2016/06/10(金) - 17:01
北米の中でも特にヨーロッパ色を強く感じるカナダ・ケベック市。このケベックを発祥とするバイシクルブランド、GARNEAU(ガノー)の2017年モデルが発表された。現地で行われたプレゼンテーションより、3つ新型モデルを紹介する。
2016年より、片山右京氏が率いるTEAM UKYOにもフレーム供給を行うガノー。レーシングモデルを中心に発表されたガノーの2017年モデルを通した大きなテーマは『エクスペリエンス・オリエンテッド・コレクション』。乗って得られる経験に焦点を合わせるラインアップというもの。豊かな自然に囲まれたケベックで開発し、多くの状況=セグメントに分けたバイクを揃えている。
今回は、ケベックにて行われたプレゼンテーションより、ブランド初の本格的エアロロード「GENNIX A1」、ドロップハンドル装備のアドベンチャーバイク「GARIBALDI」、凝ったフレーム形状を持つ入門向け女性用アルミロード「AXELLE」の3モデルを紹介。日本国内での販売パッケージや価格などの詳細は、今後発表される予定だ。
ブランド初のエアロロード GENNIX A1
レーシングブランドであるガノーにとって初のエアロロードが「GENNIX A1(ジェニックス A1)」。プロのレースシーンで求められる空力効果を実現するためのガノーの答えは、実直な計算の積み上げであった。
「エアロダイナミクスに関しては、ケベックの工科大学とパートナーシップを組みました。長さと幅を入力するだけで、その最適な断面図を出してくれるというコンピューターシミュレーションプログラムを用いたことが大きなトピックです。そのシミュレーション結果を基に、コンピューター内で仮想のフレームを組み立て、それをCFD(数値流体力学)テストにかけ、各部位を詳細に検証するというプロセスを繰り返しました」と、開発担当者は言う。
まず、ガノーの調べでは空気抵抗全体の75%を占めるという、ライダーの空気抵抗を低減することから始まったGENNIX A1の設計。BBの位置を通常よりも5mmほど下げ、自転車とライダーの前方投影面の重なりを大きくすることで、空気抵抗全体に占めるライダーの空気抵抗の割合を低減している。
自転車の空気抵抗を低減するにあたって大きな役割を担うのが、フロント周りの設計だ。GENNIX A1に搭載されるフロントフォークは、ブレードとホイールとの間隔を大きく取っている。これによって、正面のみならず、斜めから吹き付ける風に対しても空気抵抗軽減効果を発揮する。
フォークとホイールの間を気流が当たるダウンチューブやシートチューブは、翼断面の後方を切り取ったカムテール断面とし、空力効果と剛性バランスを両立。トップチューブの形状も空力的に最適化されており、ライダーの脚でかき回され乱れた気流も、スムーズに後方へと受け流してくれる。
ダウンチューブのヘッドチューブ側にある、えぐられた様な造形は、フロントからの気流をボトル周辺から逸らすためのもの。フレーム単体だけではなく、ライダーやボトル、ホイールなど実際の使用環境に基づいた空気抵抗の低減が図られているのだ。
前後共にブレーキは、エアロダイナミクスに優れるダイレクトマウント式を採用。リアブレーキは、前方から見るとシートステーに隠れるように配置することで空気抵抗を低減した。開発の段階ではリアブレーキをBB下に設置する案も検討されたが、ガノーの調べでは、チェーンステーに設置した場合と比較して、わずか0.2%しか空気抵抗が減らなかったため、採用を見送ったとのこと。整備性や耐久性など、ブレーキがシートステーに有ることで得られるメリットを優先している。
以上に説明した以外にも、シートチューブをタイヤに沿うようにカットしたり、シートステーを縦方向に薄く潰したりと、空気抵抗低減ための設計が数多く組み込まれたGENNIX A1。フレーム素材にはガノーが誇る最高峰カーボン「RTCC2」を採用し、BBシェルは大口径のBB386規格、ヘッドは下側1-3/8のテーパードヘッドとするなど、ロードバイクの基本的な走行性能に関する部分も抜かりない。多くのロードバイクメーカーがしのぎを削るエアロロードバイク戦線に割って入る、2017年注目の1台と言えそうだ。
ガノーが提案するアドベンチャーバイク GARIBALDI
「GARIBALDI(ガリバルディ)」は、昨今のビッグメーカーが力を入れるテーマ『アドベンチャー』用のバイクだ。つまりなんでも使えてどこでもイケるという、今風のタウンバイク。街乗りに使えて、シクロクロスにも出られて、荷物も運べて、雨の日も通勤できるという、ケベックに住むケベッカーのライフスタイルを体現したマシンである。
