ツアー・オブ・ジャパン4日目は三重県のいなべステージ。厳しい登りのあるコースで序盤から逃げ続けたモハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム)が優勝。共に逃げたメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ)が2位となり、リーダージャージを獲得した。



農業の盛んないなべ市 水田地帯を行く集団農業の盛んないなべ市 水田地帯を行く集団 photo:Hideaki.Takagi
昨年に続き2回目の開催となるいなべステージ。コースは三重県北部に位置するいなべ市の山間部と田園地帯を回る1周15.2㎞だ。最大斜度17%の激坂を含む登り区間は、観戦スペースが取れない部分があるほど道幅が狭い部分もあり、下りも狭いヘアピンやテクニカルなコーナーが続く難コースだ。

三重県鈴木英敬知事(左)、いなべ市日沖靖市長(右)もセレモニーランに参加三重県鈴木英敬知事(左)、いなべ市日沖靖市長(右)もセレモニーランに参加 photo:Hideaki.Takagi4賞ジャージが阿下喜駅前に並ぶ4賞ジャージが阿下喜駅前に並ぶ photo:Hideaki.Takagi


この日は雲が多めながらも晴れ。気温は24度前後まで上がったが、朝から吹き続けた強めの風により、体感的にはそれほど暑さを感じられない1日となった。

阿下喜駅前をパレードスタートし、周回コースに入ったレースは2周目に動いた。佐野淳哉(マトリックスパワータグ)のアタックに、モハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム)とメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ)のイラン勢2人が反応し、3人の逃げ集団が形成される。

2周目に形成された3人の逃げ集団2周目に形成された3人の逃げ集団 photo:Satoru.Kato2周目 狭い登り区間を行く集団2周目 狭い登り区間を行く集団 photo:Satoru.Kato


リーダージャージのアンソニー・ジャコッポ擁するアヴァンティ・アイソウェイスポーツが集団コントロールをしない事から、メイン集団との差は最大で7分まで開く。レースが中盤に入り、ランプレ・メリダと宇都宮ブリッツェンがコントロールを始めると、5周目には3分40秒まで縮まる。

4周目 最大7分もの大差をつけた逃げ集団4周目 最大7分もの大差をつけた逃げ集団 photo:Satoru.Kato3周目からはランプレ・メリダと宇都宮ブリッツェンが集団コントロールを開始する3周目からはランプレ・メリダと宇都宮ブリッツェンが集団コントロールを開始する photo:Satoru.Kato


残り2周となる7周目、逃げ集団から佐野が遅れ、イラン勢2人が先行。メイン集団ではトマ・ルバ(ブリヂストンアンカー・サイクリングチーム)が登り区間でペースアップを図り、集団が縦に長く伸びる。中切れが起きて一時20人ほどに絞られた場面もあったが、追走の足並みが揃わず、下りきったところでメイン集団は再びひとつにまとまる。

7周目 佐野が遅れてイラン勢2人になった逃げ集団7周目 佐野が遅れてイラン勢2人になった逃げ集団 photo:Satoru.Kato
逃げる2人との差が2分を切った最終周回、ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ)、ダニエルアレクサンデル・ハラミリョ(ユナイテッドヘルスケア)、オスカル・プジョル(チーム右京)、中根英登(愛三工業)の4人が追走集団を形成し、逃げる2人に1分差まで迫る。

トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー・サイクリングチーム)がメイン集団のペースをあげるトマ・ルバ(ブリヂストンアンカー・サイクリングチーム)がメイン集団のペースをあげる photo:Satoru.Katoいなべステージ名物、ヘアピンの下りを行くメイン集団いなべステージ名物、ヘアピンの下りを行くメイン集団 photo:Satoru.Kato


しかし、それ以上差を詰める事が出来ず、イラン勢2人が逃げ切った。最後はラジャブルーが先着してステージ優勝。リーダージャージは2位のソフラビの手に渡った。

勝ったラジャブルーは、これまでイラン国内で開催された国際レースなどで4勝しているが、国外レースでの勝利はこれが初めて。「今日は長いレースだった。風が強くてハードだったけれど、勝ててハッピーだ。今日は力を使いすぎたので、明日はリカバリーレースにして明後日の富士山ステージに備えたい」とレース後に語った。

