2月24日から3月2日での8日間、マレーシアでツール・ド・ランカウイ(UCI2.HC)が開催される。ディメンションデータやアスタナ、ティンコフ、そして愛三工業レーシングが出場する「アジア最大のステージレース」の見どころをチェックしておこう。



マレー半島を駆け抜けるツール・ド・ランカウイマレー半島を駆け抜けるツール・ド・ランカウイ photo:Kei Tsuji


マレー半島を駆け抜ける8日間のステージレース

ツール・ド・ランカウイ2016ツール・ド・ランカウイ2016 photo:Le Tour de Langkawiツール・ド・ランカウイはマレーシアを舞台にしたアジア最大のステージレース。例年2月下旬〜3月上旬にかけて開催されており、今年は21回目の開催を迎える。

近年のツアー・オブ・カタールに代表される中東3連戦の台頭によって、ランカウイが国際的な注目度を失っていることは否めない。参加するUCIワールドチームは年々減少しており、今年はインビテーションの遅れも手伝ってディメンションデータやアスタナ、ティンコフの3チームだけ。地理的にヨーロッパに近く(時差が少なく)、開催時期もパリ〜ニースやティレーノ〜アドリアティコに影響せず、さらにグランツール主催者のコネクションがある中東レースにトップチームが流れるのは当然の流れとも言える。より多くのトップチームを集めるために、2017年はツアー・ダウンアンダー直後に開催時期を移す案も出ているという。なお、2015年大会に初出場したチームスカイは、出場選手とスタッフが体調を崩し、その後のシーズンに影響が出たことと、スケジュールの関係で今年度の出場を見送っている。

ツール・ド・ランカウイ2016第4ステージツール・ド・ランカウイ2016第4ステージ photo:Le Tour de Langkawi2014年にマレーシア航空がスポンサーを撤退したことで財政的に思わしくない状況が続いていたが、今年はマレーシアのBSN銀行とフォルクスワーゲンをスポンサーに加え、アジア最大規模のレース開催を実現している。開催期間は8日間で、コース全長は1180.8km。トップチームが席巻する中東レースとは異なり、アジアチームがトップチームに勝負を挑む図式がランカウイにはある。アジアを中心に世界各国から万遍なく出場チームを集めているためスタートリストは実に多国籍だ。

第5ステージは首都クアラルンプールにフィニッシュ第5ステージは首都クアラルンプールにフィニッシュ photo:Kei Tsuji直訳すると「ランカウイ一周レース」だが今年はランカウイ島に上陸しない。レースの舞台はマレー半島に限定される。開幕地はタイ国境に近いマレーシア北部のアロースターで、そこからラインレースで毎日南下を続け、第5ステージは首都クアラルンプールにフィニッシュ。マレー半島の先端近くまで南下後、古くから港湾都市として栄えたマラッカでフィナーレを迎える。スプリンター向きの平坦ステージが続くレイアウトは今年も健在だ。

2016年大会最大の山場は第4ステージの超級山岳キャメロンハイランド(タナラタ)山頂フィニッシュ。残り50kmを切ってから3%弱の緩斜面が延々と続き、残り14km地点で1級山岳リングレットをクリア。下り&平坦路を経て残り8kmで再びコースは登りに転じ、平均勾配5%の登りを標高1,450mまで駆け上がる。ランカウイ名物の超級山岳ゲンティンハイランド(平均勾配8%強)よりも難易度は低いが、このクイーンステージで総合争いの大勢は決するだろう。キャメロンハイランドでは2011年に綾部勇成(愛三工業レーシング)がステージ優勝 を飾ってリーダージャージを手にしている。



ツール・ド・ランカウイ2016ステージリスト
2月24日(水)第1ステージ カンガル〜バリング 165.5km
2月25日(木)第2ステージ スンガイペタニ〜ジョージタウン 159.8km
2月26日(金)第3ステージ クリム〜クアラカングサル 107km
2月27日(土)第4ステージ イポー〜キャメロンハイランド 129.5km
2月28日(日)第5ステージ タパー〜クアラルンプール 149.9km
2月29日(月)第6ステージ プトラジャヤ〜ランバウ 147.6km
3月1日(火)第7ステージ セレンバン〜パリットスロン 202.3km
3月2日(水)第8ステージ バトゥパハット〜マラッカ周回 119.2km



ツール・ド・ランカウイ2016出場チーム
UCIワールドチーム
ディメンションデータ(南アフリカ)
アスタナ(カザフスタン)
ティンコフ(ロシア)
UCIプロコンチネンタルチーム
アンドローニジョカトリ(イタリア)
ユナイテッドヘルスケア(アメリカ)
サウスイースト(イタリア)
ワンプロサイクリング(イギリス)
バルディアーニCSF(イタリア)
ドラパック(オーストラリア)
ファンヴィク・ソールサイクルズ(ブラジル)
チームルス(スイス)
UCIコンチネンタルチーム
スカイダイブドバイ(UAE)
ヘンシャンサイクリング(中国)
愛三工業レーシング(日本)
KSPO(韓国)
ペガサスコンチネンタル(インドネシア)
トレンガヌサイクリング(マレーシア)
HKSIプロチーム(香港)
セブンイレブン・サバRBP(フィリピン)
NSCマイクロン(マレーシア)
ジャイアント・チャンピオンシステム(中国)
ナショナルチーム
マレーシアナショナルチーム(マレーシア)



スプリンターとクライマーを揃えて戦う22チーム

ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji前述の通りランカウイに出場するUCIワールドチームは3チーム。参加選手も1チーム6名と少ないため、UCIワールドチームがレースを完全にコントロールするのは難しい。

近年のツール・ド・ランカウイでステージ優勝を量産しているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)近年のツール・ド・ランカウイでステージ優勝を量産しているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiディフェンディングチャンピオンのヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、ディメンションデータ)はアフリカ選手権出場のためランカウイを欠場する。代わって南アフリカチームを率いるのは南アフリカチャンピオンに輝いたばかりのジャコ・ヴェンター(南アフリカ)とレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)だ。

7年連続出場の愛三工業レーシング7年連続出場の愛三工業レーシング photo:Kei Tsujiアスタナは2015年にステージ4勝を飾ったアンドレア・グアルディーニ(イタリア)でスプリント、22歳のミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア)で総合を狙う。中野喜文マッサーと宮島正典マッサーが揃って帯同するティンコフはミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)がエーススプリンターを担い、2015年総合6位ジャスパー・ハンセン(デンマーク)が総合エースだ。

他にもヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア)やフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)、ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)、ブエルタ・ア・エスパーニャの難関山岳ステージで優勝経験のあるアントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィク)らが総合争いに加わることになるだろう。

スプリンターとしてはマシュー・ゴス(オーストラリア、ワンプロサイクリング)やフランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)、ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)らが揃っている。

日本からは愛三工業レーシングが7年連続ランカウイ出場。綾部勇成、福田真平、伊藤雅和、平塚吉光、早川朋宏、そして新加入の黒枝士揮という6名で挑む。別府匠監督は「今年は終盤に丘があるステージが多く設定されており、スプリンターチームが積極的に集団を引いて逃げを捕まえる展開が少ないのではないかと思っています。欧米の選手は1チーム6人でのコントロールに慣れていないので、集団が遅くて逃げを捕まえきれない展開も出てくる。アジアの選手にもチャンスがあると思っています」と予想する。2015年大会で総合16位に入り、アジアンライダー賞を獲得した早川は開幕前日の有力選手記者会見にも出席している。

「スプリントになれば福田と黒枝。今年からUCIポイントの配分が変わって、今までステージ6位までもらえていたポイントがステージ3位に入らないともらえないので、それを大きな目標にしてほしい。同時に総合系の選手がポイントを取りやすくなっているので、登れる伊藤、平塚、早川が前でフィニッシュしてポイントが取れればと思っています。キャメロンハイランドは緩くて長いので、集団のスピードに残ることができれば面白い。目標は総合10位以内と、3人の総合20位以内。UCIポイントを二桁取ることと、表彰台に登ることですね」と別府監督。ツール・ド・ランカウイは2月23日のチームプレゼンテーションを経て24日に開幕する。

text:Kei Tsuji

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