荒れたロードで、荒れてないと感じさせるためのジオメトリーとタイヤサイズ。走り自体はロードバイクの安定性を基盤に、細めのシートチューブ径で乗り心地を柔らかくして、ハンドルバーは末広がりでダートで操作しやすくした。
太めのタイヤは700x35cを標準装備とし、最大40cにまで対応。アルミフレームにフォークはカーボン。雨の日だってへっちゃらなディスクブレーキ。ラック/フェンダーマウント装備で拡張性も充分。振動も来すぎず乗りやすい。いわゆる通勤仕様だ。
ちなみに、ガリバルディという名前は、カナダ・西海岸のスコーミッシュ(マウンテンバイクも盛んだ)の近くにある山脈の名前。で、ここにガリバルディというイタリア移民の山男の象徴みたいな人がいて、その人には偉大な髭があり、それを「ガリバルディひげ」というのだそう。プレゼンテーションでは、そんなネーミングへの想いを開発担当から熱心に語られた。
扱いやすさを追求した女性のためのエントリーロード AXELLE
「AXELLE(アクセル)」は、昨年登場したエンデュランス系ロード「AXIS SL2」の流れを汲む女性向けモデル。カーボンに対して複雑な形状に成型することが難しいとされるアルミを用いながらも、ガノーが持つ技術により、各部を複雑な形状とすることで、素材の持つ可能性を最大限に引き出した1台だ。そして、各ビギナーの女性でも気軽に乗ってもらえるよう、各部には様々な工夫が施されている。
「AXELLE」について「女性にとってのスポーツバイクの入り口となって欲しい」と開発担当者は言う。そして、「トップチューブが長く、チェーンステーも長めのしっとりした乗り心地です。座ったコクピットのポジションも小さく、初めての方でも操作しやすいよう設計しました」とも。
「ワイドなギア設定、坂の多い町でも自転車で走れるんだという体験を、もっと多くの人にしてもらいたいんです」とはケベック人のブランド創設者ルイ・ガノー氏。「デザイン、クリーンでシンプルなもの。バイクとはクルマのような存在であっていいはず。ヨーロッパの町に似合いそうな、スポーツカーのスタイルを細かなところに付け加える。素材や手触りで遊ぶ、そういうディテールの想像力が大切なのです」。
フランス人を起源とするケベック人の体格は、日本人とそうは変わらない。白人にしても小柄な女性が多い。そのため、ガノーはスモールサイズには積極的で、小さいサイズでもフォークのトレール値を変えないよう、それぞれに合うオフセットのフォークを用意する。
text::Koichiro.Nakamura
photo:Hiroyuki.Nakagawa
2016年より、片山右京氏が率いるTEAM UKYOにもフレーム供給を行うガノー。レーシングモデルを中心に発表されたガノーの2017年モデルを通した大きなテーマは『エクスペリエンス・オリエンテッド・コレクション』。乗って得られる経験に焦点を合わせるラインアップというもの。豊かな自然に囲まれたケベックで開発し、多くの状況=セグメントに分けたバイクを揃えている。
今回は、ケベックにて行われたプレゼンテーションより、ブランド初の本格的エアロロード「GENNIX A1」、ドロップハンドル装備のアドベンチャーバイク「GARIBALDI」、凝ったフレーム形状を持つ入門向け女性用アルミロード「AXELLE」の3モデルを紹介。日本国内での販売パッケージや価格などの詳細は、今後発表される予定だ。
ブランド初のエアロロード GENNIX A1
レーシングブランドであるガノーにとって初のエアロロードが「GENNIX A1(ジェニックス A1)」。プロのレースシーンで求められる空力効果を実現するためのガノーの答えは、実直な計算の積み上げであった。
「エアロダイナミクスに関しては、ケベックの工科大学とパートナーシップを組みました。長さと幅を入力するだけで、その最適な断面図を出してくれるというコンピューターシミュレーションプログラムを用いたことが大きなトピックです。そのシミュレーション結果を基に、コンピューター内で仮想のフレームを組み立て、それをCFD(数値流体力学)テストにかけ、各部位を詳細に検証するというプロセスを繰り返しました」と、開発担当者は言う。
まず、ガノーの調べでは空気抵抗全体の75%を占めるという、ライダーの空気抵抗を低減することから始まったGENNIX A1の設計。BBの位置を通常よりも5mmほど下げ、自転車とライダーの前方投影面の重なりを大きくすることで、空気抵抗全体に占めるライダーの空気抵抗の割合を低減している。
自転車の空気抵抗を低減するにあたって大きな役割を担うのが、フロント周りの設計だ。GENNIX A1に搭載されるフロントフォークは、ブレードとホイールとの間隔を大きく取っている。これによって、正面のみならず、斜めから吹き付ける風に対しても空気抵抗軽減効果を発揮する。
