トライアスロンをルーツに持つジャーマンブランド、フェルト。多くのラインアップを持つ同社のバイクの中から、今回はオールラウンドモデルであるFシリーズのミドルグレード、F4をインプレッション。



フェルト F4フェルト F4 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1994年に創業したドイツの総合バイクブランド・フェルト。その起源は、ホンダのモトクロスチームでメカニックを務めていたジム・フェルト氏が1980年代モトクロス界のスーパースターであるジョニー・オメーラのために制作したトライアスロンバイクにまで遡る。

今でこそ当たり前の流体力学の概念をいち早く取り入れ、最先端の金属や加工法を用いて開発されたバイクは1980年代当時、驚異的な性能を誇ったという。その経験を買われ、チューブメーカーであるイーストンの自転車部門の立ち上げに参画することに。フェルト氏の開発したチューブは世界の名だたるブランドに採用され、「チュービングの魔術師」の異名をとるほどであった。

トップチューブ上部にはモデルを示す「4」のロゴが入れられるトップチューブ上部にはモデルを示す「4」のロゴが入れられる ダウンチューブ下に設置されるアウター受けダウンチューブ下に設置されるアウター受け ストレートブレードを採用するフロントフォークストレートブレードを採用するフロントフォーク


ブランド創設以来「To design, develop, and deliver the best bicycles in the world.」をスローガンに、速く、軽く、乗り心地の良いバイクを追求してきたフェルト。他社に先駆け、いち早く手ごろな価格帯のカーボンロードをリリースし、2008年にはエアロロードの先駆けとなる「AR」シリーズを発表するなど、先見性と開発力を併せ持つブランドである。

フェルトのロードレーサーラインアップの中でも、オールラウンドモデルとして位置づけられるのが「F」シリーズである。エアロモデルの「AR」、エンデュランスモデルの「Z」と、3シリーズが用意されるラインアップの中でも、「F」シリーズは登りを中心にどんな局面にも対応する総合力の高いレースバイクとして開発された。

ヘッドチューブは上1-1/8”、下1-1/2”のテーパード仕様ヘッドチューブは上1-1/8”、下1-1/2”のテーパード仕様 すっきりとまとまったヘッドチューブ周辺すっきりとまとまったヘッドチューブ周辺

トップチューブからシートステーへ流れるように繋がるトップチューブからシートステーへ流れるように繋がる リアエンド付近はボリュームが絞られ柔軟性を演出するリアエンド付近はボリュームが絞られ柔軟性を演出する


変形チューブを駆使し異形ともいえるフォルムを持ったバイクが多く走る現在、丸断面のチューブによって構成されるFシリーズは、逆に新鮮に思えるほどのオーソドックスなデザインが特徴的でもある。「AR」シリーズでは大胆なチュービングを見せるフェルトが、極めて保守的なデザインを「F」シリーズに与えているのは単なる懐古趣味というわけではないはずである。

登りから平坦、下りまで様々なシチュエーションで常に高い性能を発揮することが求められているオールラウンドバイクにとって、「チュービングの魔術師」ジム・フェルトが考える最も適したパイプがこのトラディショナルなパイプなのだろう。

シートステーの付け根は二本出しのオーソドックスなスタイルシートステーの付け根は二本出しのオーソドックスなスタイル スレッド式BBを採用するスレッド式BBを採用する


シンプルイズベストを地で行くようなフォルムだが、その中に詰め込まれたテクノロジーはまさにレースバイクのためのもの。今回インプレッションするF4に使用される"UHC Performance MMCカーボン"は、過去にはハイエンドモデルであるF1が採用していた実績のある素材だ。

このカーボンをフェルトが誇る「インサイドアウト」製法によって、各チューブを成型。この製法は、フレーム成型過程でフレーム内にポリウレタンを仕込み、重量増につながる余分な材料を極限まで排除するというもの。そうして各チューブを成型したのちに各々を接合していくことによって、フレームの各部位に求められる性能をそれぞれ最適化し、フレーム全体としての性能を大幅に向上させることに成功した。

細身のシートステーにより、衝撃吸収性を向上させる細身のシートステーにより、衝撃吸収性を向上させる カーボンピラーが付属しているカーボンピラーが付属している オーソドックスな丸型断面のダウンチューブオーソドックスな丸型断面のダウンチューブ


ヘッドチューブは上1-1/8”、下1-1/2”のテーパードヘッドを採用する一方で、ボトムブラケットにはトラディショナルなスレッド式を採用。耐久性やメンテナンス性に優れるスレッド式BBを採用することによって、より長い間性能を発揮し続けられるフレームとなっている。

上位モデルに迫る性能を有するフレームに組み合わせられるのはシマノのセカンドグレード・アルテグラ。ホイールには同じくシマノのRS-21がアッセンブルされてる。完成車重量で7.7kgと軽量な仕上がりを見せつつ、価格は328,000円というコストパフォーマンスを実現したバイクをライダーたちはどう評価したのか。それでは早速インプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「乗り手と共に成長する味わい深い一台」
錦織大祐(フォーチュンバイク)

