インカレ最終日のロードレース。野本空(明治大学)がアタックのすえ上りスプリントを制し、女子は福田咲絵(慶応義塾大学)が後半30kmを独走で優勝。鹿屋体育大学が大学対抗総合男子4連覇、女子2連覇を達成した。



野本空(明治大学)がインカレロードチャンピオンに野本空(明治大学)がインカレロードチャンピオンに photo:Hideaki TAKAGI
8月28日(日)、インカレ4日目最終日は静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター5kmサーキットでのロードレース。コース最高地点の秀峰亭をスタート・フィニッシュ地点とする左回りのコース設定。曇り空で気温は24度どまりと風が吹くと涼しさを感じるほどの好条件。男子は28周140km、女子は12周60kmでレースが行われた。

女子は福田咲絵(慶応義塾大学)が30kmを独走で優勝

女子は19人がスタート。有力どころは今シーズンいきなり各レースで優勝など活躍する福田咲絵(さえ)(慶応義塾大学)と鹿屋体育大学のメンバー。序盤から福田がほぼ先頭固定で走ると上りで人数が削がれ、福田、江藤里佳子(鹿屋体育大学)、中井彩子(鹿屋体育大学)の3人になる。いったんは追抜かれた男子メイン集団のペースが緩むと、一定ペースで走る福田らの先頭集団が追抜く場面も。残り6周でアタックした福田はそのまま30kmを単独で逃げ切り優勝した。

女子最終周回、福田咲絵(慶応義塾大学)が30kmを独走で優勝女子最終周回、福田咲絵(慶応義塾大学)が30kmを独走で優勝 photo:Hideaki TAKAGI
「自分でレースを作ろうと決めていた」優勝した福田咲絵(慶応義塾大学)

「今年の目標がこのインカレでの優勝だったのでとてもうれしいです。自分でレースを作ろうと決めていたので最初から自分のペースでレースを進めました。もう少し後で独走しようと思ったのですが、6周目くらいで2人がきつそうにしていたのでアタックしました。ふだん実業団レースでいっぱい学ばせてもらっているのでそれが生かせました。フィッツのメンバーも応援に来てくれて嬉しかったです。次はジャパンカップオープンが目標です。そして強化指定選手になってナショナルチームで梶原さんのように世界で走れる選手になりたいです」

女子 福田咲絵(慶応義塾大学)先頭で4周目へ女子 福田咲絵(慶応義塾大学)先頭で4周目へ photo:Hideaki TAKAGI女子個人ロードレース表彰女子個人ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI

逃げとメイン集団の構図の男子

男子は常に逃げとメイン集団の構図に。集団が一つになったのは残り2周を切ってからだ。
大学対抗総合成績では前日までのトラックで鹿屋体育大学が首位で59点、以下中央大学54点、法政大学42点など今までにない小差でロードレース当日を迎えた。とくに5点差などは相手のマークだけに徹底すれば、相手を抑えることあるいは逆転も可能なだけに、このレースでの勝負のほかに総合上位校の動きも注目となったのが今年のインカレロードだ。

スタート1周目から動いたのは法政大学。チームで前方に固まり集団を率いる。この後ろにつくのは日本大学と鹿屋体育大学。1周目はニュートラル区間があったにもかかわらず8分10秒と速いラップを刻む。2周目には11人の逃げが、3周目にはメンバーが一部変わって10人の逃げができる。しかし6周目には集団は吸収され一つに。そこから7周目に冨尾大地(鹿屋体育大学)が抜け出すと先頭を独走。さらに片桐善也(日本大学)と浅井創(法政大学)が追走に出る。メイン集団のペースは落ち、前方は鹿屋体育大学と日本大学などが占める。

1周目から法政大学、日本大学、鹿屋体育大学がチームとして動く1周目から法政大学、日本大学、鹿屋体育大学がチームとして動く photo:Hideaki TAKAGI12周目へ、先頭で逃げる3人12周目へ、先頭で逃げる3人 photo:Hideaki TAKAGI

中盤の逃げに鹿屋が2名送り込む

11周目でようやく先頭の冨尾に追走の片桐と浅井が合流し先頭は3人に。タイム差は2分にまで広がる。しばらく先頭3人とメイン集団の構図となるが、メイン集団のペースは安定しない。18周目にメイン集団から小林和希(明治大学)、渡邊翔太郎(朝日大学)そして山本大喜(鹿屋体育大学)の3人が追走に出る。そして翌19周目に追いつき先頭集団は6人に。この中で鹿屋体育大学は山本と冨尾の2人が入り他は1名ずつだ。メイン集団との差は1分半。

