2016年の国内ロードシーンを振り返るシリーズ第2回。全日本選手権ロードは伊豆大島で開催。ブリヂストンアンカーがTTとロードを制し12年ぶりの優勝。インターハイ、インカレの次は増田成幸が圧倒したツール・ド・北海道だ。

6月

ツール・ド・熊野第2ステージラスト4km、オスカル・プジョル(チーム右京)とマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)がフィニッシュを目指すツール・ド・熊野第2ステージラスト4km、オスカル・プジョル(チーム右京)とマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)がフィニッシュを目指す photo:Hideaki TAKAGI
世界遺産の地である紀伊山地を舞台とするツール・ド・熊野(UCI2.2)。ここでも2週間前のツアー・オブ・ジャパンで個人総合1位2位のオスカル・プジョル(チーム右京)とマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)が活躍した。プロローグは阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が優勝し自身初のUCIレース優勝&リーダーに。日本一厳しい下りを含む熊野山岳の第2ステージでプジョルとガルシアの2人が逃げ切りプジョルが優勝。総合9秒差でガルシアが続く。そして運命の第3ステージ太地。その9秒差を逆転すべくガルシアが攻撃するがレース途中から激しい豪雨に見舞われガルシアは落車してしまう。レースは逃げ切った大久保陣(宇都宮ブリッツェン)が優勝、プジョルが個人総合優勝し攻め続けたガルシアは10位に転落するがチーム総合で優勝し、キナンサイクリングチームは地元でのレースに華を添えた。

ツール・ド・熊野プロローグ優勝の阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)と第3ステージで優勝する大久保陣(宇都宮ブリッツェン)ツール・ド・熊野プロローグ優勝の阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)と第3ステージで優勝する大久保陣(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGIツール・ド・熊野第3ステージ 豪雨の中マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)とオスカル・プジョル(チーム右京)の攻防が続くツール・ド・熊野第3ステージ 豪雨の中マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)とオスカル・プジョル(チーム右京)の攻防が続く photo:Hideaki TAKAGI

6月の最終週は伊豆大島での全日本選手権TT&ロード。ともにコースは1月のアジア選手権と同じだ。初日の個人TT男子エリートは復帰2年目の西薗良太(ブリヂストンアンカー)が2012年以来2度目の優勝を飾る。これに佐野淳哉(マトリックスパワータグ)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が続いた。女子エリートは與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が2連覇、これにエリート1年目の梶原悠未(筑波大学)、萩原麻由子(ウィグルハイファイブ)が続いた。男子U23は小林海(Team KUOTA C.PAULLINO)が僅差の戦いを制した。男子ジュニアは大町健斗(安芸府中高校)、女子は下山美寿々(大阪教育大付属天王寺高校)、男子U17は日野泰静(松山城南高校)がチャンピオンに。

全日本選手権TT男子エリート 西薗良太(ブリヂストンアンカー)が2度目の優勝全日本選手権TT男子エリート 西薗良太(ブリヂストンアンカー)が2度目の優勝 photo:Hideaki TAKAGI全日本選手権TT女子エリート 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が2連覇達成全日本選手権TT女子エリート 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が2連覇達成 photo:Hideaki TAKAGI

ロードレース男子エリートは終盤にかけて上りで人数が絞られる展開。ラスト7kmで11人の集団から抜け出したブリヂストンアンカーの初山翔と西薗、木村圭佑(シマノレーシング)の3人のスプリントを初山が制し西薗とのワン・ツー勝利を達成。終始レースを支配したブリヂストンアンカーは、じつに2004年以来の全日本ロード制覇だった。西薗のTTと合わせ、チームはダブルタイトルを獲得した。

男子エリートをワンツーフィニッシュで飾った初山翔と西薗良太(チームブリヂストン・アンカー)男子エリートをワンツーフィニッシュで飾った初山翔と西薗良太(チームブリヂストン・アンカー) photo:Makoto.AYANO
全日本選手権ロード男子エリートラスト4km、先行する3人を石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)が追うが届かない全日本選手権ロード男子エリートラスト4km、先行する3人を石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)が追うが届かない photo:Hideaki TAKAGIチームメイトと喜びを分かち合う初山翔(チームブリヂストン・アンカー)チームメイトと喜びを分かち合う初山翔(チームブリヂストン・アンカー) photo:Yuichiro Hosoda

リオオリンピック出場選考大会にもなった女子エリートロード。UCIポイントランキング上位3人の萩原、與那嶺そして金子広美(イナーメ信濃山形)から上位1名が候補選手として選出される仕組みだ。1月のアジア選でもう1枠を獲得できなかったが萩原の5月までのUCIポイントにより1枠が確保されていた。レースは萩原が攻撃する場面が多く最終周回の上りでアタックしたその萩原に與那嶺が反応し2人の戦いに。ラスト800mで仕掛けた與那嶺がそのままフィニッシュし優勝、リオオリンピックへの切符を手にした。男子U23は最終周回上りでアタックした小林が逃げ切ってTTとのダブルタイトルを獲得。のちにNIPPOヴィーニファンティーニの研修生に、そして2017年からは正メンバーとして加入する。

