愛三工業レーシングが最終的に主導権を握ったツール・ド・ランカウイ第7ステージの集団スプリント。爆発的に加速したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が先着し、福田真平(愛三工業レーシング)は8位に終わった。



強い日差しを避けてスタートを待つ強い日差しを避けてスタートを待つ photo:Kei Tsujiマーシャルモトのパイロットたちが朝のランニングマーシャルモトのパイロットたちが朝のランニング photo:Kei Tsuji

ニュートラル走行するプロトンニュートラル走行するプロトン photo:Kei Tsuji


地元テレビのインタビューを受けるアジアンライダー賞2位の伊藤雅和(愛三工業レーシング)地元テレビのインタビューを受けるアジアンライダー賞2位の伊藤雅和(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji逃げを試みるユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ)ら逃げを試みるユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ)ら photo:Kei Tsujiリーダージャージを着て走るレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)リーダージャージを着て走るレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsujiタイ国境近くから7日間にわたってマレー半島を南下し続けたツール・ド・ランカウイは、同半島南端のシンガポールまで約130kmに位置するパリットスロンに達した。この第7ステージのフィニッシュ地点パリットスロンと第8ステージのバトゥパハットが今大会の最南端にあたる。

第7ステージが今大会最長の202.3km。最高気温34度の暑さと太陽が照りつける環境下で選手たちは5時間近くを過ごすことになる。加えて、総合争いならびにアジアンライダー賞争いが接戦であるため、3カ所のスプリントポイントに設定されたボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)を狙ってトップチームが序盤からハイスピードレースを繰り広げた。

最初の3級山岳で積極的に攻撃を仕掛けたのはアスタナで、総合3位ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)のアタックにリーダージャージのレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)を含む総合上位陣が反応する。ロペスモレーノは3級山岳を先頭通過したが、続くスプリントポイントまで先行することは出来なかった。

先頭ではリーダージャージを含む25名の集団が形成されたものの、大人数のため統率が取れずに失速する。続いて飛び出したユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ)とゴン・ヒュソク(韓国、KSPO)、タナー・プット(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)に、ローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)やカロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)が追いついて先頭は5名。ここからデフレース、プット、ヒュソクが抜け出し、3名による長い逃げが始まった。



ディメンションデータを先頭にプロトンが進むディメンションデータを先頭にプロトンが進む photo:Kei Tsujiマレーシア国旗を手にレースを待つマレーシア国旗を手にレースを待つ photo:Kei Tsuji

逃げるローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)、タナー・プット(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)、ゴン・ヒュソク(韓国、 KSPO)逃げるローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)、タナー・プット(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)、ゴン・ヒュソク(韓国、 KSPO) photo:Kei Tsuji
202.3kmの最長ステージを走る選手たち202.3kmの最長ステージを走る選手たち photo:Kei Tsujiメイン集団を牽引するジム・ソンゲソ(南アフリカ、ディメンションデータ)メイン集団を牽引するジム・ソンゲソ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji


集団中程で固まって走る愛三工業レーシング集団中程で固まって走る愛三工業レーシング photo:Kei Tsuji


脚に水をかけながら走るポイント賞ジャージのアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)脚に水をかけながら走るポイント賞ジャージのアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji先頭でスプリントするアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)とヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)先頭でスプリントするアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)とヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト) photo:Kei Tsujiハンドルを投げ込むアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)ハンドルを投げ込むアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji僅差で連勝を逃したヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)僅差で連勝を逃したヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト) photo:Kei Tsujiリードアウト役を務めた黒枝士揮(愛三工業レーシング)リードアウト役を務めた黒枝士揮(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji8位に入った福田真平(愛三工業レーシング)8位に入った福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji大規模なアブラヤシのプランテーションが続く内陸部を5分リードで進む先頭3名と、ディメンションデータが慎重にコントロールするメイン集団。残り30kmの時点でタイム差は3分40秒。総合2分06秒遅れのデフレースがバーチャルリーダーの状態で逃げ続けたが、そのリードはフィニッシュが近づくとともに失われていく。

