女子種目が正式化された10月の岩手国体、別府史之がクリテそしてダヴィデ・ヴィレッラが制したジャパンカップ、増田成幸が別格の強さを見せたおきなわ、そして沢田時が制した全日本シクロクロス選手権まで2016年を振り返ります。



10月

岩手国体で女子種目が初めて正式化された。UCIは男女同数種目の方針を出しているが国内大会では競技人口やスケジュールの都合ですべてがそうであるとは限らない。今まで男子のみだった国体自転車競技が今年の岩手大会から種目は限られるものの女子種目が正式化されたことは画期的なことだ。また配点も男子と同じため、天皇杯の総合成績を競ううえで女子選手の参加と成績は総合に直結するものとなった。女子競輪選手も各県1名までだが参加でき、レベルがいきなり高いものに。

いっぽうインターハイは現状男子のみだがこれも2018年度にロードも含めて女子種目が正式化される予定だ。また日本独自種目だった4km速度競争がスクラッチに替わった。
イギリス・マンチェスターで開かれていたUCIトラックマスターズ世界選手権大会において、和地恵美(スーパーKアスリートラボ)が500mTTの55歳~59歳部門で自身3つ目となる金メダルを、スプリントで銀メダルを獲得した。

岩手国体 女子チームスプリント 1位 福岡県(児玉、大久保)47秒294岩手国体 女子チームスプリント 1位 福岡県(児玉、大久保)47秒294 photo:Hideaki TAKAGI岩手国体 女子スクラッチ 中村愛花(福井 科学技術高)が優勝岩手国体 女子スクラッチ 中村愛花(福井 科学技術高)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI

岩手国体ロード 成年男子 武山晃輔(山梨)が優勝岩手国体ロード 成年男子 武山晃輔(山梨)が優勝 photo:Satoru.Kato岩手国体ロード少年男子 大町健斗(広島)が優勝岩手国体ロード少年男子 大町健斗(広島)が優勝 photo:Satoru.Kato

Jプロツアーで最もレイティングの高い経済産業大臣旗杯ロード輪島大会は、序盤にアタックしたオスカル・プジョル(チーム右京)が後半でホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)を振り切り優勝。団体総合もチーム右京で輪翔旗を獲得した。ブリヂストンアンカー勢中心に後続も追い上げたが、驚異の独走力でプジョルが制した。日本人選手は中根英登(愛三工業レーシングチーム)が5位に食い込んだ。

経済産業大臣旗杯ロード オスカル・プジョル(チーム右京)が優勝経済産業大臣旗杯ロード オスカル・プジョル(チーム右京)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI経済産業大臣旗杯ロード チーム右京が輪翔旗を手にする経済産業大臣旗杯ロード チーム右京が輪翔旗を手にする photo:Hideaki TAKAGI

今年も大きな感動を呼んだのがジャパンカップ。まずオープンレースは男子2組が岡篤志(弱虫ペダルサイクリングチーム)と才田直人(リオモベルマーレ)が、女子は梶原悠未(筑波大学)が優勝。岡は当日晩に2017年からの宇都宮ブリッツェンへの移籍を発表した。
ファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)の引退レースとなったのがジャパンカップクリテリウム。例年以上の観客が集まる中、完璧なチームのアシストを受けた別府史之(トレック・セガフレード)が連覇を達成すると会場のボルテージは最高潮に。

ジャパンカップクリテリウム連覇を達成した別府史之(トレック・セガフレード)ジャパンカップクリテリウム連覇を達成した別府史之(トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
別府史之の勝利を喜び合うトレック・セガフレード別府史之の勝利を喜び合うトレック・セガフレード photo:Makoto.AYANOジャパンカップクリテリウム 2位ジョン・アベラストゥリ(スペイン、チームUKYO)、1位別府史之(トレック・セガフレード)、3位マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)ジャパンカップクリテリウム 2位ジョン・アベラストゥリ(スペイン、チームUKYO)、1位別府史之(トレック・セガフレード)、3位マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji

