午前中にタイムトライアル、午後にロードレースを行ったツアー・オブ・ブリテン第7ステージ。トニ・マルティンとローハン・デニスがそれぞれ勝ち星を挙げ、スティーブ・クミングスが総合首位を守ったまま最終ステージに挑むこととなった。



第7aステージ 18分06秒のトップタイムで優勝したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第7aステージ 18分06秒のトップタイムで優勝したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2016第7ステージツアー・オブ・ブリテン2016第7ステージ image:Tour of Britain最終日を翌日に控えた9月10日、ツアー・オブ・ブリテン第7ステージがハーフステージ形式で行われた。ブリストル郊外のクリフトンダウン公園を発着する15kmの周回コースを個人タイムトライアルは1周(全長15km)、ロードレースは6周(全長90km)する。

第7aステージ 2秒差のステージ2位に入ったローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)第7aステージ 2秒差のステージ2位に入ったローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji週末ということもあり多くの観客が駆けつけた周回コース。1864年に完成した全長414mのクリフトン吊り橋を通り、ブリストルの街中を駆け抜け、ブリッジバレーロードの登り(平均8.5%/長さ600m)を駆け上がる。

第7aステージ トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は4秒差のステージ3位第7aステージ トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は4秒差のステージ3位 photo:Kei Tsuji常に空気が湿度を含んでいることを感じさせる霧雨の中、ほぼ全ての選手がTTバイクで濡れた路面を走ることになる。レース中盤にトップタイムを叩き出したのは「入念に試走してコーナーをチェックした」というトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)。ドイツチャンピオンが記録した18分06秒は最後まで破られなかった。

第7aステージ 総合首位スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)は15秒差のステージ4位第7aステージ 総合首位スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)は15秒差のステージ4位 photo:Kei Tsuji「コースは自分向きだったものの、悪天候によってとてもスリッピーな状態だった。特にステージ優勝を狙ってコーナーに突っ込むような状況では危険を伴う。幸いレース前にしっかり試走してトリッキーな箇所を確認していたので、どの程度のスピードであれば安全なのか分かっていた」と、3度のTT世界チャンピオンは語る。

第7aステージ ノーマルバイクで走ったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)第7aステージ ノーマルバイクで走ったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ) photo:Kei Tsuji「リーダーチームとしての仕事を多くこなした1週間を経て、自分の身体がどれだけのスピードを出せるのか分からなかった。だから正直言って勝利は予想していなかった。カタールで開催される世界選手権を前に、世界トップクラスのTTスペシャリストたちに勝ったことは自信につながるし、とにかく嬉しい」。マルティンはこれが今シーズン2勝目。また、エティックス・クイックステップにとっては世界トップの今シーズン50勝目。シーズン勝利数ではチームスカイが38勝、モビスターが38勝、ティンコフが33勝で続いている。

2秒差のステージ2位に入ったのは総合3位のローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)で、その2秒遅れで総合2位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がステージ3位。ドイツチャンピオン、オーストラリアチャンピオン、オランダチャンピオンがトップスリーを占める結果に。

総合逆転を狙うデニスとドゥムランはともに好走したが、総合首位スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)が15秒遅れにまとめたため逆転は起こらなかった。ドゥムランとデニスが38秒遅れの総合2位と総合3位。クミングスがリーダージャージを守った状態で午後のロードレースに挑む。



ツアー・オブ・ブリテン2016第7aステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)       18’06”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            +02”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +04”
4位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)         +15”
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)             +24”
6位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
7位 アレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)              +34”
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)             +35”
9位 ライアン・ミューレン(アイルランド、キャノンデール・ドラパック)     +38”
10位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)    +39”