全日本選手権ロード女子エリート ラスト3km、アタックする與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)に萩原麻由子(Wiggle High 5)が反応全日本選手権ロード女子エリート ラスト3km、アタックする與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)に萩原麻由子(Wiggle High 5)が反応 photo:Hideaki TAKAGI
全日本選手権ロード女子エリート 表彰全日本選手権ロード女子エリート 表彰 photo:Hideaki TAKAGI全日本選手権ロードU23 最終周回上りでアタックした小林海(Team KUOTA C.PAULINO)と食らいつく小橋勇利(シマノレーシング)全日本選手権ロードU23 最終周回上りでアタックした小林海(Team KUOTA C.PAULINO)と食らいつく小橋勇利(シマノレーシング) photo:Hideaki TAKAGI

7月

北海道ニセコでアジア初のUCIグランフォンドワールドシリーズのニセコクラシックが開催された。3回目となる同大会は上位者がUCIグランフォンド世界選手権への出場権を手にできるUCI公認の大会となった。年齢もおよそ5歳ごとに区分され49歳以下は140km、50歳以上は70kmがUCIのクラス分けだ。コースはツール・ド・北海道と同じく片側のみの交通規制で、海外からの参加者も過去2回よりもちろん多く冬場は英語が公用語ともなる当地だからこその大会となった。少なくとも上位陣はロードレースをしており、日本でのグランフォンドの意味が大きく変わったイベントとなった。

アジアで初のUCIグランフォンドとなったニセコクラシック 140kmクラスからアジアで初のUCIグランフォンドとなったニセコクラシック 140kmクラスから photo:Hideaki TAKAGIニセコクラシック UCIグランフォンドらしく各国からサイクリストが集まったニセコクラシック UCIグランフォンドらしく各国からサイクリストが集まった photo:Hideaki TAKAGI

長野県富士見パノラマリゾートで行われたMTB全日本選手権XCO。男子エリートはアジア選8連覇中の山本幸平(Trek Factory Racing)が圧倒し2年連続8度目の優勝を飾った。これに平野星矢(Bridgestone Anchor Cycling)、エリート初年度の中原義貴(BH SR SUNTOUR)が続いた。女子は末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK)が前日に行われた17連覇のDHとの2冠を2年連続達成。これに武田和佳(Liv)、小林可奈子(MTBクラブ安曇野)が続いた。男子U23は平林安里(SPECIALIZED RACING JAPAN)、女子同相野田静香(Club Glow)、男子ジュニアは北林力(ProRide)、女子同佐藤寿美(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)がチャンピオンに。

MTB全日本選手権XCO男子エリート 山本幸平(Trek Factory Racing)が8度目の優勝MTB全日本選手権XCO男子エリート 山本幸平(Trek Factory Racing)が8度目の優勝 photo:So.Isobe
MTB全日本選手権XCO女子エリート 2年連続となるダウンヒル/クロスカントリーのダブルタイトルを獲得した末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK)MTB全日本選手権XCO女子エリート 2年連続となるダウンヒル/クロスカントリーのダブルタイトルを獲得した末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK) photo:So.IsobeMTB全日本選手権各カテゴリーの全日本チャンピオンが集うMTB全日本選手権各カテゴリーの全日本チャンピオンが集う photo:So.Isobe

8月

今年のインターハイはトラックが鳥取県倉吉競技場、ロードは広島県中央森林公園で行われた。チームパーシュートは予選で4分22秒935の大会新記録を出した岐阜第一高校(大屋、亀谷、菅原、松田)が榛生昇陽高校を抑えて優勝。チームスプリントは別府商・別府翔青高校(甲斐、長松、田仲)が1分4秒880の好タイムで優勝。そして1kmタイムトライアルは山田諒(岐阜第一高校)が1分5秒197の20年ぶり大会新記録で優勝。ロードレースは最終周回に抜け出した1年生の林祐作(名古屋高校)が先行していた亀谷昌慈(岐阜第一高校)を抜いて優勝。これに浜田大雅(藤井寺工科高校)、日野泰静(松山城南高校)が続いた。学校対抗総合は別府商業・別府翔青高校が高校合併前の最後の年に優勝した。

インターハイ4kmチームパーシュート 優勝した岐阜第一のメンバーインターハイ4kmチームパーシュート 優勝した岐阜第一のメンバー photo:Satoru.Katoインターハイ1kmタイムトライアル 山田諒(岐阜第一)が1分5秒197の20年ぶり大会新で優勝インターハイ1kmタイムトライアル 山田諒(岐阜第一)が1分5秒197の20年ぶり大会新で優勝 photo:Satoru.Kato