山本大喜(鹿屋体育大学)が20kmを独走

20周目ごろになるとメイン集団も徐々にペースを上げ始める。それまでは基本的に鹿屋体育大学や日本大学がコントロールしていたが、逃げに乗せていない京都産業大学、順天堂大学、早稲田大学らが積極的に引く。いっぽうで先頭集団でも動きがあり、脱落する選手も出るなか、23周目に山本が単独アタックし1周ですぐに1分差をつけて独走する。残り距離30kmで十分に逃げ切ることも意識した走りだ。

残り3周、先頭を独走する山本大喜(鹿屋体育大学)残り3周、先頭を独走する山本大喜(鹿屋体育大学) photo:Hideaki TAKAGI残り2周へ、先頭の山本大喜(鹿屋体育大学)に草場啓吾(日本大学)が追いつく残り2周へ、先頭の山本大喜(鹿屋体育大学)に草場啓吾(日本大学)が追いつく photo:Hideaki TAKAGI
残り2周、アタックする徳田優(鹿屋体育大学)に野本空(明治大学)らが反応する残り2周、アタックする徳田優(鹿屋体育大学)に野本空(明治大学)らが反応する photo:Hideaki TAKAGI最終周回へ、先頭は徳田優(鹿屋体育大学)ら3人最終周回へ、先頭は徳田優(鹿屋体育大学)ら3人 photo:Hideaki TAKAGI


残り3周に入った時点で先頭の山本とペースを上げるメイン集団の構図になる。登坂区間でメイン集団から草場啓吾(日本大学)がアタックし4周を逃げ続けた先頭の山本に合流して残り2周へ入る。さらに集団も活性化し残り9kmで集団は一つになる。ここから冨尾がこの日2回目の独走となるアタックを繰り出す。ここで大本命の徳田優(鹿屋体育大学)がアタックするが野本空(明治大学)、草場そして孫崎大樹(早稲田大学)が合流し4人に。さらに後続も追いつき再び集団になる。

野本空(明治大学)がラスト1kmで先頭に

残り6kmで再び徳田がアタックすると野本、中西健児(同志社大学)の3人となるが残り4kmで後続も追いつく。決定的な動きは残り3.5kmのホームストレート下り区間での草場のアタックだった。これに反応したのは馬渡と中川拳(早稲田大学)の3人で先頭を走る。10秒ほどの差で集団だが徳田、岡本隼(日本大学)らを巡って牽制する。先頭の3人で最後の上り区間へ入るが、ここに単独で合流したのは野本。

野本は3人に追いついた勢いでアタックし馬渡だけが反応するが後続も追いつき先頭で逃げる野本を追うが届かない。結局野本はリードを保ったまま優勝。これに草場そしてフィニッシュライン手前で馬渡をかわした中西が続いた。総合2位の中央大学は6位に広瀬樹がフィニッシュ。この結果により鹿屋体育大学の男子総合優勝が決まった。

ラスト3.5km、一つとなった集団から草場啓吾(日本大学)がアタックラスト3.5km、一つとなった集団から草場啓吾(日本大学)がアタック photo:Hideaki TAKAGIラスト2km、逃げる3人とけん制する集団ラスト2km、逃げる3人とけん制する集団 photo:Hideaki TAKAGI
ラスト1km、先頭の3人に野本空(明治大学)が追いつくラスト1km、先頭の3人に野本空(明治大学)が追いつく photo:Hideaki TAKAGIラスト700m、追いついた野本空(明治大学)がアタックラスト700m、追いついた野本空(明治大学)がアタック photo:Hideaki TAKAGI

優勝した野本は今年の全日本学生ロードレース・カップ・シリーズ(RCS)のリーダーだ。ともに動いた小林はそれの昨年度覇者、そして全日本選手権ロードU17とジュニアチャンピオンの実績を持つ松本祐典の的確な動きが野本を強力にアシストした。明治大学は逃げにメンバーを送り込む一方で集団前方に必ず位置し重要どころでは自ら動く強さを見せていた。

「去年のインカレで降ろされてしまったことが悔しかった」野本空(明治大学)

「今までもそうですが特に今年は大きな舞台でチームプレーがうまくできていて、このインカレでもできたことがよかったと思います。(残り2kmくらいでの動きは)みんな岡本隼さんをマークしていて視線が釘付けだったので今しかないと行きました。ここで合宿をしていて下り区間は得意だったので行けると思いました」

「RCSは経験値が増えます。きついところで我慢できるようになりました。それから去年のインカレは動いたのですが途中で降ろされてしまったのが悔しくて。その日から今日までずっと記録も残して計画的に足りないものを考えて、この1年間やってきたことがつながったのかと思います。自転車は松山工業高校に入った時から始めました。小橋選手がいる学校ならば僕も一緒に走りたいと思い入学しました」

