最大勾配30%の3級山岳ミラドル・デ・エサロで激坂バトル勃発。序盤から逃げたアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)がステージ優勝を飾り、普段はキンタナやバルベルデのアシストを担うルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)がマイヨロホに袖を通した。



ガリシア州のビーチエリアを走るプロトンガリシア州のビーチエリアを走るプロトン photo:Kei Tsuji
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ image:Unipublic



愛犬コリンを連れて登場した新城幸也(ランプレ・メリダ)愛犬コリンを連れて登場した新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji第3ステージのスタート地点に登場した別府史之(トレック・セガフレード)第3ステージのスタート地点に登場した別府史之(トレック・セガフレード) photo:Kei Tsujiマリンの街をスタートしていく選手たちマリンの街をスタートしていく選手たち photo:Kei Tsuji逃げグループを形成するアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)ら逃げグループを形成するアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)ら photo:Kei Tsuji最後の平坦区間を駆け抜けるピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら最後の平坦区間を駆け抜けるピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら photo:Kei Tsujiイベリア半島の西端に位置するガリシア州のさらにその西の端、大西洋に面したユーラシア大陸の果てを走るブエルタ第3ステージ。前半はリアス式海岸の語源となったガリシア地方のリアス(湾)に沿った海岸線だが、後半にかけてコースは上昇と下降を繰り返す。

3級山岳レスタイオ(8.3km/平均5.3%)と2級山岳パサレイラス(9.3km/平均5.4%)を連続でこなした後、最後は3級山岳ミラドル・デ・エサロ(1.8km/平均13.8%)を駆け上がる。2012年に初登場した展望台に至る激坂エサロが今大会最初の山頂フィニッシュだ。

大西洋に面しているため比較的冷涼な地域として知られているが、この日は海風が弱く、真夏の太陽に照らされた一帯は最高気温が35度まで上昇。潮の香りが漂うマリンをスタートするとすぐ、マイヨモンターニャ獲得とステージ優勝をかけたアタック合戦が始まる。

ビーチリゾートに詰めかけた観客に見守られながら、14km地点で逃げを形成したのは2013年にピレネーの難関山岳ステージを制したアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)や、総合で1分13秒遅れにつけるサイモン・ペロー(スイス、IAMサイクリング)を含む7名の逃げグループ。チームスカイが集団先頭に立ってコントロールを開始すると、逃げグループとのタイム差が徐々に広がり始めた。

抜けるような青い空の下、先頭7名は5分30秒のアドバンテージを稼ぎ出すことに成功する。チームスカイに追撃の意志はなく、レース中盤にタイム差は6分を推移。そんな中、慢性的な副鼻腔炎によってコンディションを落としていたワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)が今大会のリタイア第一号に。

急勾配区間を含む3級山岳レスタイオで逃げグループはばらけ、先頭ではペローが飛び出してジェニエが反応。やがて独走に持ち込んだペローが先頭でダウンヒルをこなし、そのまま2級山岳パサレイラスの登坂を開始する。

2013年にスイスのU23ナショナルチャンピオンに輝いている23歳が力強い走りを見せたが、追走を続けたジェニエとピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)に2級山岳パサレイラスの頂上手前で吸収された。

ジェニエ、セリー、ペローの3名が抜け出した状態で最後の平坦区間をこなし、メイン集団から2分リードで最後の3級山岳ミラドル・デ・エサロに突入する。チームスカイやモビスターのコントロールによって人数が絞られたメイン集団の中に、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)やミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)の姿はなかった。残り8kmの落車で脱落したツール・ド・スイス覇者ロペスモレーノはこの日だけで12分以上ものタイムを失っている。



最大勾配30%の激坂を走るアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)最大勾配30%の激坂を走るアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) photo:Kei Tsuji


3級山岳ミラドル・デ・エサロの山頂にやってきたアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)3級山岳ミラドル・デ・エサロの山頂にやってきたアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) photo:Kei Tsuji独走で3級山岳ミラドル・デ・エサロにフィニッシュするアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)独走で3級山岳ミラドル・デ・エサロにフィニッシュするアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) photo:Kei Tsuji最大勾配30%のサインが掲げられた麓から1.8kmかけて標高差260mを駆け上がる3級山岳ミラドル・デ・エサロ。登りが始まるとすぐにペローがまず脱落し、続いてセリーもスピードを失う。凹凸のあるコンクリート路面の激坂でジェニエが単独トップに。

