2月17日から21日までポルトガルで開催されていたヴォルタ・アン・アルガルヴェ(UCI2.1)でゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝。カンチェラーラやコンタドールもステージ優勝を飾って好調ぶりを示した。



第1ステージ ポルトガル南部のアルガルヴェ地方を走る第1ステージ ポルトガル南部のアルガルヴェ地方を走る photo:Tim de Waele


第2ステージ 集団前方で目を光らせるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)第2ステージ 集団前方で目を光らせるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleヴォルタ・アン・アルガルヴェはポルトガルを代表する5日間のステージレース。その名の通りポルトガル本土の最南端のアルガルヴェ地方が舞台で、温暖な気候で降雨が少ない地域として知られる。

第2ステージ リーダージャージを着て走るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第2ステージ リーダージャージを着て走るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleツアー・オブ・オマーンやルタ・デル・ソルと同時期開催ながら、2016年の第42回大会にはUCIワールドチームが12チーム(チームスカイ、カチューシャ、モビスター、エティックス・クイックステップ、トレック・セガフレード、キャノンデール、ロットNLユンボ、ロット・ソウダル、ティンコフ、FDJ、アスタナ、IAMサイクリング)出場し、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)やファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)をはじめ、錚々たる面子がスタートラインに並んだ。

第3ステージ 5秒差の2位に入り、総合首位に立ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第3ステージ 5秒差の2位に入り、総合首位に立ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele平坦コースが設定された第1ステージと第4ステージでスプリント勝利を収めたのは、ドバイツアーでステージ2勝を飾るとともに総合優勝に輝いたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)だった。最終的にポイント賞に輝いたキッテルは「ステージ1勝を目指していた自分がステージ2勝とポイント賞獲得。チームワークの成果が出たことを嬉しく思う。チームとして一段階レベルがアップした」と語っている。キッテルの次戦はパリ〜ニースの予定だ。

第4ステージ 勝利を喜ぶマルセル・キッテルとトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第4ステージ 勝利を喜ぶマルセル・キッテルとトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele第2ステージのアルト・ダ・フォイア山頂フィニッシュで勝利したルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)がリーダージャージを着用して翌日の第3ステージ個人タイムトライアルへ。しかし18kmの「時間との戦い」でLLサンチェスは落車し、リーダージャージを着たままリタイアを余儀なくされる。平均スピード51.551km/hで走りきったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)がトップタイムでステージ優勝した。

第5ステージ ウランを引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)第5ステージ ウランを引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele「コースは最初の1/4がテクニカルで、残りの3/4が直線的なパワーセクション。横風や追い風が吹く難しいタイムトライアルだった。後半スタートのマルティンやトーマスに対し、自分のスタート順は早め。自分の力を最大限発揮することに尽くしたんだ。いつも通りローラー台でアップして、その最中に調子の良さを感じた。経験上、アップ中のそういった気持ちはレースにポジティブに働くんだ。21分前後のトップタイムになると予想して、完全に出し切るペースで走った」というカンチェラーラが今シーズン2勝目をマーク。

第5ステージ 総合優勝に輝いたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)第5ステージ 総合優勝に輝いたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele2016年がキャリア最後のシーズンと公言しているカンチェラーラは「カタールやオマーンを走った選手と比べるとレース距離が足りていない。来週少し休んで、ストラーデビアンケとティレーノ〜アドリアティコを走る。今はとにかく自転車に乗るのが楽しくて、レースが楽しくて、リラックスしている」とコメントしている。

カンチェラーラに5秒届かずステージ2位に甘んじたトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がLLサンチェスに代わって総合首位に浮上し、第2ステージの山頂フィニッシュ2位に続いて第3ステージ個人TTで3位に入ったトーマスが3秒差の総合2位に。僅差の総合争いの行方は最終日のアルト・デ・マリオン(登坂距離2.3km/平均勾配10%)に委ねられた。

チームスカイがコントロールする集団からアルト・デ・マリオンで攻撃を仕掛けたのはアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)らで、ここにファビオ・アル(イタリア、アスタナ)も反応する。急勾配の登りでライバルたちを引き離したコンタドールが先頭でフィニッシュラインを切った。

「昨年のツール・ド・フランス以降、長期間レースから離れていたので、第2ステージでは最後の最後で力が足りず、タイムを失ってしまった。だから自分にとって今日は大事な1日だった。シーズン初戦での勝利は自信に繋がるし、これからの集中してツール・ド・フランスに向けて準備を進めていきたい。次戦は2010年以来となるパリ〜ニースだ」と、7ヶ月ぶりのレースで勝利を収めたコンタドールは語る。しかしコンタドールは第2ステージで24秒、第3ステージの個人TTで1分03秒のタイムを失ったため、総合成績は3位止まりだった。

「北のクラシック」で重量級クラシックレーサーと対峙するトーマスが、並み居るクライマーたちを押さえ込んで総合優勝。「マルティンの脱落後は総合リードを守ることに徹した。最も危険な存在であるイサギーレを徹底的にマーク。無理にコンタドールのアタックに反応していれば、オーバーペースでやがて失速して、総合優勝を逃していたかもしれない」とトーマスは振り返る。

「表彰台に登ることはいつだって格別。ステージレースで総合表彰台の真ん中に立つなんてそうあることじゃないから、存分に楽しんだよ。今シーズンはすでにステージレースを3つこなした。いよいよクラシックシーズン前のハードなトレーニングの最終段階に入る」と、戦略的な走りで2年連続アルガルヴェ総合優勝を果たしたトーマスは語っている。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



ヴォルタ・アン・アルガルヴェ2016結果

2月17日(水)第1ステージ ラゴス〜アルブフェイラ 163.6km

第1ステージ 開幕スプリントでグライペルを下したマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第1ステージ 開幕スプリントでグライペルを下したマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)    3h52’35”
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
3位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
4位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、キャノンデール)
5位 ヴィクター・カンペナールツ(ベルギー、ロットNLユンボ)



2月18日(木)第2ステージ ラゴア〜アルト・ダ・フォイア 198.6km

第2ステージ 山頂フィニッシュを制したルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)第2ステージ 山頂フィニッシュを制したルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) photo:Tim de Waele
第2ステージ結果
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)           5h08’25”
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)              +01”
3位 プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)           +03”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
5位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)             +05”



2月19日(金)第3ステージ サグレス〜サグレス 18km(個人TT)

第3ステージ トップタイムを叩き出したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)第3ステージ トップタイムを叩き出したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele
第3ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)     20’57”
2位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)       +05”
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)              +28”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                +37”
5位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)



2月20日(土)第4ステージ サンブラス・デ・アルポルテル〜タヴィラ 194km

第4ステージ スプリント2勝目をマークしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)第4ステージ スプリント2勝目をマークしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
第4ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)    4h46’35”
2位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、キャノンデール)
3位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)



2月21日(日)第5ステージ アルモドヴァル〜マリオン 169km

第5ステージ 最終日の山頂フィニッシュを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)第5ステージ 最終日の山頂フィニッシュを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele
第5ステージ結果
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)          4h24’47”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                  +20”
3位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
4位 アマロ・アントゥネス(ポルトガル、ラ・アルミニオス)
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)              +28”

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)           18h34’15”
2位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                +19”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)            +26”
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                    +32”
5位 プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)           +49”

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele