1987年創業のイタリアンヘルメットブランドMETから、MTNキュベカ(現ディメンションデータ)と共同開発を行った、同社初のエアロヘルメット「RIVALE HES」が登場した。ツール・ド・フランスでの活躍を支えた軽量級エアロヘルメットを、取扱いショップからのおすすめコメントと合わせて紹介しよう。



世界最高峰プロチームとのコラボレーションによって生まれたMETのニューモデル、RIVALEをインプレッションした世界最高峰プロチームとのコラボレーションによって生まれたMETのニューモデル、RIVALEをインプレッションした
2015年のツール・ド・フランスでMETと協力関係にあるMTNキュベカ(現ディメンションデータ)の選手たちが着用しステージ優勝を遂げたことで、注目を集めたMET初のエアロヘルメット「RIVALE HES(リヴァーレHES)」。同時に登場したベンチレーションが異なるManta HESの双子モデルである。

RIVALE HESの最大の注目ポイントはManta HESと共通して軽量性にある。数多くのベンチレーションホールを持ち、通気性と空力性能を追求したオープンエアロヘルメットという分類において、最軽量級の230g(カタログ値、Mサイズ)を実現。実際にMサイズの重量を計測すると、223gと好数値を出していた。

それに加えて、RIVALE HESは他に類を見ないほどコストパフォーマンスに優れている。ワールドチームが使用し、ツールでステージ優勝という素性の良さ、クラス最軽量の重量を誇りながらも、価格は16,600円(税抜)。オールラウンドに着用できるエアロヘルメットの選択肢としては、最有力候補になるだろう。

空気を取り入れつつ、エアロ性能を高めるためのベンチレーションデザインが採用された空気を取り入れつつ、エアロ性能を高めるためのベンチレーションデザインが採用された 後方の排気ポートは数多く、積極的に熱を排出してくれる後方の排気ポートは数多く、積極的に熱を排出してくれる

空気を取り込むための溝は額にも設けられた空気を取り込むための溝は額にも設けられた Mサイズは220gと、オープンエアロヘルメットという分類において最軽量クラスの重量に仕上がっているMサイズは220gと、オープンエアロヘルメットという分類において最軽量クラスの重量に仕上がっている


RIVALE HESの空力性能についてMETは、50km/hで走行したとすると競合のエアロヘルメットと比較して3ワット分の空気抵抗削減に成功したと発表している。ベンチレーションホールを設けたため、より優れた空力性能はManta HESに譲るが、通気性を期待できるRIVALE HESのほうが着用するシチュエーションの幅が広そうだ。

RIVALE HESはインナーシェルとアウターシェルを強固に結びつけるインモールド成型を採用しており、高い強度を備えた。これによって厳格な安全基準で知られている欧州のCEをはじめ、ASとCPSCをクリアしていることがポイントだ。加えて、落車時の衝撃を分散させるポリカーボネイトのパーツ「HES」を内蔵しているため、万が一、落車した際のダメージを軽減させてくれるだろう。

吸汗速乾性に優れるオーソドックスなパッドを採用している吸汗速乾性に優れるオーソドックスなパッドを採用している 深い溝を彫ることによって通気性を向上させている深い溝を彫ることによって通気性を向上させている

締め付けるストラップが頭を1周しているため、フィット感もよいだろう締め付けるストラップが頭を1周しているため、フィット感もよいだろう Safe-t advancedという1ノッチで2mmずつ締め付け具合を調整できるダイヤルと、縦方向に4段階で調整できるアジャスターを採用したSafe-t advancedという1ノッチで2mmずつ締め付け具合を調整できるダイヤルと、縦方向に4段階で調整できるアジャスターを採用した


フィッティングシステムは「Safe-t advanced」を採用している。1ノッチで2mmずつ締め付け具合を調整できるダイヤル、縦方向に4段階で調整できる機構を備えており、細かくフィッティングできることが特徴だ。締め付けるストラップが頭を1周していることもフィット感を向上させている。インナーパッドは優れた吸汗速乾性を期待できるクールマックス製。ストラップは軽量なAIRLITEが採用された。

サイズ展開はM(54/58cm)、L(59/62cm)という2種類。カラーはマットブラック/シアン、MTNエディション、レッド/ホワイト、ホワイト/シルバー、セーフティイエローブラック、マットブラック、シアン/ホワイトという7色となっている。

「RIVALEは手頃な価格ながら空力効果に優れるヘルメットですね」「RIVALEは手頃な価格ながら空力効果に優れるヘルメットですね」 メット待望の新作エアロヘルメットRIVALEについて伺ったのは「カトーサイクル」のスタッフ・谷口さん。

「まだまだ高価なものが多いエアロヘルメットですが、RIVALEは手頃な価格設定になっており、それでいてしっかりとした空力効果があります。帽体はやや幅狭ですが、これまでのメットと比べれば日本人向けになっており、被った際にキノコ頭になりづらいのも良いポイントです。空力と軽さを両立した『セミエアロ』系のバイクとの相性が良いでしょう。」



―編集部インプレッション

人がヘルメットに求めるものは何だろうかと考えた時、さまざまな要素が出てくるだろう。もちろん、フィット感は大切だし、軽さも大事だ。ヘルメットのもっとも基本的な要素であるプロテクション性能は言うまでもないし、一方で見た目のカッコよさだって譲れないポイントである。熱がこもらないようなクーリング性能も蒸し暑い日本の夏では必須項目であるし、最近はエアロダイナミクスまでも求められるようになってきた。