ラスト500m、アタックした野本空(明治大学)に馬渡伸弥(鹿屋体育大学)が食らいつくラスト500m、アタックした野本空(明治大学)に馬渡伸弥(鹿屋体育大学)が食らいつく photo:Hideaki TAKAGI2007年以来9年ぶりインカレロード優勝の明治大学。積極的に動いた3人だ2007年以来9年ぶりインカレロード優勝の明治大学。積極的に動いた3人だ photo:Hideaki TAKAGI
2位草場啓吾(日本大学)、3位中川拳(早稲田大学)ら2位草場啓吾(日本大学)、3位中川拳(早稲田大学)ら photo:Hideaki TAKAGI男子個人ロードレース表彰男子個人ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI

終盤を除いて終始逃げとメイン集団の構図だったため平均ラップは9分13秒と、ブリッジの連続だった2014年の同レースの平均ラップ8分51秒よりも全体では遅いペースだった。しかし残り4周に限っては平均8分30秒ほどと速く、終盤でレースが急展開したのが今回だった。やはりマークされた中心は2013、2014年のインカレ覇者の徳田で、残り2周で強力なアタックを仕掛けるが振り切るには残り距離が短すぎた。

過去連覇している徳田は「自分がマークされることはわかっていたことなので、そのぶん頼れるチームメイトに託せました。チームで動ければと常に考えていました。マサキ(山本)も冨尾もよく動けていたと思います。自分も動いたけれども、勝った野本が強かったです。個人的にはインカレはきつくて、大きく意識する特別な場所ですね、ここは」と振り返る。

2017年のインカレは長野県

大学対抗総合成績は、男女ともにトラックで首位の鹿屋体育大学がロード単独でもトップでそれぞれ総合優勝した。男子は4連覇、女子は2連覇だ。
また2017年のインカレ予定地が発表された。長野県で行われ、トラックは松本市美鈴湖競技場、ロードは大町市美麻、日程は8月31日(木)から9月3日(日)までだ。
また、団体種目の配点見直しが予定され、チームスプリントとチームパーシュートの配点が1.5倍になる。



結果
大学対抗女子総合表彰大学対抗女子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI大学対抗男子総合表彰大学対抗男子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI4年間ともに戦ってきた選手たち 各校の4年生が集合4年間ともに戦ってきた選手たち 各校の4年生が集合 photo:Hideaki TAKAGI大学対抗総合男子4連覇、女子2連覇の鹿屋体育大学大学対抗総合男子4連覇、女子2連覇の鹿屋体育大学 photo:Hideaki TAKAGI男子個人ロードレース 140km
1位 野本空(明治大学)4時間14分06秒
2位 草場啓吾(日本大学)+04秒
3位 中川拳(早稲田大学)+08秒
4位 中西健児(同志社大学)+09秒
5位 馬渡伸弥(鹿屋体育大学)+10秒
6位 広瀬樹(中央大学)+14秒
7位 徳田優(鹿屋体育大学)+17秒
8位 安田京介(京都産業大学)
9位 石井駿平(鹿屋体育大学)+21秒
10位 岡本隼(日本大学)+24秒
11位 重田兼吾(順天堂大学)+25秒
12位 間瀬勇毅(京都産業大学)+28秒
13位 小林和希(明治大学)+30秒
14位 谷順成(関西大学)+32秒
15位 孫崎大樹(早稲田大学)+38秒
16位 松本祐典(明治大学)+1分05秒
17位 加藤雅之(法政大学)+1分12秒
18位 元山高嶺(神戸大学)+1分24秒
19位 冨尾大地(鹿屋体育大学)+1分35秒
20位 伊藤和輝(早稲田大学)+1分55秒

男子ロード総合成績
1位 鹿屋体育大学 18点
2位 明治大学 17点
3位 日本大学 15点

大学対抗男子総合成績

1位 鹿屋体育大学 77点
2位 中央大学 61点
3位 日本大学 57点
4位 法政大学 40点
5位 朝日大学 38点
6位 早稲田大学 35点
7位 明治大学 27点
8位 京都産業大学 25点
9位 日本体育大学 15点
10位 順天堂大学 15点

女子個人ロードレース 60km
1位 福田咲絵(慶応義塾大学)2時間01分19秒
2位 江藤里佳子(鹿屋体育大学)+4分51秒
3位 中井彩子(鹿屋体育大学)+5分12秒
4位 橋本優弥(鹿屋体育大学)+10分09秒
5位 古山稀絵(日本体育大学)+10分48秒

女子ロード総合成績
1位 鹿屋体育大学 14点
2位 慶応義塾大学 10点
3位 日本体育大学 5点

大学対抗女子総合成績
1位 鹿屋体育大学 53点
2位 日本体育大学 37点
3位 八戸学院大学 14点
4位 慶応義塾大学 10点
5位 順天堂大学 9点
6位 早稲田大学 3点
7位 朝日大学 3点

photo&text:高木秀彰
Amazon.co.jp

ブラバン!六大学野球

UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)

わが青春の校歌、寮歌、応援歌

キングレコード
¥ 2,880

最新ニュース(全ジャンル)