなすには自分のスキルを上げる必要を感じます。

ハンドリングはピーキーかつ切れ込むので、コーナリングはやや恐怖感があります。ですので、現在主流の太めの25mmタイヤを装備すると安定感が高められていいでしょう。フルームはこのバイクで超級山岳の下りをハイスピードで下るというのですから、この性能を活かしきっているのでしょう。

グランツールを走る選手向けのオールラウンドフレームであるのは間違いないのですが、非常に高い剛性感から登りだけではなくスプリントでも圧倒的な反応感を楽しむことができました。それこそ固定ギアを付けてチェーンをきっちり張ったピストバイクのような印象です。スプリンタータイプの人にも良いかもしれません。

そのパリッとした高い剛性感から腰高感が強く、全体的に乗っていると不安定な感覚すら覚えます。横風などに煽られると不安を感じますし、だからこそ、このバイクはペダリングやハンドリングに長けた乗り方が求められます。しかしちゃんと乗りこなすことができればあらゆる場面で非常に速いバイクですね。

また、このバイクは空力が非常に良いと感じます。特にフロントフォークのワイドに開いてる部分は風の抜け具合が良いですね。空力が悪いバイクは風切り音がバイクの方から聞こえてくるものがありますが、このバイクは風が強い場面でもそういった音が聞こえませんでした。形状は通常のF8と同じということですから、周りを流れる風が渦を巻かないように設計されているF8の基本設計の良さを感じることができます。

総合的に言えば、走りに悦びを求める方、スキルの高い方、登りやスプリントで勝ちたい方、こういったプレミアムなものが好きな方には良いと思います。硬さが売りという面はあるので、そういったバイクを求めている方にはたまらない一台になると思います。正真正銘のスーパーバイクです。

「床の間バイクにしても良いほどのプレミアムロード」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

「床の間バイクにしても良いほどのプレミアムロード」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)「床の間バイクにしても良いほどのプレミアムロード」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 登りは軽く、平地の巡航性能も高い。全ての要素が非常に高いレベルに到達しているため、レーシングバイクとしてどの面から見ても欠点が感じられないバイクです。プロ選手供給モデルということで、フレーム剛性が高く振動吸収性は多少犠牲になっている感は否めませんが、逆にレーシーな挙動と捉えることもできるでしょう。

ノーマルのF8に比べてやはり重量は軽くなっているので、山岳ステージ向けとして用意されているとは思いますが、全体的なバランスがいいので、ヒルクライムだけに特化している訳ではありません。平地も山も下りもオールマイティにこなしてくれます。ロングライドを走るのであればノーマルのF8で、アップダウンの激しい所を走るのであれば、F8 X-lightが良いのではないでしょうか。

軽量性に特化しているように見えがちですが、エアロロードらしさも感じますね。エアロロードバイクというと空力性能に偏っており、見た目がいまいちなものが多いと感じますが、ピナレロらしくルックスも綺麗にまとめられています。これほど見た目良し、超軽量で性能もバランスも良しと仕上げているところは流石ピナレロだなと思います。

エアロダイナミクスと軽量の両方を上手く両立させたバイクはいくつかありますが、その中でも780gというフレーム重量は最軽量の部類だと思います。ですので、予算が許すのであれば一度は乗って、世界最高峰の性能の高さを感じてみて欲しいとさえ感じます。

バイクを組むにあたって、85万円というフレーム以外のパーツにも値段に見合うトップレンジのものを組み込まなければ良さが活きません。デュラエース、スーパーレコード、レッドeTapといったコンポーネントを使うべきですし、ホイールもエアロ効果の効いた軽量なカーボンディープホイールを用意したいですね。このフレームに乗りたいと思うのであれば、それくらいの予算確保は必須になると思います。

レースで光る剛性感ですが、この価格帯のバイクを実業団やホビーレースで使うとなると覚悟が必要だと思います。ですので、オススメしたいのはロングライドやグランフォンドといったリスクの少ない現場で、選手と同じバイクに乗りたいという方ですね。出荷台数が少なくプレミアムロードとして床の間に飾っても満足できる出来栄えです。

ピナレロ DOGMA F8 Xlightピナレロ DOGMA F8 Xlight photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
ピナレロ DOGMA F8 Xlight フレームセット
フレーム:東レT1100Gナノアロイカーボン
フォーク:東レT1100Gナノアロイカーボン
BB規格:イタリアン
カラー:898/カーボンスカイ、970/カーボンレッドストライプ、109/カーボンイエロー、110/カーボンイエロー ライノ、114/カーボンレッド チームスカイ2016 ライノ、117/チームスカイ2016 ライノ、118/BOB チームスカイ2016、119/BOB ライノ チームスカイ2016
サイズ:44SL、46.5SL、47、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5(限定モデル)
価格:850,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

山崎嘉貴(ブレアサイクリング)山崎嘉貴(ブレアサイクリング) 山崎嘉貴(ブレアサイクリング)

長野県飯田市にあるブレアサイクリング店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。

CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリングHP

遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

新潟県長岡市に店舗を構えるサイクルワークス Fin’sの店長。学生時代にBMXから始まり、MTBやロードバイクまで幅広く自転車を楽しむ、バリバリの走れる系店長。スポーツバイク歴は18年にもなり、2012年には全日本選手権ロードに出場した経験も。お店は完璧なメカニックサービスを提供するべく、クオリティの高い整備が評判だ。ショップ主催のサイクリングやレース活動に積極的で、初めての人から実業団レースで活躍したい人まで手厚いサポートを心がける。

CWレコメンドショップページ
サイクルワークス Fin’s HP

ウェア協力:rh+

text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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