2016年11月12日、フィリピンで開催された「UCI MTB マラソンシリーズ第6戦ヌバリ」にて、チームジャイアントジャパンの門田基志が優勝した。以下、門田選手本人から届いたレースレポートを紹介する。



スタートダッシュを決め集団の頭と取る門田基志スタートダッシュを決め集団の頭と取る門田基志 (c)ジャイアント・ジャパン
UCI マラソンシリーズ参戦のため、CJ最終戦山口をキャンセルし、フィリピンに遠征した。レースは、前日の雨により非常に滑りやすい路面の中、高低差100m程のフラットなコースを2周、45kmにて行われた。朝6時スタートで収集時間は5時40分、1番目のボックスから最初にコールされ、スタート位置は最前列中央に並んだ。

スタートの合図は15秒前のコールから2秒程度で鳴ったが、奇麗に反応して最初のダート区間を先頭で入り、パンクリスクになる工事現場の縁石越えを先頭で通過した。その後の比較的長い舗装路で少し先頭を引くが、アップ不足もあり少し体がキツく、集団4、5番手あたりに下げて舗装路区間を進んだ。

先頭はニュージーランド人選手が引き、コーナーの度にペースアップし集団が中切れそうになったので前に上がる。程なくして舗装の上りに差し掛かる頃、先頭を強烈に引いていた選手が「グッドラック」と一言残し集団後方へ下がって行った。

終盤、アタックし独走する門田基志終盤、アタックし独走する門田基志 (c)ジャイアント・ジャパンその後、最初のシングルトラックには先頭で入らないと勝負にならないと思い、多少競り合いながらも先頭で入りペースを作る。テクニカルでスリッピーな路面では気を抜くとスリップダウン、しかしテクニック次第では力を使わず後続を切り離す事ができる。

門田基志選手が駆けるアンセムアドバンスド27.5門田基志選手が駆けるアンセムアドバンスド27.5 (c)ジャイアント・ジャパン無理をしないが気を抜けないペースで順調に進むと、集団は10名程度まで絞られ、最初のテクニカルセクションを終えて舗装路に出たが、舗装路では誰も前に出たくないと牽制が始まり、仕方なく先頭でペースを作る。次のシングルトラックでも同じく先頭でトラブル無く抜けると、集団は4名程度まで絞られた。

1ラップ目中盤あたりから「勝てる」と確信しレースを展開し始めたが、気がつくと先頭集団はフィリピン人のみで誰も前に出てペースを作ろうとしないため、先頭固定状態でレースは進む。途中アタック気味にペースを上げてみると難なく付いて来るが、やはり先頭には出てこない展開で、そのまま1ラップ目後半の短い激坂とテクニカルな下りが点在するセクションに突入。どうせ先頭固定ならばと、ここで一気にパワーを掛けて押し切り独走する展開に持ち込む。

作戦は成功し、パワーが必要なセクションで集団はバラバラで全員が単独走行となり、思った通りの展開になった・・・・がココはやはりフィリピンである。オフィシャルも数カ所のみ、それ以外はボトルを受け取れず立ち止まって給水するシステムで、フィリピン人には別のスタッフがビニール袋に入れた水を手渡していた。もちろん日本人が取ろうとすると直前で引っ込む。

単独走行のまま長い直線の舗装路で後ろを確認、十分逃げ切れると判断し、ペースを上げてみた結果、マラソンでありがちな軽い迷子に。曲がるのかと思い、超高速から減速すると、そこはコースではなかった・・・曲がるべき場所はもっと先だった。何となく気持ちが萎えて、補給地点でボトルをもらい給水しつつ集団に一度戻る事にした。

2周目に入る時点で1対1の展開になっていたが、1周目にパワーを掛けて一気に抜け出した事もあり、相手は前を引こうとはしない。このあたりから急激に気温が上がり始め、水分不足から軽く筋肉の痙攣が起こったりしていたので、補給を取れる所でとって十分に足を休めつつ、テクニカルセクションのタイトコーナー抜けなど先頭に有利なポイントでペースを上げ、相手の体力を削った。

多くの観客とメディアの大声援を受ける門田基志多くの観客とメディアの大声援を受ける門田基志 (c)ジャイアント・ジャパン
本来は超高速セクションでも、相手に1mmも前に出る素振りはない・・・前に出るようにジェスチャーするも、足を擦ったりクランクに手を伸ばしトラブルのフリで誤摩化され、そのうち後ろから1人追い付いてきて2対1の展開?となる。

その後、泥沼でラインをミスし失速すると、今まで前に出なかった2人がアタックして一気に加速、さらにフィリピン人同士も勝負しつつバラバラになった。ラインを戻し焦らず前を追い、1人をパスし先頭を逃げている選手に追い付くと、平坦基調のコースなのに限界のような表情でまた後ろから出ない。さっきの展開もあるので前に出るように言ったものの、後ろに仲間がいるからダメだと。ここまで徹底されると諦めもつき、落差があるテクニカルな下りの場所で変則的にペースアップした。

表彰台でシャンパンを開ける門田基志表彰台でシャンパンを開ける門田基志 (c)ジャイアント・ジャパン本来ブレーキングポイントとなる場所の直前で一気に引き離し、後ろの選手が追い付こうと踏むとブレーキが間に合わなくなるようにコントロール。更に自分もスリッピーな路面をギリギリのバイクコントロールで、タイヤとマエストロリンクの性能をフルに使って最速ラインで抜ける。先の上り返しを一気に上り、ハイスピードで下り基調の林道を一気に踏み抜けると、完全に単独走行となった。


門田基志選手が獲得した金メダルをかけるぬいぐるみのくま門田基志選手が獲得した金メダルをかけるぬいぐるみのくま (c)ジャイアント・ジャパンあとはパワーが必要なアップダウンが続くセクションを超えればゴール!と思った矢先にハムが痙攣を起こした・・・明らかな水分不足だ。補給地点が無く、オフィシャルなのか定かではないフィリピン人専用補給では何も貰えず、痙攣した筋肉を使わずバイクを進める。テクニカルなセクションに入ると水分不足から寒気がし始め、口はバサバサな状態で何とか集中を保てるペースを維持した。

その後、ギリギリな状態でオフィシャルの補給でペットボトル2本を貰い給水。後ろが確認できるセクションやすれ違うセクションでも後続選手は見えない。終盤は気温も上がり始めたが手持ちのボトルは空、水分的にも限界で、体のダメージを最小限に押さえるためペースを落とし、安全マージンをしっかりととってメイン会場に戻った。

メイン会場では日本のレースでは考えられない程多くの観客とメディアがゴールラインを埋め尽くし、大声援の中でUCIマラソンシリーズ優勝を果たした。

これにより、UCIマラソンポイントは+100ポイント、UCI XCOクラス3の優勝ポイントをダブルで獲得でき、2017シーズンに良い形で繋がった遠征となった。

report:Motoshi.Kadota