10年ぶりに国内レースシーンに復活したキナンサイクリングチーム。初年度にしてJプロツアーそしてUCIレースで活躍しその強さを印象付けた。2016年はウェズリー・サルツバーガー、マルコス・ガルシアそして阿曽光佑を迎えツール・ド・熊野を狙う。



初年度にしてツアー・オブ・ジャパン出場を果たしたキナンサイクリングチーム初年度にしてツアー・オブ・ジャパン出場を果たしたキナンサイクリングチーム photo:Hideaki TAKAGI
2年目のキナンサイクリングチーム

2005年まで国内トップチームとして活動したキナン。2015年にUCIコンチネンタルチームとしてKINAN Cycling Team(キナンサイクリングチーム)が発足。じつに10年ぶりに日本のロードレースシーンをキナンが走り抜けた。メインスポンサーは、和歌山県新宮市に本社を置く建設機械総合レンタル業の株式会社キナン(角口賀敏会長)だ。

2015年はシーズン序盤のUCIレースでUCIポイントを獲得。ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)ではジャイ・クロフォードが個人総合12位。そしてチームの最大目標のツール・ド・熊野では同じくクロフォードが同8位に。さらに7月のJプロツアー(JPT)湾岸クリテリウムでロイック・デリアックが優勝。9月のツール・ド・北海道でデリアックが個人総合山岳賞、JPT輪翔旗杯では野中竜馬が3位となり、JPT年間総合成績はチームとして4位と活躍した。

12月27日に発表された日本人選手5人。右から伊丹健治、野中竜馬、阿曽圭佑、中西重智、阿曽光佑12月27日に発表された日本人選手5人。右から伊丹健治、野中竜馬、阿曽圭佑、中西重智、阿曽光佑 photo:KINAN Cycling Team
ツール・ド・熊野が最重要目標

熊野では勝負どころの第2ステージ札立峠下りでコースアウトしたクロフォードだったが、その後立て直し上位に踏みとどまった。当時にGMの加藤康則氏は、怪我を負いながらも走りぬいたクロフォードを「エースとしてあきらめない精神力と走りは日本人選手に大きな影響を与えた」と評した。チームとして海外選手を迎え入れる理由は即戦力であるとともに、日本人選手にとって模範となる存在として相乗効果を狙っており、それは2016年も変わらない。

ツール・ド・熊野2015第1ステージ終盤に列車を組むキナンサイクリングチームツール・ド・熊野2015第1ステージ終盤に列車を組むキナンサイクリングチーム photo:Hideaki TAKAGI
2016年の基本方針は大きくは変わらない。すなわちツール・ド・熊野で総合優勝することが最大目標であり、そして国内外のUCIレースさらにJプロツアーで活躍することだ。新加入はウェズリー・サルツバーガー、マルコス・ガルシアそして阿曽光佑の3人。離れたのは山本雅道、グレゴー・ガズヴォダ、ロイック・デリアック、水野恭兵の4人。

新しく加入する3人

ウェズリー・サルツバーガーは2008年TOJ奈良ステージで優勝し3日間リーダージャージを着用したウェズリー・サルツバーガーは2008年TOJ奈良ステージで優勝し3日間リーダージャージを着用した photo:Hideaki TAKAGIウェズリー・サルツバーガーは1986年生まれオーストラリア出身、2015年はナヴィタス・サタリスト、2014年はドラパック、2012-13年はオリカ・グリーンエッジ、2009-11年はフランセーズ・デジューに所属。2007年世界選手権ロードU23で2位、サウスオーストラリアドットコム・AISに所属の2008年にはTOJ奈良ステージで優勝しリーダージャージを着用している。2014年ジャパンカップクリテリウムでは5位に。

マルコス・ガルシアは1986年生まれスペイン出身。2015年はロウレターノ、2012-14年はカハルーラル所属。2014年ブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオン個人総合2位、2012年ブエルタ・ア・エスパーニャ ステージ4位など。そしてKINAN AACAから昇格する阿曽光佑は阿曽圭佑の双子の弟だ。


以下、チームGMの加藤康則氏によるリリースを紹介しよう。

ブエルタステージ4位、ジロ出場などグランツール経験のあるクライマーのマルコス・ガルシアブエルタステージ4位、ジロ出場などグランツール経験のあるクライマーのマルコス・ガルシア photo:KINAN Cycling Team
2016年選手およびスケジュール

国内外のUCIレース及びJプロツアーに参戦することと、最も重要とするツールド熊野へ向けてのメンバー強化のため9人体制とした。オーストラリア人2人、スペイン人2人、日本人5人の構成。
2016年はジャイ・クロフォードをキャプテンとして戦う。新加入選手は3人で、阿曽光佑(あそこうすけ)は下部組織のKINAN AACAからの昇格で、KINANCyclingTeamに所属する阿曽圭佑の双子の弟。

