年末恒例!2016年シーズンの海外ロードレースを振り返るプレーバックシリーズを全4回に分けてお届けします。第1回は1月のシーズンインから3月のクラシックシーズンまでをプレーバック!



1月

独走でフィニッシュに向かうリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)独走でフィニッシュに向かうリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiシーズン開幕を告げるレースといえば、オーストラリアを舞台に開催されるUCIワールドツアーレース初戦のツアー・ダウンアンダー。2016年もすべてのUCIワールドチームが勢揃いし、目新しいチームジャージやバイクで真夏のオーストラリアを駆け抜けた。本戦前に行われる興行クリテリウムピープルズチョイスクラシックで早速スピードを発揮したのは小柄なカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)。21歳の弾丸スプリンターは本戦でもスプリント2勝を飾る活躍を見せた。

4度目の総合優勝を飾ったサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)4度目の総合優勝を飾ったサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji例年よりもピュアスプリンターを欠いたツアー・ダウンアンダーは連日のように逃げ切りや精鋭集団のスプリントに持ち込まれる混戦に。2日連続で小集団スプリントを制したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)が首位に立ったものの、最大の山場であるウィランガヒル山頂フィニッシュでリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)の登坂力が冴え渡った。3年連続でウィランガヒルを制したポートだったが、ゲランスの総合リードを奪うには9秒届かず。ゲランスが史上最多となる4度目のダウンアンダー制覇を達成した。

ハードな展開に持ち込むピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)らハードな展開に持ち込むピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)ら photo:Tim de Waele2017年からUCIワールドツアーレースとして開催されるカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースではピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)が劇的な逃げ切り勝利。2017年はペーター・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)もダウンアンダー出場を表明しており、1月のオーストラリア連戦は例年以上に注目度を集めることになる。なお、1月のオーストラリア選手権で優勝した27歳のジャック・ボブリッジ(トレック・セガフレード)は関節リウマチによって今シーズン限りでの引退を表明している。

総合優勝を果たしたダイェル・キンタナと、労うナイロ・キンタナ(共にコロンビア、モビスター)総合優勝を果たしたダイェル・キンタナと、労うナイロ・キンタナ(共にコロンビア、モビスター) photo:Roberto Bettini/BettiniPhotoダウンアンダーと並行してアルゼンチンで開催されたツール・ド・サンルイスにはペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らが出場。山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が逃げで見せ場を作るなど活躍した。山岳ステージでは南米勢がその登坂力を遺憾なく発揮。キンタナのアシストを受けた弟のダイェル・キンタナ(コロンビア、モビスター)が総合優勝に輝いた。

オーストラリアや南米でロードシーズンが開幕した一方、スペインでトレーニングキャンプを行っていたジャイアント・アルペシンに悲劇が。トレーニング中に対向車と接触する交通事故によって6名が負傷。大怪我を負ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)らはシーズンを通して事故の影響を受けることになった。

スペインのチャレンジマヨルカではダウンアンダーを久々にスキップしたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が2勝。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が独走勝利を飾っている。



KOMウィランガヒルを登るプロトンKOMウィランガヒルを登るプロトン photo:Kei Tsuji


2月

最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleジロ・デ・イタリア主催者RCSスポルトが手がけるドバイツアーが、中東レースシリーズの開幕戦として2月上旬に開催。レースは連日スプリンターたちの独壇場で、マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)が激突。勾配17%の激坂フィニッシュでも総合は決まらず、最終スプリントを制したキッテルが逆転総合優勝を果たした。

リーダージャージを獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)リーダージャージを獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleドバイで0勝に終わったカヴは続くツアー・オブ・カタールの開幕スプリントで勝利。残りのステージでアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が無敵の3勝を飾ったものの、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が勝利した個人タイムトライアルでタイムを伸ばしたカヴェンディッシュが2度目の総合優勝を飾っている。そしてカタールでは新城幸也(ランプレ・メリダ)が大腿骨を骨折するという悲劇が。第5ステージで落車して左大腿骨を骨折し、6時間におよぶ手術を受けた新城は長期の戦線離脱を強いられた。