8万5千人の観客を集めたジャパンカップ本戦は、1周目から逃げた5人のうち今年で引退を発表していた井上和郎(ブリヂストンアンカー)が山岳賞を獲得すると古賀志林道は沸き返る。ラスト2周で逃げは吸収されるが26人の大人数のまま最終周回へ。ここでダヴィデ・ヴィレッラ(キャノンデール・ドラパック)がアタックし独走体制へ。プジョルやベンジャミ・プラデス(チーム右京)らも追走するが届かずヴィレッラがキャリア初となる優勝。3週間前のロンバルディア5位の実力を見せた。プジョルは5位、プラデス7位そして9位は新城幸也(ランプレ・メリダ)だった。

ジャパンカップ 独走でフィニッシュするダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)ジャパンカップ 独走でフィニッシュするダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) photo:Kei Tsuji
スタートに並んだ選手たちにフォトグラファーが集まるスタートに並んだ選手たちにフォトグラファーが集まる photo:Kei Tsuji6周目の山岳賞は井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が獲得6周目の山岳賞は井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が獲得 photo:Hideaki TAKAGI

日本自転車競技連盟(JCF)が承認するJAPANプロサイクリングがいよいよ始動した。10月24日にイタリア大使館で同大使代理、橋本聖子会長(JAPANプロサイクリング理事長/日本自転車競技連盟会長)らが会見を開き、その活動内容を発表した。それは日本企業がメインスポンサーでイタリア籍のプロコンチネンタルチームであるNIPPOヴィーニファンティーニに愛三工業レーシングチームから伊藤雅和と中根英登が、そして内間康平(ブリヂストンアンカー)の3人が加入することだ。日本人選手の育成強化とともに日本人がUCIポイントを多く獲得することを目的とする。現状は愛三工業が協力するが今後はさらに参画する企業(チーム)が増え、日本人選手のさらなるUCIポイント獲得がなされることを期待したい。

JAPANプロサイクリング 橋本聖子理事長(日本自転車競技連盟会長)。左は林辰夫氏(JAPANプロサイクリング理事)JAPANプロサイクリング 橋本聖子理事長(日本自転車競技連盟会長)。左は林辰夫氏(JAPANプロサイクリング理事) photo:Hideaki TAKAGINIPPOヴィーニファンティーニに新加入する4人。中根英登、伊藤雅和(共に愛三工業レーシング)、小林海(チームクオータ C.パウリーノ)、内間康平(ブリヂストン・アンカー)NIPPOヴィーニファンティーニに新加入する4人。中根英登、伊藤雅和(共に愛三工業レーシング)、小林海(チームクオータ C.パウリーノ)、内間康平(ブリヂストン・アンカー) photo:Hideaki.Takagi

今年もさいたま新都心駅周辺で多くの観客を集めて行われたツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。ツール4賞ジャージ受賞者全員が初めてさいたまに揃う。まずはTTでジュニアTTチャンピオンジャージを着る大町健斗(安芸府中高校)が、ワールドツアーチーム選手らを差し置いてトップタイムをたたき出す。続くポイントレースは新城が優勝し会場は盛り上がる。そしてクリテリウム本戦は終盤に新城と別府が抜け出すが、ペーター・サガン(ティンコフ)、クリス・フルーム(チームスカイ)、そして全日本チャンピオンジャージを着る初山翔(ブリヂストンアンカー)の3人が抜け出しサガンがこれを制した。

さいたまクリテリウムに初めてツール・ド・フランス4賞ジャージが揃ったさいたまクリテリウムに初めてツール・ド・フランス4賞ジャージが揃った photo:Makoto.AYANO
ポイントレースで優勝の新城幸也(ランプレ・メリダ)ポイントレースで優勝の新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji片手を上げてフィニッシュするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)片手を上げてフィニッシュするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji

Jプロツアー最終戦のおおいたロードで増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が圧勝。年間23戦の総合ではホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が個人総合優勝、チーム右京がチーム総合優勝、U23は小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が優勝した。またJエリートツアーでは岡が参加24戦中14勝という別格の強さを見せ総合優勝。女子は同じく弱虫ペダルサイクリングチームの唐見実世子が圧勝する結果に。

2016年Jプロツアー個人総合優勝のホセ・ビセンテ・トリビオ2016年Jプロツアー個人総合優勝のホセ・ビセンテ・トリビオ photo:HIdeaki TAKAGIJプロツアー チーム総合優勝 チーム右京が2年連続受賞Jプロツアー チーム総合優勝 チーム右京が2年連続受賞 photo:Hideaki TAKAGI
Jエリートツアーを席巻した岡篤志(弱虫ペダルサイクリングチーム)Jエリートツアーを席巻した岡篤志(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGIJフェミニンツアー優勝の唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)。アタックを連発しレースが活性化したJフェミニンツアー優勝の唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)。アタックを連発しレースが活性化した photo:Hideaki TAKAGI