ジェニエは時に蛇行しながらもタイム差2分を有効に使って走りきり、21秒差でメイン集団を振り切って勝利した。

5月のジロ・デ・イタリアでエースを担いながらも落車の影響でリタイアしたジェニエ。「落車によって苦しいシーズンを送っていたけど、トレーニングの成果をこうして出すことができてものすごく嬉しい」と勝者は笑う。「逃げには良いメンバーが揃っていたし、逃げ切れると思っていた。でも最後の登りはスピードを保つのが難しいほどの厳しさだった。ラルプデュエズのような大歓声に後押しされた」。

第2ステージを終えた時点ですでに総合で4分近いタイムを失っていたためマイヨロホには手が届かなかったが、ジェニエはチームメイトからマイヨモンターニャを引き継ぐことに成功。マイヨプントスも同時に獲得している。



2番手でフィニッシュするルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)2番手でフィニッシュするルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji


3番手でフィニッシュに向かうアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)3番手でフィニッシュに向かうアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji終盤に追い上げてステージ4位に入ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)終盤に追い上げてステージ4位に入ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiフルームから6秒失ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)フルームから6秒失ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsujiマイヨロホに袖を通したルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)マイヨロホに袖を通したルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji先頭から2分遅れで3級山岳ミラドル・デ・エサロに突入したメイン集団で主導権を握ったのはモビスター。ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)のハイペースによって集団はすぐさま8名(フェルナンデス、チャベス、バルベルデ、コンタドール、キンタナ、ゴンサルベス、ブランビッラ、モレーノ)に絞られる。

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)を含まないこの精鋭グループは激坂区間でさらに縮小する。フェルナンデス、チャベス、キンタナ、バルベルデが先行し、モビスター3名に対してアタックを仕掛けたチャベスにキンタナが反応。決定的なアタックを成功させたのは、キンタナとバルベルデのためにペースを作っていたフェルナンデスだった。

先頭ジェニエまで21秒に迫ったフェルナンデスがステージ2位フィニッシュ。精鋭グループには勾配が緩んだところでフルームが後方から追いつき、バルベルデ、フルーム、チャベスが26秒遅れ。その一方でキンタナは32秒遅れ、コンタドールは54秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)にいたっては2分以上ものタイムを失っている。

これによりフェルナンデスが総合首位に立ち、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)からマイヨロホを奪うことに成功する。「調子の良さは実感していたけど、ナイロとアレハンドロをアシストすることだけを考えていたので、マイヨロホは嬉しいサプライズ。明日からも自分の役割は変わらないけど、今はこの上ない幸福感に包まれている」と、チーム2年目の25歳は語っている。フェルナンデスは複合賞ランキングでも首位に浮上。チーム力を見せたモビスターがチーム総合成績トップに立っている。

登り始めで姿を消しながらも終盤に挽回し、ライバルたちからタイムを奪ったフルームは「前半に飛ばしすぎると後半に失速するのは目に見えていた。実際に何人かの選手がそのトラップに引っかかって、残り500mで撃沈していた。マイペースに徹したので一時は先頭との距離が開いたけど、およそ7分間の登りと捉えて、焦らずペダリングを続けて差を詰めた。良い走りだったと思う」とコメント。同時に、マイヨロホを着ながらアシストに徹したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らのアシストぶりを賞賛した。







ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ結果
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)              4h28’36”
2位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)             +21”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +26”
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                +32”
7位 イゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)           +44”
8位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)             +54”
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
13位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)         +56”
24位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)  +1’15”
53位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)        +2’02”
70位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                  +3’54”
112位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)               +9’23”
135位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)       +12’33”

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)           9h16’07”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +07”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                +11”
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)     +17”
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)             +46”
7位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)                +47”
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)              +51’
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)                +58”
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+1’01”

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)              26pts
2位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)  25pts
3位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)           20pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)              10pts
2位 サイモン・ペロー(スイス、IAMサイクリング)             4pts
3位 ピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)     4pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)           9pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           14pts
3位 ピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)     61pts

チーム総合成績
1位 モビスター                             26h47’41”
2位 チームスカイ                             +1’15”
3位 エティックス・クイックステップ                    +2’30”

敢闘賞
サイモン・ペロー(スイス、IAMサイクリング)

text&photo:Kei Tsuji in A Coruna, Spain