第7bステージ 1864年完成のクリフトン吊り橋を通る第7bステージ 1864年完成のクリフトン吊り橋を通る photo:Kei Tsuji


第7bステージ 週末だけに沿道には大勢の観客が集まった第7bステージ 週末だけに沿道には大勢の観客が集まった photo:Kei Tsujiタイムトライアル終了のおよそ2時間後にロードレースがスタート。まだステージ優勝を手にしていないチームを中心にアタックが繰り返され、2周目に入ってようやくボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)、ディエゴ・ルビオ(スペイン、カハルーラル)の先行が決まる。

第7bステージ 緑豊かなブリストル郊外を走る第7bステージ 緑豊かなブリストル郊外を走る photo:Kei Tsujiディメンションデータの徹底コントロールによって逃げのリード拡大は1分30秒で頭打ち。逃げるグライペルらを追撃したのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)率いるメイン集団。リオ五輪オムニアム銀メダリストは自らのチャンスを諦め、クミングスのアシストに徹した。

第7bステージ マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がメイン集団を牽引する第7bステージ マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がメイン集団を牽引する photo:Kei Tsujiチームスカイやエティックス・クイックステップも集団牽引に加わり、タイム差が1分を割り込んだ状態で最終周回へ。残り10km地点でタイム差は40秒。先頭ではグライペルらがアタックを仕掛け、ファンポッペルが独走に持ち込んだが、残り4km地点で逃げは引き戻された。

第7bステージ 現役引退間近のウィギンズへのメッセージ第7bステージ 現役引退間近のウィギンズへのメッセージ photo:Kei Tsuji逃げを吸収した状態で始まったブリッジバレーロードの登り(平均8.5%/長さ600m)。ロット・ソウダルが総合4位トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)のためにハイスピードを刻むと、そこからデニスがアタックする。反応したライバルたちを振り切って、登りで一気にリードを広げたデニスが残り2kmから独走を開始した。

ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)をはじめとするスプリンターが残ったメイン集団が追撃するも、元アワーレコード保持者の独走スイッチは最後まで切れない。結局デニスはメイン集団を6秒引き離してフィニッシュした。

「オール・オア・ナッシングの気持ちで勝負に挑んだ。感覚を頼りにアタック。ドゥムランとの距離が開いたところで再加速して、登りで得たリードを最後までキープした」とデニスは語る。「チームとして1週間挑戦し続けたものの、第2ステージで逃げが決まったことで厳しい総合争いを強いられてきた。そして午前中の個人TTでステージ2位。フラストレーションが溜まったものの、身体のコンディションはすこぶる良くて、ようやくチームに勝利をもたらすことができて嬉しい」。

デニスはボーナスタイムも加算し、合計12秒のタイム挽回に成功。しかしクミングスのリーダージャージには届かなかった。



第7bステージ リーダージャージを着て走るスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)第7bステージ リーダージャージを着て走るスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji第7bステージ 最終周回に向かうアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ら第7bステージ 最終周回に向かうアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ら photo:Kei Tsuji
第7bステージ メイン集団を振り切ってフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)第7bステージ メイン集団を振り切ってフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2016第7bステージ結果
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)          1h58’42”
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)+06”
3位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
5位 カルロス・バルベロ(スペイン、カハルーラル)
6位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
7位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
9位 マルコ・マルカート(イタリア、ワンティ・グループグベルト)
10位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)

個人総合成績
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)       29h21’21”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            +26”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +38”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)            +1’02”
5位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)    +1’21”
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +1’26”
7位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)      +1’48”
8位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)               +1’52”
9位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)   +2’12”
10位 ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)         +2’32”

ポイント賞
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            47pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          41pts
3位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)         39pts

山岳賞
1位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)       60pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)             42pts
3位 ミゲル・ベニトディエス(スペイン、カハルーラル)             27pts

スプリント賞
1位 ヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション)   18pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             12pts
3位 ジョナサン・マケヴォイ(イギリス、NFTO)                 10pts

チーム総合成績
1位 チームスカイ                              88h15’21”
2位 ワンティ・グループグベルト                        +28”
3位 エティックス・クイックステップ                     +2’15”

text&photo:Kei Tsuji in Bristol, United Kingdom

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