11月

今年の全日本選手権ロードはジュニア年代クラスのみ11月に島根県益田市で開催された。今年で3回目となる益田チャレンジャーズステージが全日本選手権として行われた形だ。男子ジュニアは最もマークされていた2連覇中の沢田桂太郎(日本大学)が終盤に脱落し、ラスト600mでスパートをかけた松田祥位(岐阜第一高)が優勝。曽我部厚誠(京都産業大)、吉岡衛(奈良北高)と続いた。女子は菅原朱音(倉吉総合産業高)と中冨尚子(千原台高)が抜け出し菅原が先着しジュニア優勝、中冨はU17で優勝した。男子U17は塩島嵩一朗(南大隅高)がスプリントで制し、U15は竹内成(ボンシャンス)が優勝した。

全日本選手権ロードMJ 松田祥位(岐阜第一高)がジュニアチャンピオンに全日本選手権ロードMJ 松田祥位(岐阜第一高)がジュニアチャンピオンに photo:Hideaki TAKAGI全日本選手権ロードWJ 菅原朱音(倉吉総合産業高)が優勝 中冨尚子(千原台高)はWU17優勝全日本選手権ロードWJ 菅原朱音(倉吉総合産業高)が優勝 中冨尚子(千原台高)はWU17優勝 photo:Hideaki TAKAGI

気温が30度近くまで上がったツール・ド・おきなわ。UCI1.2の男子チャンピオンレースは終盤に内間が仕掛けて増田、ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)、プラデスの4人となり、増田が14kmを独走して優勝。誰もがマークした選手の、そして誰もが予想した羽地ダム上りでのアタックだったが、「ワールドツアークラスの実力」とクロフォードに言わしめるほど別格の強さで増田は他を力でねじ伏せた。女子国際はファン・ティン・イン(台湾ナショナルチーム)が制し金子広美(イナーメ信濃山形)は3位に、ジュニア国際はモーリス・トゥーン(ベイビーダンプ)が制し重満丈(北中城高校)は2位に。そして注目の市民210kmは高岡亮寛(イナーメ信濃山形)が40kmの独走を決め史上初の4勝を達成した。

ツール・ド・おきなわ チャンピオン 195km地点、アタックした増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が後続を突き放すツール・ド・おきなわ チャンピオン 195km地点、アタックした増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が後続を突き放す photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・おきなわ チャンピオン 168km地点、平良湾を進む先頭8人ツール・ド・おきなわ チャンピオン 168km地点、平良湾を進む先頭8人 photo:Hideaki TAKAGIツール・ド・おきなわ 女子国際 ファン・ティン・イン(台湾ナショナルチーム)が大会2連覇達成ツール・ド・おきなわ 女子国際 ファン・ティン・イン(台湾ナショナルチーム)が大会2連覇達成 photo:Hideaki TAKAGI

ツール・ド・おきなわ ジュニア国際表彰ツール・ド・おきなわ ジュニア国際表彰 photo:Hideaki TAKAGIツール・ド・おきなわ市民210km 高岡亮寛(イナーメ信濃山形)が40kmの独走を決め史上初の4勝目ツール・ド・おきなわ市民210km 高岡亮寛(イナーメ信濃山形)が40kmの独走を決め史上初の4勝目 photo:Makoto.AYANO

伊豆ベロドロームで行われた全日本選手権オムニアムは新レギュレーションによる国内初の全国大会に。従来は6種目2日間のレースだったが、UCIによる改訂で4種目1日での競技に。タイム系種目がなくなりすべて競走系で、1周毎に加点される新種目の”テンポ”が導入された。男子は僅差の戦いをレース巧者の小林泰正(日本体育大学)が制した。女子は4種目すべてでトップの梶原悠未(筑波大学)が圧倒。男女ともに昨年に続いて連覇を達成した。

