2日間の「2days race in木祖村」が5月28日から29日に開催された。アマチュアレーサー本格的なステージレースを体験できるように、というコンセプトを持つ本大会の模様をレポートする。



2日目は朝から良く晴れた。味噌川ダムを横目に集団が行く2日目は朝から良く晴れた。味噌川ダムを横目に集団が行く photo:Satoru.Kato
雪が残る駒ヶ岳を遠くに望む雪が残る駒ヶ岳を遠くに望む photo:Satoru.Kato個人タイムトライアルは、1人に1台チームカーが付けられる個人タイムトライアルは、1人に1台チームカーが付けられる photo:Satoru.Kato「2days race in木祖村」は、2日間3ステージで行われるステージレース。テクニカルガイドの冒頭に「特定上位選手を除いた選手に本格的なステージレース参加機会を提供する」とある通り、クラブチームのアマチュアレーサーを対象とした大会だ。

具体的には、UCIコンチネンタル登録をしていないチーム・選手。又は、UCI登録をしていても、同時期に開催されている国際レース(ツアー・オブ・ジャパン)に出場していないチーム・選手とされている。実業団レースでいえばP1クラスタとE1クラスタの中間と言ったところだ。アマチュアレーサー対象とは言え、全日本選手権の出場資格獲得大会でもある。

会場は長野県中部にある木祖村。味噌川ダムのある奥木祖湖を囲む1周9kmの一般公道をコースとし、周回数や距離を変えて3ステージを設定する。極端なアップダウンや急勾配は無いものの、見通しが悪く道幅が狭いS字カーブが連続するテクニカルなコース。個人タイムトライアルはおよそ1周の8.5km、初日ロードレースは9周81km、2日目ロードレースは14周126km。総距離215.5kmのステージレースとなる。

この大会にはいくつかの特色がある。個人タイムトライアルでは、選手1人にチームカー1台を必ず付けること、ジャージを揃えれば混成チームでも出場可能なこと、初日に失格となった選手を対象として、2日目朝にコンソレーションレース(通称残念レース)があることなど。特に残念レースは、インターハイ予選となるジュニアとの混走レースとなるが、8周72kmのレースで、周回賞もあり、入賞すれば賞金も設定されている。

今年の大会には33チーム155人が出走。昨年覇者の高岡亮寛擁するイナーメの他、那須ブラーゼンや、ニールプライド南信スバルなどがエントリーした。(※レポート内の選手のチーム名は、この大会にエントリーするチーム名であり、普段の所属チーム名と異なる場合がある)



1日目:TTのタイム差を逆転した高岡亮寛がリーダージャージ獲得

個人タイムトライアル 2位の風間博之(グリーンウォークライド)個人タイムトライアル 2位の風間博之(グリーンウォークライド) photo:Satoru.Katoステージ1b レース終盤に登りでペースアップする高岡亮寛(イナーメ)ステージ1b レース終盤に登りでペースアップする高岡亮寛(イナーメ) photo:Satoru.Katoステージ1b 高岡を振り切って水野恭兵(チームやまなし)が優勝 ステージ1b 高岡を振り切って水野恭兵(チームやまなし)が優勝  photo:Satoru.Kato初日の天気は曇り。雨こそ降らなかったものの、肌寒さを感じる1日となった。

最初に行われたステージ1aの個人タイムトライアルは、ゲゼ・ブルノ(ニールプライド南信スバル)が、11分34秒で首位。5秒差の2位に風間博之(グリーンウォークライド)、10秒差の3位に高木三千成(那須ブラーゼン)がつける。

タイムトライアルが終わるとすぐにステージ1bのロードレースが行われる。コース約1周回するローリングからリアルスタートが切られるとペースが上がり、曲がりくねったコースもあって集団が長く引き伸ばされる。

アタックと吸収を繰り返し、5周目に8人の逃げ集団が形成された。メンバーは、米谷隆志(グリーンウォークライド)、横塚浩平(レモベルマーレレーシングチーム)、半澤雄高(リンク東北)、高田雄太(ブラックウォークライド)、鶴岡慶太(ワイズロード/CDJ)、下島将輝(那須ブラーゼン)、水野恭兵(チームやまなし)、高岡亮寛(イナーメ)。

6周目に高田が遅れて7人になるが、メイン集団との差は1分以上を維持。最終周回に入る直前、登りで高岡がペースアップすると、ついて行けたのは水野と下島、鶴岡の3人のみ。最後は水野と高岡の争いとなり、僅差ながら水野が先着した。

総合争いは、首位のブルノが1分以上遅れたためリーダージャージを守れず。下島と高岡が同タイムで並び、タイムトライアルの順位が上だった高岡が総合首位となった。7秒差の3位に、ステージ1b優勝の水野がつけた。

昨年の覇者でもある高岡は、「残り3周あたりで電動変速のバッテリーが切れて、フロントがインナーしか使えなくなってしまっていた。」とレース後に打ち明ける。「終わったと思ったけど、なんとか走れたので良かった。明日はリーダーを守れるように出来るだけ頑張りたい」と、コメントした。



