ジュニア時代の経験を糧に戦った2009年のジュニア世界王者。ラスト17kmから独走したヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が、スプリンター向けクラシックのクールネ~ブリュッセル~クールネを制した。



クールネをスタートするプロトンクールネをスタートするプロトン (c)CorVos
グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)のオムループ・ヘッドニュースブラッド初制覇から一夜。ベルギークラシック開幕2連戦は2日目の日曜日を迎えた。

ファンサービスをするニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)ファンサービスをするニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) (c)CorVos序盤に形成された11名の逃げ集団序盤に形成された11名の逃げ集団 (c)CorVosKBKでは過去3度優勝しているトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)KBKでは過去3度優勝しているトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) (c)CorVosオウデ・クワレモントでペースを上げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)と追走のヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)オウデ・クワレモントでペースを上げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)と追走のヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) (c)CorVosジュリアン・ベルモート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)のアタックによってできた6名の追走集団ジュリアン・ベルモート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)のアタックによってできた6名の追走集団 (c)CorVos単独で逃げるヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)単独で逃げるヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) (c)CorVos今年で68回目の開催を迎えるクールネ〜ブリュッセル〜クールネは、その名の通りクールネをスタートし、ベルギーの首都ブリュッセルの手前で折り返し、クールネへと戻ってくるセミクラシックレースである。昨年よりも7kmほど距離が伸びたものの、概ねコースレイアウトは例年通りでスプリンター向け。レースの最後はクールネ近郊の16kmの周回コースを2周し、フィニッシュを迎える。

オムループと比較して登りが少なく、ゴール前勝負に持ち込まれやすいため、多くのチームがスプリンターをエントリーさせている今大会。前回大会覇者のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)は出場しないものの、過去3度優勝のトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、前回大会で2位のアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)と3位のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、世界王者ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)、そして前日優勝のファンアフェルマートがスタートリストに名を連ねた。

レースはクールネを出発し、アクチュアルスタートが切られると、ダヴィ・ブシェー(ベルギー、クレラン・ファストフートサービス)がアタック。これにボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)らが反応し、あっさりと11名の逃げ集団が形成される。急坂の連続が始まる前の向かい風区間で最大9分程のタイムギャップを稼ぐことに成功する。

一方のメイン集団は、ニノーヴェの折り返し地点を過ぎたころよりペースアップを開始。続く補給地点でジャコモ・ニッオーロ(イタリア、トレック・セガフレード)とダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ)の2名のスプリンターがバイクを降りる。そして、ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)のクラッシュによって集団分裂が発生するもメイン集団がペースを緩めることはなく、結果取り残された50名のほとんどがそのままリタイアに追い込まれることに。

ハイペースで突き進むメイン集団からは、最大斜度11.6%の石畳の急坂「オウデ・クワレモント」でサガンがアタックし、ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が同調するも決定打にはならず。追走を余儀なくされたメイン集団からは、有力スプリンターを含む多数のライダーが一旦脱落したものの、その後のペースダウンによりメイン集団への復帰に成功する。

急坂を3つ残してメイン集団の主導権を握ったのはロット・ソウダル。IAMサイクリングの協力を得て、エシェロンを組みながら横風の中をハイペースで突き進むと、集団の人数は再び減少に転じる。

そして、この日最後の急坂であるノケレベルグでジュリアン・ベルモート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)がペースアップ。ストゥイフェン、ファンアフェルマート、サガン、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)、ドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)、サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)の5名がベルモートに反応するも、この動きは容認されず。スタートから逃げていた先頭集団と共に、メイン集団はサガンら6名を吸収する。

クールネの周回コースに入る前の横風区間では、メイン集団が3つのグループに分裂する。この動きを利用したボーネンやストゥイフェン、ファンポッペル、ファンアフェルマート、ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)ら16名が先頭集団を形成。ロット・ソウダルやコフィディス、カチューシャが牽引する第2集団に30~40秒の差をつけ、フィニッシュへの距離を減らしていく。

ラスト17kmを逃げ切ったヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)ラスト17kmを逃げ切ったヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) (c)CorVos
このまま16名で逃げ切るかと思われた矢先の残り17.2km地点で、ファンポッペルの猛烈な集団牽引を利用してストゥイフェンが独走を開始。約1kmで後続15名を約20秒突き放し周回コースの最終周に入ると、ストゥイフェンは姿勢を低く保ったままフィニッシュへと突き進む。対して、後続は組織だって追走することができず、カチューシャやロット・ソウダル、コフィディスなどが牽引するメイン集団に飲み込まれる。

2位集団はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)を先頭にフィニッシュした2位集団はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)を先頭にフィニッシュした (c)CorVosクールネ~ブリュッセル~クールネ2016表彰台クールネ~ブリュッセル~クールネ2016表彰台 (c)CorVos結果、追いすがるスプリンターチームを相手に17秒をつける圧巻の独走劇で、スィフトフェンがスプリター向けクラシックのクールネ~ブリュッセル~クールネを制覇。メイン集団はスプリントとなり、クリストフが2位、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が3位となった。

前日のオンループでは落車しながらも9位に入り、この日のレース中も調子の良さをみせていたストゥイフェン。「今日の勝利がまだ信じられない。昨日のほうが良かったけど、確かに好調を保てていて、オウデ・クワレモントでの動きにも容易に対応することができた。常に前方で展開できていたし、守りに入ることは一度たりとも無かったね。」とレースを振り返る。

そして、ジュニア時代のレース経験が勝利に繋がったという。「2010年にジュニアの世界王者としてこのレースに出場した時のことを考えていた。クールネに住んでいた祖父が亡くなった年だったから、2010年はどうしても勝ちたかった。でも落車に巻き込まれて、祖父に勝利を捧げることができなかった。だから今日は常に集団の前方で展開するように心がけたんだ」。

日本から出場の小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)は途中リタイア。残り34km地点でメディカルモトと接触し落車したスティグ・ブロークス(ベルギー、ロット・ソウダル)について、チームは右鎖骨と肋骨骨折と、手に擦過傷を負っていると発表した。UCIは事故の検証を行うと発表している。

選手コメントはチーム公式サイトより。



オンループ・ヘットニュースブラッド2016結果
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
4位 ディラン・フルーネヴェーヘンオラン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 ルーカス・ヴィスニオフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
6位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
7位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
8位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)
10位 スコット・スウェイツ(イギリス、ボーラ・アルゴン18)
4'53"50"
+17"










text:Yuya.Yamaoto
photo:CorVos