隣国オーストリアの超級山岳ゼルデンにフィニッシュするツール・ド・スイス第7ステージで、前日に調子を落としたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が勝利。ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)が首位に立った。



超級山岳ホッホタンベルクパスを進むプロトン超級山岳ホッホタンベルクパスを進むプロトン photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第7ステージツール・ド・スイス2016第7ステージ image:Tour de Suisseオーストリアのゼルデンにフィニッシュする224.3kmで行われた今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)。まずは超級山岳ホッホタンベルクパス(6.5km/8%)を通過し、オーストリア国内を東に向かう。最後は標高2,669mの超級山岳ゼルデン(10.9km/11%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。

レース中盤まで暖かい太陽光が降り注ぐレース中盤まで暖かい太陽光が降り注ぐ photo:Tim de Waele獲得標高差が4,294mに達するこの日、元アワーレコード保持者マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)とイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、そして山岳賞ジャージのアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)がエスケープ。総合争いに関係しないこの3名の逃げは最大12分のリードを得る。

逃げたイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら3名逃げたイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら3名 photo:Tim de Waeleトルホックは超級山岳ホッホタンベルクパスを先頭通過し、山岳賞ランキングにおいて他の追随を許さない圧倒的なリードを築くことに成功。ミッションを果たしたトルホックはその後の平坦区間でペースを弱めて集団に吸収。先頭ではブランドルとケイセの2人が逃げ続けた。

第5ステージでイエロージャージを獲得したピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)が気管支炎によりリタイアする中、リーダーチームのロットNLユンボがメイン集団のペースを作って逃げを追う。

逃げとメイン集団のタイム差が7分まで縮まったところで、ヴァンガーデレンが「今まで経験した中で最もハードな登り。これ以上厳しい登りが思い浮かばない」と表現する超級山岳ゼルデンの登坂が始まった。



ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)がメイン集団のペースを作るヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)がメイン集団のペースを作る photo:Tim de Waele
残り5kmを切って飛び出したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)残り5kmを切って飛び出したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele


集団から遅れるウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)集団から遅れるウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele先頭ではブランドルが独走に持ち込んだが、ジャイアント・アルペシンとアスタナがペースを上げるメイン集団とのタイム差は勢いよく縮まっていく。ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)が淡々とハイペースを刻むとイエロージャージのウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)は脱落した。

2番手でフィニッシュを目指すワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)2番手でフィニッシュを目指すワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele急勾配の登りでスピードを失い、蛇行気味に走るブランドルは残り5.5km地点で吸収される。すると、残り4.6km地点で総合13位・2分09秒遅れのヴァンガーデレンがアタック。引き続きキリエンカがペースを作るメイン集団からは総合2位のワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)が飛び出した。

超級山岳ゼルデンを駆け上がるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ら超級山岳ゼルデンを駆け上がるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ら photo:Tim de Waeleバーギルにはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)が追いつき、2人で先頭ヴァンガーデレンを追ったものの距離が縮まらない。キリエンカの集団牽引が残り2km地点で終わったところでカウンターアタックを仕掛けたミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)がバーギルとパンタノまでブリッジ成功。最終的にバーギルとロペスモレーノが協力して先頭を追ったが、ヴァンガーデレンは最後までリードを守った。

フィニッシュに向かって独走するティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)フィニッシュに向かって独走するティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele寒さに苦しみ、前日の第6ステージで失速したヴァンガーデレンが復活の勝利。「今大会ずっと調子は良かったものの、凍えた昨日のステージで総合優勝のチャンスを失ってしまった。だからせめてステージ優勝でも飾りたいという気持ちで今日のステージに挑んだ。他の選手が苦しんでいると感じたタイミングでアタック。昨日総合タイムを失ったので動きが容認された」とヴァンガーデレンは語る。

また、総合7位まで順位を戻したヴァンガーデレンは「総合順位を上げることができたので、残りの2ステージで総合トップ5もしくは総合表彰台を狙えるかもしれない」とコメントしている。

2分07秒遅れたケルデルマンに代わって総合首位に立ったのはステージ3位のバーギル。21秒差でロペスモレーノ、24秒差でアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)が続いている。

「ヴァンガーデレンがアタックした時、チームスカイがペースを上げて追走すると予想したけど、彼らはそのまま一定ペースで走り続けた。だから自ら動いてヴァンガーデレンを追ったんだ。チームが僕を信頼してくれて、こうして良い成績を残すことができて誇らしい気分。このリーダージャージを守るために全力を尽くすよ」と語るバーギルはイエロージャージを着て個人タイムトライアルに挑む。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



独走でフィニッシュするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)独走でフィニッシュするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が、はいチーズティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が、はいチーズ photo:Tim de Waeleイエロージャージに袖を通したワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)イエロージャージに袖を通したワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第7ステージ結果
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)        6h26’13”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)            +16”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
4位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)            +31”
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)            +33”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)               +43”
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                 +49”
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
9位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)      +59”
10位 ヤン・ヒルト(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
11位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)               +1’08”
13位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)            +2’07”
24位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)                +4’29”
74位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                    +16’00”
DNF ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)

個人総合成績
1位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)          29h09’53”
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)            +21”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)            +24”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                   +55”
5位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)           +1’06”
6位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)              +1’07”
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)         +1’31”
8位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                +1’36”
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)             +1’39”
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                +1’55”

ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)

山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)

スイスライダー賞
1位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)

チーム総合成績
1位 カチューシャ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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