日本で抜糸を終え、本格的なリハビリに入った新城幸也日本で抜糸を終え、本格的なリハビリに入った新城幸也 photo:Hitoshi OMAEツアー・オブ・オマーンではクリストフとボアッソンハーゲンのノルウェー人2人がそれぞれ2勝の活躍。最難関グリーンマウンテン山頂フィニッシュを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が総合優勝に。一方、オーストラリアでシーズンインしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)はジェイコ・ヘラルドサンツアーで総合優勝を飾った。別府史之(トレック・セガフレード)は同大会の最終ステージで敢闘賞を獲得している。

ベノートとサガンを下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギーBMCレーシング)が優勝ベノートとサガンを下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギーBMCレーシング)が優勝 photo:CorVos2月も下旬に入るとヨーロッパ各地でシーズンが本格化。イタリアにおける開幕戦のGPコスタ・デッリ・エトゥルスキトロフェオ・ライグエリアでは山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が連続エスケープ。マトリックスパワータグも出場したスペインのブエルタ・ア・アンダルシアではアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が総合優勝。そしてポルトガルのヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合優勝のタイトルはゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)の手に渡った。

ツール・ド・ランカウイでは愛三工業レーシングが連日スプリントに絡んだものの、黒枝士揮の最終ステージ3位が最高位。伊藤雅和がアジアンライダー賞2位でレースを終えている。総合優勝はミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)との接戦を制したレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)。

ベルギーのクラシック初戦オムループ・ヘットニュースブラッドではサガンを下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が初優勝。翌日のクールネ~ブリュッセル~クールネではヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が独走勝利を飾っている。



曇り空のフランドル地方を走る曇り空のフランドル地方を走る photo:Tim de Waele


3月

スティバルを下したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)スティバルを下したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele未舗装路を含む176kmコースで開催されたストラーデビアンケではカンチェラーラが自身3度目の総合優勝。イタリアらしさが詰まった未舗装レースは2017年からUCIワールドツアーレースとして開催される。

サガンを振り切ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)サガンを振り切ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele「二つの海のレース」として知られるティレーノ~アドリアティコは山頂フィニッシュが設定されたクイーンステージが雪によってキャンセルされたことでクライマー不利な展開に。精鋭スプリントでサガンを下したファンアフェルマートが最終日の個人タイムトライアルでリードを守りきり、サガンと1秒差で総合優勝に輝いた。

ローマ通りでのスプリントを制したアルノー・デマール(フランス、FDJ)ローマ通りでのスプリントを制したアルノー・デマール(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele同時期にフランスで開催されたパリ〜ニースでも雪によるステージキャンセルが発生。前半ステージではマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)やアルノー・デマール(フランス、FDJ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)らスプリンターたちの活躍が目立ち、後半の山岳ステージでクライマーたちが激突。執拗にアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)を封じたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝に。同じくフランスのクリテリウム・アンテルナシオナルではティボー・ピノ(フランス、FDJ)が総合優勝を果たしている。

マイヨジョーヌを着て最終ステージを走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌを着て最終ステージを走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleイタリアに春の訪れを告げるミラノ~サンレモはアタック合戦の末に大人数による集団スプリントに持ち込まれ、フィニッシュ手前の落車を切り抜けたデマールがモニュメント初制覇(21年ぶりのフランス人ミラノ〜サンレモ優勝)。

グランツールレーサーが勢揃いしたボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャはコンタドールやフルーム、ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)らの総攻撃を封じたキンタナが総合優勝に輝いた。

ベルギーの連続テロで一時は開催が危ぶまれたドワーズ・ドール・フラーンデレンは小集団スプリントに持ち込まれ、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)が勝利。続くE3ハーレルベーケは新旧の世界チャンピオンによる一騎打ちに。ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がサガンとの力勝負を制している。

「北のクラシック」の初戦にあたるヘント〜ウェヴェルヘムはカンチェラーラやファンマルクを含む精鋭グループによるスプリント勝負に。世界チャンピオンのサガンが実に6ヶ月ぶりの勝利を手にした。

4月のクラシックシーズン以降の模様はvol.2で!



雪を冠したアルプス山脈をバックに走る雪を冠したアルプス山脈をバックに走る photo:Tim de Waele



text:Kei Tsuji

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