女子レースと同日開催となったツール・ド・ヨークシャー第2ステージは大集団によるスプリントに。残り2kmから突如降り始めた大雨の中、同じ22歳のリーダージャージを抑え込んだダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)が勝利した。



山岳の登りで逃げグループをリードするリチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング)山岳の登りで逃げグループをリードするリチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング) photo:Kei Tsuji
朝8時前、スタート地点にやってきた萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)朝8時前、スタート地点にやってきた萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsujiアルカンシェルを着るリジー・アーミステッド(イギリス、イギリスナショナルチーム)アルカンシェルを着るリジー・アーミステッド(イギリス、イギリスナショナルチーム) photo:Kei Tsuji


山岳の登りで逃げグループをリードするリチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング)山岳の登りで逃げグループをリードするリチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング) photo:Kei Tsuji「1日に1年間の季節が詰め込まれている」とはよく言ったもので、ヨークシャー地方は寒暖の差が激しく、晴れたと思ったら次の瞬間に大雨が降るような不安定な天候が続く。

ロットNLユンボ率いるメイン集団が急勾配の登りを進むロットNLユンボ率いるメイン集団が急勾配の登りを進む photo:Kei Tsuji明け方の気温は0度に近く、昼間の最高気温は15度近くまで上がる。どれだけピーカンの快晴でも、辺りを見渡せばどこかに雨のカーテンがかかっている。ヨークシャー地方中部のオトリーからドンカスターまで136.5kmにわたって走る第2ステージは運良く雨雲を避けるようにして進んだが、最後の最後で大雨に祟られることとなる。

男子レースの第2ステージに先立って、同じ136.5kmコースを使用して午前中に女子レースが開催。スタート地点オトリー(人口14000人)出身で世界チャンピオンのリジー・アーミステッド(イギリス)のほか、全日本チャンピオンの萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)も出場した。

アルカンシェルを着るアーミステッドはレース後半に逃げを打ったが、フィニッシュ手前で吸収され、集団スプリントでクリスティン・ウィルド(オランダ、ハイテックプロダクツ)が優勝。2位に入ったルーシー・ガーナー(イギリス)のために長時間集団を牽引した萩原はトップと同タイムの35位でフィニッシュしている。萩原は5月のツアー・オブ・カリフォルニアに出場予定だ。



メイン集団はロットNLユンボが徹底的にコントロールメイン集団はロットNLユンボが徹底的にコントロール photo:Kei Tsuji
逃げるミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)ら6名逃げるミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)ら6名 photo:Kei Tsuji逃げグループを率いるミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)逃げグループを率いるミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ) photo:Kei Tsuji
ヨークシャーの観客に見守られながらレースは進むヨークシャーの観客に見守られながらレースは進む photo:Kei Tsuji


大勢の観客が詰めかけたコースを進む大勢の観客が詰めかけたコースを進む photo:Kei Tsujiフィニッシュ地点ドンカスターから大会関係車両が一斉にスタート地点オトリーに引き返し、午後2時15分にツール・ド・ヨークシャー第2ステージがスタート。開始早々ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)ら6名の逃げが形成されたものの、ロットNLユンボ率いるメイン集団がタイム差を1分〜1分半に抑え込み、単発的に登場するヨークシャーらしい急勾配の短い登りを越えていく。

突如降り始めた雨の中で繰り広げられたスプリント突如降り始めた雨の中で繰り広げられたスプリント photo:Kei Tsujiこの日はレース中継に使用される(バイクからの電波を受信する役割を担う)航空機が故障したため、イギリス全土で放映予定だったライブ中継が行われず。ツール・ド・フランスなどのビッグレースでも使用実績のあるASOの機体だったが、修理後に再び故障でストップ。そのためレース中継はフィニッシュ手前の1時間弱に制限されることになる。

フェンス際ぎりぎりを突き進むダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)フェンス際ぎりぎりを突き進むダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji残り10kmを切って逃げを吸収したメイン集団はオリカ・グリーンエッジやロットNLユンボ、BMCレーシングを先頭にドンカスターの街に突入する。そこまで時折通り雨に降られながらも概ね天気が味方していたが、残り2kmを切ったところで大雨が降り始める。突然の雨によって完全に路面が濡れた状態でスプリントが始まった。

誰も勝利を確信出来ずにそのままフィニッシュラインを通過する誰も勝利を確信出来ずにそのままフィニッシュラインを通過する photo:Kei TsujiロットNLユンボとオリカ・グリーンエッジがそれぞれエーススプリンターのためにトレインを組んだが、いずれも最終発射を待たずして形を崩す。クリス・オピー(イギリス、ワンプロサイクリング)の早掛けに反応したファンポッペルがフェンス際の隙間をこじ開けて先頭へ。前日の優勝者でリーダージャージを着るディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が追い上げるも、ファンポッペルがフィニッシュラインまで踏み抜いた。

僅差のスプリントを制したダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)僅差のスプリントを制したダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsujiともに1993年生まれ(22歳)でオランダ出身のファンポッペルとフルーネヴェーヘンがハンドルを投げ込む。両者ともに勝利を確信できずにフィニッシュラインを素通りしたが、写真判定の結果、ファンポッペルのステージ優勝が決まった。

「今日はチームとしてモチベーション高く勝負に挑んだ。まず最初にチームワークを讃えたい。残り2kmを切ってから大雨が降り始めたので混沌としたスプリントだったよ。最後はディラン(フルーネヴェーヘン)と競り合う形になったけど絶対に勝てると思っていた。とにかく最後の数分間の攻防はとても激しかった」とファンポッペルは雨のスプリントを振り返る。

ヴァカンソレイユ時代の2013年に19歳の若さでツール・ド・フランスに出場し、2015年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾ったファンポッペル。今季トレックファクトリーレーシングから移籍したダッチスプリンターがチームスカイジャージでの初優勝を飾った。「膝を痛めていたので、まだこれが今シーズン9〜10レース目。辛い状況を乗り越えた今、復調を証明するためにもこの勝利が必要だった。チームスカイでの初勝利をとても嬉しく思う」とコメントしている。

リーダージャージは変わらずフルーネヴェーヘンがキープ。逃げに乗ったリチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング)がチームメイトから山岳賞ジャージを引き継ぐことに成功している。ツール・ド・ヨークシャーは残り1ステージ。最終日はカテゴリー山岳が6つ設定された今大会最難関ステージだ。



ステージ優勝を飾ったダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)ステージ優勝を飾ったダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsujiステージ2位のディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)がリーダージャージをキープステージ2位のディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)がリーダージャージをキープ photo:Kei Tsuji



ツール・ド・ヨークシャー2016第2ステージ結果
1位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)            3h04’20”
2位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
4位 クリス・オピー(イギリス、ワンプロサイクリング)
5位 ロイック・シェトゥー(フランス、コフィディス)
6位 アルベルト・トレス(スペイン、チームラレー)
7位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
8位 クリストファー・ローレス(イギリス、JTLコンドール)
9位 ラッセル・ダウニング(イギリス、JTLコンドール)
10位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)

個人総合成績
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)       8h13’15”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)             +06”
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)          +08”
4位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        +10”
5位 ステイン・スティールス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
6位 グルフッド・ルウィス(イギリス、マディソンジェネシス)          +12”
7位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)              +13”
8位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)           +14”
9位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)          +15”
10位 リチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング)

ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)

山岳賞
1位 リチャード・ハンドレー(イギリス、ワンプロサイクリング)

text&photo:Kei Tsuji in Doncaster, UK