この価格帯のライバルたちと比べると、際立った剛性感が魅力のバイクです。手に余るような硬さではないですが、ミドルグレード以下のカーボンロードによく見られるようなしっとりとした柔らかさとは一線を画したレーシーな味付けが特徴ですね。

一方で、高弾性カーボンをふんだんに使ったハイエンドモデルの乾いた乗り味ともまた違います。形状や素材によって演出された性能ではなく、カーボン繊維の積層方法によって生み出されているのでしょう。硬さを出したい方向を明確に決めることで、狙った性能を引き出しているのだと思います。

「乗り手と共に成長する味わい深い一台」 錦織大祐(フォーチュンバイク)「乗り手と共に成長する味わい深い一台」 錦織大祐(フォーチュンバイク)
なので、その設計にぴったりと合う踏み方を見つけてあげる必要があります。少し乗っただけでは、このバイクの全ての魅力を感じ取ることはかなり難しいでしょうね。乗り込むことで段々と真価を引き出していくことができるこのバイクは、スポーツとして自転車に取り組むのであればとても楽しい相棒として長く付き合っていけます。

登りでも、スイートスポットに入った踏み方をしてあげればかなり進んでいくので、勾配に合わせてシッティングとダンシングを使い分けて、乗り手がトルクをコントロールする必要があります。基本的には、あまり軽いギアをクルクルと回すのではなく、体重を掛けながら80回転程度をキープすると良いでしょう。

直進安定性が強めなので、コーナーでは少しアンダー気味ですね。少し癖があるハンドリングで、コーナーに切れ込むのではなく、外側からラインに沿わせていくような動き方をします。ペダリングと同様に、乗り手がバイクの特性を理解して、操ってあげるとスムーズに下っていくことができるでしょう。

完成車で30万円前半とのことですが、このフレームとフルアルテグラのバイクと考えると破格のプライスです。バイクの特性を掴み、乗りこなしていくことでより速く、気持ちよく走ることができるという体験は、ロードバイクを趣味とする中でも大きな楽しさをもたらしてくれるはずです。誰が乗っても同じように走る優等生なバイクも多いですが、対話の中で乗り手と共に成長してくれるこのバイクは、きっと豊かなロードバイクライフをもたらしてくれるはずです。

「とても素直でオールラウンドに仕上がったミドルグレード」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

「とても素直でオールラウンドに仕上がったミドルグレード」 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)「とても素直でオールラウンドに仕上がったミドルグレード」 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所) 直感的に良さが伝わってくる、とても乗りやすいバイクです。かなり長い間モデルチェンジをしていないバイクですが、それは基本性能の高さを裏付けているとも言えるでしょう。

控えめな剛性感で、踏みこむとBB周辺が横にしなるようなバネ感があるバイクです。あまり強めに踏みこむよりは、淡々と一定のケイデンスを保つような走らせ方がしっくりくると感じました。加速時には一瞬タメてから反応するので、激しくインターバルがかかるようなレースには向いていないですが、一方でとても脚当たりが良く、体力を残しやすいのでペースが安定しているエンデューロやロングライドにはもってこいです。

コーナーでもふらつくことなく、素直にラインをトレースしていくことができます。自然なフィーリングで倒していくことができるので、初めてロードバイクに乗るという人でも安心して下ることが可能です。挙動の読みやすさはレーシングマシンらしさを感じることができる部分でもあります。

路面からの突き上げをいなしてくれる能力も高いので、舗装が荒れ気味の峠道でも体力を温存できます。いくつも峠を繋いでいくようなコースを、一定ペースで走り抜けるようなライドでは大きなアドバンテージを発揮するはずです。

ワイヤー類が外装式ということもこのバイクの特徴的な部分ですね。ここ数年、ワイヤー類が内装されているバイクが大半となってきましたが、操作の軽さや整備性という意味では外装式に一日の長があります。自分で整備してみたいという人にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

価格もリーズナブルにまとまっているので、これから自転車を始めたいという方にはベストバイだと自信をもっておすすめできます。コンポーネントもフルアルテグラなので長く付き合える一台だと思います。とんがった性能は無いですが、とても素直でオールラウンドに仕上がったミドルグレードですね。

フェルト F4フェルト F4 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
フェルト F4
コンポ―ネント:シマノ アルテグラ
ホイール:シマノ WH-RS21
ハンドルバー:3T Ergosum pro
ステム:3T ARX2
重 量:7.7kg
サイズ:48, 51, 54, 56
カラー:マットシルバー
価 格:328,000円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

錦織大祐(フォーチュンバイク)錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)

幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。

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吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所) 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長を務める。一般企業に勤めてから入社した経験を活かし常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者さんが気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がけている。週末にはロードやシクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、お客さん同士が仲良くなれるような場を提供している。ショップでは「当たり前のことを当たり前にやる」ことをモットーに作業を行い、お客さんが乗りやすいバイクを提供している。

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ワタキ商工株式会社 ニコー製作所

ウェア協力:アソス
アイウェア協力:カブト

photo:Makoto.AYANO
text:Naoki.YASUOKA
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