ピナレロの2017ラインアップより、エアロマシン「BOLIDE」シリーズをピックアップ。フルームのツール総合優勝を支えたロードTTモデル「BOLIDE TT」と、ヴィヴィアーニのオリンピック男子オムニアム金メダルに貢献したトラックモデル「BOLIDE HR」を紹介しよう。



ピナレロ BOLIDE TT

ピナレロ BOLIDE TTピナレロ BOLIDE TT (c)ピナレロ・ジャパン
2014年・15年の世界選手権を連覇し、ツール・ド・フランスのTTステージをはじめとしたステージレースでチームスカイの勝利に貢献してきたピナレロのTTバイク「BOLIDE(ボリデ)」。その発表から3年が経過した今年、各性能をブラッシュアップした進化版「BOLIDE TT」が登場した。

「BOLIDE TT」の開発にあたり、まずピナレロが目指したのがエアロダイナミクス性能の向上である。フレーム形状は先代の面影を残しながらも、最新鋭の航空機設計を応用した緻密なフレームワークへと変貌を遂げた。例えば、リアブレーキのカバーはボーイング787Bに着想を得ており、ジェットエンジンの排気口のようにギザギザとしたフィン(シェブロン)を設置。シートステー上部の空気を素早く排出することで、より一層エアロダイナミクスが向上したという。

フロントブレーキにはカバーを設け、空気抵抗を低減フロントブレーキにはカバーを設け、空気抵抗を低減 (c)ピナレロ・ジャパンリアブレーキカバーは後方を鋸のようにすることで、空気の抜けを良くしているリアブレーキカバーは後方を鋸のようにすることで、空気の抜けを良くしている (c)ピナレロ・ジャパン

卵形断面の後ろ半分を切り落としたような形状の「Flatback」チューブを採用卵形断面の後ろ半分を切り落としたような形状の「Flatback」チューブを採用 (c)ピナレロ・ジャパンウォーターボトルを取り付けた状態で空力効果が最大となるよう設計されたダウンチューブ。丸ボトルでもエアロ効果を発揮するというウォーターボトルを取り付けた状態で空力効果が最大となるよう設計されたダウンチューブ。丸ボトルでもエアロ効果を発揮するという (c)ピナレロ・ジャパン


そして、ブラドレー・ウィギンス(イギリス)のアワーレコード挑戦のために開発された「BOLIDE HR」に倣い、フロントフォークエンド後方にフィンを増設。チームスカイのメインバイクである「DOGMA F8」からは、ウォーターボトルを取り付けた状態で空力効果が最大となるダウンチューブの設計や、卵形断面の後ろ半分を切り落としたような形状の「Flatback」チューブ、イモネジを用いたインテグレーテッドシートクランプを取り入れた。

フレーム素材も先代モデルより変更されており、東レの誇る最高峰カーボンであり、DOGMAシリーズと共通の「トレカ Carbon T1100-1K」を採用。自転車業界ではピナレロのみが使用することのできる最先端素材により、フレームセット状態で350gもの軽量化に成功した。フレームセットの重量は公表されていないものの、参考としてミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)のバイクは7.6kgに仕上がっているとのこと。同時に高剛性化も果たしており、より隙のない1台となった。

BOLIDE TTを駆るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)BOLIDE TTを駆るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji
国内では受注発注品となり、フレームセットでの販売となる。サイズは450mm、485mm、520mm、550mmの4種類で、カラーはチームスカイ仕様の1種類。ハンドルバー、ブレーキレバー、ブレーキ、ブレーキカバーが付属する。なお、ハンドルはBOLIDE TTに合わせて設計されたピナレロのオリジナル品で、エクステンションの幅や突き出しが調整可能だ。

ピナレロ BOLIDE TT(フレームセット)
フレーム素材:トレカ Carbon T1100-1K
サイズ:450mm、485mm、520mm、550mm
付属品:ハンドルバー、ブレーキレバー、ブレーキ、ブレーキカバー
カラー:899 Team Sky
価 格:1,620,000円(フレームセット)



ピナレロ BOLIDE HR

ピナレロ BOLIDE HRピナレロ BOLIDE HR (c)ピナレロ・ジャパン
トラック競技の空力環境に合わせ設計されたフロントフォークトラック競技の空力環境に合わせ設計されたフロントフォーク フォークブレードとホイールの間隔を詰めることで、空気抵抗を低減しているフォークブレードとホイールの間隔を詰めることで、空気抵抗を低減している (c)pinarello.com


「BOLIDE HR」は、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)のアワーレコード挑戦のために開発され、54.526km/hという驚異的な記録の樹立に貢献したトラックレース用バイクだ。先のリオデジャネイロオリンピックではイタリアナショナルチームの公式バイクとして採用。エリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)の男子オムニアム優勝に貢献したことで再び注目を集めている1台だ。

設計に際しては、ロードTT用の旧型BOLIDEをベースに、コンピューターシミュレーションを駆使することでトラックレースに最適化。ウィギンズのアワーレコード挑戦の舞台となったロンドンのリーヴァレー・ヴェロパークをコンピューター上に再現して流体力学的な解析を行い、空気抵抗低減を極限まで追求した。

54.526kmのアワーレコードを樹立したブラドレー・ウィギンズ(イギリス)54.526kmのアワーレコードを樹立したブラドレー・ウィギンズ(イギリス) photo:UCI
その結果誕生したBOLIDE HRのフレーム形状は、ロードTT用のBOLIDE TTとは一線を画す。中でもトピックなのが、フロントフォーク及びシートステーとタイヤとのクリアランスだ。様々な方向から吹き付ける風を受け流すべくBOLIDE TTが大きなクリランスを持つのに対し、ヴェロドローム内では横風が吹くことが無いことからBOLIDE HRではクリアランスが最小限とされている。また、ロードとトラックでアッセンブルされるパーツが違うことにも着目し、各部の形状を最適化した。

素材には、東レの誇る最高峰カーボン「トレカ Carbon T1100-1K」を採用。生産時間の短縮やコスト低減のために、一般的なカーボンフレームが2つ以上のパーツを接合して成型されるのに対し、BOLIDE HRはワンピース構造とすることで、高剛性を維持しながら軽量化を図っている。

リオ五輪の男子オムニアムを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)リオ五輪の男子オムニアムを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア) photo:Watson/UCI
販売はフレームセットにて行われる。フロントフォークは汎用的な100mmと、ウィギンスのバイクと同じく幅狭な65mmという2種類のエンド幅が選択可能だ。なお、65mmエンドのフロントフォーク用には、マヴィックCOMETEに対応するアダプターキットを用意。ピナレロオリジナルのハンドルが付属する(形状や仕様は未定)。

ピナレロ BOLIDE HR(フレームセット)
フレーム素材:トレカ Carbon T1100-1K
サイズ:450、485、520、550
付属品:ハンドルバー
価 格:1,620,000円(フレームセット)
※受注発注品