残り10kmからデフレースが独走したものの、メイン集団はティンコフやサウスイースト、ドラパックの牽引によってスピードアップする。デフレースが残り4kmでメイン集団に飲み込まれると、スプリンターチームを先頭に道幅のある約2kmのフィニッシュストレートに差し掛かる。各チームが競り合う中で、残り1kmアーチを切ってから先頭に出たのは愛三工業レーシングだった。

綾部勇成が黒枝士揮と福田真平を引き連れてドラパックに並ぶと、そこから黒枝が腰を上げて最後のリードアウト。黒枝の加速が終わると、リーダージャージのヤンセファンレンズバーグを引き連れる福田が残り250mからスプリントを開始する。

福田の横から加速したのは前日の優勝者ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)で、その後ろにはポイント賞ジャージのグアルディーニ。福田を抜いて先頭に立ったイタリアンスプリンター2人に、さらにもう1人イタリアンスプリンターが加わる。マレツコ、グアルディーニ、アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)の3名が横一線でハンドルを投げ込むと、グアルディーニが片手を上げた。

今大会ステージ3勝目、そして自身通算ステージ21勝目を飾ったグアルディーニ。前日に不運な形でリーダージャージを失ったアスタナに再び勝利をもたらした。

総合成績は動かず、ステージ5位でフィニッシュしたヤンセファンレンズバーグがリーダージャージをキープ。総合優勝に王手をかけたヤンセファンレンズバーグは「今日はヨハン・ヴァンジルとジム・ソンゲソがスーパースターに思えたよ。一日中ずっと、他のチームの助けをほとんど借りることなく、彼らは集団先頭に立ってひたすらコントロールしてくれた。残り1ステージ。明日もチームワークを発揮したい」とコメントしている。

愛三工業レーシングの福田は伸びずに8位。リードアウト役の黒枝は「終盤は綾部さんと自分と(福田)真平さんの3人で動いていました。残り500mで綾部さんがスピードをつけてドラパックのトレインの横まで上げてくれて、残り400mでスピード差をつけて先頭に出たら後ろは一列棒状。残り200mまで引いたところで、真平さんの後ろからヤコブ・マレツコが加速。真平さんがタレたわけではなく、マレツコの動きに続いた他のスプリンターたちが速かった」と振り返る。

「完全なお膳立てを受けたんですが、自分のスプリントが伸びませんでした」と、少し呆然とした表情で語るのは福田。今大会3度目のトップ10フィニッシュだが、UCIポイント圏内に絡む走りはまだ出来ていない。「チームメイトたちが完璧な働きをしてくれて、最後は (黒枝)士揮が先頭まで出きってくれた。今大会ここまでで一番良い形で挑めただけに申し訳ないです」。

ツール・ド・ランカウイは残り1ステージ。最終日の第8ステージはマラッカの平坦な周回コースが設定されている。



悔しい表情を浮かべる福田真平(愛三工業レーシング)悔しい表情を浮かべる福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiスプリントの要になっている綾部勇成(愛三工業レーシング)スプリントの要になっている綾部勇成(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji

リーダージャージを守ったレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)リーダージャージを守ったレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji
総合優勝に王手をかけたレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)総合優勝に王手をかけたレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji第7ステージ2位マレツコ、1位グアルディーニ、3位パリーニ第7ステージ2位マレツコ、1位グアルディーニ、3位パリーニ photo:Kei Tsuji




ツール・ド・ランカウイ2016第7ステージ結果
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)            4h47’12”
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
3位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
4位 モハマドハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌ)
5位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
6位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
7位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
8位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
9位 マルコ・ベンファット(イタリア、アンドローニジョカトリ)
10位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)

個人総合成績
1位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)25h48’29”
2位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)    +11”
3位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)           +12”
4位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)            +16”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ)               +20”
6位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)           +22”
7位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)
8位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア)
9位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ)
10位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
22位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                  +1’05”
36位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                  +4’04”

ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)             73pts
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)           47pts
3位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)               46pts

山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)              49pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)          31pts
3位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)                28pts

アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ)     25h49’28”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                    +06”
3位 ザオ・ジンビャオ(中国、ヘンシャンサイクリング)              +07”

text&photo:Kei Tsuji in Parit Sulong, Malaysia