序盤から逃げ続けたモハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム)が優勝序盤から逃げ続けたモハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム)が優勝 photo:Satoru.Kato
ラジャブルーと一緒に逃げ切って総合首位に立ったソフラビは「首位になったのは嬉しいけれど、集団が追いついてチームメイトが勝つ予定だった」と話す。「明日はどこのチームがコントロールするのかはわからないけれど、厳しいレースになるだろう。その後の富士山ステージと伊豆ステージが重要だと考えている」と、明日以降の展望を語った。

7周目、トマ・ルバ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)らがKOMでペースを上げる7周目、トマ・ルバ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)らがKOMでペースを上げる photo:Hideaki.Takagi終盤の追走集団に乗った中根英登(愛三工業レーシングチーム)は6位でゴール終盤の追走集団に乗った中根英登(愛三工業レーシングチーム)は6位でゴール photo:Satoru.Kato


最後に形成された追走集団に入った中根は、「他の3人は回していたけれど、僕は足がいっぱいになっていたのでローテーションにあまり加われなかった。最後の3位争いのスプリントも加われず、直後に迫った集団の前でギリギリゴールした感じだった。」と、最後の場面を振り返る。

「前の2人はずっと逃げていたので、タレてくるだろうと思っていた。けれどペースが落ちなくて差が詰まらなかった。力がある事は知っていたけれど、かなり仕上げてきているんだなと感じた。」と、逃げ切ったイラン勢2人の強さを認めた。

いなべステージ優勝 モハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム)いなべステージ優勝 モハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム) photo:Satoru.Kato個人総合順位で首位になったメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ)個人総合順位で首位になったメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ) photo:Satoru.Kato


ポイント賞 ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ)ポイント賞 ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Satoru.Kato総合首位に立ったメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ)は三浦恭資氏が手掛けるMUURを使用する総合首位に立ったメヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ)は三浦恭資氏が手掛けるMUURを使用する photo:Satoru.Kato


前半の4ステージを終え、この後は山場のステージが続くツアー・オブ・ジャパン。総合順位のタイム差が開いてきたとは言え、1分以内の差の中に14人、3分以内には49人が詰まっている。ソフラビが言う通り、南信州ステージをタブリーズ・シャルハルダリがコントロールしない事になると、また新たな展開が生まれる可能性もある。

あるいは、最大の山場となるであろう富士山ステージを前に様子見のステージとなるのか。確かなのは、雨のレースにはならないと言う事くらいだろうか。

<結果>
■第4ステージ 美濃(130.7㎞)
1位 モハンマド・ラジャブルー(ピシュガマン・サイクリングチーム) 3時間23分25秒 38.5km/h
2位 メヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ) +0秒
3位 ダニエルアレクサンデル・ハラミリョ(ユナイテッドヘルスケア) +49秒
4位 ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ)
5位 オスカル・プジョル(チーム右京)
6位 中根英登(愛三工業レーシングチーム)
7位 ダヴィデ・チモライ(ランプレ・メリダ)
8位 ロビー・ハッカー(アヴァンティ・アイソウェイスポーツ)
9位 窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)
10位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー・サイクリングチーム)

■個人総合順位 第3ステージ終了時点
1位 メヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ) 9時間39分51秒
2位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ・アイソウェイスポーツ) +40秒
3位 ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ) +45秒
4位 窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ) +50秒
5位 ダニエルアレクサンデル・ハラミリョ(ユナイテッドヘルスケア) +51秒
6位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +52秒
7位 ロビー・ハッカー(アヴァンティ・アイソウェイスポーツ) +54秒
8位 オスカル・プジョル(チーム右京)
9位 アルヴィン・モアゼミ(ピシュガマン・サイクリングチーム) +55秒
10位 キャメロン・バイリー(アタッキ・チームグスト) 

■個人総合ポイント順位
1位 ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ) 50p
2位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ・アイソウェイスポーツ) 47p
3位 窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ) 35p

■山岳賞総合順位 
1位 メヘディ・ソフラビ(タブリーズ・シャハルダリ) 10p
2位 ベナム・マレキ(タブリーズ・シャハルダリ) 10p
3位 サム・クローム(アヴァンティ・アイソウェイスポーツ) 8p

■チーム総合順位
1位 ピシュガマン・サイクリングチーム 29時間01分40秒
2位 タブリーズ・シャハルダリ +03秒
3位 アヴァンティ・アイソウェイスポーツ +31秒


photo&text:Satoru.Kato
photo:Hideaki.Takagi

最新ニュース(全ジャンル)