8日間の戦いを締めくくる集団スプリントでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が勝利。23歳のジュリアン・アラフィリップがツアー・オブ・カリフォルニアの総合優勝に輝いた。



スタート前、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が紹介を受けるスタート前、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が紹介を受ける photo:www.amgentourofcalifornia.com


レースをコントロールするディメンションデータレースをコントロールするディメンションデータ photo:www.amgentourofcalifornia.comハイペースに集団が縦に引き伸ばされるハイペースに集団が縦に引き伸ばされる photo:www.amgentourofcalifornia.comトム・ボーネン(ベルギー)に守られて走るジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)トム・ボーネン(ベルギー)に守られて走るジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:www.amgentourofcalifornia.com集団前方に位置とって周回をこなすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)集団前方に位置とって周回をこなすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:www.amgentourofcalifornia.com最終スプリント。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が伸びる最終スプリント。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が伸びる photo:www.amgentourofcalifornia.comいよいよ8日間のツアー・オブ・カリフォルニア(UCI2.HC)も最終日。州都サクラメントを舞台としたスプリントステージがこれまでの戦いを締めくくる。今大会で最も短い138kmコースは完全なる平坦路で、最後はサクラメント中心部に敷設された1周3.5kmの特設コースを3周してゴールへとなだれ込む。

スプリントが予想されたこの日、アラン・マランゴーニ(イタリア、キャノンデール)やアメリカのコンチネンタルチームが全て入った7名の逃げグループが果敢にもエスケープ。しかしマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の勝利を狙うディメンションデータとエティックス・クイックステップの徹底したコントロールによってタイム差は2分程度に抑え込まれた。

集団内では路面の穴を発端としてアイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)とデニス・ファンウィンデン(オランダ、ロットNLユンボ)が絡む落車が発生したものの、特に大きな被害は無し。どこか落ち着きの無い集団ではディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)も落車したが、いずれも集団に復帰している。

周回コースに突入する頃にはタイム差も1分ほどとなり、前を行く7名とメイン集団は互いにフルスロットル。残り10kmを切るとティンコフが先頭を率い、その後ろにカチューシャやロットNLユンボ、ディメンションデータらがまとまって続く展開で距離を減らしていった。

ペースの上がった集団内では動きの余波を受けた選手たちが集団落車を起こし、果敢な走りで総合5位になっていた19歳のニールソン・パウエルス(アメリカ、アクセオン・ハーゲンス・ベルマン)や総合8位ローレンス・テンダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、総合13位のピーター・ステティーナ(アメリカ、BMCレーシング)が巻き込まれる事態に。復帰した選手たちは追走を企てたものの、スプリントに向けて加速を続けるメイン集団に追いつくことは叶わなかった。

最後まで逃げグループで粘ったマランゴーニたちは最終盤に吸収され、縦に伸びきったメイン集団はアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)を従えたカチューシャを先頭に最終ストレートに進入。ポイント賞リーダーのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の加速をきっかけにスプリントが幕を開ける。

早駆けしたサガンに対して、左からカヴェンディッシュ、右からクリストフが並びかける。3者横並びの状態から抜け出したのは、一際低い姿勢で突き進んだのはカヴェンディッシュ。「以前勝ったことがあるのでこのフィニッシュの攻略ポイントは分かっていた。サガンの番手に付けていたので好位置をキープできたんだ」と語るカヴが1か月ぶり以上となる今季4勝目を収めた。

そして総合リーダーのジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)は集団前方でゴールに飛び込む、カヴェンディッシュの後ろでガッツポーズ。昨年サガンにボーナスタイム差で敗れた23歳が悔しさを晴らす総合優勝を手に入れることに。



今シーズン4勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)今シーズン4勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:www.amgentourofcalifornia.com
チームスタッフに祝福を受けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)チームスタッフに祝福を受けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:www.amgentourofcalifornia.com祝福を受けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 祝福を受けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)  photo:www.amgentourofcalifornia.com