こういった要素を挙げていくと、どこでも最高の性能を発揮してくれる理想のヘルメットというものが、とてつもなく実現しがたいモノだということが分かるはずだ。安全で、軽くて、空力が良くて、熱もこもらず、見た目もすっきりしていて、フィット感も良い。そんなヘルメットがあれば、ベストセラー間違いなしである。しかし、リヴァーレはそんな夢のようなヘルメットの実在を予感させてくれた。

MET RIVALE HESの実走テストを行ったMET RIVALE HESの実走テストを行った
さて、それではフィット感から。普段はカブトのゼナードを使用する私は、これまでMETのヘルメットは少し縦長で被りづらいと感じていた。しかしこのリヴァーレはそれまでMETへと抱いていた印象を拭い去るフィット感を持っていた。すこし幅狭かと感じるものの、典型的な日本人頭である私でも痛みを感じることはない。アジャスターのノブもつまみやすく、手袋をしていても操作に支障は感じなかったのも地味だが好印象である。

ルックスも悪くない。もともとMETといえば、いわゆる「キノコ頭」になりづらいデザインで人気が高いブランドであるが、このリヴァーレにもその美点は受け継がれている。横方向へ張り出さず、スッと上方へと切れ上がったサイドウォールは、フェイスラインから流れるような線を描いていく。

流れるようなシェルデザインは空力の良さを感じさせる。アイウェアとの相性も良い流れるようなシェルデザインは空力の良さを感じさせる。アイウェアとの相性も良い リアセクションはカットされており、頭が下がってもエアブレーキのようになりづらいリアセクションはカットされており、頭が下がってもエアブレーキのようになりづらい アジャスターのノブもつまみやすく操作しやすいアジャスターのノブもつまみやすく操作しやすい エアロヘルメットの課題ともいえるのが熱のこもりやすさだが、リヴァーレはノーマルモデルのヘルメットに匹敵するほどの冷却性能を持っているように感じる。テストした期間が2月という但し書きはつくが、前方のエアインテークから、入ってくる冷気のせいで額が痛くなるほどだ。

大きなエアインテークがあっても空気がたまってしまい、結果的に見た目ほどの空冷性能が発揮できないヘルメットがある一方で、決して大きな開口部があるわけではないリヴァーレの冷却性能の良さは、ヘルメット内部のエアフローがしっかりと設計されているからだと感じる。

エアロダイナミクスについてコメントするというのは少し難しいものであるが、リヴァーレの後にノーマルなヘルメットを被ると、少し頭を引っ張られるように感じた。また、リアセクションはカットされており、頭が下がってもエアブレーキのようになりづらいため、追い込むようなシチュエーションでも、最後の助けになってくれるだろう。

一方、軽量性についてはとてもわかりやすい。オールラウンダー寄りとはいえ、エアロヘルメットというカテゴリにおいて実測220gというのは一歩飛び抜けたスペックだと言えるだろう。その軽さと空気抵抗の少なさのおかげか、首回りも幾分楽に感じられるほどである。

プロテクション性能も、残念ながら(?)実感する機会に恵まれなかったためなんとも言い難いが、全体的にしっかりとした造りで、不安に感じるようなヤワさは感じられない。薄いように見えるサイドウォールも、ヒットしやすいところには厚みを持たせられている。横方向に力を加えてみても、全くたわむ様子もなく、強度の高さが伺えた。

南アフリカ籍のワールドツアーチーム、ディメンションデータが愛用するリヴァーレ。トップモデルが2万円以下で購入できることも大きな魅力南アフリカ籍のワールドツアーチーム、ディメンションデータが愛用するリヴァーレ。トップモデルが2万円以下で購入できることも大きな魅力 photo:Kei Tsuji
現在ヘルメットに求められる性能を、これまでにない次元でバランスしたMET渾身の一作がこのリヴァーレなのだと、被ってみればわかるはずだ。インプレッションしながら、「これは『買い』だな、いくらなんだろう……、海外ブランドの新作でプロチーム供給モデルでもあるし、3万円を超えるかな?それなら高いけれどなんとか出せるか?」などと思っていた。

そして、カタログを見てびっくりである。税抜きで16,600円。誤植かと思い、輸入代理店のインターマックスへと確認をとったところ、間違いないという。しかし、私は未だに信じられない。この性能のヘルメットが、2万円以下だなんて。気になる人は、お小遣いを握りしめてサイクルショップへ急ぐべきだ。



MET RIVALE HES
安全規格:CE、AS、CPSC
テクノロジー:Air lite straps、Safe-t advanced、Coolmax anti-allergenic interior pads
カラー:マットブラック/シアン、MTNエディション、レッド/ホワイト、ホワイト/シルバー、セーフティイエローブラック、マットブラック、シアン/ホワイト
サイズ:M(54/58cm)、L(59/62cm)
実測重量:215g、230g、224g(Mサイズ)
価 格:16,600円(税抜)

メット Rivale(セーフティイエローブラック、マットブラック、シアン/ホワイト)メット Rivale(セーフティイエローブラック、マットブラック、シアン/ホワイト)