2人目のWesley Sulzberger(ウェズリー・サルツバーガー)は、かつてツアーオブジャパン2008の奈良ステージを制しリーダージャージに袖を通した経験を持つオーストラリア人選手。ジャイのドラパック所属時代のチームメートという仲で2016年キャプテンを務めるジャイからの信頼も厚い。

3人目、Marcos Garcia(マルコス・ガルシア)はヴェルタエスパーニャ完走経験を持つクライマー。新加入の阿曽光佑は下部組織のKINAN AACAからの昇格新加入の阿曽光佑は下部組織のKINAN AACAからの昇格 photo:KINAN Cycling TeamKINANCyclingTeamが最も重要と位置づけるツールド熊野での体制をさらに強化した。他のメンバーは2015年から継続となる。

2016年所属選手 合計9名

Jai Crawford AUS ジャイ・クロフォード
Wesley Sulzberger AUS ウェズリー・サルツバーガー(新)
Ricardo Garcia ESP リカルド・ガルシア
Marcos Garcia ESP マルコス・ガルシア(新)
Kenji Itami JPN 伊丹健治
Ryoma Nonaka JPN 野中竜馬
Shigetomo Nakanishi JPN 中西重智
Keisuke Aso JPN 阿曽圭佑
Kosuke Aso JPN 阿曽光佑(新)

2016年のチームとしての開幕公式レースは2月3-7日のVolta a la Comunitat Valenciana(スペイン、UCI2.1)。その前にクロフォードとサルツバーガーは1月10日にオーストラリア選手権に出場する。

ツール・ド・熊野第2ステージで落車から復帰し第2集団を引くジャイ・クロフォードツール・ド・熊野第2ステージで落車から復帰し第2集団を引くジャイ・クロフォード photo:Hideaki TAKAGIブエルタ・ア・エスパーニャ2010第2ステージ 山岳地帯で先頭グループに追いついたマルコス・ガルシアブエルタ・ア・エスパーニャ2010第2ステージ 山岳地帯で先頭グループに追いついたマルコス・ガルシア photo:Unipublic
ウェズリー・サルツバーガーは2014年ジャパンカップクリテリウムで5位にウェズリー・サルツバーガーは2014年ジャパンカップクリテリウムで5位に photo:Hideaki TAKAGI経産旗杯ロード序盤でアタックする阿曽光佑経産旗杯ロード序盤でアタックする阿曽光佑 photo:Hideaki TAKAGI

各日本人選手の抱負

2008年TOJ奈良ステージで優勝したウェズリー・サルツバーガー2008年TOJ奈良ステージで優勝したウェズリー・サルツバーガー photo:Hideaki TAKAGI石田哲也監督
チーム発足2年目のシーズンがいよいよ始まります。初年度の1年間はトライアンドエラーを繰り替えし、チームは経験を積んできました。2年目は成績にこだわり、強いKINAN Cycling Teamを目指します。またファンの皆さまに応援していただけるようなチーム作りを心がけていきたいです。

伊丹健治
1レース1レース大事に走りたいです。特にUCIレースではUCIポイント獲得にこだわって貪欲に走りたいと思います。多国籍でなかなかコミュニケーションをとるのが大変ですが、現在英語を勉強中でスキルアップしながらチーム一丸となって戦っていきたいです。

野中竜馬
2015年はチーム初年度ながら本当に素晴らしい活動をさせて貰いました。出るレースや生活環境を最大限良くしてくれたチームには感謝しています。またその中で活動する事で多くの事を学べた年になりました。2016年は更に成長してチームに貢献出来る選手になりたいです。

中西重智
チーム1年目でUCIレースに出場したものの足りない事ばかりで、後半にはケガもして反省の多いシーズンになりました。2016年はアシストとして走れる力と技術を身につけ、チームで1つでも多く勝利を目指します。チャンスがあれば自ら狙っていきたいです。経験豊富な選手が多いので、トレーニングやレースから多くを学んで成績に繋げていきたいです。

阿曽圭佑
2015年はは挑戦し続けてきた1年になりました。多くの事を学び自分の経験値を上げる事が出来ました。2016年は自分のなかで勝負の年だと思います。自分の走りを確立し、チームに貢献できるよう努力し挑戦を続けます。キナンサイクリングチームを応援よろしくお願いします。

阿曽光佑
研修生から2016年より選手として走ることになり、自分に与えられた仕事の1つ1つを大切にして頑張っていきたいです。チームには尊敬する選手ばかりなので、多くを吸収しチームの成績に貢献していきたいと思います。

経産旗杯ロード3位の野中竜馬経産旗杯ロード3位の野中竜馬 photo:Hideaki TAKAGI東日本ロード南魚沼大会で3位のリカルド・ガルシア(左から2人目)東日本ロード南魚沼大会で3位のリカルド・ガルシア(左から2人目) photo:Hideaki TAKAGI

text:加藤康則 edit:高木秀彰

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