2日目:三つ巴のリーダー争いを水野が制する

ステージ2 ダム湖周囲の曲がりくねったコースを行く集団 ステージ2 ダム湖周囲の曲がりくねったコースを行く集団  photo:Satoru.Kato
ステージ2 高岡亮寛(イナーメ)は序盤から積極的に動き、自ら逃げ集団形成のきっかけを作ったステージ2 高岡亮寛(イナーメ)は序盤から積極的に動き、自ら逃げ集団形成のきっかけを作った photo:Satoru.Katoステージ2 レース終盤、ゲゼ・ブルノ(ニールプライド南信スバル)が仕掛けるステージ2 レース終盤、ゲゼ・ブルノ(ニールプライド南信スバル)が仕掛ける photo:Satoru.Katoステージ2 才田直人(レモベルマーレレーシング)がアタックするも、総合上位勢は冷静ステージ2 才田直人(レモベルマーレレーシング)がアタックするも、総合上位勢は冷静 photo:Satoru.Katoステージ2 水野恭兵(チームやまなし)が総合優勝を決める勝利ステージ2 水野恭兵(チームやまなし)が総合優勝を決める勝利 photo:Satoru.Katoステージ2 学生で唯一逃げ集団で奮闘した杉野元基(駒澤大学Z改)は6位ステージ2 学生で唯一逃げ集団で奮闘した杉野元基(駒澤大学Z改)は6位 photo:Satoru.Kato2日目のステージ2は、14周126㎞のロードレース。前日の肌寒い曇りから一転して朝から晴れ。朝方は10度台だった気温は、レースがスタートする昼頃までには20℃以上まで上昇した。

タイム差なしでリーダージャージを着る高岡は、レース序盤から積極的に動いた。4周目に高岡、下島、水野ら、総合上位勢を含む14人の逃げ集団が形成される。メイン集団との差は、レース中盤までに1分まで開く。

このまま逃げ切りかと思われた7周目、タイム差が一気に詰まり、メイン集団が逃げを吸収。入れ替わりで新たに11人の逃げ集団が形成される。メンバーは高岡、下島、水野に加え、初日にリーダージャージを失ったブルノら。メイン集団との差は1分以上に開き、逃げ切りが決定的となる。高岡は「足が攣り動かなくなってしまった」と一時遅れたものの、その後に復活してくる。

10周目、ブルノが登り区間でアタックすると、水野が反応して2人が先行する。差は10秒ほどまで開くが、1周もたずに吸収。ブルノは11周目にも同じ場所で仕掛ける。今度は西尾が飛びつくが、やはり1周もたずに吸収される。「彼は何度も仕掛けていたが、放っておけば落ちてくると思っていた」と、この動きを冷静に見ていた高岡は、12周目に自ら動く。ここまでの動きで総合上位3人は誰も遅れず、最終周回へと入った。

残り500mからは、高岡、下島、水野の3人による総合優勝をかけた仕掛け合いが始まる。ゴールに先頭で現れたのは水野。直後に高岡、下島と続き、前日のリプレイを見ているかのようなゴールとなった。

この結果、水野が途中のボーナスタイムとゴールのボーナスタイム計17秒を獲得し、大逆転で総合優勝。途中、ボーナスタイムでバーチャルリーダーだった下島は高岡と同タイムながらも、順位差で3位。接戦が続いた2日間が終わった。

2年ぶりに総合優勝した水野。普段は那須ブラーゼンに所属しているが、今回は「チームやまなし」の一員としてエントリー。「ブラーゼンの若手に経験を積んでもらうため、自分は地元山梨県チームから出場したんです」と話す。

「今回はタイムトライアルで失敗したが、ロードレースで7秒差まで挽回できたので、いけそうだと思っていた。ゴール勝負には自信があったので前日と同じように仕掛けました。自分が思った通りのレースが出来たので嬉しい。2年前はがむしゃらに走って勝った感じでしたが、今回は余裕を残して考えて走る事が出来た。強くなった事を実感出来たレースだった」と、2日間の成果を語った。

一方、連覇を逃した高岡は、「残念ではあるけれど、力通りの結果」と話す。「今回は若手2人に力負けしてしまった。今の自分ではこんなものかなと受け止めている。」と、結果について冷静に語った。それでも普段プロチームに所属する2人を相手に、最後まで積極的に戦った姿勢は大きな注目を集めた。

開催地の木祖村は、長年開催しているこの大会を歓迎しており、来年は新たな試みが計画されているという。ステージレースを経験出来る機会として、来年もこのレースの開催に期待したい。

個人総合上位3人によるシャンパンファイト個人総合上位3人によるシャンパンファイト photo:Satoru.Kato
女子1位 今井美穂女子1位 今井美穂 photo:Satoru.Katoコンソレーションレース&ジュニアは、高校生の蠣崎優仁(伊豆総合高校)が優勝コンソレーションレース&ジュニアは、高校生の蠣崎優仁(伊豆総合高校)が優勝 photo:Satoru.Kato




2days race in 木祖村2016結果
個人総合成績

1位 水野恭兵(チームやまなし) 5時間21分48秒
2位 高岡亮寛(イナーメ) +6秒
3位 下島将輝(那須ブラーゼン) 
4位 ゲゼ・ブルノ(ニールプライド南信スバル) +1分46秒
5位 杉野元基(駒澤大学Z改) +2分59秒
6位 青木俊二(グリーンウォークライド) +3分2秒

スプリント賞
1位 阿部航大(Honda栃木レッド) 15p
2位 高岡亮寛(イナーメ) 10p
3位 半澤雄高(リンク東北) 6p

O-40(オーバー40)賞
1位 ステファノ・ヨルダン(チームやまなし) 5時間28分13秒

U23賞
1位 杉野元基(駒澤大学Z改) 5時間24分47秒

コンソレーションレース&ジュニア(29日開催 72㎞)
1位 蠣崎優仁(伊豆総合高校) 1時間52分49秒
2位 西寅太郎(ニールプライド南信スバル) +7秒
3位 小嶋渓円(ブラックウォークライド) +11秒

女子(29日開催 45㎞)
1位 今井美穂 1時間17分26秒

text&photo:Satoru.Kato