総合優勝を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)総合優勝を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:www.amgentourofcalifornia.com賞品のレクサスに乗り込むジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)賞品のレクサスに乗り込むジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:www.amgentourofcalifornia.com出走サインを行う與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント)出走サインを行う與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント) 女子レースのスプリントを制したクリステン・ワイルド(オランダ、ハイテックプロダクツ)女子レースのスプリントを制したクリステン・ワイルド(オランダ、ハイテックプロダクツ) photo:www.amgentourofcalifornia.com「自分のキャリアの中で最も美しい瞬間。僕を信じてサポートしてくれたチームメイトに感謝したい」と語るアラフィリップ。「今日は誰もが位置取りのために動きストレスの掛かる一日だった。普段なら全く緊張しないけれど、勝利が近づくにつれて緊張感も高まっていた。特に集団内で僕を守ってくれたボーネンの動きは凄かったよ。休日を過ごしているかのようにリラックスできていた。しばし優勝の喜びに浸って、帰宅したら未来に向けたトレーニングを開始したい」とアラフィリップは加える。

またこの日は事故から復帰しているジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が5位に入る一方、終盤に足止めを強いられたパウエルスやテンダムは49秒遅れでフィニッシュする結果に。それぞれ順位を落としたものの、パウエルスは総合9位にとどまりヤングライダー賞1位に輝いている。

ワールドツアーとして開催された女子レースもこの日最終ステージを迎えており、與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント)はトップと同一集団でゴールし、総合21位で初のワールドツアーレースを終えた。ステージ優勝はクリステン・ワイルド(オランダ、ハイテックプロダクツ)、総合優勝はUSナショナル王者のメーガン・ガルニエ(ボエルス・ドルマンス)だった。以下に與那嶺のコメントを紹介する。

「チームミーティングではこのレースはショーレースなので楽しんで戦おう。とのことでした。武井コーチとの作戦では、レース1時間経過後から積極的に攻める。これを目的としてレースに向かいました。

ワールドクラスのクリテリウムレースということで、今まで私が経験したアメリカUCIレースに比べ、さらに一段階スピードもコーナーワークもレベルが上がる中での戦いとなりました。自分の課題としていた、前で展開を行うことが全くできず、終始苦しく緊張したレースとなりました。

落車も多く、チームメイトも3名巻き込まれてしまい、危険と隣り合わせのレース展開の中、無事になんとか完走することが出来ました。クリテリウムではまだまだ学ぶことが沢山あり、悔しい思いをしました。コースサイドでは在住の日本人の方たちから沢山の応援を頂き、大変力になりました。ありがとうございます。

初めてのUCIワールドツアー。沢山の経験と悔しさを味わうことが出来ました。総合順位については、チームタイムトライアルを上手くこなすことが出来ればワールドツアーにおいてもトップ10を狙えることは十分に理解できました。この場に立てる喜びを感じながら、次のワールドツアーレースに進みます。今後とも、よろしくお願いします」。



ツアー・オブ・カリフォルニア2016第8ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)        3h01’12”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
4位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
6位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
7位 ジェンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
8位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)
9位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 トラヴィス・マカベー(アメリカ、ホロウェスコ)

個人総合成績
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)
4位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデールプロサイクリング)
5位 ローソン・クラドック(アメリカ、キャノンデールプロサイクリング)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ジョージ・ベネット(ニュージランド、ロットNLユンボ)
8位 ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー、カチューシャ)
9位 ニールソン・パウエルス(アメリカ、アクセオン・ハーゲンス・ベルマン)
10位 ローレンス・テンダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
31h47’50”
+21”
+43”
+52”
+1’22””

+1’50”
+1’53”
+1’57”
+2’133”


ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)

山岳賞
1位 エヴァン・ハフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 

ヤングライダー賞
1位 ニールソン・パウエルス(アメリカ、アクセオン・ハーゲンス・ベルマン)

チーム総合成績
1位 BMCレーシング

text:So.Isobe
photo:www.amgentourofcalifornia.com