全日本選手権オムニアム 男子 1位小林泰正(日本体育大学)と2位松本憲斗(鹿屋体育大学)全日本選手権オムニアム 男子 1位小林泰正(日本体育大学)と2位松本憲斗(鹿屋体育大学) photo:Hideaki TAKAGI全日本選手権オムニアム 女子 1位 梶原悠未(筑波大学)、2位 鈴木奈央(JPCU静岡)全日本選手権オムニアム 女子 1位 梶原悠未(筑波大学)、2位 鈴木奈央(JPCU静岡) photo:Hideaki TAKAGI

選手にとっても観客にとっても抜群のホスピタリティのあるのがRaphaスーパークロス野辺山だ。今年も最上級クラスは2日間UCIレースとして行われた。初日の男子エリートは小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が1度のミスをした沢田時(ブリヂストンアンカー)を下し優勝。女子エリートは坂口聖香(パナソニックレディース) が圧勝。2日目はジャージの判別がつかないほどの超マッドコンディション。男子エリートは接戦をギャリー・ミルバーン(Speedvagen MAAP)が制し沢田時(ブリヂストンアンカー)は2秒差の2位に。女子エリートは坂口が連勝。男子日本チャンピオンの竹之内悠(東洋フレーム)は帰国直後で振るわず初日10位、2日目はリタイアした。

Raphaスーパークロス野辺山1日目 エリート男子 ガッツポーズでフィニッシュする小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)Raphaスーパークロス野辺山1日目 エリート男子 ガッツポーズでフィニッシュする小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.ccRaphaスーパークロス野辺山 エリート女子 2連勝の坂口聖香(パナソニックレディース)Raphaスーパークロス野辺山 エリート女子 2連勝の坂口聖香(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji / nobeyamacyclocross.cc



12月

全日本シクロクロス選手権が栃木県宇都宮市の道の駅うつのみやろまんちっく村で行われ、男子エリートは沢田時(ブリヂストンアンカー)がエリート初年度で初優勝、女子エリートは坂口が2連覇を果たした。男子エリートは8周中2周目から沢田、小坂、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)の3人が競う中で沢田が抜け出し以降は独走。2番手も小坂を抜いた前田が沢田を追うものの差は開き沢田、前田、小坂の順にフィニッシュ。6月30日のMTB世界選手権試走中に落車して鎖骨とひじを骨折していた沢田は世界戦もMTB全日本選手権も出場できなかった。しかしその後は以前にも増した力を見せこのシクロクロスでも22歳にしてエリートで優勝した。

全日本シクロクロス選手権 男子エリート 沢田時(ブリヂストンアンカー)が優勝全日本シクロクロス選手権 男子エリート 沢田時(ブリヂストンアンカー)が優勝 photo:Kei Tsuji
女子は坂口に武田和佳(Liv)が食らいついたがその後は坂口が独走し優勝、3位には與那嶺恵理(FORZA YONEX)が入った。男子U23は最終年度の横山航太(シマノレーシング)と同初年度の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)の一騎打ちとなり最終周回に織田を突き放した横山が2度目の勝利。男子ジュニアはスタートで出遅れたがわずか半周でトップに立った日野泰静(松山城南高校)が圧勝した。

全日本シクロクロス選手権 女子エリート 坂口聖香(パナソニックレディース)が連覇全日本シクロクロス選手権 女子エリート 坂口聖香(パナソニックレディース)が連覇 photo:Kei Tsuji
全日本シクロクロス選手権U23 最終年度に自身2度目の全日本タイトルを獲得した横山航太(シマノレーシング)全日本シクロクロス選手権U23 最終年度に自身2度目の全日本タイトルを獲得した横山航太(シマノレーシング) photo:Hideaki TAKAGI全日本シクロクロス選手権 ジュニア 日野泰静(松山城南高校)が優勝全日本シクロクロス選手権 ジュニア 日野泰静(松山城南高校)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI



1月のアジア選手権に始まり伊豆大島の全日本選手権ロード、そして12月の全日本シクロクロス選手権までの国内レース1年間を3回に分けて振り返りました。2017年は、3月下旬にUCI2.2のステージレースであるツール・ド・とちぎが新規開催されます。ほかUCIレースは例年通りで、全日本選手権ロードは青森県階上(はしかみ)町で、インターハイは福島県、インカレは長野県、国体は愛媛県そして全日本シクロクロス選手権は長野県野辺山で行われることがすでに決まっています。Jプロツアーは新規大会が複数予定されています。2017年は誰がヒーロー、ヒロインになるのか興味は尽きません。

text:高木秀彰