向かうところ敵なしの強さを見せるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が再び勝利。世界チャンピオンらを下したユアンがサントス・ツアー・ダウンアンダー第4ステージで3勝目を飾った。



ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の登場に盛り上がるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の登場に盛り上がる photo:Kei Tsuji
タグホイヤーがリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)のために用意した腕時計タグホイヤーがリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)のために用意した腕時計 photo:Kei TsujiUCIによるモーターチェックに選手たちも興味津々UCIによるモーターチェックに選手たちも興味津々 photo:Kei Tsuji


KOMチェッカーヒルで逃げから飛び出すオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)KOMチェッカーヒルで逃げから飛び出すオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsujiアデレード市内のノーウッドから丘陵地帯を駆け抜けて同市内キャンベルタウンに戻る149kmで行われたダウンアンダー第4ステージ。スプリンター向きのコースレイアウトではあるが、終盤にかけてハイスピードダウンヒルやテクニカルコーナーが続く渓谷路を含むため決して気が抜けない。

歓声を受けてKOMチェッカーヒルを登るキャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)ら歓声を受けてKOMチェッカーヒルを登るキャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)ら photo:Kei Tsuji実質的に逃げ切りが決まる最後のチャンスであり、事実として過去にキャンベルタウンでは逃げ切りが決まっていることから、この日は連日よりも熾烈なアタック合戦が展開。アデレード市内を抜け、丘陵地帯に差し掛かったところでオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)、ジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)という強力な3名が先行を開始した。

山岳ポイントのために集団から飛び出したエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)山岳ポイントのために集団から飛び出したエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiこの日唯一のKOMチェッカーヒルで飛び出したのはシンク。2012年にMTBクロスカントリーのU23世界チャンピオンに輝き、同種目で2012年ロンドン五輪14位、リオ五輪15位の成績を残しているロード転向1年目のシンクが最大勾配14%の直線的な登りを先頭でクリアした。

集団からは山岳賞3位のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)がアタック。ポイント狙いというよりも、翌日のウィランガヒルに向けての足慣らしのような加速で、チャベスが山岳賞ジャージのトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)を振り切って4番手通過した。

逃げる3名とBMCレーシングが牽引するメイン集団のタイム差は概ね2分で推移。平均40km/h前後のペースを刻みながら、気温25度前後の(この時期にしては)涼しげなアデレードヒルズをレースは進んだ。

レースが動き始めたのは残り30kmを切ってから。総合で57秒しか遅れていないシンクを切り離そうとマイヤーがアタックすると、その思惑通り先頭はバウアーとマイヤーの2人に。しかしマイヤーはタイム差が1分に迫ったところで集団に戻る。図らずも先頭ではバウアーの独走となった。



BMCレーシングを先頭にKOMチェッカーヒルを登るメイン集団BMCレーシングを先頭にKOMチェッカーヒルを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji
集団後方でKOMチェッカーヒルを登る新城幸也(バーレーン・メリダ)集団後方でKOMチェッカーヒルを登る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji青空のアデレード近郊を逃げる先頭3名青空のアデレード近郊を逃げる先頭3名 photo:Kei Tsuji
BMCレーシングがコントロールするメイン集団BMCレーシングがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsuji


ジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)が先導する逃げグループジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)が先導する逃げグループ photo:Kei Tsujiキャノンデールからクイックステップフロアーズに移籍したばかりのバウアーが45秒前後のリードをキープして力走。渓谷に沿ったダウンヒルを駆け抜けたが、オリカ・スコットやチームスカイ率いるメイン集団がじわりとタイム差を詰める。

登り基調&向かい風のスプリントで先頭に立つカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)登り基調&向かい風のスプリントで先頭に立つカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji「2年前にジャック・ボブリッジが集団が振り切った前例があり、今大会唯一の逃げ切りチャンスだと思っていたので迷わず挑戦し続けた」というバウアーが抵抗を続けたが、スプリンターチームによって残り3kmで吸収。レースはアタックを許さないスピードでキャンベルタウンのフィニッシュ地点に向かい、今大会3回目の集団スプリントが始まった。

サガンやファンポッペルを振り切ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)サガンやファンポッペルを振り切ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiチームメイトのリードアウトを受けたダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)が残り200mで最初に加速したものの、そこからフィニッシュラインまでは数パーセントの登り勾配と向かい風。

無敵の強さを見せるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)無敵の強さを見せるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiタイミングを遅らせて踏み始めたユアンが、ほぼ同時に加速したベン・スウィフト(イギリス、UAEアブダビ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を置き去りにし、先頭のファンポッペルをパスする。下ハンドルを握り、上半身をほぼハンドルの前に突き出した独特の(ミサイルに形容される)ポジションで、ユアンが先頭でフィニッシュした。

ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiスプリント4戦3勝。「渓谷に沿った下りでリードアウトトレインが分裂してしまい、とてもトリッキーなフィニッシュだった。残り1kmを切ってから始まる最終ストレートで前を塞がれたけど、まだスプリント開始まで時間があったのでパニックになることなく平常心をキープ。前にスペースができたタイミングでスプリントを開始して、そして勝ったんだ」と、無敵に強さを見せるユアンは語る。もちろんポイント賞争いでは首位を独走中だ。

総合上位陣の中ではネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)とジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)がスプリントに絡んだものの、ボーナスタイム獲得圏内に入ることはできなかった。

ポートは1秒も失うことなく第4ステージまでを終え、ウィランガヒルの山頂フィニッシュが設定された勝負の第5ステージに挑む。「昨日と同様、今日もリードを失う可能性がある危険なステージだった。とにかく無事に乗り切ったことにホッとしている」。BMCレーシングは安定感ある走りでポートを完全にバックアップしている。

過去3年連続でウィランガヒルを制しているポートは「例年とは違って今年はリーダージャージを着ているので、自分から動く必要がない。だから明日はステージ優勝にこだわらず、総合リードを守るための走りになると思う。仮にライバルたちが早めに攻撃を仕掛けてきても、押さえ込む力がBMCレーシングにはあるし、チームにはモチベーションの高いローハン・デニスというカードも持っている」と、第5ステージはあくまでも初の総合優勝に向けてリードキープを主眼に走る構えだ。



ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji
総合リードを守ったリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)総合リードを守ったリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji敢闘賞はキャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)の2人敢闘賞はキャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)の2人 photo:Kei Tsuji




サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第4ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)    3h45’19”
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
4位 ベン・スウィフト(イギリス、UAEアブダビ)
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
6位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
7位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 カルム・スコットソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
9位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)
10位 エンリーコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)

個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     14h20’18”
2位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)            +20”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)      +22”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +24”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)    +27”
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)       +29”
7位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
8位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)   
9位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
10位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)

ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)     45pts
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)       39pts
3位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)     28pts

山岳賞
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)      16pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)       16pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)     14pts

ヤングライダー賞
1位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)  14h20’47”
2位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
3位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)

チーム総合成績
1位 UniSAオーストラリア                    43h02”45”
2位 モビスター                          +04”
3位 トレック・セガフレード                    +11”

敢闘賞
ジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)
キャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia