ドバイツアーの開幕ステージは大集団によるスプリントフィニッシュに。最速トレインに発射されたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がライバルたちを振り切り、新シーズンを最高の形でスタートさせた。



ドバイの高層ビル群に向かうプロトンドバイの高層ビル群に向かうプロトン photo:Tim de Waele
砂漠を貫く幹線道路を走る砂漠を貫く幹線道路を走る photo:Tim de Waeleアタックを仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)アタックを仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele


逃げるロイック・フリーゲン(ベルギー、BMCレーシング)ら6名逃げるロイック・フリーゲン(ベルギー、BMCレーシング)ら6名 photo:Tim de Waele春先のウィルス感染によって2015年シーズン低迷し、グランツールを全て欠場するとともにシーズン1勝に終わった”元”最速スプリンターのキッテルが、ジャイアント・アルペシンからエティックス・クイックステップに移籍して気分一新。RCSスポルトが主催するアラブ首長国連邦のドバイツアー(UCI2.HC)で新たなシーズンをスタートさせた。

チームメイトに守られて走るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)チームメイトに守られて走るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele「昨シーズンの低迷は病気によるものだ。自分がまた勝利の波に戻れるのかどうか懐疑的な人もいたと思う。自分にとっても大きなチャレンジだった。昨シーズンに受け続けた批判が今日のモチベーションにつながったよ」というキッテルは、チームメイトの後ろで1日を過ごし、フィニッシュでの勝負に備えた。

新チームでスプリントに挑むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)新チームでスプリントに挑むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleドバイ市内をスタートし、半島を横切ってフジャイラにフィニッシュするドバイツアー初日の第1ステージ。中間スプリントのボーナスタイムを狙うフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)らが序盤から積極的にアタックしたが決まらない。最終的にロイック・フリーゲン(ベルギー、BMCレーシング)ら6名が逃げを形成し、スプリンターチームが追う展開となる。

砂漠を貫く幹線道路でエティックス・クイックステップやディメンションデータ率いるメイン集団は逃げとのタイム差を詰め、フジャイラの周回コースに入ったところで逃げを吸収。残り3kmからのジルベールによるカウンターアタックも決まらず、トレック・セガフレードとエティックス・クイックステップによるトレインバトルが始まった。

ディメンションデータがポジションを下げた一方で、トレックとエティックスが先頭をキープしたまま残り1km。ハイスピードを維持した最終発射台のマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が残り200mで離脱すると同時にキッテルが腰を上げる。6番手あたりからジャンプしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を振り切って、先頭キッテルはトップスピードを維持したままフィニッシュラインに飛び込んだ。



集団スプリントで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)集団スプリントで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele


カヴェンディッシュを振り切ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利カヴェンディッシュを振り切ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利 photo:Tim de Waele新チームで掴んだ今シーズン初勝利。キッテルは「新しいチームメイトとの連携にとても満足している。彼らの働きは想像以上だった。チームの馬力は凄まじい」とチームワークを賞賛する。最大のライバルで、元エティックス・クイックステップのカヴェンディッシュを下したことに関しては「彼が元エティックスだから負けたくないというような気持ちはなかった。わだかまりなどはなく、ただ2人がそれぞれ新チームで戦っているだけだ」と語っている。

リーダージャージを手にしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)リーダージャージを手にしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleボーナスタイム10秒を得たキッテルはリーダージャージに袖を通したが、最大勾配17%の登坂フィニッシュが設定された第3ステージ(昨年はデゲンコルブ勝利)が鬼門であると語る。「最終日までリーダージャージを守ることが出来れば良いけど、ハードな第3ステージがあるから難しいと思う」(レース公式サイトより)

キッテルとの直接対決に敗れたものの、勢いあるスプリントを見せたカヴェンディッシュは「コンディションは悪くない」と、シーズン2戦目を振り返る。「勝てなくて残念なのは当然だ。でも今日は様々なポジティブな発見があった。ディメンションデータのチームメイトたちは責任感をもってレースをコントロールして集団スプリントに持ち込んでくれた。最終的にエティックスが最も多くの人数を揃えていたのでキッテルの番手に入りたかったけど、そう考えるのは他のスプリンターも同じ。結果的にかなり後方からのスプリントになり、1.5車身差で負けた。チームメイトの働きに勝利で報いることが出来なくて残念。明日からも引き続き挑戦するよ」(ディメンションデータ公式サイトより)

第2ステージはドバイマリーンクラブからパルムジュメイラまでの183km。人工島のにある5つ星ホテル「アトランティス」の目の前でスプリントが繰り広げられる。







ドバイツアー2016第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)  3h35’21”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
6位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
7位 クリス・オピー(イギリス、ワンプロサイクリング)
8位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
9位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
10位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アルナスル・ドバイ)

個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)  3h35’11”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)    +04”
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)      +06”
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)          +09”
5位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)        +10”
6位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
7位 クリス・オピー(イギリス、ワンプロサイクリング)
8位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
9位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
10位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アルナスル・ドバイ)

ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)

中間スプリント賞
1位 ソフィアネ・ハディ(モロッコ、スカイダイブドバイ)

ヤングライダー賞
1位 ソフィアネ・ハディ(モロッコ、スカイダイブドバイ)

チーム総合成績
1位 ティンコフ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele