イタリアで20年以上に渡ってカーボンバイクの開発と製造に携わってきたエキスパートが、自らの理想を追求すべく立ち上げた新興ブランド「KEMO(ケモ)」。2014年のツール・ド・フランスを走ったプロユースのエアロ系モデル「KE-R5」をインプレッションした。



ケモ KE-R5ケモ KE-R5 photo:Makoto.AYANO
2014年に創業したばかりの「KEMO(ケモ)」は、設計はスイスで製造はイタリアという独自の形態を取る新進気鋭のバイクブランド。ケルト語で「風の中で踊る」という意味の単語を冠した同ブランドの創業者は、イタリアで「カーボンバイクのエキスパート」として知られるエルマンノとマリオのコマリ兄弟である。

コマリ兄弟はフレーム素材の主流が金属であった1990年代中盤ごろよりカーボン素材の可能性に着目し、2001年のミラノショーにおいて発表したカーボンバイクで一躍注目の的に。その後も次々と高性能なレーシングバイクを開発してきた。

縦横比の大きな翼断面形状を採用するシートチューブ縦横比の大きな翼断面形状を採用するシートチューブ ダウンチューブが逆三角形断面としたダウンチューブが逆三角形断面とした 翼断面形状のフロントフォーク翼断面形状のフロントフォーク


そんなカーボンのエキスパートが新ブランドを立ち上げたのは、自らの理想を追求するため。ケモの高性能は直ぐさまプロチームの間で話題となり、創業したその年にはブルターニュ・セシェ(現フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)と共にツール・ド・フランス初出場を果たした。その際にチームに選ばれたバイクの1つが、今回インプレッションを行う「KE-R5」だ。

ラインアップ中の「KE-R5」の位置づけは、オールラウンドモデル「KE-R8 5KS」と「KE-R8 4KS」に次ぐサードグレード。上位グレードと同じくスイスで設計され、技術力に優れるイタリアの工房にてハンドメイドされている。なお、「KE-R5」の下位グレードにあたる「KE-R4」は、共通形状でカーボンが異なる兄弟モデルだ。

ブランド名の頭文字「K」をモチーフとしたケモのロゴブランド名の頭文字「K」をモチーフとしたケモのロゴ トップチューブとダウンチューブの間は、リブで補強されたような形状となっているトップチューブとダウンチューブの間は、リブで補強されたような形状となっている

設計はスイスで行われる設計はスイスで行われる シートチューブの外側を周りトップチューブへと接続する独自のシートチューブ形状シートチューブの外側を周りトップチューブへと接続する独自のシートチューブ形状


モノコック構造をとるフレームの素材には、40TクラスのHMカーボンを採用し、カーボンバイクのエキスパートであるコマリ兄弟が持つ経験やノウハウに基づいたレイアップを施しているという。そして昨今のフレームとしては珍しく全体的にマッシブな設計で、各交点は複雑な形状となっている。

ダウンチューブは、空気抵抗を低減するために逆三角形断面をとる。ボリューミーなBBには、上位グレード「KE-R8」と同様にBB386規格を適用し、各チューブとの接続部の面積を拡大。そしてコマリ兄弟が設計したバイクの多くに見られる、長方形断面とされたシートステーのBB側は「KE-R5」にも見られる。これらの造形により不要なしなりを抑え、ペダリングロスを低減した。

素材には40Tクラスのハイモジューラスカーボンを採用する素材には40Tクラスのハイモジューラスカーボンを採用する BB側にボリュームを持たせたチェーンステーBB側にボリュームを持たせたチェーンステー


快適性を担うシートチューブは、内側に緩やかにベンドさせ、シートチューブの外を回ってトップチューブに接続させることで、振動吸収性を確保。シートチューブとシートポストは、縦横比の大きな翼断面とし、エアロダイナミクスを高めた。

下側ベアリング径を1-1/2インチとしたテーパードヘッドチューブは、上端に面取りを施すことで、上方に位置するヘッドパーツとのスムーズな繋がりを実現。トップチューブとダウンチューブの間の内角は、リブで補強をされた様な形状とされている。

シートチューブは非常に薄いシートチューブは非常に薄い BB386規格を採用するマッシブなボトムブラケットシェルBB386規格を採用するマッシブなボトムブラケットシェル 緩やかに内側へとベントしたシートステー緩やかに内側へとベントしたシートステー


組み合わせるフロントフォークは、フレームと同じく40Tクラスのハイモジュラスカーボン製。ブレードは翼断面形状をとり、ショルダー部を幅広とすることで、ステアリングの安定性を高めた。