インターハイロード 林祐作(名古屋)が1周を独走して優勝インターハイロード 林祐作(名古屋)が1周を独走して優勝 photo:Hideaki TAKAGI
静岡県伊豆市の伊豆ベロドロームと日本CSC5kmサーキットで行われたインカレ。トラックは法政大学が2種目を制し、1kmTTは堀航輝(鹿屋体育大学)が1分02秒898の学連新・大会新で優勝。2位の橋本壮史(中央大学)も1分02秒993の学連新・大会新だ。男子チームスプリントは鹿屋体育大学が学連・大会新記録で優勝。チームパーシュートは朝日大学が4分10秒794で鹿屋体育大学を下しこの種目初優勝。短距離では宮本隼輔(中央大学)がケイリンとスプリントで2冠達成。ロード男子は15人となった最終周回に3人が逃げ、これを単独で抜き去った野本空(明治大学)が優勝。これに草場啓吾(日本大学)、中川拳(早稲田大学)らが続いた。女子は後半30kmを独走した福田咲絵(慶応義塾大学)が優勝。大学対抗総合は男女ともに鹿屋体育大学が優勝、男子は4連覇、女子は2連覇だ。

インカレ ハイレベルの戦いだった男子1kmタイムトライアルインカレ ハイレベルの戦いだった男子1kmタイムトライアル photo:Hideaki TAKAGIインカレ男子4kmチームパーシュート初優勝の朝日大学インカレ男子4kmチームパーシュート初優勝の朝日大学 photo:Hideaki TAKAGI

インカレ ケイリンとスプリント優勝の宮本隼輔(中央大学)は両親に金メダルをプレゼントインカレ ケイリンとスプリント優勝の宮本隼輔(中央大学)は両親に金メダルをプレゼント photo:Hideaki TAKAGIインカレ 女子個人ロードレース 福田咲絵(慶応義塾大学)が30km独走で優勝インカレ 女子個人ロードレース 福田咲絵(慶応義塾大学)が30km独走で優勝 photo:Hideaki TAKAGI

インカレ 男子個人ロードレース 野本空(明治大学)が優勝インカレ 男子個人ロードレース 野本空(明治大学)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
JBCFは2016年Jプロツアー23戦中5戦が新会場で開催した。奈良、やまぐちTT、やまぐちクリテ、まえばしクリテ、赤城山だ。JETメインでJプロツアーはエキシビションだったが仙台クリテも開催。クリテリウムはどの会場もおよそ市街地中心部で行われ大盛況。またやまぐちTTに至ってはなんと土曜日の山口県庁敷地内、一部は地下駐車場を通るなど大胆なもの。2017年はさらに新会場での開催が予定されている。

JプロツアーやまぐちTTは山口県庁舎、山口県警本部をめぐるコースJプロツアーやまぐちTTは山口県庁舎、山口県警本部をめぐるコース photo:Satoru.KatoJプロツアーまえばしクリテリウムは群馬県庁前がコースJプロツアーまえばしクリテリウムは群馬県庁前がコース photo:Hideaki TAKAGI

9月

日本人選手最強とされながらもUCIレース優勝は2014年おきなわだけだった増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。その増田が登坂力独走力を生かして優勝したのが30周年を迎えたツール・ド・北海道だ。第2ステージ後半のKOMへ向けて独走を開始するとフィニッシュまでの56kmを集団に42秒差をつけて逃げ切った。秒差の争いが多い北海道でこのタイム差は大きい。

しかし最終第4ステージで12分近い大逃げができる。しかもメンバーは西薗、木村、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、吉岡直哉(那須ブラーゼン)そして今季のツアー・オブ・ユタ(UCI2.HC)など勝利しているラクラン・モートン(ジェリーベリーP/Bマキシス)だ。なかでも吉岡は総合1分04秒差につけており一躍総合逆転優勝が見えてくる。メイン集団も追い上げるが4人が逃げ切ってしまう。しかしそのタイム差は34秒。吉岡の逆転はならなかったがその激走は記憶に残るものに。

ツール・ド・北海道第2ステージ ラスト3km、追走集団を背にフィニッシュ地点を目指す増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ツール・ド・北海道第2ステージ ラスト3km、追走集団を背にフィニッシュ地点を目指す増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・北海道第4ステージ ラスト8km、逆転優勝をかけて逃げを引く吉岡直哉(那須ブラーゼン)ツール・ド・北海道第4ステージ ラスト8km、逆転優勝をかけて逃げを引く吉岡直哉(那須ブラーゼン) photo:Hideaki TAKAGI北海道カップを手中に収めた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。チームにとっても大きな勝利だ北海道カップを手中に収めた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。チームにとっても大きな勝利だ photo:Hideaki TAKAGI

text:高木秀彰

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