フォークとホイールの間を気流が当たるダウンチューブやシートチューブは、翼断面の後方を切り取ったカムテール断面とし、空力効果と剛性バランスを両立。トップチューブの形状も空力的に最適化されており、ライダーの脚でかき回され乱れた気流も、スムーズに後方へと受け流してくれる。
ダウンチューブのヘッドチューブ側にある、えぐられた様な造形は、フロントからの気流をボトル周辺から逸らすためのもの。フレーム単体だけではなく、ライダーやボトル、ホイールなど実際の使用環境に基づいた空気抵抗の低減が図られているのだ。
前後共にブレーキは、エアロダイナミクスに優れるダイレクトマウント式を採用。リアブレーキは、前方から見るとシートステーに隠れるように配置することで空気抵抗を低減した。開発の段階ではリアブレーキをBB下に設置する案も検討されたが、ガノーの調べでは、チェーンステーに設置した場合と比較して、わずか0.2%しか空気抵抗が減らなかったため、採用を見送ったとのこと。整備性や耐久性など、ブレーキがシートステーに有ることで得られるメリットを優先している。
以上に説明した以外にも、シートチューブをタイヤに沿うようにカットしたり、シートステーを縦方向に薄く潰したりと、空気抵抗低減ための設計が数多く組み込まれたGENNIX A1。フレーム素材にはガノーが誇る最高峰カーボン「RTCC2」を採用し、BBシェルは大口径のBB386規格、ヘッドは下側1-3/8のテーパードヘッドとするなど、ロードバイクの基本的な走行性能に関する部分も抜かりない。多くのロードバイクメーカーがしのぎを削るエアロロードバイク戦線に割って入る、2017年注目の1台と言えそうだ。
ガノーが提案するアドベンチャーバイク GARIBALDI
「GARIBALDI(ガリバルディ)」は、昨今のビッグメーカーが力を入れるテーマ『アドベンチャー』用のバイクだ。つまりなんでも使えてどこでもイケるという、今風のタウンバイク。街乗りに使えて、シクロクロスにも出られて、荷物も運べて、雨の日も通勤できるという、ケベックに住むケベッカーのライフスタイルを体現したマシンである。
荒れたロードで、荒れてないと感じさせるためのジオメトリーとタイヤサイズ。走り自体はロードバイクの安定性を基盤に、細めのシートチューブ径で乗り心地を柔らかくして、ハンドルバーは末広がりでダートで操作しやすくした。
太めのタイヤは700x35cを標準装備とし、最大40cにまで対応。アルミフレームにフォークはカーボン。雨の日だってへっちゃらなディスクブレーキ。ラック/フェンダーマウント装備で拡張性も充分。振動も来すぎず乗りやすい。いわゆる通勤仕様だ。
ちなみに、ガリバルディという名前は、カナダ・西海岸のスコーミッシュ(マウンテンバイクも盛んだ)の近くにある山脈の名前。で、ここにガリバルディというイタリア移民の山男の象徴みたいな人がいて、その人には偉大な髭があり、それを「ガリバルディひげ」というのだそう。プレゼンテーションでは、そんなネーミングへの想いを開発担当から熱心に語られた。
扱いやすさを追求した女性のためのエントリーロード AXELLE
「AXELLE(アクセル)」は、昨年登場したエンデュランス系ロード「AXIS SL2」の流れを汲む女性向けモデル。カーボンに対して複雑な形状に成型することが難しいとされるアルミを用いながらも、ガノーが持つ技術により、各部を複雑な形状とすることで、素材の持つ可能性を最大限に引き出した1台だ。そして、各ビギナーの女性でも気軽に乗ってもらえるよう、各部には様々な工夫が施されている。
「AXELLE」について「女性にとってのスポーツバイクの入り口となって欲しい」と開発担当者は言う。そして、「トップチューブが長く、チェーンステーも長めのしっとりした乗り心地です。座ったコクピットのポジションも小さく、初めての方でも操作しやすいよう設計しました」とも。
「ワイドなギア設定、坂の多い町でも自転車で走れるんだという体験を、もっと多くの人にしてもらいたいんです」とはケベック人のブランド創設者ルイ・ガノー氏。「デザイン、クリーンでシンプルなもの。バイクとはクルマのような存在であっていいはず。ヨーロッパの町に似合いそうな、スポーツカーのスタイルを細かなところに付け加える。素材や手触りで遊ぶ、そういうディテールの想像力が大切なのです」。
フランス人を起源とするケベック人の体格は、日本人とそうは変わらない。白人にしても小柄な女性が多い。そのため、ガノーはスモールサイズには積極的で、小さいサイズでもフォークのトレール値を変えないよう、それぞれに合うオフセットのフォークを用意する。
text::Koichiro.Nakamura
photo:Hiroyuki.Nakagawa
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