サイズはXXS、XS、S、M、L、XLの6種類展開。重量はフレーム単体が1,122g(Sサイズ)、フロントフォークは348gだ。カラーはネオンカラーを含むカーボンブラック、カーボンホワイト、カーボングリーン、カーボンイエロー、カーボンオレンジの5色がラインアップされる。

販売パッケージはコンポーネントの異なる5種類の完成車とフレームセットの計6種類。完成車の場合はコンポーネントはシマノDURA-ACE、ULTEGRA、105から選択可能だ。またホイールについてもシマノWH-9000 C35 CL(DURA-ACEコンポの場合のみ)、WH-6800(ULTEGRAコンポの場合のみ)、WH-RS11から予算や用途などに合わせて選択可能。なお今回は、コンポーネントをシマノULTEGRA、ホイールをシマノWH-RS81-C24-CLとした試乗車でインプレッションを行った。



ー インプレッション

「オールラウンドな乗り味のエアロロード ホイールによって様々な使い方に対応してくれる」
早坂賢(ベルエキップ)


KE-R5は一言で表すならば、オールラウンドモデル寄りのエアロロード。乗り味的にも重量的にもどっしりしたものが多いエアロロードにあって、今回テストしたKE-R5も重量的に決して軽いわけではないのですが、踏み出しから軽快さを感じることができます。また、ホイールを変えることでクリテリウムからロングライドまで幅広いシチュエーションに対応してくれる懐の深い1台といえるでしょう。

「オールラウンドな乗り味のエアロロード ホイールによって様々な使い方に対応してくれる」 早坂賢(ベルエキップ)「オールラウンドな乗り味のエアロロード ホイールによって様々な使い方に対応してくれる」 早坂賢(ベルエキップ) 剛性は程よくバランスが取れている印象です。BB386規格を採用したボリューミーなBB付近の硬さが目立ちますが、ガチガチというわけでわありません。そこから繋がるチェーンステーも太いのですが、積層や肉厚を調整して横方向にウィップさせている印象を受けました。

このウイップは巡航性能へと繋がっており、踏めば踏んだ分だけ進んでくれます。高速域での巡航性に重きを置いたエアロロードが多い中にあって、KE-R5の場合は低速でも優れた巡航性を感じることができました。巡航では重いギアを踏むよりも、ケイデンス高めの方がバイクに合っている印象で、回せる方であればケイデンス100rpm以上でも良いくらいですね。

同様に加速性能も高いレベルにあり、こちらは重いギアでも、ケイデンス高めでも、一気にスピードが伸びてくれます。下りは、ボリューミーな見た目通りに安心感のあるフロントフォークのお陰で、高速域でも不安感なくこなすことができました。ただし、基本的には直進安定性が高いものの、曲がろうとするとオーバーステア気味になり、ギュッと切り込んでいく印象があるため、慣れが必要といえるでしょう。

登りは、ギアが重めでも軽めでも、シッティングの方が合っていると感じました。優れた剛性バランスと空気抵抗の少なさのお陰で、緩斜面はアウターでもグイグイと進むことができます。ダンシングは少々もたつく様な印象がありますが、短時間で加速したい時には問題ないレベルです。

「ボリューミーなBB付近の硬さが目立つものの、程よい剛性感に仕上がっている」「ボリューミーなBB付近の硬さが目立つものの、程よい剛性感に仕上がっている」 快適性については、やはりエアロロードとあって縦剛性が高く、振動を拾いやすいのは確かです。これは、同形状でカーボンが違う下位グレードのKE-R4にも共通するところ。しかし、シマノWH-RS81-C24の様な快適性の高いホイールを組み合わせることで大きく改善できる範疇であり、ロングライドにも対応してくれます。ロードレースやクリテリウムに使うのであれば、持ち味である巡航性や加速性を更に高めるべく、フルクラムのRacing Zeroを始めとした高剛性なアルミホイールや、エアロホイールを装着したいですね。

フレームセットで26万円ならばお買得といえるでしょう。性能的には30万円以上でもおかしくない程ですから。シマノULTEGRAコンポにWH-RS11ホイールを組み合わせた完成車で37万というのも良心的な価格設定ですね。総じて、2台目にエアロロードが欲しいという方、レースからロングライドまで様々な使い方ができる1台を探している方、他人とは違うバイクが欲しいと言う方にオススメです。

「優れたトラクション性能が持ち味 ロードレースからロングライドまでをカバーする万能バイク」
寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)


KE-R5の最大の持ち味はリアのトラクション性能の高さですね。ただ硬いだけのバイクですと、荒れた路面での登坂やスプリント、疲労が溜まってきてペダリングが雑になってきた時に、トラクションが抜けてしまうことがありますが、そういった場面でもKE-R5はピタッと地面に喰いついてくれます。恐らく、カーボンの積層や緩やかにカーブしたシートステーによって衝撃をいなしているのでしょう。

ただ、いわゆるエンデュランス系モデルとは異なり、レーシングバイク然とした剛性を持っています。踏んでから、少し溜めがあって、じわっと推進力に変わる印象がありました。クリテリウムの様な短距離レースはパリッとしていてダイレクト感のあるバイクに譲りますが、KE-R5の味付けは長距離のロードレースやハイテンポなロングライドで活きてくるはず。ペダリングに対する許容度も高く、どんな踏み方をしても素直にバイクが前に出てくれます。

「優れたトラクション性能が持ち味 ロードレースからロングライドまでをカバーする万能バイク」 寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)「優れたトラクション性能が持ち味 ロードレースからロングライドまでをカバーする万能バイク」 寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)
振動吸収性は、エアロロードだからといって低いということはありません。リアに対して、フロントの突き上げがやや大きいかなと感じましたが、レーシングバイクとしては許容できる範疇ですし、ロングライドに使っても問題レベルといえるでしょう。ハンドリングは機敏な印象で、バイクがすっと倒れて、すっと起き上がってくれます。

フレーム重量は1,100gと軽い部類ではありませんが、その分だけ精神的にも安心感があり、レースでハードに使えますね。ブランドとしての歴史は浅いですが、経験の長いデザイナーが設計したとあって、ケーブルのルーティングなど細部にも文句の付け所がありません。

この高い完成度でフレームセット価格が26万円はお買い得といえますね。完成車の価格設定も良心的で、ビギナーの方がシマノ105仕様を買って、アップグレードしながら長く乗り続けるのも良いでしょう。カラーバリエーションが豊富な点も見逃せないポイント。ホイールは、カンパニョーロBORAのような、剛性高めのエアロ系モデルとの愛称が良さそうですね。他人とは一味違うバイクが欲しい方や、エアロロードが欲しい方にオススメです。

ケモ KE-R5ケモ KE-R5 photo:Makoto.AYANO
ケモ KE-R5
フレーム素材:UD40T
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
重 量:1,122g(フレーム単体Sサイズ)、348g(フォーク)
カラー:カーボンブラック、カーボンホワイト、カーボングリーン、カーボンイエロー、カーボンオレンジ
税抜価格(カッコ内はホイール):
シマノ DURA-ACE 697,000円(WH-9000 C35 CL)、498,000円(WH-RS11)
シマノ ULTEGRA 407,400円(WH-6800)、376,000円(WH-RS11)
シマノ 105 339,000円(WH-RS11)
フレームセット 268,000円(シートピラー付属)



インプレライダーのプロフィール

早坂賢(ベルエキップ)早坂賢(ベルエキップ) 早坂賢(ベルエキップ)
欧州のプロチームでメカニックを務めてきた遠藤徹さんがオーナーを務める、宮城県仙台市のプロショップ「ベルエキップ」のスタッフ。趣味として始めたスポーツサイクルの魅力にどっぷりはまり、ショップスタッフになりたいとベルエキップの門を叩き、今年で6年目。現在は店長代理を努め、主にメカニック作業やビギナー向け走行会を担当する。普段はラーメンやコーヒーなど美味しいものを求めグルメライドを楽しむ一方で、ヒルクライムイベントに参加することも。平坦よりも登りが得意で、快適性が高くバネ感のあるソフトな自転車が好み。現在の愛車はボーマRapid-R。

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寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館) 寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)
愛知県大府市にあるシミズサイクル サイクルスポーツ本館のスタッフ。同店の最古参スタッフとして、主にロードバイクのメカニック作業や、上級者向けの走行会を担当している。高校2年生の時にスポーツバイクを始め、大学時代はサイクリング部に所属し、日本各地をツーリングする。大学時代からアルバイトとしてシミズサイクルに勤務し、大学卒業後に一般企業に2年務めたあと、現職に。脚質はクライマーで、硬めの乗り味の自転車を好む。現在の愛車はエヴァディオBacchas。

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ウェア協力:リオン・ド・カペルミュール
ヘルメット&アイウェア協力:SH+


photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto